細川家の至宝、珠玉の永青文庫コレクション・・・菱田春草「黒き猫」
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
八重桜が咲くころ前期展示をみて、新緑のなかで後期展示をみる。
細川家歴代当主のなかで特に、細川忠興(三斎)、忠利、重賢、そして護立の4人は、古今伝授、美術蒐集を行ってきた。織田信長書状から菱田春草まで、七百年にわたって継承されてきた厖大な武家の文化遺産と美術の展示である。
長篠合戦(1575年)などの際に、織田信長が細川藤孝(幽斎)にあてた文書3通が、初公開されている。書状は75年の「織田信長黒印状 長岡兵部大輔宛 五月十五日」、78年の「三月四日 織田信長朱印状」、81年の「九月十日 織田信長朱印状」。信長の意向を秘書役の右筆が代筆したものとみられる。天下布武の印影が鮮やかである。
菱田春草「黒き猫」「落葉」がとくに美麗である。何度みても美しい。
空海が留学した青龍寺「如来坐像」は、八世紀の長安を思い起させる。
「黒き猫」菱田春草筆、1910(明治43)年、重要文化財
「落葉」菱田春草筆、1909(明治42)年、重要文化財
「髪」小林古径、1931、重要文化財
「女」下村観山、1915
「孔雀」小林古径、1934
「菩薩半跏思惟像」北魏時代、6世紀、重要文化財
「如来坐像」青龍寺、唐時代、7世紀~8世紀初、重要文化財
「菩薩立像」隋時代、6世紀末~7世紀初
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永青文庫は旧熊本藩主・細川家に伝来した文化財を後世に伝えるために、16代細川護立(もりたつ)によって昭和25年(1950)に設立されました。その所蔵品は、歌人・歌学者としても知られる近世細川家の祖・細川藤孝(ふじたか)<幽斎(ゆうさい)>の和歌資料や、利休の高弟としてその教えを後世に伝えた2代忠興(ただおき)<三斎(さんさい)>所有の茶道具、忠興の妻でキリシタンとしても知られるガラシャ遺愛の品々、さらには細川家の客分として、晩年を熊本でおくった宮本武蔵の絵画など、古文書類も含めると8万点を超える日本有数の文化財コレクションです。
本展前半では、激動の歴史を生き抜き、和歌、能、茶の湯などの文化を守り伝えた細川家に伝来する貴重な美術品や歴史資料を展示し、細川家の歴史と日本の伝統文化を紹介いたします。
また後半では、細川護立が収集した美術品の中から選りすぐりの名品を出品し、近代日本を代表する美術コレクターである護立の眼と人物像に迫ります。
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細川家の至宝 珠玉の永青文庫コレクション、東京国立博物館
2010年4月20日(火)-6月6日(日)
京都国立博物館(10/8~11/23)
九州国立博物館(2011/1/1~3/4)
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