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2008年1月17日 (木)

『松井冬子/Narcissus展』・・・美人画家によってえがかれる美しき禍い

画廊の内部は、香が焚き染められている。寺院のような匂いがする。カサブランカの花を入れた大きな花瓶が二つ置かれていて、百合の花弁から濃厚な香りが漂っている。
奥の窓辺の事務室に留守番の女性が一人いる。パソコンが2台置かれているが壁紙は2台ともホラーで、リドリー・スコット『エイリアン』のH.R.ギガーのような絵である。
■『Narcissus』2007
入口附近に『Narcissus』が掛けられている。掛け軸。絹本着色。
原画を5点展示。すべて絹本着色。
『Narcissus』 作者自身が「自分自身で狂っていく花」と書いている。死んだ植物の霊を描いた絵のようである。
彼女の絵には、<凄み>がある。卓越した技術と思考に磨かれた<凄み>がある。
美しいものは儚く命みじかい。醜悪なものが逞しく根強く生き残る現実を、見せつけられる日々である。それに対してこれは何なのか。
一点だけ額装された風景画がある。『絶え間なく断片の衝突は失敗する』青木ヶ原の樹海である。
幽霊図のほかに解剖図があり、画題の特徴は相変わらず一貫している。
■美について
たとえば、松井冬子は美人だといわれているが、美人と思うか否かはあなた次第である。
美については、
「美の統一的基準はない。美の究極的な定義は存在しない。」★レオナルドの美学の原則1
これは当たり前のことだが、意外に人は同意しないことが多い。
『終極にある異体の散在』 鳥獣に襲われ、皮がはがれていく女の姿。
美女は、ひと皮むけば、化けものである。Beauty is but a skin deep.「美しさはほんの皮一重に過ぎない」という言葉がある。
松井冬子の絵は日本画のホラーである。松井冬子の絵に対して人の好みは、好悪愛憎が分かれるだろう。毀誉褒貶、相半ばすると思われる。
美しいものには、相反するものの様々な一致が含まれている。しかし、描かれている対象は、美というよりは、別の何かである。美でもなく醜でもなく、魔であり、霊的存在である。
レオナルド・ダ・ヴィンチにもこの系列の絵画がある。
私は古今東西の古典を研究してきたので、松井冬子の絵は好きである。松井冬子には、古典主義がある。
■松井冬子、および彼女の絵
つぎの頁で見ることができます。
http://www.gei-shin.co.jp/comunity/04/14.html
http://www.gallery-naruyama.com/exibition/matsui.html
http://www.gallery-naruyama.com/exhibition.html
―――――――
「松井冬子/Narcissus展」、成山画廊(会期12月15日~08年2月23日)
東京都千代田区九段南2-2-8 松岡九段ビルディング205
03-3264-4871
山本冬彦さんからメールで電話予約してから行ったほうがいいという事で、予約して行く。
成山画廊は、松岡九段ビル2階にある。九段坂上・千鳥ケ淵公園の入口角にある。このビルは松岡美術館の松岡地所が所有している。
松岡九段ビル、壁に穴があいているような入口から2階に行く。この建築自体が約80年前の建築で研究対象となっている。*1
*1松葉館という名前の旅館として1929・昭和4年に建てられ、戦後に現在のオーナーである松岡地所がオフィスビルに改修した。日比谷の三信ビルと同じ時期の横河工務店の設計である。
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コメント

こんばんは!
ご挨拶が遅れてしまってすみません。
新年明けましておめでとうございます!

今年も先生のブログ更新を楽しみにしています^u^*
そして今年は先生と一緒に美術展に行ってみたいです!!!

松井冬子さんと言う方は聞いたことがありませんでした。
先生の文を読んで 少し興味がわきました
調べてみたいと思います!

悪魔の理髪師 始まりましたね!
学校も週1登校なので たくさん時間があります。見に行きたいと思ってます!

投稿: ひろ | 2008年1月19日 (土) 21時49分

ひろさま
新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくおねがします。
今年はよいことがありますように。
『美術手帖』2008年1月号「松井冬子 絵画に描かれた痛みと贖罪」、ご覧下さい。
美大生として、ご活躍ください。
では、また。

投稿: leonardo | 2008年1月20日 (日) 15時04分

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