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2007年12月10日 (月)

『鳥獣戯画絵巻』の謎【2】 線の美

数年前、『鳥獣戯画絵巻』をはじめて見たとき、驚嘆し、線の凄絶さに圧倒され、線の美しさに魅了された。東京国立博物館国宝室にて、見る者は私一人。感想を伝える相手もいない。森閑と静まり返った博物館で、一人みる八百年前の絵巻。
 迷いなく滞りなく、大らかで、軽妙洒脱、線の奇跡!である。
 書の名人、空海でさえ書の書き直しをしているのに、書き直しがない。即興の一筆が、完璧な美を湛えている。
 一筆一筆が、完璧。兎、蛙、狐、動物の一匹一匹が美しくデザインされている。しかも躍動している。驚くべき名人藝。巨匠の技。
 これに匹敵する技は、北斎しかいない。
 「鳥獣戯画」は、名人と呼ばれる絵師たちを虜にした。狩野探幽も模写している。
 躍動する線、美しい線、完璧な迷いなき線は、どこから生まれたのか。だれによって画かれたのか。宮廷絵師、密教仏絵師、二説あるが、結論はない。
 みごとな迷いない一筆、一筆は、長年にわたる修業を経た名人の手になることを疑わせない。
 あなたは、この『鳥獣戯画絵巻』が伝えられた寺院に行ったことがありますか。
 その寺院は人跡を離れた、鬱蒼たる森の中にある。こんな所に何故このような絵巻があったのか。

 私は『空海全集』を愛読しており、十数年前の夏、一人で『空海の足跡を辿る旅』に出た。この時、紅葉の名所として知られる高雄山神護寺、槙尾山西明寺、栂尾山高山寺をおとずれた。空海とその弟子にゆかりのある寺である。

 藝術は、保管された場所、生みだされた地に佇み、その空間を経験するとその文明の意味がわかる。たとえば、アクロポリスの丘、バティカン宮殿。生きるとは何か。美とは何か。人間のいのちを超えて、千古の時の闇の彼方から伝えられるメッセージがある。

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