古代ローマ帝国の遺産・・・豹を抱くディオニュソス、帝国の黄昏
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
秋の夕暮れ、黄葉の森を歩いて西洋美術館に行く。子豹を抱くディオニュソスは、ギリシアの甘美な美しさを湛えている。友人の編集長と対話しながらみる。ローマ彫刻に囲まれると、古代のヴィラの対話する空間が蘇る。古代の霊が蘇ってくる。アウグストゥス、ティベリウス、『ローマ皇帝伝』『対比列伝』の世界がある。ギリシア彫刻とローマ彫刻を比較すると、ローマ人の狡猾さとギリシア人の耽美的な精神の対比が浮かび上がる。子豹を抱くディオニュソスは、他に作例がない。葡萄の蔦の飾り、ヒュマティオンが繊細、眼差しが美しい。
彫刻は2000年の歳月を超えてやってきた旅人である。「アウグストゥス」は、狡猾なローマ皇帝の顔である。「カリアティド」はアクロポリスのエレクテイオン神殿のコピーである。「アレッツォの青銅のミネルバ」は、ギリシア人彫刻家の作品である。「豹を抱くディオニュソス」うっとりするほど美しい。必見。ポンペイから出土した「フレスコ画の壁画」、「モザイクの噴水」、古代ローマ時代の別荘、地中海のみえる瀟洒な邸の佇まい。溜息がでるほど美しい。
ローマ帝国は滅びても、藝術は残る。ホラティウスとロバートへリックの詩を思い出す。「ギリシアは、征服されたが、猛き征服者を圧倒し、藝術を荒れたローマにもたらした」Horatius。「時のある間に薔薇の花を摘め、時はたえず流れ、今日ほほえむ花も明日には枯れる」Robert Herrick。
■展示構成
第一章 帝国の誕生
第二章 アウグストゥスの帝国とその機能
第三章 帝国の富
映像資料「古代ローマ帝国 ポンペイ『庭園の風景』」
1) 現在の遺跡「黄金の腕輪の家」2)壁画《庭園の風景》を、もとの場所で鑑賞 3) 約2000年前の邸宅「黄金の腕輪の家」とその生活風景
■主要展示作品
《皇帝座像(アウグストゥス)》ヘルクラネウム(現エルコラーノ)、通称「バシリカ」の矩形のエクセドラ出土 白大理石 高さ215cm 後1世紀中頃 ナポリ国立考古学博物館
《カリアティド》前1世紀末-後1世紀初頭221cmフィレンツェ国立考古学博物館
《アレッツォのミネルウァ》アレッツォ出土 ブロンズ 高さ150.5cm 前3世紀 フィレンツェ考古学博物館 MUSEO ARCHEOLOGICO NAZIONALE FIRENZE, Centro Promozioni e Servizi Arezzo
ミネルウァはギリシアの女神アテナと同一視されるローマの女神。知性および技術の守護神、戦いの女神。
《豹を抱くディオニュソス》ソンマ・ヴェスヴィアーナ、ステルツァ・デッラ・レジーナ地区出土 白大理石 高さ152cm(現存部分106cm)紀元前後1世紀 ノーラ考古学博物。
《ペプロスを着た女性(ペプロフォロス)》ソンマ・ヴェスヴィアーナ出土、白大理石、高さ116センチ、後2世紀、ノーラ考古学博物館蔵
《アポロ像》後1世紀 ナポリ国立考古学博物館
■古代ローマ帝国の遺産―栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ―
国立西洋美術館開館50周年記念事業
国立西洋美術館2009年9月19日(土)~12月13日(日)
http://roma2009.jp/index.html
| 固定リンク
「地中海」カテゴリの記事
- 「永遠の都ローマ展」・・・カピトリーノのヴィーナス(2023.09.30)
- ポンペイ・・・埋もれたヘレニズム文化、「アレクサンドロス大王のモザイク」、豹を抱くディオニュソス(2022.02.05)
- 地中海 四千年のものがたり・・・藝術家たちの地中海への旅(2013.08.29)
- ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり・・・ギリシア文化の輝き(2013.08.14)
- ヴェネツィアの黄昏(2011.10.20)
コメント