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2009年2月

2009年2月25日 (水)

妙心寺展・・・禅の空間 、近世障屏画の輝き

Myoushinji2009Hasegawatouhaku_koboku_enkouzu_1Hasegawatouhaku_koboku_enkouzu_2Kano_sansetsu_theoldplum大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
桜のつぼみが芽ぐむ東京国立博物館に行く。枝垂れ八重桜の木立ちは冬枯である、いつみても美しく可憐である。
織田信長の師、沢彦宗恩は、臨済宗妙心寺派の僧だった。長谷川等伯『枯木猿猴図』、狩野山雪『老梅図襖』は、必見。
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「開山無相大師650年遠諱記念特別展「妙心寺」東京国立博物館に行く。妙心寺は全国に末寺3,400余箇寺を持つ臨済宗最大の宗派、総本山。狩野探幽「龍雲図」を持つことでも知られる。7世紀にわたる妙心寺の歴史の中で花開いた禅文化を展観する。
展示構成
第1章 臨済禅 ―応燈関の法脈―
第2章 妙心寺の開創 ―花園法皇の帰依―
第3章 妙心寺の中興 ―歴代と外護者―
第4章 禅の空間 1 ―唐絵と中世水墨画―
第5章 遠諱の風景―荘厳と儀礼― 京都展
第6章 妙心寺と大檀越 ―繁栄の礎―
第7章 近世の禅風 ―白隠登場―
第8章 禅の空間 2 ―近世障屏画のかがやき―
第1章から第7章は、歴史的遺物の展示である。ここは足早にみて、第8章をゆっくりとみる。
■第8章 禅の空間 2 ―近世障屏画のかがやき―
この展覧会では、ここだけ鑑賞してもよいほど価値がある。
山雪、等伯、友松、山楽、この4人の屏風絵をみるだけでも価値がある。必見。
★必見の展示作品
長谷川等伯「重文 枯木猿猴図」前期展示
海北友松「豊干・寒山拾得図衝立」
海北友松「重文 琴棋書画図屏風」
狩野山楽「重文 龍虎図屏風」前期展示
狩野山楽「松図 旧天球院方丈仏壇壁貼付」
狩野山雪「老梅図襖 旧天祥院障壁画」前後期展示
伝相阿弥「重文 瀟湘八景図屏風」
如拙筆「国宝 瓢鮎図」退蔵院蔵。後期展示(2月10日~)。瓢鮎図は、瓢箪によって鯰を捉えるという図である。鯰は心の比喩である。
★狩野山雪「老梅図襖」、長谷川等伯「重文 枯木猿猴図」がとくにおすすめ。
■狩野山雪「老梅図襖」メトロポリタン美術館
狩野山雪の傑作である。現在、NYメトロポリタン美術館に所蔵されている。ミネアポリス美術館所蔵「群仙図襖」と表裏をなしていたといわれる。
「老梅図」の構図は、山雪が生みだした曲線と直線の織りなす空間美である。梅の古木は、生命力と運命が戦いをくり広げているようで、うねるような渦巻くような枝ぶりが美しい。
■狩野山雪(1589‐1651)・・・奇想派、狩野永納『本朝画史』
狩野山楽の門人となり、その娘と結婚し養子となった。山楽没によって後を嗣ぎ、京狩野派の第二代となる。探幽ら江戸狩野派の繁栄で狩野派内で孤立化した。疑いを着せられ投獄されて、その2年後に没した。蛇足軒・桃源子の号をもつ。絵画は形象の追求、意匠性の強い造形など、極めて特異な様相をしめしている。
狩野永納『本朝画史』は日本のヴァザーリ『藝術家列伝』であるが、山雪の草稿を子の永納が完成させた。
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禅-心とかたち、東京国立博物館・・・不立文字
「栄西と建仁寺」・・・天下布武と茶会、戦国時代を生きた趣味人
妙心寺展・・・禅の空間 、近世障屏画の輝き

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 妙心寺は建武4年(1337)、花園法皇(はなぞのほうおう)が自らの離宮を禅寺としたことに始まります。そして、開山(:初代住持)として花園法皇によって迎え入れられたのが関山慧玄(諡号「無相大師」)でした。
 関山慧玄やその師、宗峰妙超(しゅうほうみょうちょう)をはじめとする名僧たちの墨蹟(ぼくせき)や頂相(ちんそう)、妙心寺を支援した細川家など諸大名に関する作品、中世以来妙心寺に伝わる唐物・唐絵、室町時代から江戸時代にいたる多様かつ華麗な屏風や襖絵、白隠慧鶴(はくいんえかく)ら近世の高僧の活動を伝える墨蹟・禅画など、妙心寺の禅文化を彩る貴重な文化財は、禅宗史にとどまらず、わが国の歴史や文化を物語るうえで重要な位置を占めています。
 本展は、無相大師の650年遠諱(おんき)を記念して開催されるもので、六世紀半にわたる妙心寺の歴史の中で花開いた禅の文化を、国宝4件、重要文化財およそ40件をはじめ、妙心寺本山ならびに塔頭の所蔵品を中心にご紹介します。
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★これまでみた仏教美術展では、つぎの展覧会が最も良質である。
「弘法大師入唐1200年記念 空海と高野山展」東京国立博物館2004
「天台宗開宗1200年記念 特別展 最澄と天台の国宝」東京国立博物館2006
特別展「仏像 一木にこめられた祈り」東京国立博物館2006
■開山無相大師650年遠諱記念 特別展「妙心寺」、東京国立博物館
2009年1月20日(火)~3月1日(日)、
京都国立博物館へ巡回。3月24日(火)~5月10日(日)
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=628
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=63

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2009年2月21日 (土)

「加山又造展」ミュージアム・ツアー・・・美に酔いワインに酔い

Kayama_matazou_2009_1大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
美術倶楽部で、「加山又造展」ミュージアム・ツアーを行いました(Nikkei.net)。ロビーで、短時間レクチュアして「物欲の強い女性は、欲しくなるのでご注意下さい」というと皆さま微笑しています。
Roseさん、有加さん、Musikliebeさん、女性たちは、絢爛華麗な加山又造の絵画世界に「あまりに美しくて、絵に酔いました」「なんて優雅な時間でしょう!」と言っていました。次回、またご参加下さい。
2月11日、見学場所:
★国立新美術館「加山又造展」
★フジフィルム・スクエア:篠山紀信「東京ディズニーリゾート写真展DREAMS and MAGIC」
日本画家の寒河江智果さんも招きましたが、締切りのため参加できませんでした。
■「真実はワインの中にある」In vino veritas.
美術館の後、イタリア料理店「Il Vigore」に行く。イタリア語のことわざに「真実はワインの中にある」という言葉がある。ワインを飲むと、人は本性を表し、真実を語り始める。
美に酔い、ワインに酔って、ここでは書けないあんなことこんなこと、時のたつのを忘れて語り合う。酒に飲まれる人、音楽に溺れる人、納棺師、おくりびと。箱根の秘密の計画、日本食奇行、デスクの秘密、赤い悪魔、など。語り尽くす。
★本日のメニュー 
★ワイン
サン・ロレンツォ、モンテプルチアーノ
コルヴォ・ロッソ、シチリア

モッツァレッラとトマトのサラダ
シチリア産グリーンオリーブ
トスカーナ風トリッパ
イタリア産4種の生ハム盛り合わせ
 :ゴルゴンゾーラ、タレッジョ、モッツァレラ、パルミジャーノ
アンチョビ・ポテト
地鶏肉のスパゲッティ・ジェノヴェーゼ
ボスカイオーラ
子牛肉のスパゲッティ・ボロネーゼ
小海老とブロッコリ、バジリコ風味
★「加山又造展」国立新美術館については
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-4c23.html
Kayama00111

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2009年2月17日 (火)

加山又造展、国立新美術館・・・虚空に煌く美、華麗なる装飾美

Kayama_matazou_2009_1Kayama_matazou_shunnjuuhatou大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
11年前に、加山又造展、東京国立近代美術館(1998)をみた。11年ぶりの回顧展である。加山又造は、琳派と運命的な出会いをする。24才の時「宗達光琳派展」(昭和26年(1951)東京国立博物館)である。
初期の動物絵画に見られる西洋絵画の手法、琳派や大和絵など伝統美への傾倒、古典を踏まえ、革新的で現代感覚あふれる解釈によって繰り広げられるその創造的な絵画世界。水墨画、京都天龍寺の天井画を完成させ、死に至るまで新たなテーマを展開しつづけた。
加山又造の多岐に渡る活動を集大成、その軌跡をたどる回顧展である。
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古典への傾倒
キュビズム、アルタミラの壁画、ブリューゲル『雪中の狩人』、俵屋宗達、本阿弥光悦、尾形光琳、速水御舟、金剛寺『日月山水図屏風』。加山又造が影響を受けた藝術の痕跡をみることができる。
10年前に、加山又造展「やまと絵の心 加山又造展~華麗なる装飾美の世界~」東京国立近代美術館(1998)、をみた。この時の図録には作家自身の作品解説があり、発想の源泉が解き明かされている。必見。
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線の美しさ
「無駄な線を一本も描いてはならない。祈るように線を引け」とわが子に教えたといわれる。厳しい線のなかに求道的な美しさが見られる。現代の琳派、現代日本画家、屈指の名匠である。
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★展示作品の一部
「冬」1957東京国立近代美術館
「千羽鶴」1970
「春秋波濤」1966
「雪月花」1967個人蔵
「牡丹」四曲一雙屏風1979富山県水墨美術館
「夜桜」四曲一双屏風1982光美術館
「華と猫」1991
「倣北宋水墨山水雪景」1989多摩美術大学美術館蔵
「倣北宋寒林雪山」1992個人蔵
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現代日本画を代表する画家の一人である加山又造の回顧展を開催します。
加山又造は1927(昭和2)年、京都市に生まれました。初め、京都市立美術工芸学校絵画科に学んだ後、上京して東京美術学校日本画科に入学、1949(昭和24)年に卒業しました。そして、戦後まもなく創立された創造美術に、西洋絵画の影響を強く窺わせる動物画を発表して注目されました。
戦後になって日本画滅亡論が声高に唱えられ、日本画家は新しい日本画のあり方をもとめて模索を続け、新たに流入してきた欧米の美術思潮へ接近しました。それは明治以降の近代日本画を基盤としつつ、戦後の社会に適応させていくための一つの手法であったようにみえます。
画壇に登場した頃の加山の制作も、同じ方向性を示していたのは確かです。しかし加山の場合、一度、近代日本画の流れの外に出ることで、自覚的に日本絵画それ自体の本質を問い、それを現代という時代に表現したところに大きな違いがありました。そのことは、初期の一連の動物画においてさえその強烈な様式性が伝統的な日本画の特質に深く根ざしていることに明らかです。戦後に出発した日本画家としての加山の姿を、そこに見ることができます。
そうした時、室町時代の装飾的な屏風や琳派など日本の古典に繋がる作品、浮世絵の線描表現の美しさに触発された裸婦像、日本や中国の水墨に学んだ作品など、描かれた作品は単なる模倣ではなく、日本の美術が本来もっている装飾性に深く倣ならいながら、それを今日的な表現に解釈し直したものであることが理解できます。
加山又造が2004年に亡くなってからまもなく5年の歳月がたちますが、その作品は今も高く評価されています。ほぼ60年にわたるその革新的な画業は、やや行き詰まりの感のある現代の日本画の世界にあってなお示唆的です。この展覧会は絵画作品だけでなく、加山が絵付けをした陶器、着物、デザインによる装飾品など工芸品を含む約100点で構成されます。全体を6章に分けてその芸術の歩みを辿るとともに、戦後の日本画の展開において加山が果たした役割と、その意味をあらためて探ろうとする試みです。
第1章 動物たち、あるいは生きる悲しみ―様式化の試み
第2章 時間と空間を超えて―無限の宇宙を求めて
第3章 線描の裸婦たち―永遠のエロティシズム
第4章 花鳥画の世界―「いのち」のかたち
第5章 水墨画―色彩を超えた「色」
第6章 生活の中に生きる美
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★加山又造展、虚空に煌く美、国立新美術館
2009年1月21日(水)~3月2日(月)
http://www.kayamaten.jp/
Kayama20090121

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2009年2月 3日 (火)

「三瀬夏之介展~冬の夏~」佐藤美術館・・・現代の奇想派

Mise_natsunosuke_200901画家三瀬夏之介さんと山本冬彦さんのギャラリートークがあり、佐藤美術館に行く。対談の内容は「作家とコレクター」である。
山本さん「画家は、売れなくても自分が作りたい作品を作っていくか、売れる作品を作る富裕な藝術家になるか、そのどちらかである。」
三瀬さん「画家だけでは不安なので、教員の仕事をしているが、仕事をしているそこから学ぶものがある。生活の資をそこから得ているので、時代に合わせずに何とかやって行ける」
画家は、孤高の画家を貫いて生きるか、村上隆のように流行画家になるか、いずれか二者択一だという山本冬彦さんの結論はその通りである。作家とコレクター、画廊を、藝術家とパトロン、哲学者と支持者、と考えると、さまざまな文化に応用可能である。
■画家との対話
「山本冬彦コレクション展」ギャラリー椿に移動して、ここで三瀬夏之介さんと話した。
私は速水御舟が好きなので、好きな画家はだれですか。と聞くと、
「速水御舟は好きではなく、蕭白が好きです。曽我蕭白、伊藤若冲、川鍋暁斎、ほか京都の画家が好きです。」
日本画の技法は、鉱物を画面に膠で定着するので、フレスコ画、フェルメールのラピスラズリなど、西洋の古典的絵画の技法と似ていますね、と聞く。
「日本画は、日本画という名前ですが、今、顔料は日本で産出せずアフガニスタンなど海外から輸入しているのです。」
曽我蕭白『群仙図屏風』に話が及んだ。そういえば、三瀬夏之介氏の絵は、曽我蕭白に似ている。私の『地中海紀行』の資料を渡すと、フィレンツェが好きだ、と言っていた。三瀬夏之介は、現代の奇想派である。
「歴史を知らなければ何の文化も生み出せない。」三瀬夏之介
★【アートソムリエ 山本冬彦氏とトーク&ギャラリークルーズ!】
1月31日(土)13‐16時、佐藤美術館、ギャラリー椿
「ぼくの神さま」2008年4.25、250cm×545cm
「日本画滅亡論」2007年
「日本画復活論」2007年
「奇景」2003年-2008年、三十四曲一隻屏風
3階、4階合わせて出品総点数は130点以上。
★佐藤美術館、立島惠氏にお世話になりました。
シナプスの小人
http://www.natsunosuke.com/index.html
三瀬夏之介
http://blog.livedoor.jp/kikei1973/
「三瀬夏之介展~冬の夏~」佐藤美術館2009年1月15日(木)~2月22日(日)
http://homepage3.nifty.com/sato-museum/index.html
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 70年代生まれの日本画作家のなかで現在最も注目されている三瀬夏之介の個展を佐藤美術館において開催します。
 三瀬は、奈良に生まれ奈良で育ちそして京都市立芸術大学及び大学院で学びました。2002年トリエンナーレ豊橋で大賞を受賞、その後は文化庁作品買上や国内外多数の展覧会への出品等、今や日本画の世界だけでなく美術界全体から注目される存在となりつつあります。そして一昨年は、一年間イタリア、フィレンツェに渡り、また昨年は大原美術館のアーティストインレジデンスに参加するなどその活動はますます幅を広げ且つ精力的になっています。
 三瀬の作品の変遷は大きく分けて3つの段階を経て今日に至っています。先ず、錆(緑青)を表現素材として用いた作品、箔(金箔)を多用した風景(山など)。そして現在取り組んでいるのは墨を主に用いたモノクロームの大作です。和紙に描くということ、箔や墨を用いるということだけ取って見れば日本画と言えないことはありませんが、三瀬の作品はいわゆる既存の日本画のイメージとは大きくかけ離れています。
 作品のモチーフは、日本の山々、聖堂などの西洋建築物からネッシー、大魔神、円盤に至るまでありとあらゆるものが対象となり更には描くだけにとどまらずコラージュを施されている作品もあります。また、大作は膨大な量のスケッチの切れ端を繋ぎ合わせるという作業の積み重ねからつくられます。それは、まさに自らの記憶の断片をひとつひとつ繋ぎ合わせ再構築するかのような精神作業を伴い、まさに圧巻としか言いようのない迫力で訴え見るものを魅了します。
 本展は、三瀬のイタリアでの多くの思索そして帰国後の表現の蓄積からなる最近作を一挙に展示公開いたします。
 いままで見たこともないような日本画、三瀬夏之介の表現世界をどうぞこの機会に是非ご覧下さい。

★画像は、佐藤美術館の許可を得て使用しています。

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