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2013年7月

2013年7月 3日 (水)

オディロン・ルドン 夢の起源・・・「眼は奇妙な気球のように無限に向かう」

201306291大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
夏至の日の夕暮れ、美術館に行く。
『エドガー・アラン・ポー全集』を飾る版画の数々が、記憶の中から蘇る。ルドン「眼は奇妙な気球のように無限へ向かう」は、荒野に旅する眼である。夢幻的世界への旅立ち。夢と現実を境界なく旅する飛行船のようである。世界は、夢と現実とからできている。夢の大切さを教えたのは、美しき女だった。美しき女の導く旅によって、世界は美しい詩想の世界へと変貌した。春の日の旅立ち。美しき乙女の導くパルメニデスの騎行のように。
印象派の光の時代にあって、幻想と黒を追求したルドンは、孤高の画家と呼ばれる。植物学者アルマン・クラヴォー、エドガー・アラン・ポーの詩と短編に霊感を受けて、幻想の世界を冒険した。色彩を追求したのは50歳以後だった。
ルドンは、植物学者の友人の影響を受けて1879年、39歳の時に石版画集『夢のなかで』を発表してデビュー。1882年『エドガー・ポーに』を発表する。1880年カミーユ・ファルトと結婚した。『目を閉じて(閉じられた目、瞑目)』(Les yeux clos)(1890年)は、長男ジャンの死から三年後の1889年に次男アリが誕生した翌年に制作、「水平線の彼方に眼を閉じた女」を描く。ここから、ルドンは、色彩の時代に入る。ルドンは、瞑目する女によって、現実の幸福に到達したのか。《神秘的な対話》(1896年)、この世界は、幸福感に包まれている。
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第1部 幻想のふるさとボルドー ―夢と自然の発見
第2部 「黒」の画家 ―怪物たちの誕生
第3部 色彩のファンタジー
展示作品
《『夢想(わが友アルマン・クラヴォーの思い出のために)』6.日の光》1891年 リトグラフ、紙 岐阜県美術館
《蜘蛛》1887年 リトグラフ、紙 岐阜県美術館
《『ゴヤ頌』 2.沼の花、悲しげな人間の顔》1885年 リトグラフ、紙 岐阜県美術館
《『起源』 3.不恰好なポリープは薄笑いを浮かべた
醜い一つ目巨人のように岸辺を漂っていた》1883年 リトグラフ、紙 岐阜県美術館
《『夢のなかで』 2.発芽》
1879年 リトグラフ、紙 岐阜県美術館
《『エドガー・ポーに』1.眼は奇妙な気球のように無限に向かう》1882年 リトグラフ、紙 岐阜県美術館
《光の横顔》1886年 リトグラフ、紙 岐阜県美術館
《神秘的な騎士あるいはオイディプスとスフィンクス》1892年頃 木炭、パステルで加筆、画布で裏打ちした紙 ボルドー美術館
《神秘的な対話》1896年頃 油彩、画布 岐阜県美術館
《幻影》1910年頃 油彩、厚紙 ボルドー美術館
《若き日の仏陀》1905年 油彩、画布 京都国立近代美術館
《アポロンの戦車》1909年 油彩、パステル、厚紙 ボルドー美術館
母》1916年 油彩、画布 ボルドー美術館
《丸い光の中の子供》パステル、紙、新潟市美術館【展示期間7月30(火)‐8月25日(日)】
《ペガサスに乗るミューズ》1907‐10年頃 油彩、画布 群馬県立近代美術館
《花》1905‐10年頃 油彩、画布 岐阜県美術館
《眼をとじて》1900年以降 油彩、画布 岐阜県美術館
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フランス象徴主義を代表する画家オディロン・ルドン(1840-1916)。ルドンは黒一色の怪奇で、空想的な世界を展開した後、50歳を過ぎて夢幻的な色の世界へと変貌した特異な画家として知られています。彼と同時代には、モネやルノワールといった印象派の画家たちが活躍していました。彼らが大気の変化とともに刻々とその様を変える現実世界の光の表現を求めていたなかで、内面を重視し夢の世界を描いたルドンは、次世代の画家や文学者、批評家たちから注目を集めました。本展では、ルドンの芸術の源泉である「夢」と「自然」のルーツを、生まれ故郷であるフランス南西部の都市ボルドーに求めました。青年期に触れた自然科学や19世紀中頃には時代遅れになりつつあったロマン主義を、その後「黒」から「色彩」へどう昇華し展開していったのか。故郷のボルドー美術館、国内最大のルドン・コレクションを所蔵する岐阜県美術館の全面協力のもと、各地から集められた約150点で孤高の画家ルドンの全貌を辿ります。
http://www.satv.co.jp/0500event/0010event/redon/
http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index_redon.html
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■オディロン・ルドン 夢の起源 幻想のふるさと、ボルドーから
損保ジャパン東郷青児美術館 4月20日―6 月23 日(日)
静岡市美術館(2013年6月29日~8月25日)
岐阜県美術館(2013年9月3日~10月27日)
新潟市美術館(2013年11月2日~12月23日)

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