「対決 巨匠たちの日本美術」東京国立博物館(1)・・・雪舟の残照の下に
7月14日休館日、特別入館した。
対決という趣向だが、巨匠たちの勝負に囚われずに、日本文化史を彩る名作を人のいない博物館でみる。雪舟、永徳、日本文化を作った二大巨匠の絵画を同一の空間で眺めることができるのは稀有な体験である。人のいない博物館で雪舟と永徳をみる時、歴史の彼方から人の息づかいが蘇ってくる。曇りない眼で、藝術そのものが語る真実をみることが大切である。この展覧会で、雪舟と対決させられているのは雪村であるが、雪舟と永徳の対比のほうが重要であろう。
雪舟の幽玄に対して永徳の派手という印象は、実物を眼にすると感じない。雪舟と永徳を比べてみると、類似している要素を感じるのは私だけだろうか。
雪舟『慧可断臂図』(国宝1496年、斉年寺)
雪舟『四季花鳥図屏風』(京都国立博物館)
雪舟『秋冬山水図』(国宝 東京国立博物館)
狩野永徳『聚光院障壁画』(国宝 京都、聚光院)
狩野永徳『檜図屏風』(国宝 東京国立博物館)
■雪舟の残照の下に
雪舟は、十五世紀の画家である(1420-1506)。十五世紀は、イタリア・ルネサンスの盛期である。レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci:1452年-1519年)とほぼ同時代人である。
雪舟は、四十八才で中国(明)に渡って画を極め、晩年、不滅の傑作を残した。
雪舟は、日本の絵画を一変させ、後世の画家に多大な影響をおよぼした。狩野派が江戸時代、画壇を支配していたが、雪舟を師と仰ぎ、諸大名が雪舟の作品を求めたため、日本最高の画家となった。「涙で描いた鼠」の伝説は名高い。狩野永納『本朝画史』(1693)
雪舟『四季花鳥図屏風』と、永徳『聚光院障壁画』はどこか似ている。狩野永徳が、雪舟の影響を受けたという論証は、探したが、見当たらないようである。
狩野永徳(1543-1590)は、マニエリスムの画家である。時代を圧した狩野永徳の真作は、十作品のみ現存する。桃山前期画壇の頂点に君臨しながらも、描いた作品のほとんどが灰燼に帰した、狩野永徳。
戦乱の中で、織田信長、秀吉、権力者たちの注文を受けて、「怪怪奇奇」(狩野永納『本朝画史』1693)な作品を奔流のごとく生み出した巨人である。大胆な構図、うねるような巨木。日本の一つの美の形を、構築した。
人生の頂点の四十八才で若死にしたのは、権力者の狭間で制作に没頭し、過労であるといわれている。
2名招待されていたので、美術倶楽部のわん太夫さんと一緒に、人の少ない空間で、日本美術史の累々たる名作をみる。
展示替えがあるので、これからまた2回みにいく予定である。
★「対決 巨匠たちの日本美術」2、につづく。
■「対決 巨匠たちの日本美術」東京国立博物館
創刊記念『國華』120周年・朝日新聞130周年
2008年7月8日(火)~8月17日(日)
http://www.asahi.com/kokka/
展示品リスト
http://www.tnm.go.jp/jp/exhibition/special/200807kokka_list.html
雪舟『秋冬山水図』
東京国立博物館「裏庭と池」写真:わん太夫さん
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コメント
8月1日なんですが、4時半から美術鑑賞でメシが9時はちょっときついですよね? その間美術鑑賞の後に、酒のつまみと酒(なんにしますか?)でさしみさんをさしみにして飲みましょう!! (SNSでは書けないのでここで失礼!) 喜多 でした^^)
投稿: Hero | 2008年7月28日 (月) 21時20分
東京国立博物館「裏庭と池」とっても綺麗。
木々の緑、もこもことしてブロッコリーみたいに見えます。
若冲の絵を観に行きたいです。
投稿: | 2008年7月30日 (水) 23時46分
喜多さん
法隆寺宝物館の不思議空間に立ち寄ります。では。
投稿: leonardo | 2008年7月31日 (木) 15時38分
東京国立博物館「裏庭と池」、是非、行ってみて下さい。
御名前、別名でもいいので、記入して下さい。
投稿: leonardo | 2008年7月31日 (木) 15時43分