没後40年レオナール・フジタ展、上野の森美術館・・・魂の昇華
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
エコール・ド・パリの寵児として活躍した世界的画家、藤田嗣治Leonard Tsuguharu Foujita(1886~1968)の幻の群像大作4点すべてが日本で初めて一堂に会する「レオナール・フジタ展」。フランスにおける藤田嗣治の藝術に焦点を当てた展覧会である。
1928年に制作された幻の大作、「構図」「闘争」。「闘争」の2点は長い間、行方不明だった。
■繊細にして可憐な藝術
晩年のフランス時代(1955~1968)の作品は繊細で可憐である。藤田嗣治は「乳白色の肌と繊細な鋭い線」が魅力である。
晩年の宗教画は繊細で美しい。パリ市立近代美術館(Musee d'art moderne de la Ville de Paris)所蔵の作品群が美しい。「キリスト降誕」「磔刑」「黙示録(七つのトランペット)」(1960)、「花の洗礼」「十字架降下」(1959)、「礼拝」(1962-63)。「黙示録(四騎士)」、「黙示録(新しいエルサレム)」(1960)。これらは「生誕120年 藤田嗣治展LEONARD FOUJITA」東京国立近代美術館2006、に展示されていたが、何度見ても美しい。
その他、「イヴ」(1959、ウッドワン美術館)、そして「聖母子」(1959、フランス個人蔵)が良い。
■「平和の聖母礼拝堂」・・・魂の昇華
「平和の聖母礼拝堂」(chapelle Notre-Dame-de-la-Paix)は、シャペル・フジタ(Chapelle Foujita)と呼ばれる。最晩年に到達した至高の境地である。壁画のフレスコ画と同寸の綿密なデッサンが展示されている。この絵の美しさ、高貴な輝きには、宗教の壁を超えて、敬意を表さざるを得ない。
「文藝春秋」2006年2月号に藤田嗣治夫人、藤田君代のエッセイがある。「祖国に捨てられた天才画家」。このタイトルが藤田嗣治の人生の苦難を象徴している。
「平和の聖母礼拝堂」は、不屈の才能の優れた才能たるゆえんを顕示して、美へのあくなき挑戦の足跡である。画家の息づかいを感じる。藝術を極めた人生である。
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エコール・ド・パリの寵児として活躍した世界的画家、藤田嗣治(1886~1968)の幻の群像大作4点すべてが日本で初めて一堂に会する「レオナール・フジタ展」。フランスにおける藤田嗣治の藝術に焦点を当てた展覧会である。
1928年に制作された幻の大作、「構図」「闘争」。「闘争」の2点は本邦初公開である。長い間、行方不明だった。
「ライオンのいる構図」「犬のいる構図」「争闘I」「争闘II」と名付けられたこの連作は、1928年に制作され、いずれも2点1組で縦3メートル、横6メートル。翌年「構図」のみ日本で発表されたのち所在不明で、1992年にパリ郊外の倉庫で発見された大作である。また、その際見つかったパリ日本館壁画と関連する貴重な大作「馬とライオン」も、世界初公開作品として加わる。
これら5点は藤田が最晩年を過ごしたエソンヌ県に寄贈され、仏政府が日本の国宝に相当する国家財産として認定、フランス第一級の修復家の手によって、昨秋、大規模な修復を終えた。現在、エソンヌ県ではこれらを常設展示する美術館の建設を計画中であり、本展が日本における最初で最後の一挙公開となる。
日本人でありながらも、フランス人レオナール・フジタとしてその生涯を終えた数奇な異邦人、藤田嗣治。帰化し、カトリックの洗礼を受け改名するに至った彼の晩年に焦点をあて、エソンヌ期のアトリエの一部を再現し、日本初公開の豊富な生活資料や作品などとともに展示。宗教画の傑作や、自身が「人生最後の仕事」として手掛けた、ランス「平和の聖母礼拝堂」のフレスコ壁画の習作群、本展のために再現されたステンドグラスも特別展示するなど、出品総数約230点(油彩約35点、水彩・ドローイング約90点、アトリエ関連作品・資料約100点)という圧倒的なスケールでその実像に迫る。
展示構成
第1章 初期、そしてスタイルの確立へ
繊細な筆致と「素晴らしき乳白色」の肌によって描かれた裸婦で、当時のパリ画壇の話題をさらい、一躍、「エコール・ド・パリ」の寵児として、その名を全ヨーロッパに轟かせた藤田嗣治。世界のフジタとなった時代の作品を中心に、「大作群」へとつながる独特な人物表現にスポットをあてて紹介します。
第2章 大画面と群像表現、「大作」への挑戦
80年ぶりに日本に里帰りする「構図」の連作2点、そしてこの「構図」と対をなす「争闘」の連作2点(日本初公開)が完全な形で一堂に会し、日本で初めて同時公開となります。これらの「大作」を中心に据え、主題と密接な関わりを持つ作品とともに、フジタの群像表の謎に迫る。
第3章 ラ・メゾン=アトリエ・フジタ― エソンヌの晩年
最晩年を過ごしたエソンヌ県の小村ヴィリエ=ル=バクルの“ラ・メゾン=アトリエ・フジタ” Maison atelier Foujitaには、現在でもさまざまな作品、資料が豊富に残されています。手作りによる多彩な家具や食器、小物、人形、アトリエや教会の模型、写真などは、作家の実生活を生き生きと伝えるものとして、今も大切に当時のままの状態で保存されています。今回、エソンヌ県の協力により、これらの資料をまとまったかたちで日本で初公開し、アトリエ・フジタを再現する。
第4章 フジタ、魂の昇華「平和の聖母礼拝堂」(chapelle Notre-Dame-de-la-Paix)
建物内部を覆うフレスコ画、ステンドグラスはもとより、細部にいたるまで自ら装飾を手掛けた、ランスの「平和の聖母礼拝堂」(Chapelle Foujita)。この礼拝堂のためにフジタは、壁画のフレスコ画と同じサイズの綿密なデッサンを残していた。これら原寸大の迫力あるデッサンとともに、建築家との詳細な手紙のやりとりや貴重なエスキースなど、礼拝堂建設に関する豊富な資料を公開。フジタの宗教観に迫ります。さらに、本展のために再制作されたステンドグラスも特別展示。フジタが晩年を捧げて建立した礼拝堂の全貌とそれに連なる宗教画を展示する。
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「没後40年 レオナール・フジタ展」上野の森美術館、2008年11月15日~2009年1月18日
http://wwwz.fujitv.co.jp/events/art-net/index.html
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