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2009年3月

2009年3月22日 (日)

「生活と芸術 アーツ&クラフツ展」ウイリアム・モリスから民芸まで・・・いちご泥棒、Morris,Strawberry Thief

Arts_and_craft_2009_0Strawberry_thief大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
桜の蕾がふくらむ早春の夕暮れ、アーツ&クラフツ展に行く。アーツ&クラフツはウィリアム・モリス(1834-96)らによって始められた。ラファエル前派、ケルムスコットプレスの美しい装丁の書物、モリス商会の美しいファブリック、ステンドグラス。ウィリアム・モリス、ジョン・ラスキン、ダンテ・ガブリエル・ロセッティの作品が展示されている。19世紀イギリス文化の結晶、近代化に対する批判精神の現れである。ビアズリー(1872‐98)、クリムト(1862‐1918)と同時代、装飾芸術の精華である。美しい装丁の書物が印象的である。
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★展示作品の一部
アーネスト・ギブソン「ラダーバック・チェア」1895、V&A
ウィリアム・モリス「タペストリ 森」1887、V&A
ダンテ・ガブリエル・ロセッティ「聖ゲオルギウス ステンドグラス」1862、V&A
ウィリアム・モリス「いちご泥棒」1883、V&A
ウィリアム・モリス「詩の本」1870、V&A
ウィリアム・モリス「輝く平原の物語」1894、V&A
エドワード・バーン・ジョーンズ「生命の木」1888、V&A
チャールズ・レイニー・マッキントッシュ「ハイバック・チェア」1898、豊田市美術館
バーナード・リーチ「生命の木」1928、京都国立近代美術館
■「生命の木」(Tree of Life)が、2点展示されていてギリシアの絨緞を思い出した。
ギリシアに旅した時、アテネからデルフィに向かう途中、パルナッソスの山の斜面のアラホヴァ(Arachova)の町の店で、生命の木のモティーフの美しい絨緞が懸けられていた。
「生命の木」は、自然と生命を賛美する構図で、北斗七星、樹木と馬、魚、などが描かれている。生命の樹(Tree of Life)は、旧約聖書の創世記(2章9節以降)にエデンの園の中央に植えられた木である。カバラではセフィロトの木 (Sephirothic tree) という。生命の樹は、禁断の知恵の樹と関係がある、といわれている。
■ウィリアム・モリス(William Morris,1834- 1896)は、19世紀イギリスの詩人、デザイナー、マルクス主義者。モダンデザインの父と呼ばれる。職人はプロレタリアートになり、労働の喜びや手仕事の美しさも失われた時代にあって、中世に憧れ、プロレタリアートを解放し、生活を芸術化するために、根本的に社会を変えることが不可欠だと考えた。マルクス主義を熱烈に信奉し、エリノア・マルクスらと行動をともにし、社会主義協会を結成した。叙事詩『地上の楽園』、『世界の果ての泉』などの著書がある。
展示構成
第1部イギリス
第2部ヨーロッパ
第3部日本
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■アーツ&クラフツ
19世紀後半のイギリスで興り、今日の暮らしに大きな影響を与えたデザイン運動「アーツ&クラフツ」。産業化・工業化が進む時代を背景に、失われた手仕事の良さを見直し、自然や伝統に美を再発見します。さらには過剰な装飾ではなく、シンプルな美しさをとり入れたライフスタイルを提案するなど、実に多彩な理想を掲げました。
主導的な立場にあったのは、思想家ジョン・ラスキン(1819-1900)と、デザイナーで思想家、詩人でもあったウィリアム・モリス(1834-96)でした。ラファエル前派のD.G.ロセッティやエドワード・バーン=ジョーンズらが参加したモリス・マーシャル・フォークナー商会(のちにモリス商会)を中心に、装飾芸術をめぐって活発な活動がロンドンで繰り広げられました。1880年代末には運動の名称ともなったアーツ&クラフツ展協会が創設され、各地で意欲的な展覧会が開かれたり、工房が作られたりしました。
アーツ&クラフツの考えと試みは、出版や研究を通じて、瞬く間にヨーロッパやアメリカ、日本にも伝わります。各地での歴史、文化、社会情勢の影響を受けながら、多種多様な作品が生み出されていきました。住宅を中心とする総合芸術の探究は、その後のモダン・デザインを生む源流の一つとなりました。
■ヴィクトリア&アルバート美術館とウィリアム・モリス
V&Aは、1851年に開かれたロンドン万国博覧会の成功をうけ、1852年、産業博物館として創立されました。1857年に現在のサウス・ケンジントンに移転し、サウス・ケンジントン美術館と名を改め、1899年には、創立に尽力したヴィクトリア女王とアルバート公夫妻の名を冠して改称しました。古代から現代までの絵画、彫刻、陶磁器、織物、家具、写真、ファッション、ガラス、宝石など、世界に類を見ない豊富なコレクションを誇っています。 V&Aには、ウィリアム・モリスらが1861年に設立したモリス・マーシャル・フォークナー商会が内装を手掛けた食堂「グリーン・ダイニングルーム」が現存しています。世界最初の美術館内食堂の一つで、フィリップ・ウェッブの監督の下、バーン=ジョーンズがパネルを、モリスが天井の模様を担当。度重なる修復を経て、現在も当時の姿を見ることができます。本展には同ルームのデザインも展示されます。
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★「生活と芸術 アーツ&クラフツ展 ウィリアム・モリスから民芸まで」東京都美術館、2009年1/24~4/5
http://www.asahi.com/ac/
A_and_c_rossetti_2009_2

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