東大寺大仏-天平の至宝・・・蓮華蔵世界、蓮の花弁に香る天平文化
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
晩秋の夕暮れ、枯葉舞う森を歩いて、博物館に行く。天地院、金鐘寺伽藍の廃墟を思いながら、東大寺軒丸瓦に刻まれた複弁蓮華文の文様をみると、天平文化の香りが立ち昇ってくる。東大寺は、蓮華経の世界観に基づいている。廬舎那仏が教えを説く世界である。宇宙仏(法身仏)である盧舎那仏(Vairocana)が発展した形態が、大日如来(摩訶毘盧遮那仏:Mahāvairocana)である。
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盧舎那仏の蓮弁、蓮華蔵世界・・・三千大千世界
東大寺、盧舎那仏の蓮弁に蓮華蔵世界が刻まれている。華厳経の世界観を表わす線刻された図像は天平時代の造形美である。
一枚の蓮弁の世界に須弥山があり、その上に24の世界があり、その上に一つの釈迦如来が教化する。14枚の蓮弁の上に盧舎那仏が座して、華厳経を説く。
蓮弁の図像については、華厳経に基づくとする説、梵網経に基づくとする説がある。
「千華上ノ仏ハ、是レ吾ガ化身ナリ。千百億ノ釈迦ハ、是レ千釈迦ノ化身ニシテ、吾已ニ本原ニシテ、オノオノ盧舎那仏トナル」(『梵網経』)
【東大寺大仏開眼供養会】752年(天平勝宝4)4月9日に東大寺の盧舎(遮)那大仏像の完成を記念して行われた法要。大仏開眼供養会ともいう。開眼とは新造の彫、鋳像、画像などに筆墨などで眼に点睛を加、魂を入れる仏教儀式をいう。開眼:菩提僊那(インド)講師:大安寺隆尊律師、読師:元興寺延福法師。参列者:聖武上皇、光明皇太后、孝謙天皇、藤原仲麻呂、李密翳(ペルシャ)、仏哲(ベトナム)、胡人(トルキスタン)【毘盧遮那仏】毘盧遮とは何か。梵語のvairocana。智慧の光であまねく法界を照らし輝かす仏身。輝く太陽、《華厳経》の教主毘盧舎那仏を中心に無数の化現した蓮華蔵世界。
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主要展示作品
「誕生釈迦仏立像及び灌仏盤」(国宝)(奈良時代8世紀、東大寺蔵)、釈迦の姿は、生まれてすぐに七歩あゆみ、右手は天を指し、左手は地を指して「天上天下唯我独尊」と告げたさまを表している。釈迦の誕生日である毎年4月8日は東大寺大仏の前におかれ、甘茶を灌がれ、祝われてきた。甘茶の受皿となる灌仏盤に、美しい模様が描かれている。
「八角燈籠」(国宝) (奈良時代8世紀、東大寺蔵)、レリーフの音聲菩薩が美しい。
「金鈿荘大刀」奈良時代 東大寺蔵
「伎楽面」(重文)、大仏開眼供養会に使用された。
「西大門勅額」奈良時代 東大寺蔵
「良弁僧正坐像」(国宝) (平安時代9世紀、東大寺蔵)、東大寺初代別当。
快慶作「僧形八幡神坐像」
「正倉院宝物 墨画仏像」(奈良時代8世紀、東大寺蔵)、菩薩が飛来する姿を、一筆で画いている。
「不空羂索観音菩薩立像光背」奈良時代 東大寺蔵
「重源上人坐像」鎌倉時代 東大寺蔵
「阿弥陀如来立像」快慶作 鎌倉時代 東大寺蔵
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参考文献
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-09b3.html
東大寺大仏-天平の至宝・・・蓮華蔵世界、蓮の花弁に香る天平文化
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第1章 東大寺のはじまり―前身寺院と東大寺創建―
第2部 大仏造立
VRシアター「大仏の世界」
第3部 天平の至宝
第4部 重源と公慶
東大寺は、聖武天皇と光明皇后が、夭逝した皇子の菩提を弔うため造営した山房に始まり、やがて、聖武天皇の発願により盧舎那仏(るしゃなぶつ)が造立され、国家的な仏教信仰の中心になりました。天平勝宝4年(752)には大仏開眼供養会(だいぶつかいげんくようえ)が盛大に執(と)り行われ、インド、中国の僧が参加するなど国際色豊かな文化が生まれました。後世の兵火により2度罹災しますが、そのたびに高僧らが復興、再建に取り組み、創建時の天平文化を代表する至宝が伝わっています。
本展では大仏造立に関わる作品を通して天平文化の精華をご覧いただきます。大仏殿前の高さ4.5メートルを超える八角燈籠(国宝)が寺外で初公開となるほか、古代の誕生仏では日本最大として知られる誕生釈迦仏立像(国宝)や、大仏開眼供養会などに使用された伎楽面(重要文化財)など、天平の宝物を一堂に展示します。また鎌倉時代、江戸時代に大仏を再興した、重源(ちょうげん)上人、公慶(こうけい)上人の肖像彫刻の傑作などを通じて、今日まで脈々と伝えられる東大寺の歴史を紹介します。さらにバーチャルリアリティー(VR)映像で平安時代末期に焼失した創建時の大仏殿を再現、寺では見ることのできない盧舎那仏の背面を含め、360度ぐるりと大仏をご覧いただきます。
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光明皇后1250年御遠忌記念 特別展「東大寺大仏―天平の至宝―」
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=704
東京国立博物館 平成館、2010年10月8日(金)~12月12日(日)
todaiji2010.jp/
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