« 写楽、東京国立博物館・・・大胆なデフォルメ | トップページ | 空海と密教美術展・・・理念と象徴 »

2011年7月20日 (水)

大英博物館 古代ギリシャ展・・・美しく善きもの

2011070506大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
夏の日の午後、森陰の道を歩いて、美術館に行く。葡萄の木の精と蔦を巻いたディオニュソス、恥じらいのアプロディーテ、水浴するアプロディーテ、翼もつエロス。ギリシア彫刻が、甘美な美しさを湛えている。輝かしい紺碧のエーゲ海、夏のギリシアを思い出す。
アテネ国立考古学博物館、アクロポリス博物館、デルフィ博物館、テッサロニキ博物館、ロドス博物館、ヴァチカン博物館、ベルリン博物館でみた、輝かしいギリシア彫刻を思い出す。
■美にして善(kalos kai agathos)
ギリシア人は、善美なるもの、美しいことと善なること、美と魂の卓越性の一致を追求した。肉体的な美のみを追求するのは、ギリシア人の思想ではない。ギリシア人は精神の美すなわち、魂の卓越性を探求した。卓越性(徳)とは、知恵、勇気、節制、正義である。
■「健全なる精神は健全なる肉体に宿る」という句がギリシア人の思想を表すといわれるがこれは救い難い誤謬である。この句は、ローマの詩人ユウェナリス『風刺詩集』第10編の誤用である。ナチス・ドイツと各国は宣伝文句として「健全なる精神は健全なる身体に」を掲げた。身体を鍛えることによって健全な精神が得られるかのような悪質な妄想へ恣意的に捏造、軍国主義を賞揚した。原文はorandum est ut sit mens sana in corpore sano.であり、「健やかな身体のなかに健やかな魂が願われるべきである」を意味する。ギリシア彫刻は理想美を追求したが、肉体美の極致のみを表現しているとするのは一面的で誤りである。ミュロン原作「ディスコ・ボロス(円盤投げ)」は、激しい動きのなかの静、瞬間の美を表現している。
■主な展示作品
「擬人化した葡萄の木とディオニュソス像(バッカス)」紀元後150-200年、原作紀元前2世紀。
「アプロディーテとエロス像」紀元前300-前110年頃
「ディスコ・ボロス(円盤投げ)」紀元後2世紀、大理石。ミュロン原作。原作:紀元前450-前440年頃)。ハドリアヌス帝別荘出土。
「ヘラクレス像頭部」紀元後117-118年、ペンテリコン産大理石。ハドリアヌス帝別荘出土。
黒像式ヒュドリア(水甕)「ディオニュソスの酒宴」紀元520年頃
「ヘスペリデスの園の黄金の林檎を手にするヘラクレス像」紀元後1世紀
「アプロディーテ像」パロス島産大理石、紀元後1世紀。プラクシテレス原作「クニドスのアプロディーテ」原作:紀元前4世紀。
「エロス像」紀元後2世紀、リュシッポス原作。
「黄金の耳飾り エロス」紀元前330-前320年頃
「ニケ」紀元前500年
「ソクラテス像」ヘレニズム時代、紀元前200-後100年
「ソポクレス像」
「クリュシッポス像」
■「大英博物館 古代ギリシャ展-THE BODY究極の身体、完全なる美」
人体表現は西洋美術の中心的なテーマのひとつです。西洋美術史において、このテーマにはじめて徹底的かつ真摯に取り組んだのは古代ギリシャ人でした。ギリシャ人は神も人間と同じ姿であるとみなしていました。その神や人間を「身体」という現実の形で表すことは、ギリシャ人が人間について考え、神について考えるときに欠かすことのできない手段だったのです。同時に、身体を絵画や彫刻によって形作りながら、ギリシャ人は来る日も来る日も美の原理を―美しい表現とは何であるのか、そしてどのようにして実現できるのかを―追い求めました。
本展では、大英博物館の貴重なコレクションを通して、ギリシャ人が作り上げた身体美の世界をさまざまな観点から紹介します。アスリートの鍛え抜かれた肉体や女神の官能的な裸体から、老いや醜さを表した赤裸々な姿まで、時空を越えて今もなお輝き続ける古代ギリシャの美を存分にお楽しみください。
国立西洋美術館http://www.nmwa.go.jp/
■「大英博物館 古代ギリシャ展-THE BODY究極の身体、完全なる美」国立西洋美術館2011年7月5日(火)~9月25日(日)

|

« 写楽、東京国立博物館・・・大胆なデフォルメ | トップページ | 空海と密教美術展・・・理念と象徴 »

ギリシア美術」カテゴリの記事

コメント

美しき神々の世界ですね・・・
うっとりします。

投稿: naosophie | 2011年7月21日 (木) 14時39分

スポーツをする姿も美しい
ものですね。

投稿: ゆり ねこ | 2011年8月 8日 (月) 12時47分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/501484/52260689

この記事へのトラックバック一覧です: 大英博物館 古代ギリシャ展・・・美しく善きもの:

» 大英博物館 古代ギリシャ展(国立西洋美術館) [あお!ひー]
大英博物館 古代ギリシャ展に行ってきました。 国立西洋美術館はもちろん、東京国立博物館も金曜日の夜間開館は再開していて有難いです。 震災後は夜間どころか昼間も開いてなかったんですよね。 美術館の状況もだいぶ元にもどりつつあるように思います。 ○ゼウス...... [続きを読む]

受信: 2011年8月18日 (木) 09時51分

» 大英博物館「古代ギリシャ展」 @ 国立西洋美術館 [Art & Bell by Tora]
 古代ギリシャ美術は、今までアテネ、ルーブル、ヴァチカン、大英博物館、ベルリンなどで直接見ているはずなのだが、時間の関係で歩きながら観るという結果になっている。  そういう意味で、東京にいながらにしてこれらのワールド・ツアーで見られるのはありがたい。この大英博物館展も、アリカンテ(スペイン)、ソウル、台北・神戸・東京とまわっている。  2011.7.6の朝日新聞にこの展覧会のことが紹介されていたが、その中にヨハン・ゾファニーの油彩《チャールズ・タウンリーとコレクション》(1781-83)... [続きを読む]

受信: 2011年8月18日 (木) 19時38分

« 写楽、東京国立博物館・・・大胆なデフォルメ | トップページ | 空海と密教美術展・・・理念と象徴 »