妙心寺展・・・禅の空間 、近世障屏画の輝き
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
桜のつぼみが芽ぐむ東京国立博物館に行く。枝垂れ八重桜の木立ちは冬枯である、いつみても美しく可憐である。
織田信長の師、沢彦宗恩は、臨済宗妙心寺派の僧だった。長谷川等伯『枯木猿猴図』、狩野山雪『老梅図襖』は、必見。
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「開山無相大師650年遠諱記念特別展「妙心寺」東京国立博物館に行く。妙心寺は全国に末寺3,400余箇寺を持つ臨済宗最大の宗派、総本山。狩野探幽「龍雲図」を持つことでも知られる。7世紀にわたる妙心寺の歴史の中で花開いた禅文化を展観する。
展示構成
第1章 臨済禅 ―応燈関の法脈―
第2章 妙心寺の開創 ―花園法皇の帰依―
第3章 妙心寺の中興 ―歴代と外護者―
第4章 禅の空間 1 ―唐絵と中世水墨画―
第5章 遠諱の風景―荘厳と儀礼― 京都展
第6章 妙心寺と大檀越 ―繁栄の礎―
第7章 近世の禅風 ―白隠登場―
第8章 禅の空間 2 ―近世障屏画のかがやき―
第1章から第7章は、歴史的遺物の展示である。ここは足早にみて、第8章をゆっくりとみる。
■第8章 禅の空間 2 ―近世障屏画のかがやき―
この展覧会では、ここだけ鑑賞してもよいほど価値がある。
山雪、等伯、友松、山楽、この4人の屏風絵をみるだけでも価値がある。必見。
★必見の展示作品
長谷川等伯「重文 枯木猿猴図」前期展示
海北友松「豊干・寒山拾得図衝立」
海北友松「重文 琴棋書画図屏風」
狩野山楽「重文 龍虎図屏風」前期展示
狩野山楽「松図 旧天球院方丈仏壇壁貼付」
狩野山雪「老梅図襖 旧天祥院障壁画」前後期展示
伝相阿弥「重文 瀟湘八景図屏風」
如拙筆「国宝 瓢鮎図」退蔵院蔵。後期展示(2月10日~)。瓢鮎図は、瓢箪によって鯰を捉えるという図である。鯰は心の比喩である。
★狩野山雪「老梅図襖」、長谷川等伯「重文 枯木猿猴図」がとくにおすすめ。
■狩野山雪「老梅図襖」メトロポリタン美術館
狩野山雪の傑作である。現在、NYメトロポリタン美術館に所蔵されている。ミネアポリス美術館所蔵「群仙図襖」と表裏をなしていたといわれる。
「老梅図」の構図は、山雪が生みだした曲線と直線の織りなす空間美である。梅の古木は、生命力と運命が戦いをくり広げているようで、うねるような渦巻くような枝ぶりが美しい。
■狩野山雪(1589‐1651)・・・奇想派、狩野永納『本朝画史』
狩野山楽の門人となり、その娘と結婚し養子となった。山楽没によって後を嗣ぎ、京狩野派の第二代となる。探幽ら江戸狩野派の繁栄で狩野派内で孤立化した。疑いを着せられ投獄されて、その2年後に没した。蛇足軒・桃源子の号をもつ。絵画は形象の追求、意匠性の強い造形など、極めて特異な様相をしめしている。
狩野永納『本朝画史』は日本のヴァザーリ『藝術家列伝』であるが、山雪の草稿を子の永納が完成させた。
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妙心寺は建武4年(1337)、花園法皇(はなぞのほうおう)が自らの離宮を禅寺としたことに始まります。そして、開山(:初代住持)として花園法皇によって迎え入れられたのが関山慧玄(諡号「無相大師」)でした。
関山慧玄やその師、宗峰妙超(しゅうほうみょうちょう)をはじめとする名僧たちの墨蹟(ぼくせき)や頂相(ちんそう)、妙心寺を支援した細川家など諸大名に関する作品、中世以来妙心寺に伝わる唐物・唐絵、室町時代から江戸時代にいたる多様かつ華麗な屏風や襖絵、白隠慧鶴(はくいんえかく)ら近世の高僧の活動を伝える墨蹟・禅画など、妙心寺の禅文化を彩る貴重な文化財は、禅宗史にとどまらず、わが国の歴史や文化を物語るうえで重要な位置を占めています。
本展は、無相大師の650年遠諱(おんき)を記念して開催されるもので、六世紀半にわたる妙心寺の歴史の中で花開いた禅の文化を、国宝4件、重要文化財およそ40件をはじめ、妙心寺本山ならびに塔頭の所蔵品を中心にご紹介します。
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★これまでみた仏教美術展では、つぎの展覧会が最も良質である。
「弘法大師入唐1200年記念 空海と高野山展」東京国立博物館2004
「天台宗開宗1200年記念 特別展 最澄と天台の国宝」東京国立博物館2006
特別展「仏像 一木にこめられた祈り」東京国立博物館2006
■開山無相大師650年遠諱記念 特別展「妙心寺」、東京国立博物館
2009年1月20日(火)~3月1日(日)、
京都国立博物館へ巡回。3月24日(火)~5月10日(日)
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https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=63
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