伊藤若冲 アナザーワールド・・・若冲の水墨画
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
緑滴る六月の午後、エアポート成田・成田空港行きに乗る。千葉駅から千葉市美術館に行く。
若冲の水墨画を中心に展示されている。若冲は『動植綵絵』三十幅(明和2年1765年相国寺に24点寄進)、鶏の異常に緻密な極彩色な絵画が有名であるが、水墨画においても緻密な奇想世界を作り上げた。江戸絵画のマニエリスム、バロックである。
■展示構成
第1章:若冲前史
第2章:初期作―模索の時代
第3章:着色画と水墨画
第4章:晩年期―多様なる展開
■主な展示作品
「花卉双鶏図」沈南蘋(南蘋派)の画風に影響を受けた作品。初期の若冲の鶏。
「月夜白梅図」
「鹿図」
「樹花鳥獣図屏風」静岡県立美術館所蔵、升目描き。
「白象群獣図」升目描き。
■「象鯨図屏風」(象と鯨図屏風)。左隻に潮を吹く鯨の黒く巨大な背中、右隻に白象を描く、大胆な構図。白と黒の対比である。若冲特有の筋目描き。歌川国芳の浮世絵の鯨を思い出す。平成20年(2008年)8月、北陸地方の旧家から発見された水墨画。落款に「米斗翁八十二歳画」とあり、晩年にあたる寛政7年(1795年)前後の作とされる。滋賀県、MIHO MUSEUM蔵。屏風には「米斗翁八十二歳画」の落款、「若冲居士」の朱肉が押されている。「米斗翁」とは若冲が晩年名乗っていた号。
画像http://wedge.ismedia.jp/articles/-/509
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若冲のアナザーワールド、水墨画の世界に浸る
伊藤若冲(1716-1800)のブームが継続中です。京都国立博物館での「没後200年 若冲展」展で、一般にも広くその名を知られる存在となり、その後も展覧会の開催、画集の刊行が続いています。もはや一過性のブームではなく日本絵画の大スターとしての地位を確立したようです。
《動植綵絵》(宮内庁三の丸尚蔵館)のような華麗な着色の作品だけが若冲の世界ではありません。若冲は晩年にいたるまで多くの水墨の作品を残しました。もしかしたら水墨画のほうが若冲の個性であるかたちの面白さは際立つかもしれません。
本展覧会は、若冲の水墨の作品を中心に、関連する着色の作品をも含めて構成します。加えて、河村若芝・鶴亭らの黄檗絵画の作品によってその水墨表現の前史を示し、若冲水墨画の世界に迫ります。前期(5月22日~6月6日)後期(6月8日~6月27日)合わせて165点を展示する予定です。
首都圏での若冲の大規模な展覧会は昭和46年(1971)に開催された東京国立博物館での特別展観以来、約40年ぶりとなります。若冲のアナザーワールド、水墨画の世界をご堪能下さい。
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■「伊藤若冲 アナザーワールド」千葉市美術館
2010年5月22日(土) ~ 6月27日(日)
千葉市中央区中央3-10-8 TEL:043-221-2311
伊藤若冲《象と鯨図屏風》MIHO MUSEUM蔵(展示期間:6月14日~6月27日)
展示リスト http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2010/0522/list_0522_2.pdf
★『樹花鳥獣図屏風』静岡県立美術館所蔵
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