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2009年11月

2009年11月30日 (月)

ボルゲーゼ美術館展 ラファエロ「一角獣を抱く貴婦人」・・レオナルド派「レダ」、カラヴァッジョ「ヨハネ」

Borghese_2010Borghese_2010_03大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より 
森の中のボルゲーゼ美術館に行ったのは、2002年初夏である。ベルニーニとカラヴァッジョを観るのが主たる目的だった。しかし、私の秘かな目的はレオナルド派「レダ」を観ることにあった。ボルゲーゼ美術館は、広大な庭園の木々に囲まれた森のなかに存在するボルゲーゼ家の館。夥しいバロック美術に埋もれた美の宝庫である。ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ「アポロンとダフネ」1623「プロセルピナの略奪」1622「ダビデ」に、うっとりと時のたつのを忘れて見惚れる。カラヴァッジョ「洗礼者ヨハネ」1610「病めるバッカス」1593は、カラヴァッジョ・マニアにはたまらない魅力である。友人のソプラノ歌手は、カラヴァッジョ・マニアである。
私は「レダ」を探して、美術館の隅から隅まで、歩き回った。レオナルド派「レダ」は、美術館の隠れた場所にひっそりとあった。レオナルド「レダ」原画は失われて、弟子による模写のみが存在する。レオナルド派「レダ」の完成度の高い作品は3枚ある。ボルゲーゼ、ウフィッツィ=パラッツォ・ベッキオから寄託、ソールズベリー「ウィルトン・ハウス」にある。
「レダと白鳥」(ボルゲーゼ):ソドマ派もしくはレオナルドの下絵をもとにした弟子の作品、1505年以降、油彩 板112×86cm*
「レダと白鳥」(ウィルトン・ハウス):弟子チェーザレ・ダ・セストによる模写かレオナルドの下絵をもとにした作品。1505~10年、油彩 板、96.5×73.7cm *cf.池上英洋『レオナルド・ダ・ヴィンチ』(西洋絵画の巨匠8)2007
ボルゲーゼ美術館展に、レオナルド派「レダ」がくる。再会が楽しみである。
■ボルゲーゼ美術館展 展示目録
序章 ボルゲーゼ・コレクションの誕生 No. 作家名 作品名 制作年 技法・素材
1 アレッサンドロ・スペッキ(原画・版刻)、ドメニコ・デ・ロッシ(刷り) ピンチアーナ門外ボルゲーゼ卿の館ファサード第1図 1699 エングレーヴィング
2 アレッサンドロ・スペッキ(原画・版刻)、ドメニコ・デ・ロッシ(刷り) ピンチアーナ門外ヴィラ・ボルゲーゼの館ファサード第2図 1699 エングレーヴィング
3 ジョヴァンニ・ジャコモ・デ・ロッシ(刷り) ピンチアーナ門外ヴィラ・ボルゲーゼの館、ジョヴァンニ・ヴァサンツィオ・フラミンゴの建築 17世紀 エングレーヴィング
4 シモーネ・フェリーチェ・デリーノ(原画)、ジョヴァンニ・ジャコモ・デ・ロッシ(刷り) ピンチアーナ門外ヴィラ・ボルゲーゼ卿の庭園景観図 1683 エングレーヴィング
5 マッテオ・グリューテル(原画・版刻)、ジョヴァンニ・ジャコモ・デ・ロッシ(刷り) ヴィラ・ボルゲーゼ 17世紀 エングレーヴィング
6 マルチェッロ・プロヴェンツァーレ パウルス5世(カミッロ・ボルゲーゼ)の肖像 1621 モザイク
7 ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿の胸像 1632 カッラーラ産大理石
8 マルチェッロ・プロヴェンツァーレ オルフェウスの姿のシピオーネ・ボルゲーゼ 1618 モザイク

I  15世紀・ルネサンスの輝き No. 作家名 作品名 制作年 技法・素材
9 ウンブリアの画家(16世紀) 聖セバスティアヌス 16世紀前半 油彩、板
10 サンドロ・ボッティチェリとその弟子たち 聖母子、洗礼者ヨハネと天使 c. 1488 テンペラ、板
11 ラファエロ・サンツィオ 一角獣を抱く貴婦人 c. 1506 油彩、カンヴァス、板で裏打ち
12 リドルフォ・デル・ギルランダイオ 若者の肖像 16世紀初頭 油彩、板
13 作家不詳(16–17世紀に活動)、ジョルジョーネの模倣者 フルートを持つ歌手 c. 1580
もしくは17世紀 油彩、カンヴァス
14 マルコ・ドッジョーノ 祝福のキリスト c. 1505 油彩、板
15 レオナルド・ダ・ヴィンチ(模写) レダ 16世紀 第1四半期 テンペラ、板

Ⅱ 16世紀・ルネサンスの実り-百花繚乱の時代 No. 作家名 作品名 制作年 技法・素材
16 カリアーニ 聖母子と聖ペテロ c. 1520–23 油彩、カンヴァス
17 ジョヴァンニ・ジローラモ・サヴォルド 若者の肖像 c. 1530 油彩、カンヴァス
18 ジローラモ・ダ・トレヴィーゾ・イル・ジョーヴァネに帰属 眠るヴィーナス c. 1520–23 油彩、カンヴァス
19 パリス・ボルドン ヴィーナス、サテュロスとキューピッド c. 1555–60 油彩、カンヴァス
20 ヤコポ・バッサーノ 春 c. 1576 油彩、カンヴァス
21 ヴェロネーゼ 魚に説教する聖アントニオ c. 1580 油彩、カンヴァス
22 アントニオ・パルマ 放蕩息子 c. 1560–70 油彩、カンヴァス
23 ドッソ・ドッシ アレクサンドリアの聖カタリナ c. 1540 油彩、カンヴァス
24 作者不詳(17世紀前半に活動)、ドッソ・ドッシの追随者 ゴリアテの首を持つダヴィデと従兵 17世紀 油彩、板
25 アンニーバレ・カラッチ 聖フランチェスコ c. 1585–86 油彩、カンヴァス
26 ブレシャニーノ ヴィーナスとふたりのキューピッド c. 1520–25 油彩、板
27 セバスティアーノ・デル・ピオンボ 十字架を担うキリスト c. 1540 油彩、カンヴァス
28 シピオーネ・プルツォーネ 聖ヨハネと聖アンナのいる聖家族 c. 1588–90 油彩、カンヴァス
29 アゴスティーノ・カラッチ 天使の栄光のうちに聖痕を受ける聖フランチェスコ 16世紀末 油彩、カンヴァス
30 ミケーレ・ディ・リドルフォ・デル・ギルランダイオ レダ c. 1560–70 油彩、板
31 ミケーレ・ディ・リドルフォ・デル・ギルランダイオ ルクレツィア c. 1560–70 油彩、板
32 作者不詳(16世紀後半に活動)、ガローファロの追随者 我に触れるな(ノリ・メ・タンゲレ) 16世紀後期 油彩、カンヴァス
33 ペッレグリーノ・ティバルディ 幼児礼拝 1549 油彩、カンヴァス
34 ルカ・カンビアーソ 海のヴィーナスとキューピッド 1560–65 油彩、カンヴァス
35 ヤコポ・ズッキ アメリカ大陸発見の寓意(珊瑚採り) c. 1585 油彩、銅版

Ⅲ 17世紀・新たな表現に向けて-カラヴァッジョの時代 No. 作家名 作品名 制作年 技法・素材
36 作者不詳(17世紀に活動)、カラヴァッジョの追随者 2匹の蜥蜴がいる静物 1602–07 油彩、カンヴァス
37 ラヴィニア・フォンターナ 眠れるキリスト 1591 油彩、銅板
38 レアンドロ・バッサーノ 聖三位一体 17世紀初頭 油彩、銅板
39 カヴァリエール・ダルピーノに帰属 アモールに冠を被せられるヴィーナス 1607年以前 油彩、カンヴァス
40 カラヴァッジョ 洗礼者ヨハネ 1609–10 油彩、カンヴァス
41 ジョヴァンニ・バリオーネ この人を見よ(エッケ・ホモ) c. 1610 油彩、カンヴァス
42 バッティステッロ ゴリアテの首を持つダヴィデ 1612 油彩、カンヴァス
43 ジョヴァン・フランチェスコ・グエッリエーリに帰属 囚人の夢を解釈するヨセフ 1615–18 油彩、カンヴァス
44 グエルチーノ 放蕩息子 c. 1627–28 油彩、カンヴァス
45 ジュゼッペ(フセペ)・デ・リベーラ 物乞い c. 1617–20 油彩、カンヴァス
46 ゲラルド・デッレ・ノッティ(ヘリット・ファン・ホントホルスト) スザンナと老人たち 1655 油彩、カンヴァス
47 アンドレア・サッキ クレメンテ・メルリーニ卿の肖像 1630–31 油彩、カンヴァス
48 ジョヴァン・フランチェスコ・ロマネッリ 巫女シビラ 1640–50 油彩、カンヴァス
ボルゲーゼと日本:支倉常長と慶長遺欧使節 No. 作家名 作品名 制作年 技法・素材
特別出品 アルキータ・リッチ(かつてはクロード・デリュに帰属) 支倉常長像 1615 油彩、カンヴァス
※《支倉常長像》のみ個人蔵(ローマ)、他は全てボルゲーゼ美術館蔵
*京都国立近代美術館資料、参照。

■ボルゲーゼ美術館展 ラファエロ「一角獣を抱く貴婦人」
京都国立近代美術館:2009年10月31日(土)~12月27日(日)
http://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2009/377.html
東京都美術館:2010年1月16日(土)~4月4日(日)
http://www.borghese2010.jp/

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2009年11月27日 (金)

速水御舟展、新山種美術館・・・炎と闇

20091001大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より 
40歳で夭折した画家、速水御舟は、「炎舞」「名樹散椿」他、不朽の名画を残した。「炎舞」の舞い飛ぶ蛾と炎と闇は何を象徴するのか。「名樹散椿」の枝を広げる樹木と舞い散る花弁は、何を意味するのか。御舟の絵画空間は深い。
御舟は1930(昭和5)年、大観らとローマ日本美術展覧会美術使節として10ヶ月間渡欧、13か国48都市を訪れて、ヨーロッパ美術を見た。エルグレコ、ジョットに影響を受けて、人物画を模索し死に至るまで画境を追求した。未完の「婦女群像」1934が残されている。御舟の見果てぬ夢を辿る展覧会である。

御舟はこれまでくりかえし観てきたが、何度みても見飽きない美しさと深さを秘めている。*
*「速水御舟展」山種1976、「日本美術院創立100年記念展 近代日本美術の軌跡」1998東京国立博物館、「速水御舟展」山種2004年、「速水御舟展」平塚市美術館2008、「琳派から日本画へ」山種2008年。
■展示作品
≪炎舞≫(重要文化財)1925、≪名樹散椿≫(重要文化財)1929、 ≪山科秋≫、≪桃花≫、≪春昼≫、≪百舌巣≫、 ≪昆虫二題葉蔭魔手・粧蛾舞戯≫1926、≪翠苔緑芝≫1928、 ≪紅梅・白梅≫、≪豆花≫、≪オリンピアス神殿遺址≫1931、 ≪暗香≫、≪牡丹花(墨牡丹)≫1934、≪あけぼの・春の宵≫、 ≪秋茄子≫他 特別出品 ≪婦女群像≫1934、「渡欧日記」1930、他120点。
展示構成
第1章:画壇からの出発
第2章:古典への挑戦
第3章:渡欧から人物画へ
第4章:挑戦者の葛藤
――
大正から昭和を駆け抜けた日本画家・速水御舟。40年の短い生涯におよそ700余点の作品を残しましたが、その多くが所蔵家に秘蔵されて公開されることが少なかったため、「幻の画家」と称されていました。
 初期の南画風の作風から、細密描写、象徴的作風、写実と装飾を融合した画風、そして水墨画へと、御舟はその生涯を通じて、短いサイクルで次々と新しい試みに挑み続け、常に挑戦者であろうとしました。
 新「山種美術館」開館記念特別展では、当館所蔵の≪炎舞≫≪名樹散椿≫(重要文化財)を始めとする120点の御舟作品に加え、本邦初公開となる未完の大作≪婦女群像≫(個人蔵)および1930(昭和5)年の 渡欧日記(個人蔵)などを出展します。
 これらの新出資料を通じて、1935昭和10年40歳の若さで急逝した御舟が新たに目指していた方向性が明らかになることでしょう。本展では、山種美術館所蔵の御舟作品をすべて展示し、皆様にいま一度、御舟作品の凄みを体感していただきたいと思っています。
――
■新山種美術館開館記念特別展「速水御舟-日本画への挑戦-」
会期:2009年10月1日(木)~11月29日(日)
山種美術館 〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36
http://www.yamatane-museum.or.jp/

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2009年11月24日 (火)

冷泉家 王朝の和歌守展・・・夢の浮き橋

20091024 俊成、定家の書をみると、新古今の名歌に酔った日々が心に蘇る。新古今は文学史に燦然と輝く星、名作の源泉である。藤原俊成、藤原定家の絶唱が書かれた書。千載和歌集、新古今和歌集は、11世紀末から12世紀、諸行無常の乱世に架かる夢の浮き橋である。日本文化の根源、歴史そのものである。俊成の書は大きく鋭く屈曲した流麗で美しい筆跡、巨匠の書であり、定家の書は繊細な詩人の筆跡である。定家の名歌が心に蘇る。
春の夜の夢のうきはしとだえして嶺にわかるるよこぐものそら
移香の身にしむばかりちぎるとてあふぎの風のゆくへ尋ねむ
かきやりしその黒髪のすぢごとにうちふす程はおも影ぞ立つ
大空はうめのにほひに霞みつつくもりもはてぬ春の夜の月
梅の花にほひを移す袖のうへに軒漏る月の影ぞあらそふ
白妙のそでのわかれに露おちて身にしむ色のあきかぜぞ吹く
見渡せば花ももみぢもなかりけり浦のとまやのあきの夕ぐれ
駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野のわたりの雪の夕ぐれ
 藤原俊成、定家を祖とする「和歌の家」、京都・冷泉家の至宝を紹介する「冷泉家 王朝の和歌守(うたもり)展」、上野の東京都美術館。定家筆の国宝「古今和歌集 嘉禄二年本」など平安、鎌倉時代から受け継がれる国宝、重要文化財438点以上。古典マニア、必見。
■展示作品
「拾遺愚草」藤原定家自筆 鎌倉時代前期:定家の自撰歌集、歌数は2885首。
「古来風躰抄」藤原俊成自筆 建久8年(1197):俊成の著した歌学書で、84歳の時の書写。著者自筆本でこれほど古いものは世界的にも稀有。
「明月記(めいげつき)」第九 建仁3年春記 藤原定家自筆 鎌倉時代前期:
「古今和歌集」嘉禄二年本、藤原定家筆 嘉禄2年(1226):定家65歳のときの書写。
「隠岐本 新古今和歌集」(おきぼん)筆者未詳 鎌倉時代前期:「隠岐本」とは、後鳥羽院が配流先の隠岐で、もとの「新古今和歌集」をみずから精撰抄出した。
「後撰和歌集」天福二年本、藤原定家筆 天福2年(1234):定家は『後撰和歌集』も10回近く書写したが、現存はこの一冊のみ。
「千載和歌集」室町時代前期、重文。
「詠歌大概」仮名本甲、二条為藤。
■展示構成
第1章 家祖(かそ)文学史に輝くスターたち
第2章 明月記(めいげっき)定家の自筆の日記 800年前の息づかい
第3章 勅撰集(ちょくせんしゅう)宮廷文化の精華 最高水準の和歌が集結
第4章 私家集(しかしゅう)「歌の家」の必須資料
第5章 歌書(かしょ)と物語 貴族の教養 第一は歌の心得
第6章 宮廷と宸翰(しんかん)極彩華麗な宮廷の香り
―――――――
和歌-やまとうた-は長期にわたり日本文芸の首座を占めつづけてきました。なかでも天皇や院の命で編まれる勅撰和歌集は宮廷文化の華であり、その撰者になることは、歌人にとってこのうえない名誉でした。冷泉家は、三代つづけて勅撰撰者となった藤原俊成、定家、為家を祖に持ち、歴代が宮廷や武家の歌道師範をつとめた家柄です。京都御所にほど近い、現存最古の公家住宅である同家の蔵には、800年の伝統のなかで集積されてきた勅撰集、私家集(個人歌集)、歌学書、古記録などが収められ、いまなお「歌の家」として尊崇を集めています。それらの書物は「冷泉家時雨亭叢書」として刊行され、このほど全84巻の叢書が完結したのを機に、冷泉家が守り伝えてきた貴重な典籍や古文書類の精髄をお目にかけるのが本展です。俊成筆『古来風躰抄』、定家筆『古今和歌集 嘉禄二年本』『後撰ごせん和歌集 天福二年本』『拾遺愚草』『明月記』の国宝5点をはじめ、展示替を交え約400点もの国宝・重要文化財が公開される初めての機会です。また、天皇の書「宸翰」も披露されます。天皇から授かった御衣表装された華麗な作品群は、観る者を一気にみやびな世界へといざなうことでしょう。
■「冷泉家 王朝の和歌守(うたもり)展」東京都美術館
2009年10月24日(土)~12月20日(日)
作品保護のため、前期と後期で全作品を入れ替える。
前期:2009年10月24日(土)~11月23日(月・祝)
後期:2009年11月25日(水)~12月20日(日)
http://www.asahi.com/reizei/

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2009年11月22日 (日)

「皇室の名宝 日本美の華」2期・・・螺鈿紫檀阮咸、漆胡瓶、正倉院宝物と書・絵巻の名品

Koushitsu20092
Radenshitangenkan2009
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
木枯らし吹く夕暮れ、「皇室の名宝2期」を観に行く。初日である。正倉院は、聖武天皇の遺愛の品を納め、聖武天皇と光明皇后の天平時代の文化が封じ込められている。
「螺鈿紫檀阮咸」「平螺鈿背円鏡」「銀薫炉」「漆胡瓶」、奈良時代・8世紀 正倉院宝物、が美しい。「扇面散屏風」俵屋宗達筆(8曲1双 江戸時代)は、平治物語の合戦場面の扇を48面散らした屏風、秀麗である。琳派の傑作の一つ。
――
展示作品の一部
「聖徳太子像」(法隆寺献納宝物)奈良時代・8世紀、正倉院御物、
「蒙古襲来絵詞」鎌倉時代・13世紀、
「春日権現験記絵」高階隆兼筆、鎌倉時代・延慶2(1309)年頃、三の丸尚蔵館蔵、「扇面散屏風」俵屋宗達筆 8曲1双 江戸時代、が必見。
王羲之筆「喪乱帖」、
「孫過庭書譜断簡」
伝空海筆、「伊都内親王願文」
伝橘逸勢筆(正倉院)、「恩命帖」藤原佐理筆、「更科日記」藤原定家筆、三筆の書、流麗な名作がある。
★螺鈿紫檀阮咸」らでんしたんのげんかん:北倉30奈良時代・8世紀、正倉院宝物。
円形の胴に長いまっすぐな頸をつけた、4絃楽器。阮咸の名称は、中国・西晋の時代に俗塵を離れて竹林に隠遁生活を送ったという竹林の七賢の一人、阮咸がこの楽器を愛用していたところからこの名がある。一面に精巧な螺鈿細工が施され、胴部の背面には長い瓔珞をくわえた一対の鸚鵡が表されている。貝の白と、琥珀の下に透けてみえる赤い彩色の対比が華麗。『国家珍宝帳』に記載があり聖武天皇愛用の楽器であったと考えられる。
――
東京国立博物館特別展御即位20年記念特別展
「皇室の名宝-日本美の華」2期 正倉院宝物と書・絵巻の名品
2009年11月12日(木)~11月29日(日)
1章 古の美 考古遺物・法隆寺献納宝物・正倉院宝物
2章 古筆と絵巻の競演
3章 中世から近世の宮廷美 宸翰と京都御所のしつらえ
4章 皇室に伝わる名刀
http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=6890

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2009年11月21日 (土)

THEハプスブルク 華麗なる王家と美の巨匠たち・・・黄昏のウィーンの思い出

20090925Hap20090925Hap107大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より 
秋の夕暮れ、金曜日の夜は、ナイトミュージアム。陰鬱なドイツ皇帝たちの容貌が蘇る。神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世(1459-1519)から始まるハプスブルク家の繁栄。「戦争は他家に任せておけ。幸いなオーストリアよ、汝は結婚せよ」Bella gerant alii, tu, felix Austria, nube!。15世紀の言葉。が示す通り、645年間、ハプスブルク家は結婚政策により領土を拡大した。官僚的な権力者、陰鬱な王たちの狭間で、マリア・テレジア、マリー・アントワネット、エリーザベト、ハプスブルク家の三人の美女たちが、華麗なシェーンブルン宮殿と藝術を生み出した。
ハプスブルク家歴代の収集家たち。デューラーを庇護したマクシミリアン1世、ボスを蒐集したフィリップ美公、ティツィアーノを召し抱えたカール5世、ボスを蒐集したフェリペ4世、宮廷画家アルチンボルトを擁したルドルフ2世、ベラスケスを側近としても重用したフェリペ4世。
ルーカス・クラナッハ(父)「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」は、秀逸。美女と血の滴る聖者の首、血とエロス、死と生の対比が強烈な美を生む。洗礼者聖ヨハネと権力者と傲慢な女とその娘が生みだす悲劇が美しい。「洗礼者ヨハネとサロメ」は、魅力的な絵画のテーマである。古代から藝術家の心を惹きつけてやまない主題である。
10月16日「夜のきらめき」フジフイルム・スクエア、二紀展、を観た後、「THE ハプスブルグ」を見る。
■展示作品
アンドレアス・メラー「11歳の女帝マリア・テレジア」1727年 油彩、カンヴァス ウィーン美術史美術館蔵
フランツ・クサファー・ヴィンターハルター「オーストリア皇妃エリザベート」1865年 油彩、カンヴァス 国家家財管理局 宮廷家財庫 ウィーン家具博物館蔵
フランツ・シュロッツベルク「オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世」1865-1870年頃 油彩、カンヴァス ウィーン美術史美術館蔵
ジョルジョーネ「矢を持った少年」1505年頃 油彩、板 ウィーン美術史美術館蔵
ティツィアーノ「聖母子と聖パウロ」1540年代初期 油彩、カンヴァス ブダペスト国立西洋美術館蔵
アルブレヒト・デューラー「若いヴェネツィア女性の肖像」1505年 油彩、板 ウィーン美術史美術館蔵
ルーカス・クラナッハ(父)「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」1530年代 油彩、板 ブダペスト国立西洋美術館蔵
ディエゴ・ベラスケス「白衣の王女マルガリータ・テレサ」1656年頃 油彩、カンヴァス ウィーン美術史美術館蔵
ディエゴ・ベラスケス「皇太子フェリペ・プロスペロ」1659年 油彩、カンヴァス ウィーン美術史美術館蔵
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「悪魔を奈落に突き落とす大天使ミカエル」1666年頃 油彩、カンヴァス ウィーン美術史美術館蔵
ヤン・ブリューゲル(父)「森の風景」1605-1610年頃 油彩、板 ウィーン美術史美術館蔵
ペーテル・パウル・ルーベンス「悔悛するマグダラのマリアと姉マルタ」1620年頃 油彩、カンヴァス ウィーン美術史美術館蔵
―――――――
■13世紀に勃興して20世紀初頭までヨーロッパに君臨したハプスブルク家は、巧みな結婚政策によって勢力を拡大し、神聖ローマ皇帝も数多く輩出した名門王家です。歴代の王たちは、優れた審美眼と熱意をもって芸術保護に乗り出し、ヨーロッパ美術の真髄を伝える質の高いコレクションを形成しました。デューラーを庇護したマクシミリアン1世、ティツィアーノを召し抱えたカール5世、多数の宮廷画家を擁したルドルフ2世、ベラスケスを側近としても重用したフェリペ4世、1400点にものぼる絵画を集めたネーデルラント総督レオポルト・ヴィルヘルム大公等々、名だたる巨匠と名画の数々に魅了された王たちの成果は枚挙にいとまがありません。その膨大なコレクションは、ハプスブルク家の威光を示す豪華絢爛さだけでなく、歴史的意義や学術的な質の高さという点でも、特筆に値するものです。
 本展には、ハプスブルク家ゆかりの画家たちのみならず、クラナッハ、ラファエッロ、エル・グレコ、ゴヤなども含む総勢52人の巨匠たちによる逸品が集結します。イタリア絵画、オランダ・フランドル絵画、ドイツ絵画、スペイン絵画の傑作を紹介する本展は、16世紀から18世紀にかけての西洋美術の系譜と真髄をたどる絶好の機会となるでしょう。また、本展ではさらに、こうした絵画作品に加え、工芸品や彫刻、武具などを展示します。
ルドルフ2世の宮廷芸術家だったミゼローニの工芸品や、皇帝が実際に装着した甲冑や盾などは、ヨーロッパ貴族の華麗さと剛健さを伝え、展覧会に彩りを添えています。
■日本とオーストリア・ハンガリー二重帝国(当時)とが国交を結んで140年の節目にあたる今年、ウィーン美術史美術館(オーストリア)とブダペスト国立西洋美術館(ハンガリー)の所蔵品からハプスブルク家ゆかりの名品を核に選りすぐり、絵画の至宝75点に華麗な工芸品を加えた計約120点を展覧する大規模な美術展を開催いたします。
ヨーロッパに600年以上君臨したハプスブルク家の歴代の王たちは、芸術を庇護し、愛し続けました。本展では、宮廷画家として活躍したデューラーやティツィアーノ、ベラスケス、ルーベンスらハプスブルク家ゆかりの巨匠たちに、クラナッハ、ラファエッロ、エル・グレコ、ゴヤらを加えた、総勢約50人もの大家たちによる逸品が集結します。イタリア絵画、ドイツ絵画、オランダ・フランドル絵画、スペイン絵画の代表作を紹介する本展は、16世紀から18世紀にかけての西洋美術の系譜と真髄をたどる絶好の機会となるでしょう。また、ルドルフ2世の宮廷芸術家だったミゼローニの工芸品や、皇帝が実際に装着した甲冑や盾などは、ヨーロッパ貴族の華麗さと剛健さを伝え、展覧会に彩を添えます。(展覧会資料より)
■THE ハプスブルク華麗なる王家と美の巨匠たち、国立新美術館
2009年9月25日(金)~12月14日(月)
http://www.habsburgs.jp/

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2009年11月15日 (日)

古代ローマ帝国の遺産・・・豹を抱くディオニュソス、帝国の黄昏

Roma_2009Dionysos2009大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より 
秋の夕暮れ、黄葉の森を歩いて西洋美術館に行く。子豹を抱くディオニュソスは、ギリシアの甘美な美しさを湛えている。友人の編集長と対話しながらみる。ローマ彫刻に囲まれると、古代のヴィラの対話する空間が蘇る。古代の霊が蘇ってくる。アウグストゥス、ティベリウス、『ローマ皇帝伝』『対比列伝』の世界がある。ギリシア彫刻とローマ彫刻を比較すると、ローマ人の狡猾さとギリシア人の耽美的な精神の対比が浮かび上がる。子豹を抱くディオニュソスは、他に作例がない。葡萄の蔦の飾り、ヒュマティオンが繊細、眼差しが美しい。
彫刻は2000年の歳月を超えてやってきた旅人である。「アウグストゥス」は、狡猾なローマ皇帝の顔である。「カリアティド」はアクロポリスのエレクテイオン神殿のコピーである。「アレッツォの青銅のミネルバ」は、ギリシア人彫刻家の作品である。「豹を抱くディオニュソス」うっとりするほど美しい。必見。ポンペイから出土した「フレスコ画の壁画」、「モザイクの噴水」、古代ローマ時代の別荘、地中海のみえる瀟洒な邸の佇まい。溜息がでるほど美しい。
ローマ帝国は滅びても、藝術は残る。ホラティウスとロバートへリックの詩を思い出す。「ギリシアは、征服されたが、猛き征服者を圧倒し、藝術を荒れたローマにもたらした」Horatius。「時のある間に薔薇の花を摘め、時はたえず流れ、今日ほほえむ花も明日には枯れる」Robert Herrick。
■展示構成
第一章 帝国の誕生
第二章 アウグストゥスの帝国とその機能
第三章 帝国の富
映像資料「古代ローマ帝国 ポンペイ『庭園の風景』」
1) 現在の遺跡「黄金の腕輪の家」2)壁画《庭園の風景》を、もとの場所で鑑賞 3) 約2000年前の邸宅「黄金の腕輪の家」とその生活風景
■主要展示作品
《皇帝座像(アウグストゥス)》ヘルクラネウム(現エルコラーノ)、通称「バシリカ」の矩形のエクセドラ出土 白大理石 高さ215cm 後1世紀中頃 ナポリ国立考古学博物館
《カリアティド》前1世紀末-後1世紀初頭221cmフィレンツェ国立考古学博物館
《アレッツォのミネルウァ》アレッツォ出土 ブロンズ 高さ150.5cm 前3世紀 フィレンツェ考古学博物館 MUSEO ARCHEOLOGICO NAZIONALE FIRENZE, Centro Promozioni e Servizi Arezzo
ミネルウァはギリシアの女神アテナと同一視されるローマの女神。知性および技術の守護神、戦いの女神。
《豹を抱くディオニュソス》ソンマ・ヴェスヴィアーナ、ステルツァ・デッラ・レジーナ地区出土 白大理石 高さ152cm(現存部分106cm)紀元前後1世紀 ノーラ考古学博物。
《ペプロスを着た女性(ペプロフォロス)》ソンマ・ヴェスヴィアーナ出土、白大理石、高さ116センチ、後2世紀、ノーラ考古学博物館蔵
《アポロ像》後1世紀 ナポリ国立考古学博物館 
■古代ローマ帝国の遺産―栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ―
国立西洋美術館開館50周年記念事業
国立西洋美術館2009年9月19日(土)~12月13日(日)
http://roma2009.jp/index.html

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2009年11月 7日 (土)

「皇室の名宝 日本美の華」1期、その2、永徳、若冲から大観、松園まで

Koushitsu200910
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
嵐の去った午後、黄葉し始めた森を歩いて、博物館に行く。再び若冲『動植綵絵』をみる。『老松孔雀図』『老松白鳳図』『老松白鶏図』『老松鸚鵡図』をよくみると、絹地の裏彩色の上に、レースのように白く鳥が描かれている。大胆な構図と繊細を極める精緻な筆致が絵画の一つの極致を生みだしている。
『萬国絵図屏風』17世紀初期、作者不明、八曲一双屏風。左隻は世界各国の民俗衣装をまとった男女が描かれる世界の「風俗図」、「世界地図」。右隻は「泰西王侯騎馬図」28都市の「都市景観図」。ローマ、ヴェネツィアの都市景観がみえる。不思議な美しい屏風である。日本最古の西洋絵画。
第一室は狩野永徳・狩野常信筆「唐獅子図屏風」六曲一双が圧倒している。
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■主要展示作品
1章「近世絵画の名品」
1 浜松図屏風 海北友松筆 6曲1双 江戸時代・慶長10年(1605) 三の丸尚蔵館
2 四季草花図屏風  伝狩野永徳筆 4曲1隻、2曲1双 安土桃山時代・16世紀 三の丸尚蔵館
3 源氏物語図屏風 伝狩野永徳筆 6曲1双 安土桃山時代・16世紀 三の丸尚蔵館
4 唐獅子図屏風 狩野永徳・狩野常信筆 6曲1双 右隻:安土桃山時代・16世紀、左隻:江戸時代・17世紀 三の丸尚蔵館
5 萬国絵図屏風 8曲1双 安土桃山~江戸時代・17世紀 三の丸尚蔵館
8 源氏四季図屏風 円山応挙筆 6曲1双 江戸時代・18世紀 三の丸尚蔵館
9 牡丹孔雀図 円山応挙筆 1幅 江戸時代・安永5年(1776) 三の丸尚蔵館
11 小栗判官絵巻 巻第1・11・13 岩佐又兵衛筆 3巻(15巻のうち) 江戸時代・17世紀 三の丸尚蔵館
13 唐子睡眠図 長澤蘆雪筆 1幅 江戸時代・18世紀 三の丸尚蔵館
15 覇王別姫図 原在中筆 1幅 江戸時代・天明5年(1785) 三の丸尚蔵館
17 花鳥十二ヶ月図 酒井抱一筆 12幅 江戸時代・文政6年(1823) 三の丸尚蔵館
17-1 一月 梅椿に鶯図
17-2 二月 菜花に雲雀図
17-3 三月 桜に雉子図
17-4 四月 牡丹に蝶図
17-5 五月 燕子花に鷭図
17-6 六月 立葵紫陽花に蜻蛉図
17-7 七月 玉蜀黍朝顔に青蛙図
17-8 八月 秋草に螽斯図
17-9 九月 菊に小禽図
17-10 十月 柿に小禽図
17-11 十一月 芦に白鷺図
17-12 十二月 檜に啄木鳥図
18 西瓜図 葛飾北斎筆 1幅 江戸時代・天保10年(1839) 三の丸尚蔵館
2章「近代の宮殿装飾と帝室技芸員」
29 古柏猴鹿之図 森寛斎筆 1幅 明治13年(1880) 三の丸尚蔵館
30 月下擣衣図 幸野楳嶺筆 1幅 明治15年(1882) 三の丸尚蔵館
31 孔雀鸚鵡図 瀧和亭筆 2曲1双 明治29年(1896) 三の丸尚蔵館
32 群猿之図 川端玉章筆 1幅 明治23年(1890)頃 三の丸尚蔵館
33 木下闇図 川端玉章筆 1幅 明治40年(1907) 三の丸尚蔵館
34 夏冬山水図 橋本雅邦筆 2幅 明治29年(1896) 三の丸尚蔵館
35 春秋山水図 橋本雅邦筆 2幅 明治34年(1901) 三の丸尚蔵館
48 龍虎図 橋本雅邦筆 1面 明治32年(1899) 三の丸尚蔵館
★「皇室の名宝-日本美の華」1期:永徳、若冲から大観、松園まで。東京国立博物館
1期:2009年10月6日(火)~11月3日(火・祝)
2期:2009年11月12日(木)~11月29日(日)
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=645
http://www.tnm.jp/jp/

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