2009年11月 7日 (土)

「皇室の名宝 日本美の華」1期、その2、永徳、若冲から大観、松園まで

20091006725 嵐の去った午後、黄葉し始めた森を歩いて、博物館に行く。再び若冲『動植綵絵』をみる。『老松孔雀図』『老松白鳳図』『老松白鶏図』『老松鸚鵡図』をよくみると、絹地の裏彩色の上に、レースのように白く鳥が描かれている。大胆な構図と繊細を極める精緻な筆致が絵画の一つの極致を生みだしている。
■『萬国絵図屏風』17世紀初期、作者不明、八曲一双屏風。左隻は世界各国の民俗衣装をまとった男女が描かれる世界の「風俗図」、「世界地図」。右隻は「泰西王侯騎馬図」28都市の「都市景観図」。ローマ、ヴェネツィアの都市景観がみえる。不思議な美しい屏風である。日本最古の西洋絵画。
第一室は狩野永徳・狩野常信筆「唐獅子図屏風」六曲一双が圧倒している。
■主要展示作品
1章「近世絵画の名品」
1 浜松図屏風 海北友松筆 6曲1双 江戸時代・慶長10年(1605) 三の丸尚蔵館
2 四季草花図屏風  伝狩野永徳筆 4曲1隻、2曲1双 安土桃山時代・16世紀 三の丸尚蔵館
3 源氏物語図屏風 伝狩野永徳筆 6曲1双 安土桃山時代・16世紀 三の丸尚蔵館
4 唐獅子図屏風 狩野永徳・狩野常信筆 6曲1双 右隻:安土桃山時代・16世紀、左隻:江戸時代・17世紀 三の丸尚蔵館
5 萬国絵図屏風 8曲1双 安土桃山~江戸時代・17世紀 三の丸尚蔵館
8 源氏四季図屏風 円山応挙筆 6曲1双 江戸時代・18世紀 三の丸尚蔵館
9 牡丹孔雀図 円山応挙筆 1幅 江戸時代・安永5年(1776) 三の丸尚蔵館
11 小栗判官絵巻 巻第1・11・13 岩佐又兵衛筆 3巻(15巻のうち) 江戸時代・17世紀 三の丸尚蔵館
13 唐子睡眠図 長澤蘆雪筆 1幅 江戸時代・18世紀 三の丸尚蔵館
15 覇王別姫図 原在中筆 1幅 江戸時代・天明5年(1785) 三の丸尚蔵館
17 花鳥十二ヶ月図 酒井抱一筆 12幅 江戸時代・文政6年(1823) 三の丸尚蔵館
17-1 一月 梅椿に鶯図
17-2 二月 菜花に雲雀図
17-3 三月 桜に雉子図
17-4 四月 牡丹に蝶図
17-5 五月 燕子花に鷭図
17-6 六月 立葵紫陽花に蜻蛉図
17-7 七月 玉蜀黍朝顔に青蛙図
17-8 八月 秋草に螽斯図
17-9 九月 菊に小禽図
17-10 十月 柿に小禽図
17-11 十一月 芦に白鷺図
17-12 十二月 檜に啄木鳥図
18 西瓜図 葛飾北斎筆 1幅 江戸時代・天保10年(1839) 三の丸尚蔵館
2章「近代の宮殿装飾と帝室技芸員」
29 古柏猴鹿之図 森寛斎筆 1幅 明治13年(1880) 三の丸尚蔵館
30 月下擣衣図 幸野楳嶺筆 1幅 明治15年(1882) 三の丸尚蔵館
31 孔雀鸚鵡図 瀧和亭筆 2曲1双 明治29年(1896) 三の丸尚蔵館
32 群猿之図 川端玉章筆 1幅 明治23年(1890)頃 三の丸尚蔵館
33 木下闇図 川端玉章筆 1幅 明治40年(1907) 三の丸尚蔵館
34 夏冬山水図 橋本雅邦筆 2幅 明治29年(1896) 三の丸尚蔵館
35 春秋山水図 橋本雅邦筆 2幅 明治34年(1901) 三の丸尚蔵館
48 龍虎図 橋本雅邦筆 1面 明治32年(1899) 三の丸尚蔵館
★「皇室の名宝-日本美の華」1期:永徳、若冲から大観、松園まで。東京国立博物館
1期:2009年10月6日(火)~11月3日(火・祝)
2期:2009年11月12日(木)~11月29日(日)
http://www.tnm.jp/jp/

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2009年10月20日 (火)

古代カルタゴとローマ展 きらめく地中海文明の至宝・・・地中海の多様な文化の様式

Cartago_venus_2009 秋の夕暮、美術館に行く。有翼日輪、スフィンクス、愛と美の女神アフロディーテ、エロスとプシュケ、戦いの女神ミネルヴァ、水浴するヴィーナス、化粧するヴィーナス。地中海の多彩な図像がある。カルタゴはエジプト、ギリシア、ローマ帝国、地中海の多様な様式が融合する文化空間である。カルタゴは紀元前9世紀に建国、名将ハンニバルが戦った第2次ポエニ戦争をへて紀元前146年滅亡する。紀元前1世紀ローマ帝国により復興、ローマ、アレクサンドリアに次ぐローマ帝国第三の都市となり繁栄する。ローマ建築の床と壁を彩るモザイクに、古代カルタゴの追憶が蘇る。フェリーニ監督『サテリコン』のローマ貴族の庭を思い出す。
■展示作品
第一章 地中海の女王カルタゴ
有翼女性神官の石棺BC3世紀:カルタゴのネクロポリスから出土した大理石製の石棺。棺の形式はエジプト型、傾斜の鋭い屋根形をした蓋はギリシア様式。
第二章 ローマに生きるカルタゴ
ヴィーナス像頭部2-3世紀
ライオン像2世紀
バラのつぼみを撒く女性5世紀、縦190cm横140cm
メドゥーサ3世紀
エロスとプシュケ4世紀、カルタゴ博物館
地中海の島々と都市3-4世紀、モザイク、縦533‐536cm横492cm1995年、チュニジア西部・ハイドラ遺跡の一般家屋跡。キプロス、クニドス、ロドスなど古代地中海の12の都市や島々が描かれている。
――――――
 地中海沿岸の白い街並みからサハラ砂漠まで多彩な顔を持つチュニジアは、古くから積み重なる歴史と民族、そして文化が溶け合い独自の文化を育んできました。
 紀元前800年フェニキア人によってこの地に建国された都市国家カルタゴは、東西地中海の貿易中継地として栄華を極めました。地中海を巡っての宿敵ローマとのポエニ戦争、名将ハンニバルの活躍、その悲劇的な結末は今日まで伝説として語り継がれています。
 本展では、カルタゴ遺跡群からの出土品と世界一のモザイクコレクションを誇るチュニジア国立博物館群の名品160点余を通して、ギリシア、ローマ、カルタゴによって繰り広げられた古代地中海世界の壮大なドラマとカルタゴで花開いた優美な芸術・モザイクを紹介します。
★チュニジア世界遺産 古代カルタゴとローマ展 -きらめく地中海文明の至宝-
大丸ミュージアム・東京(大丸東京店10階)
2009年10月3日-10月25日(日)
http://www.karutago-roma.jp/top.html

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2009年10月16日 (金)

皇室の名宝‐日本美の華、伊藤若冲『動植綵絵』・・・嵐のまえの博物館

34531072_2324774483 10月6日夕方、嵐のまえの森を歩いて、東京国立博物館に行く。夕方、人影がない空間で、永徳『唐獅子図屏風』、若冲室に見入る。若冲は圧巻。「1期1章近世絵画の名品」第2室、若冲の絵は、31点展示されている。
『旭日鳳凰図』伊藤若冲筆 1幅 江戸時代・宝暦5年(1755) 三の丸尚蔵館
伊藤若冲『動植綵絵』三十幅一挙展示は、圧巻である。
伊藤若冲は大典禅師の人格、学識に傾倒して禅の修行に励み、修行僧のごとく絵画三昧に没頭、相国寺に「釈迦如来像」「文殊菩薩像」「普賢菩薩像」の仏画三幅対と三十幅の動植綵絵を描き、明和七年(1770)十月、寄進した。
1:芍薬群蝶図(しゃくやくぐんちょうず)宝歴8年(1758)
2:梅花小禽図(ばいかしょうきんず)
3:雪中鴛鴦図(せっちゅうえんおうず)
4:秋塘群雀図(しゅうとうぐんじゃくず)
5:向日葵雄鶏図(ひまわりゆうけいず)
6:大鶏雌雄図(たいけいしゆうず)
7:梅花皓月図(ばいかこうげつず)
8:芙蓉双鶏図(ふようそうけいず)
9:老松白鶏図(ろうしょうはっけいず)
10:老松鸚鵡図(ろうしょうおうむず)
11:芦鵞図(ろがず)
12:南天雄鶏図(なんてんゆうけいず)
13:梅花群鶴図(ばいかぐんかくず)
14:棕櫚雄鶏図(しゅろゆうけいず)
15:蓮池遊魚図(れんちゆうぎょず)
16:桃花小禽図(ばいかしょうきんず)
17:群鶏図(ぐんけいず)
18:老松孔雀図(ろうしょうくじゃくず)
19:老松白鳳図(ろうしょうはくほうず)
20:紫陽花双鶏図(あじさいそうけいず)
21:雪中錦鶏図(せっちゅうきんけいず)
22:薔薇小禽図(ばらしょうきんず)
23:牡丹小禽図(ぼたんしょうきんず)
24:池辺群虫図(ちへんぐんちゅうず)
25:貝甲図(ばいこうず)
26:芦雁図(ろがんず)
27:諸魚図(しょぎょず)
28:群魚図(ぐんぎょず)
29:菊花流水図(きっかりゅうすいず)
30:紅葉小禽図(こうようしょうきんず)
『動植綵絵』伊藤若冲筆 30幅 江戸時代・宝暦7年頃~明和3年頃(1757-66) 三の丸尚蔵館所蔵
■伊藤若冲『老松孔雀図』・・・濃密な空間と生きものの輝き
老いた緑の松と白い孔雀が不思議な対比を生みだす。孔雀は毒蛇をも食する悪食、災いを退ける霊鳥として仏教で尊重される。牡丹は百花の王として富貴の象徴、不老の象徴である松を加え、不老長寿の画面構成。暗い背景から浮き出る孔雀の白い羽は輝き、異様に美しい。富裕な画家、若冲は四十二才、画業三昧に耽り、あり余る財力と時間を使い、絹本に裏彩色、極めて高価な顔料と墨を使って制作した。濃密な写実は、狂気を感じさせる。老松と白い鳥の構図は、老人と美女の構図のようである。
■老いた松と白い鳥
老いた緑の松と白い鳥の構図は、『動植綵絵』に4枚ある。これはみな傑作である。『老松孔雀図』『老松白鳳図』『老松白鶏図』『老松鸚鵡図』。
『老松白鳳図』鳥の目は女の目であり、『動植綵絵』は生きもののエロスを描いている。
写実と幻想の「奇想の画家」伊藤若冲 (一七一六—一八〇〇年)、若冲42才から51才の作。
★「皇室の名宝-日本美の華」1期:永徳、若冲から大観、松園まで。東京国立博物館
1期:2009年10月6日(火)~11月3日(火・祝)
2期:2009年11月12日(木)~11月29日(日)
http://www.tnm.jp/jp/
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2009年10月13日 (火)

ベルギー幻想美術館 クノップフからデルヴォー、マグリットまで・・・金木犀の香る夜

34531072_816840086 嵐の後、晴れた夕方、美術館に行く。10月9日、金曜日の夜はナイトミュージアム。夜、世界がポール・デルヴォーの幻想世界に溶けていく。幻想美術館、素晴らしい。
■幻想美術館、フランドル絵画の奇想の系譜
世紀末の神秘主義的な幻想絵画、象徴主義の絵画、薔薇十字会、二十人会(レ・ヴァン)、シュルレアリスム。
ありえない超現実世界をの系譜を追求した画家たち。リアリズムに反旗を翻して難解な神秘主義を追究した。
幻の女、世紀末の魔性の女、ファム・ファタル(運命の女)。現実の影に潜む美しい女たち。官能的な幻影の情景。優雅にして甘美な女。絵画の中の桃源郷である。
幻想の港町。海の彼方に幻影の国がある。人間は現実だけでは生きられない。
現代画家・榎俊幸は、ベルギー象徴派に似ていると感じていたが、ジャン・デルヴィルに似ている。
■展示作品
ジャン・デルヴィル「レテ河の水をのむダンテ」「茨の冠」「ジャン・デルヴィル夫人の肖像」
レオン・フレデリック「春の寓意」「アッシジの聖フランチェスコ」
ルネ・マグリット「囚われの美女」
ポール・デルヴォー「水のニンフ」「海は近い」「世界の果て」「よそ行きのドレス」「最後の美しい日々」「ささやき」「ヴァナデ女神への廃墟の神殿の建設」
■姫路市立美術館
姫路市立美術館、ベルギー美術コレクションを350点所蔵。恐るべし、姫路市立美術館。
ジャン・デルヴィル、レオン・フレデリック、ルネ・マグリット、ポール・デルヴォーの膨大な作品を所蔵する。
―――――
 19世紀後半から20世紀前半にかけてのベルギーは、本国の何十倍もある植民地からの富が産業革命を加速させ、飛躍的な発展を遂げました。その恩恵は芸術の分野にも及び、多くの優れた画家が輩出し、勢い付いたリベラルな若い実業家たちは新しい芸術を支えました。
 しかしながら皮肉にもその芸術の中身は、発展する近代社会における人間の疎外を背景にしたものでした。ある芸術家は空想の世界に、あるいは黄昏の薄暗がりの中に逃げ場を求め、またあるものは過去の世界に心の平安を見出しました。この時代に最も強いメッセージを放っていたのは、象徴主義、シュルレアリスム、表現主義にまたがるこうした内向的な芸術家たちの作品群、つまり「ベルギー幻想美術」だったのです。
 ここで特徴的なのは、女性の圧倒的な存在感です。多くは優雅な貴婦人として、あるいは世紀末の魔性の女として、ときには中性的な不思議な魅力を持つ少女として描かれる女性たちは、いわば画家自身の分身として、その目で、あるいは体で、何かを訴えかけ、観る者を彼方へと誘っていきます。一連の作品が醸し出す雰囲気が似ているのは、このような背景を共有しているからなのです。
  かくも優れた作品群が日本にまとまって存在していることに敬意を表し、「ベルギー幻想美術館」という名のもとに開催される本展は、ベルギー近代美術の精華を堪能する絶好の機会となることでしょう。
 本展は、油彩・水彩・素描・版画など約150点で構成されます。なかでも、100点に及ぶ版画のコレクションは大変見ごたえがあります。
★「ベルギー幻想美術館 クノップフからデルヴォー、マグリットまで」展、Bunkamuraザ・ミュージアム、9月3日(木)より10月25日(日)まで、姫路市立美術館所蔵ベルギー美術コレクション。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/09_belgium/index.html

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2009年9月21日 (月)

海のエジプト展 海底からよみがえる、古代都市アレクサンドリアの至宝

Egypt_200906278月の午後、横浜に行く。海底に沈んだ3つの古代都市、アレクサンドリア、ヘラクレイオン、カノープス、地中海の海底から発掘された文化遺産の展示である。セラペイオンがある癒やしの都カノープス。ヘラクレス神殿の神々とファラオの都ヘラクレイオン。クレオパトラが愛した都アレクサンドリア。紀元前700年から後800年まで、古代エジプトの末期王朝からプトレマイオス朝、ギリシア、ローマ時代へとつながる1500年間の歴史をたどる。ヘレニズム時代紀元前1世紀から5世紀、アレクサンドリアの展示が中心である。
■アレクサンドリアは、紀元前331年にアレクサンドロス大王によって建設された、プトレマイオス王朝の都。現在エジプト第2の都市である。地中海文化の香りとエジプトの猥雑が混在する都市は、旅人を魅了する。ムーセイオン(大図書館と博物館)、世界の七不思議で有名なパロス灯台が建っていた。ヘレニズム文化の藝術・経済の中心地として名を馳せた。女王クレオパトラの悲劇の舞台として知られる。海洋考古学の調査で、王家の宮殿があったアンティロドス島の位置が確認され、港の全体像が解明された。
■アレクサンドリアの神々
エジプト神話には、父母と子どもの三神体系がある。
プトレマイオス王朝時代、エジプトの神々とギリシアの神々が対応されて、神々の体系が構築された。ファラオは、アメン神、ホルス神と同一視されて権威づけられた。
1)アメン神:テーベの主神(ゼウス)、ムウト神(ヘラ)、コンス神:月の神(アレス)
2)オシリス神:冥界の王(ディオニュソス、バッカス)、イシス神(デーメーテール)、ホルス神:頭部がハヤブサ。幼児期はハルポクラテス(アポロン)。
■展示作品
カノープス
イシス女神像[ローマ支配時代]
セラピス神頭部[プトレマイオス朝、前2世紀]
ファラオ像頭部[第26王朝(サイス朝)、前7~前6世紀]
王妃の像[プトレマイオス朝、前3世紀ごろ]
ヘラクレイオン
ヘラクレイオンもヘラクレス神殿があった場所として文献上に名前の残る都市のひとつ。
ハピ神像[プトレマイオス朝、前4世紀ごろ]
ファラオ像[プトレマイオス朝、前4世紀ごろ]
王妃像[プトレマイオス朝、前4世紀ごろ]
プトレマイオス1世の金貨[プトレマイオス朝、プトレマイオス1世の治世(前305~前283年)]
アレクサンドリア
カエサリオンの頭部[プトレマイオス朝、前1世紀ごろ]
ネメス頭巾を身につける表現が許されたのは王のみ。頭巾の上の蛇の飾りは王を示している。髪型の自然な表情にはギリシアの影響が見られる。女王クレオパトラとカエサルとの間の息子、カエサリオンを表したものと考えられる。
プトレマイオス12世のスフィンクス[プトレマイオス朝、前1世紀ごろ]
プトレマイオス12世は女王クレオパトラの父。スフィンクスの人間の頭は知恵、ライオンの体はファラオの肉体の強さの象徴。ヘレニズム時代にも好んで建立された。
女王クレオパトラの銅貨[プトレマイオス朝、クレオパトラ7世の治世(前51~前30年)]
女王クレオパトラの横顔が刻まれたブロンズのコイン。高貴な身分の証である小さな冠をかぶっている。
★海のエジプト展 海底からよみがえる、古代都市アレクサンドリアの至宝
2009年6月27日(土)~9月23日(水・祝)
パシフィコ横浜 展示ホールD(神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1)

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2009年8月30日 (日)

美しきアジアの玉手箱、シアトル美術館所蔵名品展・・・新古今と琳派の美しき調和

34531072_903346110 『鹿下絵和歌巻』、新古今の世界と琳派の創始者たちの出会いがあり、圧巻の美しさである。
宗達が画いた流麗な鹿と洗練された光悦の筆になる新古今の名歌が生みだす極美の世界。
この美しい絵巻の全貌をみる千歳一遇の機会である。鹿のみを描いた巻物に「新古今集」巻四秋の歌28首を書写した作品。17世紀前半を代表する二人の芸術家による共同作品、また桃山時代の美意識を示す至高の作品。必見。
★『鹿下絵和歌巻』本阿弥光悦書・俵屋宗達画。一巻 紙本金銀墨書 1610年代(桃山-江戸時代)
■本阿弥光悦書・俵屋宗達画による『鹿下絵和歌巻』シアトル本
「1935年に、当時の所蔵者であった三井の益田鈍翁がこの《鹿下絵和歌巻》を半分に切り、後半がシアトルに保存されているのである。前半は国内で更に細かく切られて各所に分散され、中には現在行方不明の部分もある。益田鈍翁は佐竹本《三十六歌仙》を細切れにした張本人でもあるが、数奇者の風上にも置けない不埒な男である。」とToraさんは書いている。日本人コレクターの破廉恥な振る舞いは、国辱である。
展覧会には通期で展示されるシアトル本1巻の他、山種美術館、サントリー美術館、個人蔵、五島美術館、MOA美術館本が展示される。
傷みがはげしかったシアトル本は、2003年から1年かけて東京国立文化財研究所の在外日本古美術品修復協力事業で修復された。全巻の復元は、SeattleArtMuseumによって行われた。下記参照。
★POEM SCROLL with DEER (known as Deer Scroll) was created by two prominent artists: calligrapher Hon’ami Kōetsu and painter Tawaraya Sōtatsu.
http://www.seattleartmuseum.org/exhibit/interactives/deerscroll/sam_deer.htm
書かれている28首の和歌は下記である。
1.西行法師:こころなき身にも哀はしられけり 鴫たつ沢の秋の夕暮(山種)
2.藤原定家:見わたせば花も紅葉もなかりけり 浦のとまやの秋の夕暮(個人) 
3.藤原雅経:たへてやはおもいあり共如何にせむ むぐらの宿の秋の夕暮(サントリー)
4.宮内卿:おもふ事さしてそれとはなき物を 秋のゆうふべを心にぞとふ(五島)
5.鴨長明:秋かぜのいたりいたらね袖はあらじ 唯我からの露のゆふぐれ(MOA)
6.西行法師:覚束な秋はいかなるゆへのあれば すずろに物の悲しかるらん(サンリツ服部)
7.式子内親王: それながらむかしにもあらぬ秋風に いとゞ詠(ながめ)を賤(しづ)のをだまき(MOA)
8.藤原長能:日暮(ひぐらし)の鳴く夕暮ぞうかりける いつも尽きせぬおもひなれ共(MOA)
9.和泉式部:秋来ればときはの山のまつかぜも うつる斗(ばかり)に身にぞしみける(MOA)
10.曾禰好忠:あきかぜのよそに吹きくるをとは山 何のくさきかのどけかるべき(MOA)
11.相模:暁の露はなみだもとゞまらで うらむるかぜの声ぞのこれる(MOA)
12.藤原基俊:たかまどのゝぢのしのはらすゑさはぎ そゝや木枯け吹きぬ也(MOA)
13.右衛門督通具:深草の里の月影さびしさも すみこしまゝの野辺の秋かぜ(所蔵者不明)
14.皇太后宮太夫俊成女:おほあらきのもりの木の間をもりかねて 人だのめなる秋の夜の月(MOA)
15.藤原家隆朝臣:有明の月待宿の袖の上に 人だのめなるよゐの稲妻(MOA)
16.藤原有家:かぜ渡るあさぢがすゑの露にだに やどりもはてぬよゐのいなづま(個人蔵)
17.左衛門督通光:むさし野や行共(ゆけども)秋のはてぞなき 如何成(いかなる)風の末に吹らむ(シアトル)
18.前大僧正慈円:いつまでか涙曇らで月は見し 秋まちえても秋ぞ恋しき(シアトル)
19.式子内親王:ながめわびぬ秋より外の宿もがな 野にも山にも月やすむらむ(シアトル)
20.円融院 御歌:月影は初秋風と更行(ふけゆけ)ば 心づくしに物をこそおもへ(シアトル)
21.三条院 御歌:あしびきの山のあなたにすむ人は またでや秋の月をみるらむ(シアトル)
22.堀河院 御歌:しきしまやたかまど山の雲間より ひかりさしそふ弓張の月(シアトル)
23.堀河右大臣:人よりも心の限詠(ながめ)つる 月は誰共わかじ物故(シアトル)
24.橘為仲朝臣:あやなくてくもらぬよひをいとふ哉 しのぶの里の秋の夜の月(シアトル)
25.法性寺前関白太政大臣:風吹ばたまちるはぎのしたつゆに はかなくやどる野辺の月哉(シアトル)
26.従三位頼政:今宵だれすゞふく風を身にしめて よし野たけの月を見るらむ(シアトル)
27.大宰大弐重家:月みればおもひぞあへぬ山高み いずれの年の雪にか有乱(シアトル)
28.藤原家隆朝臣:にほの海や月の光のうつろへば 波の華にも秋は見えけり(シアトル)Art & Bell by Tora、参照。
■展示作品 とくに素晴らしい逸品
烏図、六曲一双、江戸時代、17世紀前半
山水図、尾形光琳、二曲一双、江戸時代、18世紀初期
山水図、紀楳亭、二曲一双、江戸時代、1780年代
浦島蒔絵手箱 鎌倉時代 14世紀
玳玻天目茶碗 吉州窯 南宋時代 十三世紀

葛飾北斎、五美人図、1804-18
墨梅図、楊煇筆、一幅、中国 元時代 14世紀後半
インドラ坐像、一軀、ネパール、マッラ王朝、13世紀頃、シアトル美術館蔵
インドラ坐像は、帝釈天の神秘と艶麗な容姿とが一体となって美しく、素晴らしい。
――――――――――
1933年、アメリカ西海岸の湾岸都市シアトルに設立されたシアトル美術館。同館が長い歴史の中で育んだ7,000件におよぶ日本・東洋美術コレクションから、鎌倉時代の名宝「浦島蒔絵手箱」、シアトル美術館を代表する江戸時代初期の屏風「烏図」をはじめ、時代もジャンルも多岐にわたる選りすぐりの名品約100件を一堂に公開します。
同館のコレクションがアメリカ国外でまとまったかたちで公開されるのは世界で初めて。
★美しきアジアの玉手箱、シアトル美術館所蔵 日本・東洋美術館名品展
サントリー美術館、7月25日(土)~9月6日(日)
神戸市立博物館2009年9月19日-12月6日
山梨県立美術館2009年12月23日-2010年2月28日
MOA美術館2010年3月13日-5月9日
福岡市美術館2010年5月23日-7月19日
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/09vol04/index.html

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2009年8月25日 (火)

「フラミンゴに隠された地球の秘密」・・・死の湖と深紅の翼

Flamingo01 熱い夏の夕方、六本木、ウォルト・ディズニー試写室、試写会に行く。鳥類学者、柿澤亮三教授の講義つきである。
2000万年前から、150万羽の深紅の翼をもつフラミンゴが、死の湖ナトロン湖への飛来をつづけている。湖の植物藍藻類を食糧とし、子孫を生み育てるために。フラミンゴは40年生きる。40年の生涯に1羽の子を育てると種と数を維持できる。羽化したほとんどの若鶏は死ぬ。フラミンゴの一族の親たちが子を敵から守り湖をわたり必死に生き抜く姿。フラミンゴ(Flamingo)はラテン語で炎を意味するflammaに由来している。Phoenicopterus属、学名は不死鳥に由来する。
名作『砂漠は生きている』The Living Desert(1953)を生み出したディズニーの自然ドキュメンタリー専門レーベル、ディズニー・ネイチャー第1弾。
「フラミンゴに隠された地球の秘密」
原題:The Crimson Wing: Mystery of the Flamingos 2008
―――――――――
「炎の湖」ナトロンと、深紅の翼を持つ神秘の鳥フラミンゴが紡ぎだす、奇跡のドラマ。アフリカ・タンザニア北部のナトロン湖、想像を絶するほどドラマティックに姿を変えるこの湖は、水中の微生物が繁殖する頃、真っ赤な炎の湖と化す。乾季には湖が干上がり、雨季にはまた湖は再生する。その湖水は毒性の強いソーダ塩のため、ほとんどの生物は生きることができない。この死の湖で生命を育む奇跡の野生生物がいる。雨季に毎年飛来する、150万羽のフラミンゴたちである。彼らは突如としてこの湖を覆い尽くし、やがて魔法のように忽然と姿を消す。
監督:マシュー・エバーハード、リーンダー・ワード
2009年8月28日(金)公開

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2009年8月18日 (火)

トリノ・エジプト展 イタリアが愛した美の遺産・・・夏の夜の森

34531072_726824477 8月7日、蝉しぐれのなか、夕暮れの木漏れ日の森を歩いて、美術館に行く。
オシリス神話、ライオン頭のセクメト女神、アメン神とラー、アクエンアテンとトゥタンカーメン、三つの物語と古代の宗教改革の歴史が蘇ってくる。ほとんどすべてが墓と聖域の副葬品である。死者のためにささげられた美術である。美術監督ダンテ・フェレッティによる大型彫像の並ぶ彫像ギャラリーが素晴らしい。
■展示作品
「プタハ神座像」新王国時代、第18王朝、アメンヘテブ3世治世(前1388~前1351年頃)
「ライオン頭のセクメト女神座像」新王国時代、第18王朝、アメンヘテプ3世治世(前1388~前1351年頃)閃緑岩 テーベ、アメンヘテプ3世葬祭殿出土
「オシリス神をかたどった王の巨像頭部」新王国時代、第18王朝、トトメス1世治世(前1504~前1492年頃)砂岩、彩色 カルナク出土
高さ:149cm、幅:48cm、奥行:60cm
「イビの石製人型棺の蓋」末期王朝時代、第26王朝、プサメティク1世治世(前664~前610年頃)変成硬砂岩 テーベ西岸、アサシーフ地区出土
「コンスのピラミディオン」新王国時代、第18~20王朝(前1550~前1070年頃)
パピルスに書かれた「死者の書」プトレマイオス時代~ローマ支配時代(前332~後395年)
「アメン神とツタンカーメン王の像」新王国、第18王朝時代、ツタンカーメン王~ホルエムへプ王治世(前1333-前1292年頃)石灰岩、テーベ出土
「アメン・ラー神に牡羊の頭部を捧げるペンシェナブの像」新王国時代、第19王朝(前1292~前1186年頃)石灰岩、彩色 テーベ出土
■展覧会構成
第1章 トリノ・エジプト博物館
第2章 彫像ギャラリー
第3章 祈りの軌跡
第4章 死者の旅立ち
第5章 再生への扉
観終わってロビーに向かうと烈しい雷と豪雨、ロビーで雨宿りする。
夏の夜の森を歩いて、西洋美術館に行く。
■「かたちは、うつる―国立西洋美術館所蔵版画展」国立西洋美術館、
デューラー「メランコリア」、ピラネージ「パエストゥムのポセイドン神殿」、クロード・ロラン「フォロ・ロマーノ」、ヘンリク・ホルツィウス「ベルベデーレのアポロン」、ウィリアム・ブレイク「サタンの墜落」。西洋絵画は「うつす」ことを目的としていることを示す展示。イタリアの思い出が蘇る。
工事が終了して再開館した常設展に行く。夜の美術館は静寂に包まれる。
■蘇った「常設展」国立西洋美術館
ヴァザーリ、カルロ・ドルチ、クロード・ロラン、ロセッティにいつものように会いに行く。
――――――――――
近代イタリア統一後の最初の首都となり、冬季オリンピックの開催でも知られるイタリア北西部の都市トリノ。ここに、ロンドンの大英博物館やパリのルーヴル美術館などと比肩する世界屈指のエジプトコレクションが存在します。
トリノ・エジプト博物館は19世紀、ナポレオンのエジプト遠征に従軍し、フランスのアレクサンドリア総領事となったエジプト学者ベルナルド・ドロヴェッティの収集品を中心に創設されました。本展では、同博物館のコレクションから、大型彫像やミイラ、パピルス文書など代表作品約120点を選りすぐり、日本で初めて公開します。
★「トリノ・エジプト展 イタリアが愛した美の遺産」東京都美術館(2009年8月1日~10月4日まで)
http://www.torino-egypt.com/
★国立西洋美術館「かたちは、うつる―国立西洋美術館所蔵版画展」(2009年7月7日~8月16日)、★国立西洋美術館常設展(6月4日~8月30日(日)、★藝大美術館の「コレクションの誕生、成長、変容―藝大美術館所蔵品選―」(8月16日まで)、★国立科学博物館「シカン展」(10月12日まで)、

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2009年7月31日 (金)

村上華岳「裸婦図」・・・崇高なヌード

2009 霊と肉の調和
「肉であると同時に霊でもあるものの美しさ」である。肉体と精神性、妖艶と聖性、官能美と知性の覚醒の境地という相反する要素、対立する要素の不思議な調和がある。
幽玄な森を背景に、一人の薄絹をまとった女。女性は耳飾、胸飾、首飾、臂釧、腕釧などの装身具を身につけていて、印度の仏像彫刻のようである。豊麗な体は、透明な衣の繊細にして強い描線で縁取られている。
■美の根源のエロス
女は艶麗でありかつ、清純な姿である。たたたずまいに立ち上る仄かな色香。肌理細やかな肌に、幽かな朱色。艶然として仏像のようなまなざし。美の根源にはエロスがある。
縦163 cm、横109 cm、現身の等身大の作品である。
近代日本画を作り上げた画家、村上華岳1888-1939(明治21-昭和14)。51才で亡くなった画家、32才の作品。
村上華岳「裸婦図」1920(大正9)第3回国画創作協会展、絹本・彩色・額(1面)163.6×109.1cm
山種美術館所蔵、「上村松園、美人画の粋」山種美術館にて、7月26日。

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2009年7月27日 (月)

上村松園、美人画の粋・・・緑陰の午後

20090726_2 蝉しぐれの午後、イタリア糸杉が佇む千鳥ヶ淵公園を歩いて、美術館に行く。夏の日盛り、千鳥ヶ淵の緑陰、木漏れ日が眩しい。山種美術館閉館日である。
上村松園「春のよそをひ」1936「つれづれ」1941「春芳」「牡丹雪」他。女性の品は、目、口元、手に現れる。松園は女性の気品が漂う美しさを目ざした。
最後の展示室に飾られている一枚の絵に惹きつけられた。過去に何度もみた絵だが、強く魅かれる。村上華岳「裸婦図」1920、真夏の生命の季節のなかで鈍色に輝いている。「肉であると同時に霊でもあるものの美しさ」(華岳『画論』)がある。
【作品リスト】
1:鈴木春信「梅の枝折り」
2:鈴木春信「柿の実とり」
3:鳥居清長「当世遊里美人合 橘妓と若衆」
4:鳥居清長「風俗東之錦 大名と若殿と乳母、侍女と若衆」
5:鳥居清長「社頭の見合」
6:喜多川歌麿「青楼七小町 鶴屋内 篠原」
7:喜多川歌麿「美人五面相 う満相」
8:武内桂舟「秋草『文藝倶楽部』」
9:水野年方「号外(口絵木版)」
10:寺崎廣業「花見『文藝倶楽部』」
11:和田英作「黄衣の少女」
12:上村松園「蛍」
13:上村松園「桜可里」
14:上村松園「新蛍」
15:上村松園「盆踊り」
16:上村松園「タベ」
17:上村松園「春のよそをひ」
18:上村松園「苫」
19:上村松園「春芳」
20:上村松園「春風」
21:上村松園「折鶴」
22:上村松園「つれづれ」
23:上村松園「詠哥」
24:上村松園「娘」
25:上村松園「夏美人」
26:上村松園「牡丹雪」
27:上村松園「庭の雪」
28:上村松園「杜鵑を聴く」
29上村松園「夕照」
30:尾竹竹坡「リボン(口絵木版)」
31:鏑木清方「小杉天外『魔風恋風』」
32:鏑木清方「伽羅」
33:今村紫紅「大原の奥」
34:池田輝方「夕立」
35:小林古径「河風」
36:土田麦僊「舞妓」
37:村上華岳「裸婦図」
38:奥村土牛「舞妓」
39:奥村土牛「舞妓(スケッチ)」
40:奥村土牛「舞妓(スケッチ)」
41:小倉遊亀「舞う(舞妓)」
42:小倉遊亀「舞う(芸者)」
43:林武「少女」
44:山川秀峰「芸者の図」
45:伊東深水「紅葉美人」
46:伊東深水「雪中美人」
47:伊東深水「春」
48:伊東深水「婦人像」
49:伊東深水「吉野太夫」
50:小早川清「美人詠歌図」
51:橋本明治「秋意」
52:杉山寧「少女Y(スケッチ)」
53:石本正「のれん」
54:石本正「舞妓座像」
55:三輪良平「舞妓」
56:平山郁夫「トルコ・ベリシラマ村の女」
57:平山郁夫「トルコ・ベリシラマ村の女」
58:青山亘幹「舞妓四題のうち11月」
59:青山亘幹「舞妓四題のうち 正月」
★「没後60年記念 上村松園、美人画の粋」山種美術館
2009年5月23日(土)~7月26日(日)

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