ルネサンス絵画は、イタリア国外持ち出し禁止・・・その理由は?
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
ヴィーナスの魅惑のまなざし、艶かしい姿態、艶麗な容姿、憂いを含む瞳。ヴィーナスは、世界中の憧れの的である。
20年ほど前、『朝日新聞』で読んだ記事によると、ボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』はアメリカに貸し出された。ところが第2次世界大戦が勃発。大西洋、地中海を船または飛行機で渡ると爆撃に遭う。『ヴィーナスの誕生』は帰国できなくなった。『ヴィーナスの誕生』は、アメリカ中の各地の美術館を巡回した。
イタリア共和国は、これに懲りて、ルネサンス絵画は国外持ち出し禁止の法律を作った。ルネサンス絵画は、雪舟の国宝のようなものであり、これを海外の美術館で展示するのは確かに問題である。雪舟の時代は15世紀ルネサンスと同時代である。世界中の美術館がイタリア・ルネサンスの絵画を欲しがっている。
■ルネサンス絵画、なぜ日本にくるのか。
国外持ち出し禁止なのに、日本にはイタリアから、ルネサンス絵画が、沢山くる。
レオナルド・ダ・ヴィンチ『受胎告知』2007、『聖ヒエロニムス』(ヴァティカン)1993、
ラファエロ『ヴェールの女』2000、
ボッティチェリ『受胎告知』2000、
パルミジャニーノ『聖カタリナの神秘の結婚』2007
ティツィアーノ『ウルビーノのヴィーナス』2008
2007年、レオナルド『受胎告知』が日本にくるときはイタリアで反対運動が起きた。映画監督フランコ・ゼフィレッリ(Franco Zeffirelli, 1923~)は反対運動の先頭に立った。フランコ・ゼフィレッリは『ロミオとジュリエット』『ラ・トラヴィアータ 椿姫』『ブラザー・サン シスター・ムーン』の巨匠である。ルネサンス絵画が、イタリアから日本にくるのは、法律の例外的措置である。
フィレンツェ、ヴェネツィア、すべてのイタリアの街にはブランド通りがある。ブランド通りで最もよく買う客は日本人観光客である。
私の先輩、秋元征紘氏はLVMHグループの高級香水ブランドGUERLAINの日本支社社長である。彼はパリで開かれるLVMHグループの国際会議に出席して経営報告書をみるが、日本支社の売り上げは、世界的にみても大きい。
■経済大国日本の没落 最後のきらめきか
私がイタリア、地中海によく旅した時、日本は1人当たりGDP世界第2位(1993年)の経済大国であった。
いま、日本は1人当たりGDP世界第18位、沈みゆく経済国家。(cf.『国民経済計算』2006年度)「国際貿易投資研究所」http://www.iti.or.jp/stat/4-004.pdf
今年は、ティツィアーノ『ウルビーノのヴィーナス』がくる。2009年、またルネサンス絵画がイタリアから日本にくる。
だが、沈みゆく経済大国日本の没落とともに、ルネサンス絵画はこなくなる。沈みゆく経済国家日本、最後のきらめきか。
ティツィアーノ『ウルビーノのヴィーナス』、是非、ご覧ください。
★『ウルビーノのヴィーナス 古代からルネサンス、美の女神の系譜』国立西洋美術館、2008年3月4日~5月18日
ウフィッツィ美術館が世界に誇る至宝の一つ、ティツィアーノ「ウルビーノのヴィーナス」。
ヴィーナスの艶かしい姿態、魅惑のまなざしに酔いしれる。ウフィッツィ美術館で見ると、淡い光の中で乾いていて、色彩が感じられない気がする。イタリアで見たときより、艶やかに見えるのか。
https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/past/2008_211.html
http://www.venus2008.jp/
★あなたの好きなルネサンスの藝術家はだれですか?好きな作品は?
[*レオナルド「最後の晩餐」、ボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」「春」、ラファエロ「小椅子の聖母」、他]
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