ベルリン国立美術館展、フェルメール「真珠の首飾りの少女」・・・物欲と虚栄に溺れる女
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
真珠の首飾りを眺める女は、物欲に溺れている。真珠は物欲と虚栄の象徴である。窓から差し込む淡い光に包まれた静謐な空間と佇む女。フェルメール絵画の形式である。ここには高貴な神秘性は存在しない。そこには世俗的な寓意が込められている。
左から光が差す室内に立つ女性、フェルメールの典型的なパターンである。髪にリボン、耳に真珠のイヤリングを付けた女性は、真珠のネックレスに付けたリボンを持ち上げ、左の壁に掛かった鏡を見つめている。鏡、宝石のモチーフは伝統的に虚栄を表す。背景は白い壁。女性の着ている白い毛皮の襟のついた黄色のサテンのコートは『手紙を書く女』『婦人と召使』他の作品に登場する常套の小道具である。死後、財産目録に記録されている。
★フェルメール「真珠の首飾りの少女Woman with a pearl necklace」ベルリン国立美術館、1662-1665年
Johannes Vermeer (1632–1675)
■展示作品
1480年頃 エルコレ・デ・ロベルティ《洗礼者聖ヨハネ》
1490年頃 ティルマン・リーメンシュナイダー《龍を退治する馬上の聖ゲオルギウス》
1490 年頃 ベルナルディーノ・ピントゥリッキオ《聖母子と聖ヒエロニムス》
1460 年頃 ドナテッロの工房《聖母子とふたりのケルビム》
1450 年頃 ルーカ・デッラ・ロッビア《聖母子》
1526年 アルブレヒト・デューラー《ヤーコプ・ムッフェルの肖像》
1533年頃 ルーカス・クラーナハ(父)の工房《マルティン・ルターの肖像》
1533年 ルーカス・クラーナハ(父)《ルクレティア》
1616-1620年頃 ディエゴ・ベラスケス《3人の音楽家》
1650–1653年頃 ルーカ・ジョルダーノ《エウクレイデス》
1650–1653年頃 ルーカ・ジョルダーノ《アルキメデス》
1650–1655年頃 レンブラント派《黄金の兜の男》
1662-1665年頃 ヨハネス・フェルメール《真珠の首飾りの少女》
1670-1680年頃 ヤーコプ・ファン・ロイスダール《滝》
1480-95年頃 サンドロ・ボッティチェッリ 《ダンテ『神曲』「煉獄篇」挿絵素描より:愛の原理を説くウェルギリウス(第17歌)》
1480–1495年頃 サンドロ・ボッティチェッリ《ダンテ『神曲』「煉獄篇」挿絵素描より:地上の楽園、ダンテの罪の告白、ヴェールを脱ぐベアトリーチェ(第31歌)》
1490–1495年頃 ルーカ・シニョレッリ《人物を背負うふたりの裸体像》
1503–1504年頃 ミケランジェロ・ブオナローティ《聖家族のための習作》
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本展は、ベルリン国立美術館のうち、絵画館、彫刻コレクション及び素描版画館からイタリアや北方の絵画と彫刻、さらには優れたイタリア素描の傑作を集めて企画されています。一見すると美術史の概説的な展覧会に見えるかもしれません。実際、ベルリン美術館のコレクションの規模は百科全書的な規模で、ヨーロッパ美術の通史を概観するには余りある内容と規模を誇っています。しかし、その背後には非常に重要な意図が隠されています。
19世紀にプロイセン帝国の首都ベルリンに国立美術館・博物館が誕生してから、プロイセン帝国の美術品コレクションは、その強大な経済力を背景として次第に類を見ない規模となり、国家的作品蒐集事業は、ヨーロッパ各国の美術館・博物館制度の範となりました。
本展は15世紀から18世紀までのヨーロッパ美術を、イタリアと北方の美術を比較しながら観ることのできる展覧会です。そこには絵画のみならず、 15~16世紀のドイツを代表するリーメンシュナイダーの木彫や、フェルメール、さらにはベルリン素描版画館の誇るボッティチェッリの素描など、優れた作品が出品されます。
ベルリン国立美術館は、プロイセン帝国時代の国家事業として人類学的観点からの作品蒐集と研究の時代を経た後、二度にわたる大きな戦争に翻弄されながら、戦争を乗り越え、東西ドイツの統一を果たした今、新たな未来を見据えて生まれ変わろうとしています。
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■フェルメール「真珠の首飾りの少女」ベルリン国立美術館展、国立西洋美術館
「ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年」
http://www.berlin2012.jp/
国立西洋美術館2012年6月13日(水)~9月17日(月・祝日)
九州国立博物館2012年10月9日(火)~12月2日(日)
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