ボルゲーゼ美術館展 ラファエロ「一角獣を抱く貴婦人」・・レオナルド派「レダ」、カラヴァッジョ「ヨハネ」
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
森の中のボルゲーゼ美術館に行ったのは、2002年初夏である。ベルニーニとカラヴァッジョを観るのが主たる目的だった。しかし、私の秘かな目的はレオナルド派「レダ」を観ることにあった。ボルゲーゼ美術館は、広大な庭園の木々に囲まれた森のなかに存在するボルゲーゼ家の館。夥しいバロック美術に埋もれた美の宝庫である。ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ「アポロンとダフネ」1623「プロセルピナの略奪」1622「ダビデ」に、うっとりと時のたつのを忘れて見惚れる。カラヴァッジョ「洗礼者ヨハネ」1610「病めるバッカス」1593は、カラヴァッジョ・マニアにはたまらない魅力である。友人のソプラノ歌手は、カラヴァッジョ・マニアである。
私は「レダ」を探して、美術館の隅から隅まで、歩き回った。レオナルド派「レダ」は、美術館の隠れた場所にひっそりとあった。レオナルド「レダ」原画は失われて、弟子による模写のみが存在する。レオナルド派「レダ」の完成度の高い作品は3枚ある。ボルゲーゼ、ウフィッツィ=パラッツォ・ベッキオから寄託、ソールズベリー「ウィルトン・ハウス」にある。
「レダと白鳥」(ボルゲーゼ):ソドマ派もしくはレオナルドの下絵をもとにした弟子の作品、1505年以降、油彩 板112×86cm*
「レダと白鳥」(ウィルトン・ハウス):弟子チェーザレ・ダ・セストによる模写かレオナルドの下絵をもとにした作品。1505~10年、油彩 板、96.5×73.7cm *cf.池上英洋『レオナルド・ダ・ヴィンチ』(西洋絵画の巨匠8)2007
ボルゲーゼ美術館展に、レオナルド派「レダ」がくる。再会が楽しみである。
■ボルゲーゼ美術館展 展示目録
序章 ボルゲーゼ・コレクションの誕生 No. 作家名 作品名 制作年 技法・素材
1 アレッサンドロ・スペッキ(原画・版刻)、ドメニコ・デ・ロッシ(刷り) ピンチアーナ門外ボルゲーゼ卿の館ファサード第1図 1699 エングレーヴィング
2 アレッサンドロ・スペッキ(原画・版刻)、ドメニコ・デ・ロッシ(刷り) ピンチアーナ門外ヴィラ・ボルゲーゼの館ファサード第2図 1699 エングレーヴィング
3 ジョヴァンニ・ジャコモ・デ・ロッシ(刷り) ピンチアーナ門外ヴィラ・ボルゲーゼの館、ジョヴァンニ・ヴァサンツィオ・フラミンゴの建築 17世紀 エングレーヴィング
4 シモーネ・フェリーチェ・デリーノ(原画)、ジョヴァンニ・ジャコモ・デ・ロッシ(刷り) ピンチアーナ門外ヴィラ・ボルゲーゼ卿の庭園景観図 1683 エングレーヴィング
5 マッテオ・グリューテル(原画・版刻)、ジョヴァンニ・ジャコモ・デ・ロッシ(刷り) ヴィラ・ボルゲーゼ 17世紀 エングレーヴィング
6 マルチェッロ・プロヴェンツァーレ パウルス5世(カミッロ・ボルゲーゼ)の肖像 1621 モザイク
7 ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿の胸像 1632 カッラーラ産大理石
8 マルチェッロ・プロヴェンツァーレ オルフェウスの姿のシピオーネ・ボルゲーゼ 1618 モザイク
I 15世紀・ルネサンスの輝き No. 作家名 作品名 制作年 技法・素材
9 ウンブリアの画家(16世紀) 聖セバスティアヌス 16世紀前半 油彩、板
10 サンドロ・ボッティチェリとその弟子たち 聖母子、洗礼者ヨハネと天使 c. 1488 テンペラ、板
11 ラファエロ・サンツィオ 一角獣を抱く貴婦人 c. 1506 油彩、カンヴァス、板で裏打ち
12 リドルフォ・デル・ギルランダイオ 若者の肖像 16世紀初頭 油彩、板
13 作家不詳(16–17世紀に活動)、ジョルジョーネの模倣者 フルートを持つ歌手 c. 1580
もしくは17世紀 油彩、カンヴァス
14 マルコ・ドッジョーノ 祝福のキリスト c. 1505 油彩、板
15 レオナルド・ダ・ヴィンチ(模写) レダ 16世紀 第1四半期 テンペラ、板
Ⅱ 16世紀・ルネサンスの実り-百花繚乱の時代 No. 作家名 作品名 制作年 技法・素材
16 カリアーニ 聖母子と聖ペテロ c. 1520–23 油彩、カンヴァス
17 ジョヴァンニ・ジローラモ・サヴォルド 若者の肖像 c. 1530 油彩、カンヴァス
18 ジローラモ・ダ・トレヴィーゾ・イル・ジョーヴァネに帰属 眠るヴィーナス c. 1520–23 油彩、カンヴァス
19 パリス・ボルドン ヴィーナス、サテュロスとキューピッド c. 1555–60 油彩、カンヴァス
20 ヤコポ・バッサーノ 春 c. 1576 油彩、カンヴァス
21 ヴェロネーゼ 魚に説教する聖アントニオ c. 1580 油彩、カンヴァス
22 アントニオ・パルマ 放蕩息子 c. 1560–70 油彩、カンヴァス
23 ドッソ・ドッシ アレクサンドリアの聖カタリナ c. 1540 油彩、カンヴァス
24 作者不詳(17世紀前半に活動)、ドッソ・ドッシの追随者 ゴリアテの首を持つダヴィデと従兵 17世紀 油彩、板
25 アンニーバレ・カラッチ 聖フランチェスコ c. 1585–86 油彩、カンヴァス
26 ブレシャニーノ ヴィーナスとふたりのキューピッド c. 1520–25 油彩、板
27 セバスティアーノ・デル・ピオンボ 十字架を担うキリスト c. 1540 油彩、カンヴァス
28 シピオーネ・プルツォーネ 聖ヨハネと聖アンナのいる聖家族 c. 1588–90 油彩、カンヴァス
29 アゴスティーノ・カラッチ 天使の栄光のうちに聖痕を受ける聖フランチェスコ 16世紀末 油彩、カンヴァス
30 ミケーレ・ディ・リドルフォ・デル・ギルランダイオ レダ c. 1560–70 油彩、板
31 ミケーレ・ディ・リドルフォ・デル・ギルランダイオ ルクレツィア c. 1560–70 油彩、板
32 作者不詳(16世紀後半に活動)、ガローファロの追随者 我に触れるな(ノリ・メ・タンゲレ) 16世紀後期 油彩、カンヴァス
33 ペッレグリーノ・ティバルディ 幼児礼拝 1549 油彩、カンヴァス
34 ルカ・カンビアーソ 海のヴィーナスとキューピッド 1560–65 油彩、カンヴァス
35 ヤコポ・ズッキ アメリカ大陸発見の寓意(珊瑚採り) c. 1585 油彩、銅版
Ⅲ 17世紀・新たな表現に向けて-カラヴァッジョの時代 No. 作家名 作品名 制作年 技法・素材
36 作者不詳(17世紀に活動)、カラヴァッジョの追随者 2匹の蜥蜴がいる静物 1602–07 油彩、カンヴァス
37 ラヴィニア・フォンターナ 眠れるキリスト 1591 油彩、銅板
38 レアンドロ・バッサーノ 聖三位一体 17世紀初頭 油彩、銅板
39 カヴァリエール・ダルピーノに帰属 アモールに冠を被せられるヴィーナス 1607年以前 油彩、カンヴァス
40 カラヴァッジョ 洗礼者ヨハネ 1609–10 油彩、カンヴァス
41 ジョヴァンニ・バリオーネ この人を見よ(エッケ・ホモ) c. 1610 油彩、カンヴァス
42 バッティステッロ ゴリアテの首を持つダヴィデ 1612 油彩、カンヴァス
43 ジョヴァン・フランチェスコ・グエッリエーリに帰属 囚人の夢を解釈するヨセフ 1615–18 油彩、カンヴァス
44 グエルチーノ 放蕩息子 c. 1627–28 油彩、カンヴァス
45 ジュゼッペ(フセペ)・デ・リベーラ 物乞い c. 1617–20 油彩、カンヴァス
46 ゲラルド・デッレ・ノッティ(ヘリット・ファン・ホントホルスト) スザンナと老人たち 1655 油彩、カンヴァス
47 アンドレア・サッキ クレメンテ・メルリーニ卿の肖像 1630–31 油彩、カンヴァス
48 ジョヴァン・フランチェスコ・ロマネッリ 巫女シビラ 1640–50 油彩、カンヴァス
ボルゲーゼと日本:支倉常長と慶長遺欧使節 No. 作家名 作品名 制作年 技法・素材
特別出品 アルキータ・リッチ(かつてはクロード・デリュに帰属) 支倉常長像 1615 油彩、カンヴァス
※《支倉常長像》のみ個人蔵(ローマ)、他は全てボルゲーゼ美術館蔵
*京都国立近代美術館資料、参照。
■ボルゲーゼ美術館展 ラファエロ「一角獣を抱く貴婦人」
京都国立近代美術館:2009年10月31日(土)~12月27日(日)
http://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2009/377.html
東京都美術館:2010年1月16日(土)~4月4日(日)
http://www.borghese2010.jp/
| 固定リンク
| コメント (1)
| トラックバック (1)
最近のコメント