『鳥獣戯画絵巻』の謎【3】 失われた甲巻
『鳥獣戯画絵巻』で最も魅力的なのは甲巻である。
平安時代末期、巷の喧騒が聞こえてくる。競技にうち興じる人々、酒を楽しむ人々。
水泳競技。兎組と蛙組の弓の腕比べ。宴会のために酒を運ぶ兎と蛙。兎と猿の追いかけっこ。兎と蛙の相撲。蛙の田楽。双六盤を持つ猿。法会のために仏壇になる蛙。猿の僧正に貢物をする兎。
兎が蛙を投げ飛ばした様子を小さな鼠が兎の影から覗き込む、強い者にすがる弱者の姿。蛙が兎を投げ飛ばす場面、小さい者が大きい者に勝つ蛙の勝利の雄たけびが聞こえてくる。権力を揮った僧侶たちに対する皮肉。
絵師は、都の喧騒のなかで、つかの間の楽しみを楽しむ人々の歓びと、権力を貪る階級を批判的な精神をもって画いた。
神護寺と高山寺は、天文十六年(1547年)閏七月五日、細川晴元と六角定頼の援軍が細川国慶を攻略した時、晴元によって火を放たれた。この時、高山寺の金堂は焼け落ちた。そして絵巻は焼け、残巻がつなぎ合わされた。
| 固定リンク
「美術館」カテゴリの記事
- プーシキン美術館展 フランス絵画300年・・・詩人に霊感を与えるミューズ(2013.08.23)
- 「木村伊兵衛とアンリ・カルティエ=ブレッソン」・・・人と時間と空間の出会い(2010.01.26)
- 印象派、ポスト印象派、オンパレード 2010(2010.01.12)
- 海のエジプト展 海底からよみがえる、古代都市アレクサンドリアの至宝(2009.09.21)
- 「三瀬夏之介展~冬の夏~」佐藤美術館・・・現代の奇想派(2009.02.03)


コメント