オルセー美術館展2010 ―ポスト印象派・・・可視界の光
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
五月の夕暮れ、美術館に行く。夕暮れの美術館は人影まばらで、絵画と対話する時、静寂に包まれる。
ポスト印象派と名づけられる、1880年以後の画家たちの美術展。見える世界を表現する絵画である。*
唯一、例外は、象徴派のギュスターヴ・モロー「オルフェウス」、古典研究にもとづく緻密な幻想世界、みえる世界を超えた、精神の悲しみを現している。
七枚の絵画は、何度も見る価値がある。必見。
クロード・モネ「日傘の女」1886年油彩・カンヴァス
クロード・モネ「ボルディゲラの別荘」1884年油彩・カンヴァス
ジョルジュ・スーラ「ポール=タン=ベッサンの外港、満潮」1888年
エドガー・ドガ「階段を上がる踊り子」1886-90 油彩・カンヴァス
フィンセント・ファン・ゴッホ「星降る夜」1888年 油彩・カンヴァス
ギュスターヴ・モロー「オルフェウス」1865年 油彩・板
アンリ・ルソー「蛇使いの女」1907年
*印象派(Impressionnisme):1874年、モネ、ドガ、ルノワール、セザンヌ、ピサロ、モリゾ、ギヨマン、シスレーらが私的に開催した展示会は後に第1回印象派展と呼ばれた。モネ「印象、日の出(Impression, soleil levant)」が語源。
■展示構成
第1章 1886年-最後の印象派
ドガ、モネ、シスレー、ピサロ「ルーアンのボワルデュー橋、夕日、靄のかかった天気」
第2章 スーラと新印象主義
スーラ、シニャック
第3章 セザンヌとセザンヌ主義
セザンヌ「サン・ヴィクトワール山」、モーリス・ドニ「セザンヌ礼讃」1900年
第4章 トゥールーズ=ロートレック
第5章 ゴッホとゴーギャン
ゴッホ「星降る夜」1888年、ゴーギャン「タヒチの女たち」
第6章 ポン=タヴェン派
ベルナール、ポール・セリュジェ、ジョルジュ・ラコンプ
第7章 ナビ派
セリュジェ「護符(タリスマン)、愛の森を流れるアヴェン川」1888年、ボナール「格子柄のブラウス」1892、ヴァロットン「ボール」1899年
第8章 内面への眼差し
ナビ派と象徴主義
ギュスタヴ・モロー「オルフェウス」1865年
第9章 アンリ・ルソー
ルソー「戦争」1894年、ルソー「蛇使いの女」1907年
第10章 装飾の勝利
ヴュイヤール「公園 子守、会話、赤い日傘」1894年
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空前絶後の世界巡回展「これらの絵画がまとめてフランスを離れることは2度とない」
ニコラ・サルコジ フランス共和国大統領
「計画当初には、このように値段のつけられない作品による展覧会を世界巡回させることに懸念もあったが、オルセー美術館が誇る100のマスターピースで展覧会を開催したかった」
ギ・コジュヴァル オルセー美術館館長
「この展覧会は、オーストラリアにおいて空前絶後の出来事である」
ケビン・ラッド オーストラリア連邦首相
■過去最大規模&オルセー美術館展の集大成モネ5点、セザンヌ8点、ゴッホ7点、ゴーギャン9点、ルソー2点をはじめとする絵画115点が、オルセー美術館からごっそり来日。過去に日本で開催されたオルセー美術館展の目玉作品として紹介されてきた作品もずらりと並ぶ、まさに「ベスト・オブ・オルセー」展!
約半数の作品が初来日!モネ《ロンドン国会議事堂、霧の中に差す陽光》、セザンヌ《台所のテーブル(篭のある静物)》、ゴッホの《自画像》、ルソーの《蛇使いの女》をはじめ、オルセー美術館から初来日する作品は約60点。本展出品作品の半分以上におよびます。
■ポスト印象派とは
1880年代半ばのフランスでは、印象派の圧倒的な影響を受けた多くの才能が、さらに革新的な表現を探究し、多様な絵画芸術が花開きました。1910年、イギリスの批評家ロジャー・フライは、印象派とは一線を画す傾向を察知し、「マネとポスト印象派」と題した展覧会を組織します。ここに出展されたのが、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、スーラといった画家たちでした。以後、ポスト印象派は、確かな形態描写、堅固な構図、鮮やかな色彩、観念的なものへの志向など、印象派の関心の外にあった傾向を復権し、20世紀初頭の前衛美術の登場を促した動向と位置づけられてきました。
しかし、ポスト印象派は、画家によって画風が大きく異なることから分かるように、何らかのグループでもなく、特定の手法や理論を掲げた運動でもありません。ポスト印象派に含まれる画家たちは、印象派への対抗という一面的な理解では捉えきれない、多様な個性を備えているのです。本展覧会でご紹介するように、その革新的な成果は、世紀末パリに花開いた芸術的、文化的諸相と複雑に絡み合っています。
ちなみに我が国では、「後期印象派」という呼称が長く使われてきました。しかしこの用語は、印象派の後半期を示すかのような誤解を招く恐れがあり、近年では「ポスト印象派」が定着しつつあります。 公式HPより
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■「オルセー美術館展2010 ─ポスト印象派」
国立新美術館、2010年5月26日-8月16日
http://orsay.exhn.jp/
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