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2009年11月15日 (日)

古代ローマ帝国の遺産・・・豹を抱くディオニュソス、帝国の黄昏

Roma_2009Dionysos2009大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より 
秋の夕暮れ、黄葉の森を歩いて西洋美術館に行く。子豹を抱くディオニュソスは、ギリシアの甘美な美しさを湛えている。友人の編集長と対話しながらみる。ローマ彫刻に囲まれると、古代のヴィラの対話する空間が蘇る。古代の霊が蘇ってくる。アウグストゥス、ティベリウス、『ローマ皇帝伝』『対比列伝』の世界がある。ギリシア彫刻とローマ彫刻を比較すると、ローマ人の狡猾さとギリシア人の耽美的な精神の対比が浮かび上がる。子豹を抱くディオニュソスは、他に作例がない。葡萄の蔦の飾り、ヒュマティオンが繊細、眼差しが美しい。
彫刻は2000年の歳月を超えてやってきた旅人である。「アウグストゥス」は、狡猾なローマ皇帝の顔である。「カリアティド」はアクロポリスのエレクテイオン神殿のコピーである。「アレッツォの青銅のミネルバ」は、ギリシア人彫刻家の作品である。「豹を抱くディオニュソス」うっとりするほど美しい。必見。ポンペイから出土した「フレスコ画の壁画」、「モザイクの噴水」、古代ローマ時代の別荘、地中海のみえる瀟洒な邸の佇まい。溜息がでるほど美しい。
ローマ帝国は滅びても、藝術は残る。ホラティウスとロバートへリックの詩を思い出す。「ギリシアは、征服されたが、猛き征服者を圧倒し、藝術を荒れたローマにもたらした」Horatius。「時のある間に薔薇の花を摘め、時はたえず流れ、今日ほほえむ花も明日には枯れる」Robert Herrick。
■展示構成
第一章 帝国の誕生
第二章 アウグストゥスの帝国とその機能
第三章 帝国の富
映像資料「古代ローマ帝国 ポンペイ『庭園の風景』」
1) 現在の遺跡「黄金の腕輪の家」2)壁画《庭園の風景》を、もとの場所で鑑賞 3) 約2000年前の邸宅「黄金の腕輪の家」とその生活風景
■主要展示作品
《皇帝座像(アウグストゥス)》ヘルクラネウム(現エルコラーノ)、通称「バシリカ」の矩形のエクセドラ出土 白大理石 高さ215cm 後1世紀中頃 ナポリ国立考古学博物館
《カリアティド》前1世紀末-後1世紀初頭221cmフィレンツェ国立考古学博物館
《アレッツォのミネルウァ》アレッツォ出土 ブロンズ 高さ150.5cm 前3世紀 フィレンツェ考古学博物館 MUSEO ARCHEOLOGICO NAZIONALE FIRENZE, Centro Promozioni e Servizi Arezzo
ミネルウァはギリシアの女神アテナと同一視されるローマの女神。知性および技術の守護神、戦いの女神。
《豹を抱くディオニュソス》ソンマ・ヴェスヴィアーナ、ステルツァ・デッラ・レジーナ地区出土 白大理石 高さ152cm(現存部分106cm)紀元前後1世紀 ノーラ考古学博物。
《ペプロスを着た女性(ペプロフォロス)》ソンマ・ヴェスヴィアーナ出土、白大理石、高さ116センチ、後2世紀、ノーラ考古学博物館蔵
《アポロ像》後1世紀 ナポリ国立考古学博物館 
■古代ローマ帝国の遺産―栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ―
国立西洋美術館開館50周年記念事業
国立西洋美術館2009年9月19日(土)~12月13日(日)
http://roma2009.jp/index.html

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国立西洋美術館(台東区上野公園7-7) 「古代ローマ帝国の遺産 - 栄光の都ローマと悲劇のポンペイ」 9/19-12/13 国立西洋美術館で開催中の「古代ローマ帝国の遺産 - 栄光の都ローマと悲劇のポンペイ」へ行ってきました。 まず本展の概要、及び私の思う見所を挙げてみます。 ・共和制末期より帝政初期、主に皇帝アウグストゥスの時代にスポットを当て、同時代の美術品、全117点を概観する。 ・お馴染みの大理石肖像の他、修復後日本初公開となったブロンズの「アレッツォのミネルウァ」像など、立体... [続きを読む]

受信: 2009年11月16日 (月) 21時35分

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国立西洋美術館 2009年9月19日(土)−12月13日(日) 公式サイトはこちら 共和制ローマ末期の政治家、ガイウス・ユリウス・カエサル(BC100頃−BC44年)の意思を継いで、初代ローマ帝国の皇帝となったアウグストゥス(BC63−AD14)。本展は、このアウグストゥスが活躍した時代周辺のローマ帝国の遺産と、AD79年の火山の噴火で地中に埋もれたポンペイからの出土品に焦点をあてた展覧会。出展作品は、よって紀元前1世紀から紀元後1世紀の間のものが主体。 構成は以下の通り: 第1章 帝国... [続きを読む]

受信: 2009年12月13日 (日) 12時08分

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