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2011年6月

2011年6月 8日 (水)

写楽、東京国立博物館・・・大胆なデフォルメ

20110501大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
五月晴、躑躅咲く午後、新緑の桜の森を歩いて博物館に行く。写楽は第一期「役者大首絵二十八枚」が圧倒的な迫力である。目のしわ、口の形、手の動き、見えを切る姿、大胆なデフォルメが強烈である。なぜ10ヶ月の後に筆を絶って忽然と消えたのか。
「ボストン美術館浮世絵名品展 錦絵の黄金時代 ― 清長、歌麿、写楽」の三人の絵師を比較してみると、歌麿の艶麗な長身美人、写楽の写実と演技性は瞠目に値する。
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寛政6年(1794)5月、豪華な雲母摺りの役者大首絵28枚を出版して浮世絵界に突然姿をあらわし、翌年1月までに140点をこえる浮世絵版画を制作しながら、その筆を断って忽然と姿を消した東洲斎写楽。
大田南畝は『浮世絵類考』で「あまりに真を画かんとして、あらぬさまにかきしかば、長く世に行なわれず、一両年にして止む」と書いている。『江戸風俗惣まくり』によれば、「顔のすまひのくせをよく書いたれど、その艶色を破るにいたりて役者にいまれける」。斎藤月岑『増補浮世絵類考』(1844年)に、写楽は俗称斎藤十郎兵衛で八丁堀に住む「阿州侯(阿波徳島藩の蜂須賀家)の能役者」であるという記述がある。
写楽全作品146点のうち142点の写楽作品が集結している。「謎の浮世絵師写楽」の全貌に迫る浮世絵展。写楽と同じ版元、蔦屋重三郎が扱ったもう一人の天才浮世絵師、喜多川歌麿の優れた作品も同時展示されている。
■主な展示作品
東洲斎写楽「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」大判錦絵、寛政6年5月、アメリカ・メトロポリタン美術館蔵The Metropolitan Museum of Art, NY
東洲斎写楽「初代市川男女蔵の奴一平」大判錦絵、寛政6年5月、フランス・ギメ東洋美術館蔵Musee Guimet, Paris
東洲斎写楽「三代目瀬川菊之丞の田辺文蔵女房おしづ」大判錦絵、寛政6年5月、東京国立博物館蔵、個人蔵
東洲斎写楽「市川鰕蔵の竹村定之進」大判錦絵、寛政6年5月、オランダ・アムステルダム国立美術館蔵Rijksmuseum, Amsterdam
東洲斎写楽「三代目沢村宗十郎の大岸蔵人」、大判錦絵、寛政6年5月、アメリカ・ホノルル美術館蔵Honolulu Academy of Arts
喜多川歌麿「当時全盛美人揃」越前屋内唐土 あやの をりの、寛政6年(1794) 東京国立博物館
喜多川歌麿「婦人相学十躰 浮気の相」寛政5年(1793)頃東京国立博物館               喜多川歌麿「婦人相学十躰 ポペンを吹く娘」寛政5年(1793)頃 アメリカ・ホノルル美術館
喜多川歌麿「高島おひさ」寛政5年(1793)頃 フランス・ギメ東洋美術館
■展示構成
プロローグ
1章:写楽以前の役者絵
2章:写楽を生み出した蔦屋重三郎
3章:写楽とライバルたち
4章:版の比較
5章:写楽の全貌
写楽の全貌芝居絵 第一期:寛政6年(1794) 5月、都座・桐座・河原崎座に取材した役者絵 [28図すべてを出品]
写楽の全貌芝居絵 第二期:寛政6年(1794)7月、都座・河原崎座 8月、桐座に取材した役者絵 [38図のうち36図を出品]
写楽の全貌芝居絵 第三期:寛政6年(1794)11月、閏11月、都座・桐座・河原崎座に取材した役者絵、役者追善絵、相撲絵[64図のうち60図を出品]
写楽の全貌芝居絵 第四期:寛政7年(1795)正月、都座・桐座に取材した役者絵、相撲絵 [12図すべてを出品]
6章:写楽の残影
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寛政6年(1794)5月、豪華な雲母摺りの役者大首絵28枚を出版して浮世絵界に突然姿をあらわし、翌年1月までに140点をこえる浮世絵版画を制作しながら、その筆を断って忽然と姿を消した東洲斎写楽。
作品が登場した時代の人々にとっても多くの刺激を与えていた単純化され誇張された表現は、現代に生きるわれわれの目にも新鮮な魅力に満ちています。本展は、その造形の魅力を解きほぐし、芸術的な特徴を明らかにすると同時に、写楽作品創造の源を探ります。
 寛政6年(1794)5月、江戸三座の役者を個性豊かに描いた大判雲母摺りの豪華な作品28図を一度に出版するという華やかなデビューを果たした東洲斎写楽は、翌年正月忽然と姿を消しました。その間10ヵ月(寛政6年(1794)は、閏11月が含まれる)に残した146図の作品は、題材となった歌舞伎が上演された時期によって研究者により4期に分けられています。
本展覧会では、約140図、約170枚の作品によって、写楽版画の全貌を紹介します。その数と質においておそらく空前絶後となる展覧会です。
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★特別展「写楽」東京国立博物館 平成館(上野公園)2011年5月1日(日)~6月12日(日)
★「ボストン美術館浮世絵名品展 錦絵の黄金時代 ― 清長、歌麿、写楽」千葉市美術館2011年4月26日~6月5日
東京国立博物館「写楽」特別展http://www.tnm.jp/

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2011年6月 2日 (木)

ガンジー 7つの社会的大罪・・・理念なき政治

Lavelata_2011大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
これまでの社会体制が破局し、国家が崩壊しようとしている。貞観地震(貞観11年5月26日ユリウス暦869年7月9日)以来の大地震、津波、そして原子力発電所の爆発が国家を覆しつつある。世界が劇的に変化する時、旧い友が去り、新しい友との友情が始まる。世界の偽りの表層がはがれ、真実が現れる。世の中の嘘と悪が暴かれ、根底から覆ろうとしている。国家とは利権集団である、血税を搾取する私利私欲団体であるということが露呈した。醜悪な魂が、権力の上層部を支配している。これは根底から崩壊しなければならない。よき人生とは何か。ソクラテスは言った。「大切なのは、ただ生きることではなく、善く生きることである。」「善く生きるとは、美しく生きる、正しく生きることと同じである」(プラトン『クリトン』)善く生きるとは何か、美しく生きる、正しく生きるとは何か。国家的破局の原因を考えると、ガンジーの「7つの社会的大罪」を思い出す。この世には、人格なき学識、道徳なき商業、労働なき富にあふれている。官僚と支配層は労働なき富である。腐敗したこの世界の中で、勇気ある人々、命をかけて困難に立ち向かう少数の人がいる。            大久保正雄
■ガンジー「7つの社会的大罪」Mahatma Gandhi:Seven Social Sins
1.理念なき政治 Politics without Principles
2.労働なき富 Wealth without Work
3.良心なき快楽 Pleasure without Conscience
4.人格なき学識 Knowledge without Character
5.道徳なき商業 Commerece without Morality
6.人間性なき科学 Science without Humanity
7.犠牲なき信仰 Worship without Sacrifice
[出典]Seven social sins: politics without principles, wealth without work, pleasure without conscience, knowledge without character, commerce without morality, science without humanity, and worship without sacrifice.
A list closing an article in Young India (22 October 1925); Collected Works of Mahatma Gandhi Vol. 33 p. 135
■小出裕章氏(京都大学原子炉実験所)は、2011年5月23日、参議院行政監視委員会で意見提示。最後にガンジーの言葉を引用した。道徳なき商業は東電。人間性なき科学は原発推進の御用学者であると指弾した。http://ustre.am/z1a9
■カズオ・イシグロはこう語る。
「人生の短さを感じた時、人は何を大切に思うだろうか。人生が短いと知ったとき、金や権力や出世はたちまち重要性を失ってゆくだろう。人生の時間が限られていると実感した時、人間が利益や権力だけに飢えた動物ではないことが明らかになる。友情、愛、許しという要素こそが人間を人間たらしめるうえで重要なものだということに目覚める。」(カズオ・イシグロ『私を離さないで』について NHK『カズオ・イシグロをさがして』2011/04/17より。)
■世の中に、命をかけて立ち向かうべき仕事がある
山田恭暉さんは60歳以上の隊員を募集している。
福島原発暴発阻止行動プロジェクト、http://bouhatsusoshi.jp/
★ラファエロ「ヴェールの女」Raffaello:La Verata.1516

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