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2009年12月28日 (月)

聖地チベット、ポタラ宮と天空の至宝・・・優雅で妖艶な密教美術

Tibet_2009091902枯葉舞う冬の夕暮れ、美術館に行く。チベット密教は至高の地に展開した、魂の奥の院である。標高四千メートルの高地チベット。
魂の至高の境地を探求する後期密教経典『カーラチャクラ・タントラ』、その思想を表現する仏像、図像、曼荼羅の華麗な世界である。迷える大衆を仏教に引き入れるため憤怒相を現す仏、人を迷わせる明妃ダーキニー、智慧と慈悲の合一を示す雌雄が抱擁する歓喜仏、仏教の究極の形態の一つがここにある。
■展示作品
「グヒヤサマージャ坐像タンカ」ポタラ宮、15世紀
後期密教経典のうち、最も早い8-9世紀頃に成立した『秘密集会タントラ』(グヒヤサマージャタントラ)の主尊。
「カーラチャクラ父母仏立像」14世紀前半、シャル寺
チベット密教美術の最高傑作。方便である慈悲の象徴である父と、空の智慧(般若)の象徴である母が抱き合う姿は一体となうことで悟りの世界に到達するという教えを象徴する。後期密教における忿怒尊。4つの顔にはそれぞれ3つの眼があり、24本の腕には金剛杵、鈴、斧、弓、索などが見られ、ヴィシュヴァマーター妃と抱き合っている。男性仏と女性仏が一体化して到達する悟りの境地を表現する。
「カーラチャクラマンダラ・タンカ」清代・17−18世紀、ノルブリンカ城
時間と空間を統合した究極のマンダラ世界。中央の意輪の最内部には、主尊カーラチャクラと、明妃のヴィシュヴァマーターが父母仏、周囲の八葉蓮弁には8人の女神が配されている。一番外側の第三重の身密マンダラでは大蓮華が12個描かれ、1年を象徴する。
★チベット密教美術は、インド後期密教の到達点である経典、無上瑜伽タントラ、『秘密集会タントラ』、『ヘーヴァジラ・タントラ』、『カーラチャクラ(時輪)タントラ』の世界を見える形象によって表現する。
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■展示構成
序章 吐蕃王国のチベット統一
7世紀初め、ソンツェンガンポがチベット高原を統一し吐蕃王国を建設。仏教国の唐とネパールから二人の妃を迎えた。
第一章 仏教文化の受容と発展
7世紀末のティソンデツェン王の時代に仏教が吐蕃王国の国教とされると、周辺仏教国から僧侶、仏像、経典がチベットに流入した。
第二章 チベット密教の精華
9世紀中頃ランダルマ王が仏教を廃し、その後暗殺されたのを契機に吐蕃王国は混乱し滅亡。仏教も迫害される。10-11世紀頃からチベットは再び仏教(後期密教)を受け入れる。後期密教では守護、護法の面が際立ち、精巧かつ豪華なチベット密教美術の表現が盛んになる。
第三章 元・明・清との往来
13世紀、蒙古の西蔵進攻に際し、サキャ派の指導者サキャ・パンディタとその甥パクパは侵略を阻止しただけでなく、パクパは仏教界の頂点に立ち、チベットの行政権とモンゴル全体の仏教行政権を獲得した。チベット仏教とモンゴル帝国の緊密な関係が生まれ、チベット様式の文化が元・明・清の各王朝で作られた。
第四章 チベットの暮らし
各地の寺院ではチャム(跳神舞)が行われ、護法や忿怒神の仮面をつけた僧が舞う。医療において究極の目的は煩悩からの解脱にあり、薬師如来が医学を講釈することになる。
■密教史
日本密教は、6-7世紀頃にインドから中国に伝わり、9世紀に空海、最澄によって伝えられた。「中期密教」と呼ばれ、『大日経』に説かれる胎蔵マンダラと『金剛頂経』に概略が説かれる金剛界マンダラを重視した。
これ対して、チベット密教は、8世紀以降にインドからチベットに伝わり、教義が整理された。「後期密教」と呼ばれ、瑜伽タントラ、無上瑜伽タントラと呼ばれる密教経典が流行した。その本尊の多くは、多面多臂で恐ろしい形相をしており、配偶女尊と抱き合う忿怒歓喜仏の姿が多くとられている。主な宗派としてカギュ派、サキャ派、ゲルク派、シチェー派がある。(cf.『聖地チベット』図録、展示資料より)
――――――――――
★聖地チベット-ポタラ宮と天空の至宝-
上野の森美術館、2009年9月19日(土)-2010年1月11日(月・祝)
公式サイト:http://www.seichi-tibet.jp/

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上野の森美術館 2009年9月19日(土)〜2010年1月11日(月・祝) 会期中無休 公式サイトはこちら 実は昨年中にバタバタと観に行っていながら、まだ記事にしていない展覧会が三つほどある。書かないと昨年の「阿修羅展」のように、年末に「今年のベスト10」に入れたくとも記事がナシ、なんて事態になって後悔するやもしれないので、閉会が迫っている物から順番に頑張りたいと思います。 というわけで、まずは今週末の祝日で終わってしまうこちらの展覧会から。昨秋に始まった時は随分ロングランだなぁ、と思った... [続きを読む]

受信: 2010年1月10日 (日) 22時13分

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