清方/Kiyokata ノスタルジア―鏑木清方の美の世界・・・美女の姿態
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
11月17日、冷たい雨の中、六本木に行く。美人画家は、容貌、目、唇、指先、姿、面影、様々な女の姿態、形象の中に女性美を探求する。鏑木清方には、春信、春章の影響がみられる。浮世絵師、鈴木春信、勝川春章、鳥文斎栄之を好んだ。「春宵」「嫁ぐ人」(鏑木清方記念館)他、明治時代の女学生をみると、風俗画の中に時代の情緒が封じ込められている。清方は、近代日本の美人画家、上村松園、伊東深水と並び称せられる。日本の美人画は、様式化された美を追求する。「初夏の化粧」(大正5)「口紅」(昭和14)、化粧する女が美しい。だが、悩める美女の美しさに美は極まる。「道成寺・鷺娘」(1918福富太郎コレクション)「春の夜のうらみ」(1922新潟県立美術館)がある。内覧会で15年ぶりに、山脇晴子・日本経済新聞文化事業局長に会った。
■悩める美女
「桜姫」(1923新潟県立美術館)は、歌舞伎狂言「清玄桜姫」による作品。僧の清玄が桜姫の容色に道を誤る。桜姫に恋した僧清玄が破門の末、殺されて執念が残り桜姫に纏わりつく物語である。桜姫が身をよじり、おびえて顔を手で覆っている場面が描かれている。悩める美女。身をよじる女の姿は、ミケランジェロの彫刻のようである。日本のバロック。鏑木清方の最高傑作である。
展示構成
第一章 近代日本画家としての足跡
第二章 近世から近代へ-人物画の継承者としての清方
第三章 「市民の風懐に遊ぶ」-清方が生み出す回顧的風俗画
第四章 清方が親しんだ日本美術
第五章 清方の仕事-スケッチ、デザイン
――
近代日本画に大いなる足跡を残した巨匠、鏑木清方(1878~1972)。彼の目は、明治から昭和という激動の時代にあって、なお人々の暮らしに残る、あるいは消えつつあるものを捉え、特に人物画において独自の画境を開いてきました。また、清方は伝統的な日本美術から多くのことを学んでおり、自身の画風にも色濃く反映されています。
本展は、近代に残る江戸情緒、そして自身が学んだ古きよき日本美術という、清方にとっての2つのノスタルジアに焦点をあて、清方芸術の魅力を探ろうとするものです。清方の代表的な名作はもちろん、初公開となる清方作品、清方旧蔵の肉筆浮世絵など、これまでの清方展では紹介されることのなかった作品も出品されます。本展を通じて、近代の日本画家という枠組みを越え、近世以前からの連続的な歴史の中で浮かび上がる、鏑木清方の美の世界をお楽しみください。
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2009_06/display.html
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★清方/Kiyokata ノスタルジア―名品でたどる 鏑木清方の美の世界―
サントリー美術館
2009年11月18日(水)~2010年1月11日(月・祝)
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/09vol06/index.html
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