「法然と親鸞 ゆかりの名宝」東京国立博物館・・・宗教は麻薬
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
「二河白道」(火の河=瞋憎と水の河=貪愛は、清浄な信心を現世と極楽浄土をつなぐ白い道)、「来迎図」ににおける全身を金色に輝かせた阿弥陀聖衆が雲に乗って経巻を前に合掌する往生者を迎える姿は、イメージによる幻術である。
現在では鎌倉新仏教は異端であり、中世の主流は南都北嶺の顯密勢力であった(顯密体制論、黒田俊男『日本中世の国家と宗教』「中世における顕密体制の展開」岩波書店1975)と解釈さている。
奈良仏教(南都六宗)と平安仏教(空海と最澄)は、最高度の学問思想を構築し華麗な仏教美術を生み出した。
鎌倉新仏教の開祖といわれる、法然・親鸞、栄西、道元、一遍、日蓮は、崇高な目的を忘却して、部分的思考に歪曲した。鎌倉仏教は仏教の堕落である。宗教は阿片である。
法然の絶対他力、専修念仏。親鸞の一向専修、一念発起、悪人正機。栄西の坐禅、公案。道元の修証一如、只管打坐。鎌倉仏教は、空海の三密(意密、口密、身密)の一部分を、この世を滅却する手段として専修した。
■法然と親鸞
法然は、9歳の時、夜襲で父を殺された。「敵人をうらむる事なかれ」という父の遺言に従って13歳で比叡山に上り出家。法然『選択本願念仏集』の趣旨は「阿弥陀如来はすべての人々を平等に救うために念仏だけを選択して本願の行とする」である。法然は、興福寺からの奏上で念仏禁止を訴えられ、建永元年(1206)後鳥羽上皇の寵愛していた二人の女官が無断で出家するという住蓮・安楽事件が起き、後鳥羽上皇の院宣によって追放される。この事件によって翌2年、門弟4名が死罪。専修念仏は禁止され、法然は四国へ流罪。
親鸞は、9歳のとき出家し、比叡山で20年の修行を積むが、悟りを得ることができず京都六角堂に参籠。法然に師事する。承元元年(1207)越後へ流罪となり、赦免後、関東の各地において20年にわたる布教活動を行った。
■主な展示
重要文化財 「選択本願念仏集」(せんちゃくほんがんねんぶつしゅう)鎌倉時代・12~13世紀 京都・廬山寺蔵
国宝 「教行信証」(坂東本) 第1冊~第6冊 親鸞筆 鎌倉時代・13世紀 京都・東本願寺(京都市烏丸七条)蔵
重要文化財 「二河白道図」(にがびゃくどうず)鎌倉時代・13世紀 京都・光明寺蔵
重要文化財 歎異抄(たんにしょう) 蓮如筆 室町時代・15世紀 京都・西本願寺蔵
重要文化財 「阿弥陀如来立像」鎌倉時代・建暦2年(1212) 浄土宗蔵
重要文化財 「恵信尼自筆書状類」 恵信尼筆鎌倉時代・13世紀 京都・西本願寺蔵
国宝 「阿弥陀二十五菩薩来迎図」(早来迎)鎌倉時代・14世紀 京都・知恩院蔵
重要文化財 「地獄極楽図屏風」鎌倉時代・13~14世紀 京都・金戒光明寺蔵
重要文化財 「法然上人像」(隆信御影) 南北朝時代・14世紀 京都・知恩院蔵
重要文化財 「親鸞聖人影像」(熊皮御影) 室町時代・15世紀 奈良国立博物館蔵
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保元・平治の乱などの戦乱や地震などの天変地異が続き、政治・社会が混迷した平安末期。来世の往生を願った富者は財を尽くして功徳を積み、僧侶は教義論争に明け暮れるなか、鎌倉仏教の先駆者・法然(1133~1212)は現れました。民衆を含む万人の救済を考えた法然は、「念仏をとなえれば誰もが救われる」と阿弥陀如来の名号をとなえることを説き、浄土宗の宗祖となりました。
その教えを受けたのが、40歳年下で、のちに浄土真宗の宗祖となる親鸞(1173~1262)です。法然と同じく比叡山での修行を積んだ後、29歳のとき法然に出会い、たとえ地獄におちようとも、その教えを信じて念仏をすると決断しました。しかし専修念仏の教えは既成教団から弾圧を受け、法然は四国へ、親鸞は越後へ流罪となります。その後、二人が再会することはかないませんでしたが、親鸞は越後への配流後、関東などでの布教活動を経て、京都に戻り、真摯な研鑽を続けて思索を深めました。
この特別展は、法然没後800回忌、親鸞没後750回忌を機に、両宗派からの全面的な協力を得て、法然と親鸞ゆかりの名宝を一堂にあつめ、その全体像をご紹介する、史上初の展覧会です。国宝・重要文化財が半数を占める第一級の美術品およそ190件をとおして、二人の生き方やその魅力をご紹介します。大震災に見舞われ、社会の転換期を迎える今日、二人の教えと生き方は現代人にも大きな示唆を与えるに違いありません。
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★「法然上人800回忌・親鸞聖人750回忌 特別展「法然と親鸞 ゆかりの名宝」東京国立博物館
2011年10月25日~ 2011年12月4日
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