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2012年8月22日 (水)

「バーン・ジョーンズ展―装飾と象徴―」・・・眠れる森の美女

20120623夏のせみ時雨の午後、二重橋前から美術館に行く。子どものころ見た映画『眠れる森の美女』の茨と魔女を思い出す。
すべてのものは朽ち果てていく。花の命は美しくも短い。『眠り姫』(Sleeping Princess)は、永遠に美しいままで止まりたい女の秘めたる願望の象徴である。『眠り姫』の世界は、止まったままの砂時計、野茨の花は花を散らすことなく咲き、永遠に少女のままで止まる。花の生命は短く、女の美しさは儚い。いばら姫は、100年の眠りの後、王子の口づけによって目覚める。
眠り姫は美徳(Tugend)と美貌(Schönheit)の化身であって、その美しさは彼女の無垢(Unschuld)の象徴である。
バーン・ジョーンズの絵画は、古代、中世の神話に彩られた世界、ラファエロ前派、イタリア絵画の影響深い、象徴的な世界である。イメージが象徴する意味は何か。
■『いばら姫』(Dornröschen) グリム版
国王夫妻がいた。子が生まれなかったが、女の子を授かり、祝宴に一人を除き国中の12人の魔法使いが呼ばれた。一番目の魔女からは美徳、二番目の魔女からは美貌、三番目の魔女からは富が約束された。以下この世で望まれるあらゆる素質が授けられた。宴の途中に、一人だけ呼ばれなかった13人目の魔女が現れ、11人目の魔女が贈り物をした直後「王女は錘が刺さって死ぬ」という呪いをかける。12人目の魔女が「王女は錘が刺さり百年間眠りにつく」という呪いに変える。王は、国中の紡ぎ車を燃やさせる。王女は、15歳の時に一人で城の中を歩いていて、城の塔の一番上で老婆が紡いでいた錘で手を刺し、眠りに落ちる。呪いは城中に波及し、茨が茂る。100年後、他国の王子が噂を聞き、城を訪れる。王女は王子のキスで目覚める。
■展示作品
「クピドとプシュケ」連作 1872-1881 バーミンガム美術館
「ペレウスの饗宴」1872-1881 バーミンガム美術館
「プロセルピナの略奪」1882 バーミンガム美術館
「果たされた運命-大海蛇を退治するペルセウス」-連作『ペルセウス』1882年頃、サウサンプトン市立美術館
ペルセウスは大海蛇を倒し、生贄として鎖につながれていたエチオピアの女王アンドロメダを救う。劇的な構図と蛇や甲冑の色彩が鮮烈。
「運命の車輪」1871-85年、ナショナル・ギャラリー・オヴ・ヴィクトリア
女神フォルトゥーナ(ギリシャ神話:テュケー)は、人間の運命を司る大きな車輪を動かす。
「メドゥーサの死 Ⅱ」-連作『ペルセウス』1882年、サウサンプトン市立美術館 Southampton City Art Gallery / Bridgeman
英雄ペルセウス(ギリシャ神話の半神)は、その顔を見ると石に変えられてしまう怪物メドゥーサの退治を王から命じられ、首を切り落とした。今まさに首を抱えて飛び立とうとするペルセウスの雄姿。
「ピグマリオンと彫像-女神のはからい」1878年、バーミンガム美術館 Birmingham Museums
彫刻家ピグマリオンは、美しいガラテアの像を作った。そして、自身の彫像に恋をする。このような美しい妻がほしいと愛の女神に祈ると、彫像に生命が吹き込まれる。像が物質から人間に変わる様が連作で表現されている。
「眠り姫」-連作『いばら姫』1872-74年頃、ダブリン市立ヒュー・レイン美術館 Dublin City Gallery The Hugh Lane, Dublin
洗礼の日から100年の眠りにつかされた王女が、美しい王子によって目を覚まされる物語。1891年公開されたときロンドンの観衆が熱狂した。バーン=ジョーンズの代表作。
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「『夢の国』に住む一番素敵な若者の一人」 時代の寵児ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティにそう云わしめた気鋭の画家エドワード・バーン=ジョーンズ(1833-98)は、イギリスの工業都市バーミンガムで額縁職人の子として生まれました。オックスフォード大学において生涯の友ウィリアム・モリスと出会い、1861年にはアーツ・アンド・クラフツ運動の起点となる共同事業を創始します。そして、19世紀末には、その詩情にみちた静謐な画風によってヴィクトリア朝絵画の頂点をきわめました。しかし、バーン=ジョーンズの活動については、これまでラファエロ前派やモリス商会とのかかわりから注目されることが多く、その全体像が十分に把握されてきたとはいえません。
聖職をめざしていたバーン=ジョーンズが芸術の道を志そうと決めたのは、モリスと北フランスの大聖堂を巡った1855年のことです。翌年、大学を去ったバーン=ジョーンズは、前衛芸術家として知られるロセッティに弟子入りし、美術批評家ジョン・ラスキンの導きでイタリア美術を学びます。
生来の才能を開花させて、唯一無二の装飾デザイナーとしてモリスの活動を支える一方で、自身の絵画制作においては、装飾性と象徴性をあわせもつ独自の様式を確立しました。唯美主義運動を推し進め、象徴主義絵画の先駆けとなったその精緻な画風は、制作から一世紀あまりを経た今もなお、みずみずしい光を放ち、バーン=ジョーンズの作品の魅力をきわだたせています。
本展は、バーン=ジョーンズの全貌に迫る日本初の個展です。ランカスター大学ラスキン図書館・研究所長スティーヴン・ワイルドマン氏を監修者に迎え、世界屈指のコレクションを収蔵するバーミンガム美術館の協力を得て、油彩画、水彩画、素描、貴重書、タペストリなど、国内外から厳選した約80点を、聖書・神話・物語のテーマごとに展覧します。「聖ゲオルギウス」「クピドとプシュケ」「ピグマリオン」「ペルセウス」「いばら姫」など、バーン=ジョーンズ芸術の真髄を伝える代表的連作を紹介します。
展覧会サイト:http://mimt.jp/bj/
美術館サイト:http://mimt.jp/
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「バーン=ジョーンズ展 ―装飾と象徴―」三菱一号館美術館
2012年6月23日(土)~8月19日(日)
http://mimt.jp/bj/

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» バーン=ジョーンズ展−英国19世紀末に咲いた華−(兵庫県立美術館) [I my me gallery blog]
9/9に兵庫県立美術館にて「バーン=ジョーンズ展−英国19世紀末に咲いた華−」を鑑賞しました。この展覧会は2012/10/14まで兵庫県立美術館にて開催されたあと、2012/10/23から12/9まで郡山市立美術館に巡回します。いま内容や批評を読みたくないという人はここから下は読まないでください。-------------------------------------------------------------最初バーン=ジョーンズという名前を聞いた時はピンとこなかったのだが、生涯の友ウィリア... [続きを読む]

受信: 2012年9月10日 (月) 16時22分

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