フェルメールからのラブレター展・・・禁じられた恋の匂い
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
ラブレター(恋文)、女が意中の人に秘かに書く手紙。禁断の恋、背徳の匂い。禁じられた愛こそ、真実の愛。この世における愛の極致は、秘められた愛である。真実は秘められている。女と男を結ぶラブレターを運ぶ女召使いがいる。忍ぶ恋と色に出る恋の間に恋文がある。「しのぶれど色に出にけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで」(平兼盛)。「戀の極意は忍戀と見立候。一生忍んで思ひ死する事こそ戀の本意なれ」(『葉隠』)三島由紀夫は、忍ぶ恋こそ恋の極意、恋の本質であると考えた。
フェルメール『恋文』(1670アムステルダム国立美術館)は、壁面の海の絵画は堕罪と許されざる愛を暗示し、開かれた窓は外界への憧れを暗示していると解釈される。フェルメールの白と黒の床面は日常世界の象徴か。恋文の女は、愛と奔放と自由への憧れを意味し、寓意画の世界では淫蕩と堕落の象徴である。
【手紙を受け取り、読み、書く女性】は、フェルメールの得意の主題の一つである。「手紙を書く女と召使い」の床に転がる書き損じた手紙とろうそくと赤い蜜蝋と壁の絵画、「手紙を読む青衣の女」のウルトラマリンブルーと壁面の世界地図、「手紙を書く女」のサテンのリボンと真珠の首飾りと白甜の毛皮で縁取られた黄色い上着と壁面の絵画、フェルメールの絵画は記号を解読する世界に誘う。【手紙の女】手紙を描いたフェルメール作品は6点ある。
フェルメール『恋文』(1670アムステルダム国立美術館)、『窓辺で手紙を読む女』(1657年から1659年)、『婦人と召使』(女主人と女中)(1667年から1668年フリック・コレクション)『手紙を書く女と召使い』(1672)が最後である。
フェルメールの淡い光と静謐な空間のなかで、女の禁断の情念が展開する。
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主な展示作品
★ヨハネス・フェルメールJohannes Vermeer
「手紙を書く女と召使い」"A Lady Writing a Letter with her Maid"
1670‐72年頃 油彩・キャンヴァス
アイルランド・ナショナル・ギャラリー、ダブリン National Gallery of Ireland, Dublin, Sir Alfred and Lady Beit Gift, 1987(Beit Collection)
★ヨハネス・フェルメールJohannes Vermeer
「手紙を読む青衣の女」"Girl Reading a Letter"
1663-64年頃 油彩・キャンヴァス
アムステルダム国立美術館、アムステルダム市寄託 Rijksmuseum, Amsterdam. On loan from the City of Amsterdam (A. van der Hoop Bequest)
★ヨハネス・フェルメールJohannes Vermeer
「手紙を書く女」"A Lady Writing"
1665年頃 油彩・キャンヴァス
ワシントン・ナショナル・ギャラリーNational Gallery of Art, Washington, Gift of Harry Waldron Havemeyer and Horace Havemeyer, Jr. , in memory of their father, Horace Havemeyer.
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「フェルメールからのラブレター展」
コミュニケーション:17世紀オランダ絵画から読み解く人々のメッセージ
オランダ黄金期の巨匠、ヨハネス・フェルメール。精緻な空間構成と独特な光の質感をあわせもつ作品群は、今なお人々を魅了してやみません。現存する30数点のフェルメール作品のなかでも、日常生活に密やかなドラマをもたらす手紙のテーマは、重要な位置を占めています。本展は日本初公開となる《手紙を読む青衣の女》をはじめ、《手紙を書く女》、《手紙を書く女と召使い》の3作品が一堂に会するまたとない機会です。さらに、同時代に描かれた、人々の絆をテーマにした秀作も併せて紹介し、人物のしぐさや表情、感情の動きに注目することで、17世紀オランダ社会における様々なコミュニケーションのあり方を展観していきます。Bunkamuraザ・ミュージアム
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2011年から2012年、4つのフェルメール展。
★「フェルメールからのラブレター展」コミュニケーション:17世紀オランダ絵画から読み解く人々のメッセージ
Bunkamuraザ・ミュージアム
http://www.bunkamura.co.jp/museum/
2011年3月3日(木)~5月14日(水)
*1月1日のみ休館 開館時間:10:00-19:00(入館は18:30まで)
毎週金・土曜日21:00まで(入館は20:30まで) *12月30、31日を除く
公式サイト
http://vermeer-message.com
★「ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年」
国立西洋美術館
http://www.nmwa.go.jp/
2012年6月13日(水)~9月17日(月・祝日)
九州国立博物館(福岡・太宰府)2012年10月9日(火)~12月2日(日)
公式サイト
http://www.berlin2012.jp/
★「マウリッツハイス美術館展」オランダ・フランドル絵画の至宝
2012年6月30日(土)~9月17日(月・祝)
東京都美術館 企画展示室(東京・上野公園)
※2012年9月29日(土)~2013年1月6日(日)神戸市立博物館にも巡回します。
公式サイト
http://www.asahi.com/mauritshuis2012/
★「フェルメール≪地理学者≫とオランダ絵画展、シュテーデル美術館所蔵」
Bunkamuraザ・ミュージアム、2011年12月23日(金・祝)~2012年3月22日(日)
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