ジェームズ・キャメロン『アバター』・・・魂の木と生命のネットワーク
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
桜の森は満開。渋谷には3D劇場が存在しないので、IMAX3D劇場でみるため、109シネマズ川崎に行って観る。
知的な精神は、悪と戦い生き残らねばならない。遍在する悪と戦う知的で革命的な精神は、生命の根源を基盤とする。根源は大日如来である。大久保正雄2018年9月10日。世界は生命が互いに殺戮し合う。弱肉強食の苛酷な現実を超えるものは何か。哲学者は弱肉強食の現実を超えるものを探求しなければならない。
『Avatar』は環境主義者と経済主義者との森をめぐる戦争がテーマである。熱帯雨林で生存競争をくりひろげ殺しあう動物たち。魂の木、植物を中心とする生態系のネットワーク、象徴的なイメージに満ちている。生命もつものは魂の中心とネットワークでつながり根源的な力を受ける、というメッセージがある。物質と生命との戦争の物語である。魂の木は、殺しあう世界の果てで観世音菩薩が世界のすべてを知り命を救おうとしている。と画家榎俊幸はいう。
「物質文明は何故戦争をするのか?何故人(文明)と自然が戦わなければならないのか?」という問いを提起している。
■環境主義者と経済主義者との森をめぐる戦い 先住民と侵略者
西暦2154年、地球から遠く離れた惑星パンドラへとやってきた地球人は、先住民ナヴィと交流するため、元海兵隊員ジェイクを送り込む。ジェイクは、自らの分身となる“アバター”を操り、先住民ナヴィ族と交流する。森のなかで瀕死のところを、ネイティリに救われる。しかし、獲得を急ぎ、鉱物資源をめぐって人類とナヴィとの戦争が勃発する。
■魂の木
「精霊の宿る魂の木」home treeが神秘の星パンドラを守っている。
地球人たちとの最終決戦前夜、魂の木に対して、ジェイク(アバター)が「絆」を結び、どうか我々に力をかしてほしいと懇願。 ネイティリは「魂の木」(母なるエイワ)は、誰の頼みも聴かない。」という。
■魂の木の意味
榎俊幸氏は、生命のネットワークは、不空羂索観音菩薩であるという。「観世音菩薩と観自在菩薩が隙間なく絶間なく存在するWeb環境を不空羂索観音菩薩という。菩薩はその能力を駆使して全ての人類(全ての生命)を地獄から救おうとしている。生態系の設計には漏れが無い、不空羂索システム」(榎俊幸『AVATAR ~ 不空羂索観音菩薩』)
「魂の木」は、生命の根源である胎蔵界の大日如来であり、智慧の究極の頂点である金剛界の大日如来(摩訶毘盧遮那仏mahaavairocana)であると私は考る。死に瀕するいのちを救うことは、愛と知の究極の形である。
■先制攻撃と絨緞爆撃
地球人は、アンオブタニウム鉱床の真上にあるナヴィ族の森を襲撃しようという武力行使に出る。もし森の下の鉱床を採掘すれば、この地にある「魂の木」を失い、この木を生命の中心として命ある者すべてが繋がるパンドラの生態系が破壊されてしまうことになる。
先制攻撃が開始され、絨緞爆撃がくりひろげられる。
「ダンス・ウィズ・ウルブズ」「風の谷のナウシカ」に似ていると言われ、驚異的な映像のみが語られる。だが、生きることは殺しあうこと、文明が生みだす戦争、パンドラに出てくる、魂の木、生命のネットワークは、知性と生命が無限の可能性を秘めていることを暗示している。これは藝術の永遠のテーマである。
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コメント
leonardoさん、こんにちは。
私は映画アバターに関して映画批評家が映像技術のことばかり取り上げて内容に無関心なことを残念に思っていました。
正直言ってこれくらいの3D映像技術は20年以上前からありました。
東京ディズニーランドがオープンして間もなく3Dシアターが出来ています。
その後CG映像技術が発達してこのような傑作が生まれた訳です。
しかし、1985年の筑波万博ではもっと素晴らしい3D映像もありました。
360度ドーム3DCG映像です。
上映可能なシアター(大型プラネタリウム)が限られるので一般化しませんでした。
だからこのアバターについての批評家たちのとんちんかんぶりには閉口してしまいました。
で、内容についての感想をブログに書いた訳です。
leonardoさんもそのことに気付いて共感してくださったことを嬉しく思います。
作品を芸術たらしめる要素は技術とメッセージの両立が欠かせません。
もっと言うと美術作品には4つの要素が必要です。
技術・技巧の「技」、画材・機材の「材」、意図・意匠の「意」、具象・抽象の「象」です。
これらはテトラポッド(正四面体)の頂点のような位置関係にあり相関しています。
この話は長くなりそうなのでいずれ自身のブログにでも書きましょう。
もうすぐ映画「第9地区」日本公開されますね、こちらも楽しみです。
投稿: 榎俊幸 | 2010年4月 5日 (月) 09時32分
コメントのつづきです。絵画(美術)の構成要素についての説明をブログに書いておきました。http://bit.ly/atsADE
さて、次はまた映画のお話「第9地区」を近いうちに書きますよ。
投稿: eno | 2010年4月16日 (金) 10時22分