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2007年12月12日 (水)

『鳥獣戯画絵巻』の謎【3】 失われた甲巻

 『鳥獣戯画絵巻』で最も魅力的なのは甲巻である。
 平安時代末期、巷の喧騒が聞こえてくる。競技にうち興じる人々、酒を楽しむ人々。
 水泳競技。兎組と蛙組の弓の腕比べ。宴会のために酒を運ぶ兎と蛙。兎と猿の追いかけっこ。兎と蛙の相撲。蛙の田楽。双六盤を持つ猿。法会のために仏壇になる蛙。猿の僧正に貢物をする兎。
 兎が蛙を投げ飛ばした様子を小さな鼠が兎の影から覗き込む、強い者にすがる弱者の姿。蛙が兎を投げ飛ばす場面、小さい者が大きい者に勝つ蛙の勝利の雄たけびが聞こえてくる。権力を揮った僧侶たちに対する皮肉。

 絵師は、都の喧騒のなかで、つかの間の楽しみを楽しむ人々の歓びと、権力を貪る階級を批判的な精神をもって画いた。

 神護寺と高山寺は、天文十六年(1547年)閏七月五日、細川晴元と六角定頼の援軍が細川国慶を攻略した時、晴元によって火を放たれた。この時、高山寺の金堂は焼け落ちた。そして絵巻は焼け、残巻がつなぎ合わされた。

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