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2008年6月

2008年6月30日 (月)

『僕の彼女はサイボーグ』・・・未来からやってきて、あなたの命を守る者。若くて美しい贈り物

329807_02_01_02 『ナルニア国物語:カスピアン王子の角笛』を見た時、この映画の予告編をみて見に行く。
「だれも祝う者のいない誕生日、一人で自分の誕生日を祝うレストラン」、「人のいない屋上で見る夜景」、「老婆が子どもを迎えに来る路」、「瀕死の彼女が主人公を救う場面」、「瀕死の身体不自由な富裕老人と、貧しく孤独な若者」、印象的な場面が鏤められていて、心に残る。
■生命と生きる価値とのディレンマ
富裕だが老いて身体の不自由な老人が、若くて貧しい自分を守るために、時間をさかのぼって、サイボーグを送り込む。若き日の自分への贈り物として。若くて美しい女性である。
ここには、生命と価値との二律背反(アンティノミー)がある。
手塚治虫はディレンマが好きだった。『ネオ・ファウスト』『ガラスの地球を救え』に書いている。
生命と生きる価値とのディレンマである。
生きる価値があるが生命はもはやないという人生と、生命はあるが生きる意味がないという人生とどちらを選ぶだろうか?
★たとえば、富裕で権力をもち何でもできるが身体不自由な老人と、若く才能はあるが金も権力も地位もない貧しい若者、どちらをあなたは選ぶだろうか。
この場合は、多くの人は貧しい若者を選ぶだろう。
■『僕の彼女はサイボーグ』
20歳の誕生日をたった一人で過ごす大学生のジロー。そんな彼の前に突然現われた一人の美女。予測不能の言動でジローを振り回し、あっという間にいなくなってしまった彼女。それはジローの心に深く刻まれる輝かしくかけがえのない数時間となる。それから1年後、21歳の誕生日に再び「彼女」が現われる。しかし、1年前に一目惚れした彼女とそっくりではあったが、違和感を覚える。なぜならそれは、今度の彼女は未来の自分が現在の自分を守るために送り込んだサイボーグだった。未来のジローが自分を悲惨な運命から守るために2008年の現代に送り込んだ。『ターミネーター2』のリメイクである。
「あなたと過ごした大切な一日。
私は、何度生まれ変わってもあなたに恋をするよ。」
監督・脚本 : クァク・ジェヨン
主演 : 綾瀬はるか
主題歌: MISIA 『約束の翼』
http://cyborg.gyao.jp/
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=329807
予告編
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD12310/
★あなたは、生きる価値があるが生命はもはやないという人生と、生命はあるが生きる意味がないという人生と、どちらを選びますか?
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2008年6月28日 (土)

「対決 巨匠たちの日本美術」東京国立博物館・・・時代を超えた24人の巨匠たち、藝術の饗宴

Sesshushuutoutou 日本美術史に燦然と輝く傑作の数々。時代を代表する絵師や仏師たちは、師匠や先人の作品に学び、競争相手として競い合って、名作を生み出してきた。優れた藝術家たちの傑作を比較すると、深い対照の妙を見出すことができる。時代を超えた24人の巨匠たちの藝術の饗宴である。史上空前、絶後、比類ない美術展。必見!是非、ご覧下さい。
■24人の巨匠たち
運慶 vs 快慶  人に象る仏の性
雪舟 vs 雪村  画趣に秘める禅境
永徳 vs 等伯  墨と彩の気韻生動
長次郎 vs 光悦 楽碗に競う わび数寄の美
宗達 vs 光琳  画想無碍・画才無尽
応挙 vs 芦雪  写生の静・奇想の動
仁清 vs 乾山  彩雅陶から書画陶へ
円空 vs 木喰  仏縁世に満ちみつ
若冲 vs 蕭白  画人・画狂・画仙・画魔
大雅 vs 蕪村  詩は画の心・画は句の姿
歌麿 vs 写楽  憂き世を浮き世に化粧して
鉄斎 vs 大観  温故創新の双巨峰
■「対決 巨匠たちの日本美術」東京国立博物館
創刊記念『國華』120周年・朝日新聞130周年
2008年7月8日(火)~8月17日(日)http://www.asahi.com/kokka/

展示品リスト
http://www.tnm.go.jp/jp/exhibition/special/200807kokka_list.html
★あなたの好きな日本の巨匠はだれですか?

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2008年6月 8日 (日)

「岡鹿之助展」ブリヂストン美術館・・・昼餐の対話、海と廃墟と古城

Oka2008
1951
1948
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
6月某日、梅雨晴れのある日、美術倶楽部の菱川愛さんが、湘南からお見えになるので、午後3時から、渋谷のレストランつばめグリルにて、彼女と赤ワインを飲みながら昼餐を食した。赤ワインはガスコーニュ。仕事と論文のことなど語り合う。わたしの専攻は、存在論(ontology)、美の形而上学(metaphysics of beauty)、プラトン哲学、哲学史、美術評論、権力の歴史、地中海文明の歴史、地中海の美術史(Art history of the Mediterrabean)、等である。彼女の大学での専攻はフランス語で、サン・テグ・ジュペリのことなど話した。「人が本当に見ることができるのは心によってだけである。大切なものは、目で見えない」『星の王子さま』 。「愛とは、互いに見つめ合うことではなく、二人が同じ方向を見つめることである」『人間の大地』 。など、とめどなく語り合う。
―――
日本の教育の現状は悲惨である。人文科学 (哲学・文学・歴史) 教育は崩壊した。プラトン哲学は、対話の形で書かれており、それはあらゆる学問の基本構造を構築している。レオナルドとミケランジェロとラファエッロ、ルネサンスの三大藝術家は、不運な人生を生きた。印度ヨーロッパ語族の古代言語がわからなければ、近代西洋語の言葉の真の意味はわからない。日本社会は、河合隼雄「母性社会日本の病理」、斎藤由香「シリーズ・オヤジ被害」「シリーズ・女の敵は女」が描くような世界である。激しい競争社会の中で、知性のない管理職が知識人を虐げ、組織と国家は滅亡に向かいつつある。上智と下愚は移らず。『論語』。聖なる弑逆が行われ、正義が実現されることを、天に祈る。 
その他、話題の内容は省略する。
―――
■岡鹿之助 ・・・海と廃墟と古城
夕刻、一緒に美術館に向かう。
「薬師寺展」にもう一度見に行くことを考えたが、「岡鹿之助展」ブリヂストン美術館に行く。美しい館内に人の気配はなく、静かな時間と空間を楽しむことができた。
海と廃墟と古城と献花を描いた画家である。
静謐な空間、黄昏の色調を帯びた建築、郷愁を感じさせる世界、美しい画面が心を捉えて離さない。
「献花」は、すべて亡くなった人に捧げられた絵画である。
彼の絵は、今はなくなった世界に捧げられた絵画であるように思われてならない。
岡鹿之助の世界は「失われた世界に捧げられた供物」である。
緻密な点描画は、記憶の果てに降り積もる、記憶の粉雪のようである。
展覧会は9つのテーマで、9つの部屋に展示されている。
1章:海
2章:堀割
3章:献花
4章:雪
5章:燈台
6章:発電所
7章:群落と廃墟
8章:城館と礼拝堂
9章:融合
「今日の入館者は77人」と書かれていたと彼女が教えてくれた。美術館を出た後、東京駅八重洲口13階にある「XEX TOKYO」にて、愛さんはドライ・マティーニ、わたしはストロベリー・バジル・マティーニを飲み、東京駅の広大な夜景を見下ろしながら、深更まで語り合い、東京駅で別れた。
■ジョルジュ・スーラ
点描画の祖は、ジョルジュ・スーラ(1859-1891)。岡鹿之助は、ジョルジュ・スーラ『グランド・ジャット島の日曜日の午後』(1884-1886)の筆触分割の手法とどのようにかかわるのか。岡鹿之助の世界はジョルジュ・スーラ『サーカスの客寄せ』(1887-1888)にどこか似ている。
ジョルジュ・スーラの光彩主義は、印象主義に危機をもたらし、モネを追い詰めた。
■「岡鹿之助展」
初期から晩年までの代表作品70点で構成する10年ぶりの大回顧展。
岡鹿之助は劇評家で劇作家でもあった岡鬼太郎の息子である。
2008年4月26日(土)―7月6日(日)
ブリヂストン美術館
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/exhibit/index.php?id=71
http://www.bijutsukann.com/toku/bri_oka/oka_shikanosuke.html
Oka4_3 Oka3_2

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