加山又造展、国立新美術館・・・虚空に煌く美、華麗なる装飾美
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
11年前に、加山又造展、東京国立近代美術館(1998)をみた。11年ぶりの回顧展である。加山又造は、琳派と運命的な出会いをする。24才の時「宗達光琳派展」(昭和26年(1951)東京国立博物館)である。
初期の動物絵画に見られる西洋絵画の手法、琳派や大和絵など伝統美への傾倒、古典を踏まえ、革新的で現代感覚あふれる解釈によって繰り広げられるその創造的な絵画世界。水墨画、京都天龍寺の天井画を完成させ、死に至るまで新たなテーマを展開しつづけた。
加山又造の多岐に渡る活動を集大成、その軌跡をたどる回顧展である。
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古典への傾倒
キュビズム、アルタミラの壁画、ブリューゲル『雪中の狩人』、俵屋宗達、本阿弥光悦、尾形光琳、速水御舟、金剛寺『日月山水図屏風』。加山又造が影響を受けた藝術の痕跡をみることができる。
10年前に、加山又造展「やまと絵の心 加山又造展~華麗なる装飾美の世界~」東京国立近代美術館(1998)、をみた。この時の図録には作家自身の作品解説があり、発想の源泉が解き明かされている。必見。
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線の美しさ
「無駄な線を一本も描いてはならない。祈るように線を引け」とわが子に教えたといわれる。厳しい線のなかに求道的な美しさが見られる。現代の琳派、現代日本画家、屈指の名匠である。
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★展示作品の一部
「冬」1957東京国立近代美術館
「千羽鶴」1970
「春秋波濤」1966
「雪月花」1967個人蔵
「牡丹」四曲一雙屏風1979富山県水墨美術館
「夜桜」四曲一双屏風1982光美術館
「華と猫」1991
「倣北宋水墨山水雪景」1989多摩美術大学美術館蔵
「倣北宋寒林雪山」1992個人蔵
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現代日本画を代表する画家の一人である加山又造の回顧展を開催します。
加山又造は1927(昭和2)年、京都市に生まれました。初め、京都市立美術工芸学校絵画科に学んだ後、上京して東京美術学校日本画科に入学、1949(昭和24)年に卒業しました。そして、戦後まもなく創立された創造美術に、西洋絵画の影響を強く窺わせる動物画を発表して注目されました。
戦後になって日本画滅亡論が声高に唱えられ、日本画家は新しい日本画のあり方をもとめて模索を続け、新たに流入してきた欧米の美術思潮へ接近しました。それは明治以降の近代日本画を基盤としつつ、戦後の社会に適応させていくための一つの手法であったようにみえます。
画壇に登場した頃の加山の制作も、同じ方向性を示していたのは確かです。しかし加山の場合、一度、近代日本画の流れの外に出ることで、自覚的に日本絵画それ自体の本質を問い、それを現代という時代に表現したところに大きな違いがありました。そのことは、初期の一連の動物画においてさえその強烈な様式性が伝統的な日本画の特質に深く根ざしていることに明らかです。戦後に出発した日本画家としての加山の姿を、そこに見ることができます。
そうした時、室町時代の装飾的な屏風や琳派など日本の古典に繋がる作品、浮世絵の線描表現の美しさに触発された裸婦像、日本や中国の水墨に学んだ作品など、描かれた作品は単なる模倣ではなく、日本の美術が本来もっている装飾性に深く倣ならいながら、それを今日的な表現に解釈し直したものであることが理解できます。
加山又造が2004年に亡くなってからまもなく5年の歳月がたちますが、その作品は今も高く評価されています。ほぼ60年にわたるその革新的な画業は、やや行き詰まりの感のある現代の日本画の世界にあってなお示唆的です。この展覧会は絵画作品だけでなく、加山が絵付けをした陶器、着物、デザインによる装飾品など工芸品を含む約100点で構成されます。全体を6章に分けてその芸術の歩みを辿るとともに、戦後の日本画の展開において加山が果たした役割と、その意味をあらためて探ろうとする試みです。
第1章 動物たち、あるいは生きる悲しみ―様式化の試み
第2章 時間と空間を超えて―無限の宇宙を求めて
第3章 線描の裸婦たち―永遠のエロティシズム
第4章 花鳥画の世界―「いのち」のかたち
第5章 水墨画―色彩を超えた「色」
第6章 生活の中に生きる美
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★加山又造展、虚空に煌く美、国立新美術館
2009年1月21日(水)~3月2日(月)
http://www.kayamaten.jp/
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コメント
レオナルドさん、こんばんは。
TB頂き、ありがとうございました。
こちらからもTBさせて頂きましたので、
宜しくお願い致します。
投稿: YC | 2009年3月10日 (火) 22時25分