「国宝 大神社展」・・・謎の七支刀
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
藤の花の匂いが立ち込める五月の晴れた午後、博物館に行く。
大神神社の森厳な森を歩いた時、原始の息吹を感じた。日本の神域で、神聖な空気を感じるのは、大神神社の神域、磐座神社、狭井神社、三輪山禁足地である。
頂上付近には高宮神社、その奥には厳粛に祀られた奥津磐座が鎮座し、三輪山には無数の磐座がある。拝殿横に立つ「巳の神杉」と呼ばれる神木がある。三輪山はその姿がとぐろを巻いた蛇に喩えられ水の神、蛇神でもある。本居宣長は「大和に都があったころ、ただ大神といえば三輪の神のことだった」と書いた。三島由紀夫『奔馬』(『豊饒の海』第二部)で、若い剣士が滝に打たれる場面が出てくる。
学生時代、山の辺の道を歩いた時、石上神宮に行き、七支刀をみたいと申し出た思い出がある。
■国宝「七支刀」石上神宮・・・謎に満ちた刀
国宝「七支刀」(古墳時代・4世紀 奈良・石上神宮蔵 全長74.8㎝)
七支刀は、その特異な形状が有名である。謎に満ちた刀である。
刀身の両面に金象嵌された61文字の銘文は、
泰□四年□月十六日丙午正陽造百錬鋼七支刀□辟百兵宜供供候王□□□□作 (表)
先世以来未有此刀百済□世□奇生聖音故為倭王旨造□□□世 (裏)
中国の東晋の年号である「太和」「泰和」、西暦369年説が有力である。銘文の意味は、
泰和4年丙午正陽、百錬の鋼の七支刀を作った。百兵を避けることができる。先世以来このような刀は未だ存在しない。百済王の太子が倭王のためにこの七支刀を作った。
石上神宮
http://www.isonokami.jp/about/c4_2.html
石上神宮の国宝七支刀と物部氏の布留遺跡 http://www.bell.jp/pancho/k_diary-6/2012_10_28.htm
■展示作品
国宝「七支刀」(しちしとう)古墳時代・4世紀 奈良・石上神宮蔵、[展示期間:2013年4月9日(火)〜展示期間延長:5月12日(日)まで]
国宝「方格規矩鏡」(ほうかくきくきょう)古墳時代・4〜5世紀 福岡・宗像大社蔵
国宝「海獣葡萄鏡」唐または奈良時代・8世紀 千葉・香取神宮蔵
唐から舶載された形式の白銅製の鏡。獣をかたどった鈕を中心に、葡萄唐草文の地文に、獅子・馬・鹿・麒麟・鳳凰・蜂・蟷螂などが配されている。同形の鏡が正倉院に伝わる。
重要文化財「春日神鹿御正体」(かすがしんろくみしょうたい) 南北朝時代・14世紀 京都・細見美術館蔵
春日大社の使いである鹿をかたどった金銅製の作品。白雲の上に立ち、鞍に立てた榊には春日の本地仏5体が線刻されている。春日大社の祭神である武甕槌命(たけみかづちのみこと)が、常陸国鹿島から春日の地へ移座したときの様子を表している。同じ構図の絵画作品も出品される。
国宝「橘蒔絵手箱」及び内容品(たちばなまきえてばこ) 南北朝時代・明徳元年(1390)
和歌山・熊野速玉大社蔵[展示期間:2013年4月9日(火)〜5月6日(月・休)]
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■日本人は古来、自然のなかに人知を超えたものを感じ、山、岩、木など自然物の中に神を見出し、畏れ敬ってきました。やがて神々を祀る神社が建てられ、祭神の調度品である神宝や、祭神の姿をあらわした神像などがつくられました。神社は、神聖な場所として尊崇され、神像や宝物が大切に守り伝えられてきました。
この展覧会は、伊勢神宮の第62回式年遷宮を機に、神社本庁をはじめ、日本全国の神社の全面的な協力を得て、神社の宝物や日本の神々に関する文化財を総合的にご覧いただく、貴重な機会となります。
■「国宝 大神社展」東京国立博物館
4/9(火)〜6/2(日)
http://
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投稿: 加藤聖子 | 2013年5月14日 (火) 23時35分