ユベール・ロベール・・・永遠の憧憬の地イタリア

恋するような甘美なイタリア。永遠の憧憬の地イタリアは、藝術家たちを魅了しつづける。イタリアは美の王国、アモーレの国である。糸杉の丘、黄金色の葡萄畑、迷路に囲まれた広場。風景は思想である。
ゲーテは1786-88年にイタリア旅行をした。『イタリア紀行』(1816-17、29)、スタンダール『イタリア紀行 1817年のローマ、ナポリ、フィレンツェ』、リルケ『フィレンツェだより』『ヴェネツィアの女性への手紙』。イタリアへの憧れは、数限りない作品を生み出し続けた。
クロード・ロラン(1604/5~1682)他、画家たちは、イタリアの景観画(ヴェドゥータ)、空想的風景画(カプリッチョ)、廃墟画を描き、古代帝国の偉容のイメージを掻き立てた。古代との出会い。地下に梯子を降ろし古代遺跡に降り立つ画家。永遠の都ローマの町を歩き回る若き画家のまなざし。コンスタンティヌス帝の凱旋門。16世紀のヴィラ。クロード・ロランたちは、風景の美的基準を構築した。
クロード・ロランの初期作品「笛を吹く人物のいる牧歌的風景」1635-39は、夕暮れの水辺に三人の羊飼いが集い、笛を楽しんでいる。聳える大木の間には深い空間が開け、その深奥には橋と山々が現れる。夕暮れの静けさとやすらぎ。クロード・ロランは、フランスで生まれローマで生涯を終えた。牧歌的風景画、海港画、後世の風景画家へ絶大な影響力を残した。
18世紀の画家ユベール・ロベールは、11年間イタリアに住み、イタリアを描き廃墟の画家と呼ばれた。ベルサイユやプティ・トリアノンの庭園の庭園デザイナーとなった。
展示作品
クロード・ロラン「笛を吹く人物のいる牧歌的風景」1635-39静岡県立美術館
ジョセフ・ヴェルネ「夏の夕べ イタリア風景」1773国立西洋美術館
ユベール・ロベール「パラティーノの丘の素描家たち」1761-62年、サンギーヌ・紙、ヴァランス美術館Musée de Valence
ジャン・オノレ・フラゴナール「ティヴォリのヴィラ・デステ」素描、ヴァランス美術館
ジョバンニ・バティスタ・ピラネージ「ローマの景観」1758-59国立西洋美術館
★構成
1イタリアと画家たち
2古代ローマと教皇たちのローマ
3モティーフを求めて
4故郷の風景と18世紀のサロン文化
5奇想の風景
6庭園からアルカディアへ
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ポンペイやヘルクラネウムの遺跡発掘に沸いた18世紀、フランスの風景画家ユベール・ロベール(Hubert Robert 1733-1808)は「廃墟のロベール」として名声を築きます。イタリア留学で得た古代のモティーフと、画家の自由な想像力とを糧に描き出されたその風景では、はるかな時をこえて古代の建築や彫像が立ち現われる一方、あふれる木々の緑や流れる水、日々の生活を営む人々がコントラストを成しています。古代への新たな関心を時代と共有しつつ、独自の詩情をたたえたロベールの芸術は多くの人々をひきつけ、時の流れや自然、そして芸術の力をめぐる思索と夢想へ誘ってきました。
こうして描かれた奇想の風景は、「国王の庭園デザイナー」の称号を持つロベールが数々の名高い風景式庭園のデザインも手がけ、現実の風景のなかに古代風建築や人工の滝・洞窟などを配していたことを知れば、さらに生きた魅力を持ちはじめることでしょう。
本展では、世界有数のロベール・コレクションを誇るヴァランス美術館が所蔵する貴重なサンギーヌ(赤チョーク)素描を中心として、初期から晩年まで、ロベールの芸術を日本で初めてまとめて紹介します。ピラネージからフラゴナール、ブーシェまで師や仲間の作品もあわせ、ヴァランスの素描作品約80点を中心に約130点にのぼる油彩画・素描・版画・家具から構成されます。
自然と人工、空想と現実、あるいは想像上の未来と幸福な記憶を混淆させ、画家が絵画と庭園の中に作り上げたアルカディアの秘密に迫ります。
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★ユベール・ロベール-時間の庭-
国立西洋美術館2012年3月6日(火)~5月20日(日)
福岡市美術館2012年6月19日(火)~7月29日(日)
静岡県立美術館2012年8月9日(木)~9月30日(日)
http://www.tokyo-np.co.jp/event/bi/robert/
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