« 国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア・・・帝政末期、移動派の画家、イワン・クラムスコイ『忘れえぬ女』 | トップページ | 2009年7月~12月スケジュール、美術館へ行こう! »

2009年6月11日 (木)

ルーヴル美術館展、17世紀ヨーロッパ絵画・・・図像学の講義。クリュセイスを探す

Louvre2009_0_2Claude_rollain大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』   
芒種の日、雨の森を歩いて、美術館に行く。美術倶楽部の会合があり、美術史家を招いて、展示室にて鑑賞する。17世紀ヨーロッパ絵画の名画を目のまえに見ながら、美術史家・池上英洋氏によるレクチュアである。ルーヴル美術館による展示構成は分かりにくいので「17世紀ヨーロッパ芸術のパトロネージ」という主題の下に、各部屋を巡りながら講義をきく。
★17世紀の三大権力
バロック絵画をよりよく理解し楽しむために、17世紀の三大パトロン、資金源である「教会、宮廷、商人」によって、テーマを探求する。対抗宗教改革とは何か、そしてそれと連動した文化の特徴とはいかなるものだったか。
 1、教会(教皇庁、カトリック教会、イエズス会)イタリア。対抗宗教改革の時代。宗教改革に対抗するプロパガンダ図像。無原罪の御宿り、聖母、使徒。
 2、宮廷(絶対王政による君主専制国家、および貴族階級)フランス、スペイン。君主称揚主題、救済実現目的の主題、教育目的。肖像画、歴史画、神話画、宮殿壁画、礼拝堂。
 3、商人(17世紀から新たに登場した第3のパトロン)オランダ、イギリス。室内装飾用のニュートラルな主題。集団肖像画、静物画、風景画、風俗画。ヴァニタス(Vanitas)などの寓意図像。
★図像学の講義
 ムリーリョ「無原罪の御宿り」のマリアは、熾天使(Seraphim)によって、囲まれている。熾天使は、燃える天使であり、偽ディオニシウス・アレオパギタが定めた天使の九階級のうち最上の天使である。
 カラヴァッジョ「果物籠」にはじまるヴァニタスの寓意は「形あるものはすべて壊れる、生あるものは枯れる」、無常を意味する。
 ラトゥール「大工ヨセフ」は、一点光源でしかも手を透かしている。カラヴァッジェスキの影響が濃厚だが、カラヴァッジョは天井から光源が照らしている。一点光源。
 カルロ・ドルチ「マリア」の唇と袖の赤はイエスの血の象徴である。
 クロード・ロランClaude Lorrain「クリュセイスを父親のもとに返すオデュッセウス」1644(Odysseus returns Chryseis to her father)。
画中の女性クリュセイスを皆で探して夢中になる。美術館で名画を目のまえに行う、図像学の実践的講義は、果てしなくつづく。
★深夜の宴
 夜の美術館で8時半閉館まで耽溺し堪能した。その後、先生と女子大生たちと一緒に宴に向かう。宴は深夜12時までつづいた。「酒杯を傾けて藝術談議をするのは、至福の時間です」と美術マニアの女性はいう。
★「ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画」国立西洋美術館
2009年2月28日(土)~6月14日(日)
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/post-9bb1.html
★★★★★

ルーヴル美術館展、17世紀ヨーロッパ絵画・・・図像学の講義。クリュセイスを探す

|

« 国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア・・・帝政末期、移動派の画家、イワン・クラムスコイ『忘れえぬ女』 | トップページ | 2009年7月~12月スケジュール、美術館へ行こう! »

バロック」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ルーヴル美術館展、17世紀ヨーロッパ絵画・・・図像学の講義。クリュセイスを探す:

» ルーブル美術館展--17世紀ヨーロッパ絵画 [こすもす]
金曜日の夜間開館だと言うのに人の波が続く。 夕方6時だというのに「60分待ち」・ [続きを読む]

受信: 2009年6月12日 (金) 06時40分

» 国立西洋美術館で「ルーヴル美術館展―17世紀ヨーロッパ絵画―」を観た! [とんとん・にっき]
「ルーヴル美術館展」の2枚のチラシ左:レンブラント・ファンレイン「縁なし帽を被り、金の鎖を付けた自画像」1633年右:ヨハネス・フェルメール「レースを編む女」1669-70年頃 なんと2月28日、開催初日に「ルーヴル美術館展―17世紀ヨーロッパ絵画」を観てきました。そ... [続きを読む]

受信: 2009年6月12日 (金) 07時50分

» ルーヴル美術館展 国立西洋美術館 (その2) [すぴか逍遥]
ルーヴル美術館展 国立西洋美術館(その2) すばらしい絵の数々、数え上げたたら大変といった感じなので、あと少し記録しておきます。 クロード・ロラン《クリュセイスを父親のもとに返すオデュッセウス》1644年頃 この絵も大好きなもの。水の色、日没の太陽のひかり、建物があり、人がいて物語があって、 真中の船に中心点があり、とても落ちつき、心安らぎ、いつまでも見ていたい思いです。 ドメニコ・フェッティ 《メランコリー》1620年頃 なんだか謎が謎を呼ぶような絵です。見ていて飽きない、想像をめ... [続きを読む]

受信: 2009年6月12日 (金) 17時57分

» 「ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画」 国立西洋美術館 [はろるど・わーど]
国立西洋美術館(台東区上野公園7-7) 「ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画」 2/28-6/14 感想が遅くなりましたが、珍しくも初日に参戦してきました。国立西洋美術館で開催中の「ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画」へ行ってきました。 副題の通り、ルーヴル所蔵の17世紀絵画(約70点)を俯瞰する展覧会です。うち60点が日本初公開とのことで、毎年の如く開催されるルーヴル展に食傷気味な方も、また新鮮であったのではないでしょうか。以下、惹かれた10点を挙げてみました。 アンブロシ... [続きを読む]

受信: 2009年6月13日 (土) 01時07分

« 国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア・・・帝政末期、移動派の画家、イワン・クラムスコイ『忘れえぬ女』 | トップページ | 2009年7月~12月スケジュール、美術館へ行こう! »