速水御舟展、新山種美術館・・・炎と闇
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
40歳で夭折した画家、速水御舟は、「炎舞」「名樹散椿」他、不朽の名画を残した。「炎舞」の舞い飛ぶ蛾と炎と闇は何を象徴するのか。「名樹散椿」の枝を広げる樹木と舞い散る花弁は、何を意味するのか。御舟の絵画空間は深い。
御舟は1930(昭和5)年、大観らとローマ日本美術展覧会美術使節として10ヶ月間渡欧、13か国48都市を訪れて、ヨーロッパ美術を見た。エルグレコ、ジョットに影響を受けて、人物画を模索し死に至るまで画境を追求した。未完の「婦女群像」1934が残されている。御舟の見果てぬ夢を辿る展覧会である。
御舟はこれまでくりかえし観てきたが、何度みても見飽きない美しさと深さを秘めている。*
*「速水御舟展」山種1976、「日本美術院創立100年記念展 近代日本美術の軌跡」1998東京国立博物館、「速水御舟展」山種2004年、「速水御舟展」平塚市美術館2008、「琳派から日本画へ」山種2008年。
■展示作品
≪炎舞≫(重要文化財)1925、≪名樹散椿≫(重要文化財)1929、 ≪山科秋≫、≪桃花≫、≪春昼≫、≪百舌巣≫、 ≪昆虫二題葉蔭魔手・粧蛾舞戯≫1926、≪翠苔緑芝≫1928、 ≪紅梅・白梅≫、≪豆花≫、≪オリンピアス神殿遺址≫1931、 ≪暗香≫、≪牡丹花(墨牡丹)≫1934、≪あけぼの・春の宵≫、 ≪秋茄子≫他 特別出品 ≪婦女群像≫1934、「渡欧日記」1930、他120点。
展示構成
第1章:画壇からの出発
第2章:古典への挑戦
第3章:渡欧から人物画へ
第4章:挑戦者の葛藤
――
大正から昭和を駆け抜けた日本画家・速水御舟。40年の短い生涯におよそ700余点の作品を残しましたが、その多くが所蔵家に秘蔵されて公開されることが少なかったため、「幻の画家」と称されていました。
初期の南画風の作風から、細密描写、象徴的作風、写実と装飾を融合した画風、そして水墨画へと、御舟はその生涯を通じて、短いサイクルで次々と新しい試みに挑み続け、常に挑戦者であろうとしました。
新「山種美術館」開館記念特別展では、当館所蔵の≪炎舞≫≪名樹散椿≫(重要文化財)を始めとする120点の御舟作品に加え、本邦初公開となる未完の大作≪婦女群像≫(個人蔵)および1930(昭和5)年の 渡欧日記(個人蔵)などを出展します。
これらの新出資料を通じて、1935昭和10年40歳の若さで急逝した御舟が新たに目指していた方向性が明らかになることでしょう。本展では、山種美術館所蔵の御舟作品をすべて展示し、皆様にいま一度、御舟作品の凄みを体感していただきたいと思っています。
――
■新山種美術館開館記念特別展「速水御舟-日本画への挑戦-」
会期:2009年10月1日(木)~11月29日(日)
山種美術館 〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36
http://www.yamatane-museum.or.jp/
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