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2009年7月

2009年7月31日 (金)

村上華岳「裸婦図」・・・崇高なヌード

2009大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
51才で亡くなった画家、村上華岳、32才の作品。
霊と肉の調和。「肉であると同時に霊でもあるものの美しさ」である。肉体と精神性、妖艶と聖性、官能美と知性の覚醒の境地という相反する要素、対立する要素の不思議な調和がある。
幽玄な森を背景に、一人の薄絹をまとった女。女性は耳飾、胸飾、首飾、臂釧、腕釧などの装身具を身につけていて、印度の仏像彫刻のようである。豊麗な体は、透明な衣の繊細にして強い描線で縁取られている。
――
■美の根源のエロス
女は艶麗でありかつ、清純な姿である。たたたずまいに立ち上る仄かな色香。肌理細やかな肌に、幽かな朱色。艶然として仏像のようなまなざし。美の根源にはエロスがある。
縦163 cm、横109 cm、現身の等身大の作品である。
近代日本画を作り上げた画家、村上華岳1888-1939(明治21-昭和14)。51才で亡くなった画家、32才の作品。
村上華岳「裸婦図」1920(大正9)第3回国画創作協会展、絹本・彩色・額(1面)163.6×109.1cm
山種美術館所蔵、「上村松園、美人画の粋」山種美術館にて、7月26日。

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2009年7月27日 (月)

上村松園、美人画の粋・・・夏の緑陰の午後

Uemurashouen2009大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』
蝉しぐれの午後、イタリア糸杉が佇む千鳥ヶ淵公園を歩いて、美術館に行く。夏の日盛り、千鳥ヶ淵の緑陰、木漏れ日が眩しい。山種美術館閉館日である。
上村松園「春のよそをひ」1936「つれづれ」1941「春芳」「牡丹雪」他。女性の品は、目、口元、手に現れる。松園は女性の気品が漂う美しさを目ざした。
最後の展示室に飾られている一枚の絵に惹きつけられた。過去に何度もみた絵だが、強く魅かれる。村上華岳「裸婦図」1920、真夏の生命の季節のなかで鈍色に輝いている。「肉であると同時に霊でもあるものの美しさ」(華岳『画論』)がある。
【作品リスト】
1:鈴木春信「梅の枝折り」
2:鈴木春信「柿の実とり」
3:鳥居清長「当世遊里美人合 橘妓と若衆」
4:鳥居清長「風俗東之錦 大名と若殿と乳母、侍女と若衆」
5:鳥居清長「社頭の見合」
6:喜多川歌麿「青楼七小町 鶴屋内 篠原」
7:喜多川歌麿「美人五面相 う満相」
8:武内桂舟「秋草『文藝倶楽部』」
9:水野年方「号外(口絵木版)」
10:寺崎廣業「花見『文藝倶楽部』」
11:和田英作「黄衣の少女」
12:上村松園「蛍」
13:上村松園「桜可里」
14:上村松園「新蛍」
15:上村松園「盆踊り」
16:上村松園「タベ」
17:上村松園「春のよそをひ」
18:上村松園「苫」
19:上村松園「春芳」
20:上村松園「春風」
21:上村松園「折鶴」
22:上村松園「つれづれ」
23:上村松園「詠哥」
24:上村松園「娘」
25:上村松園「夏美人」
26:上村松園「牡丹雪」
27:上村松園「庭の雪」
28:上村松園「杜鵑を聴く」
29上村松園「夕照」
30:尾竹竹坡「リボン(口絵木版)」
31:鏑木清方「小杉天外『魔風恋風』」
32:鏑木清方「伽羅」
33:今村紫紅「大原の奥」
34:池田輝方「夕立」
35:小林古径「河風」
36:土田麦僊「舞妓」
37:村上華岳「裸婦図」
38:奥村土牛「舞妓」
39:奥村土牛「舞妓(スケッチ)」
40:奥村土牛「舞妓(スケッチ)」
41:小倉遊亀「舞う(舞妓)」
42:小倉遊亀「舞う(芸者)」
43:林武「少女」
44:山川秀峰「芸者の図」
45:伊東深水「紅葉美人」
46:伊東深水「雪中美人」
47:伊東深水「春」
48:伊東深水「婦人像」
49:伊東深水「吉野太夫」
50:小早川清「美人詠歌図」
51:橋本明治「秋意」
52:杉山寧「少女Y(スケッチ)」
53:石本正「のれん」
54:石本正「舞妓座像」
55:三輪良平「舞妓」
56:平山郁夫「トルコ・ベリシラマ村の女」
57:平山郁夫「トルコ・ベリシラマ村の女」
58:青山亘幹「舞妓四題のうち11月」
59:青山亘幹「舞妓四題のうち 正月」
★「没後60年記念 上村松園、美人画の粋」山種美術館
2009年5月23日(土)~7月26日(日)

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2009年7月24日 (金)

奇想の王国 だまし絵展、Bunkamuraザ・ミュージアム・・・夏の夜の宴

Kisou_2009_2Kisou2009大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
真夏の夕暮れ、美術館に行く。友人たちが集まり、美術史家、池上英洋先生によるレクチュアである。展示室で絵をみながら講義をきく。
講義によると、だまし絵には次の6つの分野がある。
1、擬似彫刻 (高価な大理石の代用、グリザイユ技法、ダミー・ボード)例えば、ヤン・ファン・エイク「ゲントの祭壇画」*グリザイユ:彩色による立体感。
2、擬似建築 (画面を窓として奥を見る、画面の奥に広がる仮想空間) 例、ジョット「スクロベーニ礼拝堂」
3、額縁の否定・逆利用 (窓のこちら側にある世界を空想させる)例、ラファエロ『システィーナの聖母』Raffaello,La Madonna Sistina,1513、天使プットが額縁の下枠にもたれ、カーテンの幕がたれている。トロンプルイユ(騙し絵)の一種である。
4、“超”現実主義 (写実技法の誇示)例、カラヴァッジョ『果物籠』。ガラス瓶に写りこんだ物体を描き込み、書棚に並ぶ本や収集品を現実に存在するように再現。静物画は、ヴァニタスを表現する。「形あるものは滅びる」。象徴として髑髏が描かれ、果物は腐る。17世紀フランドルのヘイスブレヒツは、だまし絵の帝王と呼ばれる。
5、アナモルフォーズ (強調遠近法・歪曲画)17世紀の対宗教改革における幻視ヴィジョンの追求として、錯視を利用し、一種のモラルを風刺的に隠した作品(判じ絵)。例、ハンス・ホルバイン「大使たち」1533、ボッロミーニ「スパダ宮 錯視回廊」17世紀
6、多義図 (遠近法的な仕掛けを用いない錯視を用いた多義図=寄せ絵)アルチンボルト『ウェルトゥムヌス』これには、三重の主題が隠されている。果物(四季を超越した神格的存在)、ウェルトゥムヌス神の像、皇帝の肖像。多義図は「だまし絵」トロンプルイユではない。
■すべての絵画は「騙し絵」である
池上先生は、結論として「絵画とは画面の向こうに何かがあるように描くもの」であり「すべての絵画は"騙し絵"である」と示している。例えば、マザッチョ『聖三位一体像』1426(サンタ・マリア・ノヴェッラ教会)は、歪曲された教会の内廊を背景にキリストの磔刑が描かれている。これを聞いて次のように考えた。
■ミメーシスとしての藝術
プラトンは『国家』10巻において「ミメーシス(描写)は現実を対象とする」という。が、さらに「対象としての現実はイデアの似像(コピー)である」という。目に見えるものが真実ではない。
だまし絵は、自ら絵画の限界を示すことによって、藝術は対象そのものではない、藝術はミメーシスである、ことを示している。目に見える世界が欺くことを示している。
「だまし絵」とはトロンプルイユ(フランス語「目だまし」)を示し、観る者に束の間、一時、目の前にあるものは本物の事物であるという錯覚を起こさせることを意図する絵画の総称である。
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★展示構成
第1章 トロンプルイユの伝統
第2章 アメリカン・トロンプルイユ
第3章 イメージ詐術(トリック)の古典
第4章 日本のだまし絵
第5章 20世紀の巨匠たち -マグリット・ダリ・エッシャー
第6章 多様なイリュージョニズム -現代美術におけるイメージの策謀
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展示作品
アントニー・ヴァン・ステーンウィンケル「ヴァニタス―画家とその妻の肖像」1630年代 油彩・キャンヴァス アントワープ王立美術館
ジャン・ヴァレット=プノ「サラバットの版画のあるトロンプルイユ」18世紀
ジャン=フランソワ・ド・ル・モット「トロンプルイユの静物」1685
ギヨーム=ドミニク・ドンクル「トロンプルイユ」1785
コルネリス・ノルベルトゥス・ヘイスブレヒツ「トロンプルイユ」1665
ジュゼッペ・アルチンボルド「ウェルトゥムヌス(ルドルフ2世)」1590年ごろ、スコークロステル城(スウェーデン)、SkoklosterCastle,Sweden
コルネリス・ノルベルトゥス・ヘイスブレヒツ「食器棚」1663、フレズノ市博物館(カリフォルニア州)
ルネ・マグリット「夢」「白紙委任状」1965ワシントン・ナショナル・ギャラリー
サルヴァドール・ダリ「スルバランの頭蓋骨」1956「アン・ウッドワード夫人の肖像」
ピエール・ロワ「田舎の一日」1931ポンピドゥーセンター
エッシャー「上昇と下降」1960
河鍋暁斎「幽霊図1883年ごろ、掛幅(描表装)絹本着色、オランダ国立民族学博物館(ライデン)
福田美蘭「壁面5°の拡がり」1997年、変形額、国立国際美術館
トリック・ヒューズ「水の都」2008
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夏の夜の宴
美術館の後、教授、美術マニアたち、青い宝石さん、彩音さん、優佳さんたちと、恒例の夜の宴。終電まで渋谷で藝術談議に盛り上がる。彼女たちは終電がなくなり「ミッドナイト・クルージングに出かけます」という。2009/07/17
――
「だまし絵」は、ヨーロッパにおいて古い伝統をもつ美術の系譜のひとつです。古来より芸術家は迫真的な描写力をもって、平面である絵画をいかに本物と見違うほどに描ききるかに取り組んできました。それは、そこにはないイリュージョンを描き出すことへの挑戦でもありましたが、奇抜さだけでなく、あるときは芸術家の深い思想を含み、また時には視覚の科学的研究成果が生かされるなど、実に多様な発展を遂げました。本展覧会では、16、17世紀の古典的作品からダリ、マグリットら近現代の作家までの作品とともに、あわせて機知に富んだ日本の作例も紹介し、見る人の心を魅了してやまない「だまし絵」の世界を堪能していただきます。
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★「奇想の王国 だまし絵」展、Bunkamuraザ・ミュージアム
2009年6月13日(土)-8月16日(日)
http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/09_damashie/index.html

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2009年7月14日 (火)

生誕150年、ルネ・ラリック 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ、国立新美術館

Rene_lalique_2009_2大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
羽のあるニンフ、香水壜、常夜灯・二羽の孔雀。ラリックのガラス・コレクションが美しい。ギリシア神話、西洋美術のモチーフを用いた作品が圧倒的に美しい。400点、最大規模、膨大な作品が、優雅な空間に展示されている。
エミール・ガレより魅力的である。アール・ヌーヴォーからアール・デコへ、装飾藝術を極めたガラスの美。必見。
7月10日金曜日午前中、某所にて「論文作成」講義を行なう。午後、六本木の3つの美術展に行く。疲れていたので、国立新美術館「ラリック展」、ソファで昼寝する。サントリー美術館「天地人」にて狩野永徳『洛中洛外図屏風』(1565上杉博物館蔵)をみる。人影疎らな美術館で『洛中洛外図屏風』をじっくり見る。フジフィルムスクエアにて大山行男「日本の心 富士山展」みる。夕暮れ時、友人に招かれた、上野、東京文化会館小ホール、田村麻子ソプラノリサイタルに行く。シューベルトの歌曲、ドビッシー、ドリーブ、ヘンデル、バーンスタイン、グノーのオペラアリア3曲を聴く。
――
展示構成

第1部 華やぎのジュエリー
1.目覚め
2.愛の女神アリス
3.花開くジュエリー:モティーフの展開
 自然-花
 自然-草木
 自然-動物
 象徴-女性と花
 象徴-風
 象徴-水
 象徴-ダンス/音楽
 象徴-神話/宗教/物語
 デザイン画
4.グルベンキアンの愛したラリック
5.透明の世界へ
第2部 煌めきのガラス
1.ガラスへの扉
2.ふたつの時代、ふたつの顔
 アール・ヌーヴォーのなごり
 アール・デコへの展開
3.創作の舞台裏
4.シール・ペルデュ(蝋型鋳造)
5.1925年アール・デコ博覧会
6.皇族・王族とラリック
7.香りの小宇宙
 コティの香水瓶
 挑戦的デザイン
8.装いのガラス
 アクセサリー
 化粧道具
9.スピードの時代
10.室内のエレガンス
11・テーブルを彩るアート
――
ルネ・ラリック(René Lalique、1860-1945)
19世紀-20世紀のフランスのガラス工芸家、宝飾(ジュエリー)デザイナー。
アール・ヌーヴォー、アール・デコの両時代にわたって活躍した。
前半生はアール・ヌーヴォー様式の宝飾(ジュエリー)デザイナーとして活躍し、第一人者として名声を得た。宝飾デザイナー時代から、素材としてのガラスに注目していたが、ガラス工芸家に転進するのは50歳を過ぎてからである。花瓶のような工芸品から、豪華客船の装飾、ガラス製の噴水に至るまで様々な分野の作品があり、後半生は近代ガラス工芸の開拓者として、また素材としてのガラスの可能性を広げた。ガラス工芸史上、特筆される存在。
――
★生誕150年 ルネ・ラリック 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ
2009年6月24日(水)-2009年9月7日(月)、国立新美術館
http://www.tokyo-np.co.jp/event/lalique/glass.html

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2009年7月 7日 (火)

2009年7月~12月スケジュール、美術館へ行こう!

200908 ★西洋美術
6/13~8/16  奇想の王国 だまし絵展  Bunkamuraザ・ミュージアム★★★
7/3~9/23   ゴーギャン展            東京近代美術館★★★
6/27~9/23  海のエジプト展~海底からよみがえる、古代都市アレクサンドリアの至宝~        パシフィコ横浜★★★
  
7/7~8/16  かたちは、うつる―国立西洋美術館所蔵版画展 国立西洋美術館
7/4~8/30    メキシコ20世紀絵画展      世田谷美術館
7/14~10/12  黄金の都 シカン         国立科学博物館
7/29~8/31   ビュフェとアナベル―愛と美の軌跡展   横浜そごう美術館
8/1~10/4    トリノ・エジプト展-イタリアが愛した美の遺産-東京都美術館★★★
6/24~9/7 ルネ・ラリック 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ 国立新美術館★★★
9/3~10/25 ベルギー幻想美術館展  Bunkamuraザ・ミュージアム★★★
  クノップフからデルヴォー、マグリットまで 姫路市立美術館所蔵
9/5~10/18   パウル・クレー展         横須賀美術館
9/12~11/29  ベルギー近代絵画のあゆみ     損保ジャパン美術館
9/12~11/29  オルセー美術館展パリのアールヌーヴォー 世田谷美術館
9/16~10/12  クリムト・シーレ、ウィーン世紀末展  日本橋高島屋
9/19~12/13  古代ローマ帝国の遺産―栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ―       国立西洋美術館★★★           
9/25~12/14  THE ハプスブルク        国立新美術館★★★
9/26~11/29  エミール・ガレ展         茨城県陶芸館
10/3~10/25  古代カルタゴとローマ展      大丸東京美術館★★★
           ~きらめく地中海文明の至宝~
11/10~12/23 ロートレック展          Bunkamura
★日本美術
7/4~9/6     写楽 幻の肉筆画         江戸東京博物館★★★
7/4~8/16    藝大美術館コレクション展     藝大美術館
7/11~8/23   小林かいち展           ニューオータニ美術館
7/11~9/6    道教の美術 TAOISM ART    三井記念美美術館
7/14~9/6    染付展              国立東京博物館
7/14~9/6    伊勢神宮と神々の美術       国立東京博物館
7/18~8/30   百鬼夜行絵巻展          国立歴史博物館
7/25~9/6 シアトル美術館所蔵 日本・東洋美術名品展 サントリー美術館★★★
         ―美しきアジアの玉手箱―
8/25~9/6    十二代三和休雪展         日本橋三越
9/5~10/12   英一蝶展             板橋区美術館★★★
9/19~1/11   聖地チベット展          上野の森美術館
9/19~11/23  高橋誠一郎浮世絵コレクション展  三井記念美術館
10/1~11/29  速水御舟 -日本画への挑戦―   山種美術館★★★
10/6~11/29  皇室の名宝-日本美の華-     国立東京博物館★★★
           1期:2009年10月6日(火)~11月3日(火・祝)
           2期:2009年11月12日(木)~11月29日(日)
10/7~11/8   国宝那智瀧図と自然の造形     根津美術館
10/10~12/23 古伊万里展            東京都庭園美術館
10/24~12/20 水墨画展             静嘉堂文庫
10/24~12/20 冷泉家 王朝の和歌守展      東京都美術館
10/24~11/29 伝えゆく典籍の至宝展       五島美術館
11/28~1/11  鏑木清方展            サントリー美術館
12/1~1/24   村山槐多展            松濤美術館
12/5~1/31   東山魁夷展            山種美術館
12/5~2/7    柴田是真展            三井記念美術館
12/11~3月   束芋展               横浜美術館

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