上村松園展・・・美人画の系譜
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
浮世絵の美人画の系譜は、鈴木春信、鳥居清長、菱川師宣、勝川春章、喜多川歌麿、渓斎英泉。春信は初期的、歌麿は艶麗、英泉は下品。江戸末期の歌川豊国、歌川国貞、歌川国芳は退廃的、浮世絵のバロックである。
この系譜の上に、鏑木清方と上村松園がある。日本画の美人画は、芸妓、色町の世界であり、階級社会が背景にある。清方は明治の女学生、松園は町娘も描いた。
前期、後期展示をみた。
「焔」1918、「序の舞」1916、「花がたみ」1915、「蜃気楼」「娘深雪」1914、「砧」1938、「雪月花」1937他を見る。
「焔」は東京国立博物館近代絵画室の暗がりでみた時、怨霊が立ち上がってくるようであった。足がない。六条御息所は葵の上への屈辱と嫉妬から生霊になり葵の上を取り殺す(謡曲「葵上」)。
上村松園:明治8年(1875)-昭和24年(1949)女性の目を通して美人画を描いた。「一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵」「真・善・美の極致に達した本格的な美人画」(松園)を目ざしたという。
素描を含む100点以上が展示される。これまでの最大規模の展覧会。
■美しくない美人画
松園は、線の美しさ、淡い色彩の美しさが特質である。絵の中の女性は美人ではない。
レオナルド、カラヴァッジョ、ジョン・エヴァレット・ミレイのような内面の深みは、日本画には欠ける。
美人画は好みの女でなければ、魅力はない。
■上村松園展、東京国立近代美術館、2010年9月7日-10月17日
京都国立近代美術館11月2日-12月12日
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