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2013年8月

2013年8月29日 (木)

地中海 四千年のものがたり・・・藝術家たちの地中海への旅

Venuspresentantheleneaparis177780_g大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
人が本当に見ることができるのは心によってだけである。本質は、目で見えない。美しい夕暮れ。美しい魂に、幸運の女神が舞い降りる。美しい守護霊が救う。美しい魂は、輝く天の仕事をなす。*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』より
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地中海は、藝術家、思想家たちを魅了してきた。
燦めきの海、エーゲ海の旅は、美しい思想を思い出す。美しい思いは美しい人を引き寄せる。最高の藝術作品は美しい人生である。エフェソスの幻のアルテミス神殿に佇むと、ヘラクレイトスの思想を思い出す。
紀元前6世紀、ピュタゴラスは、サモス島からイタリアのクロトンへ旅した。紀元前4世紀、プラトンは、イタリアへ旅した。
ローマ皇帝は、ギリシアに魅せられ、地中海を旅した。15世紀、ルネサンス人は、ギリシアとローマ帝国の藝術に憧れた。愛の女神ヴィーナスの国。
17世紀、画家クロード・ロラン(1600-1682)はイタリアで生涯を終えた。18世紀、ギャヴィン・ハミルトン(1723-98)は、イタリアと古代彫刻に魅せられイタリアで生涯を終えた。フランス革命の画家たち、ダヴィッド、アングル、フランソワ・ジェラールは、イタリアに魅せられ旅した。
ゲーテは、1786年イタリアに旅立ち、『イタリア紀行』(Italienische Reise,1816-1817)を書いた。スタンダールは、イタリアに憧れ、1799年、陸軍少尉としてイタリア遠征し、『イタリア紀行 ローマ、ナポリ、フィレンツェ』("Rome, Naples et Florence",1817)を書いた。スタンダールは、軍人となっても馬に乗る事も剣を振るう事も出来ず女遊びと観劇に現をぬかした。『恋愛論』("De l'amour", 1822)を書き、第一の結晶作用、情熱恋愛、恋愛至上主義、「己の全存在を賭けての愛」を主張した。
ドイツ古典主義の詩人アウグスト・フォン・プラーテン(August Graf von
Platen-Hallermunde,1796-1835)は、バイエルン出身だがイタリアを永住の地と定め、シチリアのシラクサで死んだ。詩集『ベネチアのソネット』(1825)『トリスタンとイゾルデ』(1825)を残した。
ロマン主義の詩人バイロン(1788-1824)は、イタリア、ギリシアに憧れ、『チャイルド・ハロルドの遍歴』(Childe Harold's Pilgrimage, 1812)を書き、1823年ギリシア独立戦争へ身を投じる。詩人シェリー(1792-1822)は、ギリシアに憬れ、『縛を解かれたプロメテウス』(Prometheus Unbound)を書き、地中海で死んだ。
リルケ(1875-1926)は、アドリア海に臨む孤城ドゥイノの館に滞在し、イタリア、エジプト、スペインを旅し『ドゥイノの悲歌』(1923)『オルフォイスへのソネット』(1923)を書いた。
ニーチェ(1844-1900)は、1879年から1889年まで様々な都市を旅し、哲学者として生活した。夏はスイス、サンモリッツ近郊ジルス・マリア、冬はイタリアのジェノヴァ、ラパッロ、トリノ、フランスのニースで過ごした。『ツァラトゥストラかく語りき』(Also sprach Zarathustra, 1883-91)、『善悪の彼岸』(Jenseits von Gut und Böse, 1886)、哲学書はこの10年間に書かれた。
地中海は、知恵と愛、幸福、美の国である。愛の女神ヴィーナスの国である。
哲学者たち、藝術家たちは何を求めて旅したのか。藝術家たちが地中海を旅したのは何故か。
(大久保正雄『地中海紀行』)
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■「トロイアの王子パリスに、スパルタのヘレネを引き合わせる愛の女神ヴィーナス」
パリスの審判、トロイア戦争の原因の有名な場面である。
ギャヴィン・ハミルトン(1723-98)Gavin Hamilton (1723, Lanarkshire – 4 January 1798, Rome)。新古典主義の画家。1740年代グラスゴー大学とローマで学ぶ、1756年ローマにもどり、イタリアで生涯を終えた。イタリアに魅せられ、40年イタリアに暮らし、古代彫刻「アルテミス」「パリス」などローマ彫刻を発掘した。
ギャヴィン・ハミルトンは、1785年、レオナルド「岩窟の聖母」the National Gallery, London, of Leonardo da Vinci's Virgin of the Rocksを購入し、ロンドンへ送った。
「トロイアの王子パリスに、スパルタのヘレネを引き合わせる愛の女神ヴィーナス」の絵を2度、描いている。
(参考文献 大久保正雄『地中海紀行』)
"Venus giving Paris Helen as his wife" ,by Hamilton (1782-1784), held by the Palazzo Braschi, Rome
"Vénus présentant Hélène à Pâris", 1777-80, Musée du Louvre

地中海 四千年のものがたり・・・藝術家たちの地中海への旅
ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり・・・ギリシア文化の輝き

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ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり―
La Méditerranée dans les collections du Louvre
東京都美術館 企画展示室/2013年7月20日(土)~9月23日(月・祝)
http://louvre2013.jp/
http://t.co/UzLTzJnLAH
展示構成
「序 地中海世界—自然と文化の枠組み」
「Ⅰ 地中海の始まり―前2000年紀から前1000年紀までの交流」
「Ⅱ 統合された地中海―ギリシア、カルタゴ、ローマ」
「Ⅲ 中世の地中海―十字軍からレコンキスタへ(1090-1492年)」
「Ⅳ 地中海の近代―ルネサンスから啓蒙主義の時代へ(1490-1750年)」
「Ⅴ 地中海紀行(1750-1850年)」
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★ギャヴィン・ハミルトン「トロイアの王子パリスに、スパルタのヘレネを引き合わせる愛の女神ヴィーナス」1777-80年頃 Vénus présentant Hélène à Pâris, 1777-80, Musée du Louvre

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2013年8月23日 (金)

プーシキン美術館展 フランス絵画300年・・・詩人に霊感を与えるミューズ

Pushkin2013大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』
夏の夜、美術館に行く。「詩人に霊感を与えるミューズ」は、藝術にとって象徴的である。
美しき乙女に導かれるパルメニデスの騎行の旅、ディオティマに秘儀伝授を受けるソクラテス。ソクラテスと遊女(ヘタイラ)アスパシア(『ソクラテスの思い出』第2巻6章)。金剛界曼荼羅「理趣会」の愛金剛女菩薩。藤原俊成と妻美福門院加賀(藤原親忠女-1193)。藤原定家と母美福門院加賀。アンリ・ルソー「詩人に霊感を与えるミューズ」は、詩人ギョーム・ド・アポリネールと恋人の画家マリー・ローランサンを描く。神の生命の戦略によって、藝術家、哲学者には、美しい女が、天の使いとしてやってくる。(大久保正雄『美の天使たち』)
ルネサンス文化、ギリシア文化の影響を受ける西洋美術史。クロード・ロラン「アポロとマルシュアスのいる風景」、ダヴィッド「ヘクトルの死を嘆くアンドロマケ」、ド・ラ・ペーニャ 「クピドとプシュケ」、ジャン=レオン・ジェローム『カンダウレス王』。17世紀、ニコラ・プッサン、クロード・ロランから、アンリ・ルソー、シャガールまで、西洋美術史は、ギリシア文化、ルネサンス文化の象徴にみちている。(大久保正雄『地中海紀行』)

展示作品
クロード・ロラン「アポロとマルシュアスのいる風景」1639
ニコラ・プッサン「アモリびとを打ち破るヨシュア」1624-25年頃 
ダヴィッド「ヘクトルの死を嘆くアンドロマケ」1783
フランソワ・ブーシェ「ユピテルとカリスト」1744年 
18世紀ロココ芸術を代表するブーシェ。女神ディアナの従者カリストを我がものにしようと、ディアナに扮して近づくユピテル。その後ろにはユピテルの象徴である鷲が潜み、誘惑する瞬間。
ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル「聖杯の前の聖母」1841年 
ナルシス・ディアズ・ド・ラ・ペーニャ 「クピドとプシュケ」1851年
ジャン=レオン・ジェローム『カンダウレス王』1859-60
Jean-Léon Gérôme (1824–1904) : King Candaules, 1859-60
カンダウレス王は自分の妻ニュシア(別伝によればルド)の美しさを自慢するあまり、ギュゲスに妻の裸体を見させた。ギュゲスはカンダウレスの年下の友人であった。怒った妻はギュゲスに対し、自殺するか王を殺して王位と自分とを我が物とするか迫った。ギュゲスは王を殺し、王国と王妃を手に入れる。(ヘロドトス『歴史』第1巻第8‐13節)
別の伝説によれば、ギュゲスは自分の姿を見えなくさせる魔力を持つギュゲースの指輪を用いてカンダウレスを殺した。プラトン『国家』
ウジェーヌ・フロマンタンの『ナイルの渡し船を待ちながら』1872年
ピエール=オーギュスト・ルノワール「ジャンヌ・サマリーの肖像」1877年
フィンセント・ファン・ゴッホ「医師レーの肖像」1889年
アレクシ・ジョゼフ・ペリニョン『エリザヴェータ・バリャチンスカヤ公爵夫人の肖像』1853 
Alexis-Joseph Perignon (1806-1882):Elizaveta Alexandrovna Bariatinskaia
Elizaveta Alexandrovna Tchernicheva (1826-1902), épouse du prince Vladimir Ivanovich Bariatinsky, 1853
アレクシ=ジョセフ・ペリニョン『エリザヴェータ・バリャチンスカヤ公爵夫人の肖像』
手にバラと扇を持ち、青の縁取りのある白いドレスをまとう美しい女。美しい肌にネックレスの真珠の輝きが映える。
アンリ・ルソー「詩人に霊感を与えるミューズ」1909年
The Muse Inspiring the Poet :La Muse Inspirant le Poete; portrait of Guillaume Apollinaire and Marie Laurencin
ペンを片手に立つ詩人のギヨーム・アポリネールと、寄り添う画家マリー・ローランサン。リュクサンブール公園の樹木が、恋人たちを祝福するかのようにアーチを作り生い茂る。ルソーは、アポリネールの顔や手を採寸しながら描いたといわれるが、二人の姿は異様であり、風刺画のようだ。画家の友人たちへの賛辞の形なのか。
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モスクワのプーシキン美術館から、珠玉のフランス絵画が来日します
知る人ぞ知る、フランス絵画の宝庫ロシア。17世紀古典主義の巨匠プッサンにはじまり、18世紀ロココの代表ブーシェ、19世紀のアングル、ドラクロワ、ミレー、印象派やポスト印象派のモネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、そして20世紀のピカソやマティスまで――。プーシキン美術館のコレクションの中核をなすフランス絵画の質の高さは、フランス本国もうらやむほどのものです。
本展では、選りすぐりの66点で、フランス絵画300年の栄光の歴史をたどります。なかでも、ルノワールの印象派時代最高の肖像画と評される≪ジャンヌ・サマリーの肖像≫は、最大の見どころです。 「ロシアが憧れたフランス」の粋を、どうぞお楽しみください。
http://pushkin2013.com/
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4月26日~6月23日:愛知県美術館、
7月6日~9月16日:横浜美術館、
9月28日~12月8日:神戸市立博物館
http://www.yaf.or.jp/yma/index.php

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2013年8月14日 (水)

ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり・・・ギリシア文化の輝き

Louvre2013_2Louvre2013大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
美は真であり、真は美である。これは、地上にて汝の知る一切であり、知るべきすべてである。人が本当に見ることができるのは心によってだけである。本質は、目で見えない。美しい夕暮れ。美しい魂に、美しい女神が舞い降りる。美しい守護霊が救う。美しい魂は、輝く天の仕事をなし遂げる。
*大久保 正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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蝉時雨の夏の午後、美術館に行く。燦めきの地中海、エーゲ海を旅した日々。壮麗なアルテミス神殿の幻、ギリシア文化の輝き、エフェソス博物館。
地中海は、エジプト、エーゲ海、ギリシアの神々、アプロディーテ、アルテミス、エロス。美的象徴に溢れている。「われらが海」と呼んだローマ皇帝、十字軍、ルネサンス人、ルネサンス王フランソワ1世、18世紀、藝術家たちの地中海への旅。地中海は美と知恵の源泉である。地中海への旅は、人間的、知的、美的な導きとなる。地中海紀行は、精神の王国への道案内である。(大久保正雄『地中海紀行』)
ディアナは、画家ギャビン・ハミルトンによって、イタリアで発掘された。ディアナは、1700年の眠りから画家によって目覚めた。
女神ディアナは、ギリシア神話ではアルテミス、狩の女神、アポロンの妹である。女神アルテミスは、森の神として、兄弟神アポローンとともに「遠矢射る」の称号をもち、古典時代の神話では、狩猟と純潔を司る処女神。エペソスは、アルテミス女神崇拝の一大中心地で、壮麗なアルテミス神殿は有名であった。月神ルーナと同一視される。
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1700年の眠りから目覚めた女神アルテミス。通称「ギャビーのディアナ」100年頃
清楚な容貌と肩に手をやる佇まいが美しい。ギリシア風の短い衣装から、狩りの女神アルテミスと推定される。18世紀、スコットランドの画家ハミルトンが、ローマ近郊ギャビーで発掘した。紀元前4世紀の名高い彫刻家プラクシテレスの様式を汲む作品のローマ時代の模刻である。1808年にルーヴルに収蔵されて以来、初めて館外に出品される。ルーヴルの傑作の一つ。
パリス、「ランズダウンのパリス」130年頃
パリスは、ギリシア神話のトロイア王子。フリギア帽を被った若々しい青年を、繊細に表したこの像は、古代ギリシアの高名な作品のローマ時代の模刻。ハドリアヌス帝の別荘から発掘された。
ギャヴィン・ハミルトン「トロイアの王子パリスに、スパルタのヘレネを引き合わせる愛の女神ヴィーナス」1777-80年頃 Vénus présentant Hélène à Pâris, 1777-80, Musée du Louvre
ギャヴィン・ハミルトン(スコットランド 1723-98)Gavin Hamilton (1723, Lanarkshire – 4 January 1798, Rome)。新古典主義の画家。イタリアに魅せられ、ギリシア彫刻を発掘する。40年イタリアに暮らし、ローマで生涯を終えた。
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■主な展示作品
ギリシア神話の象徴的イメージを用いた作品が42点ある。
「赤像式クラテル(壺):農業の女神デメテルの麦の穂を受け取る、ギリシアの英雄トリプトレモス」
.「赤像式杯:踊るサテュロス、コッタボス遊び (酒を鉢に投げ入れて恋占いをする遊び)をする会食者」
「カンタロス(高脚杯)と柘榴を持つ、葡萄と酒の神ディオニュソスの浮彫」
.「競技者に与えられるオリーヴ油を入れる黒像式アンフォラ:アテネの守護女神アテナ(A面)、競技者(B面)」
「アテネ式黒像式杯:英雄ヘラクレスとケンタウロスのネッソス(内側の底部分)」
「コリントス式アラバストロン(小型の香油入れ):白鳥および神話の怪物ゴルゴンの頭」
「浮彫装飾:神話の怪物ゴルゴン」
「赤像式クラテル(壺):牡牛に変身した主神ゼウスによる王女エウロペの掠奪」
「赤像式アンフォラ:薪の上で焚刑に処されるリュディア王クロイソス(A面)、ギリシアの英雄テセウスとペイリトオスによるアマゾン族の女王アンティオペの誘拐(B面)」
「カルピス(水瓶):ギリシアの英雄ヘラクレスによるエジプト王ブシリスの殺害」
「エジプト様式の男性像:ディオニュソスという名のギリシア人がエジプトの神々に献呈したことがギリシア語とエジプト語で記される」
「カラトス(ヤナギ細工の籠)を頭に乗せたギリシアとエジプトの混合神、愛と豊穣の女神アフロディテ=イシスの小像」
「巨大彫像の断片:エジプトの聖牛アピスとギリシアの神々が融合して生まれた混合神セラピスの頭部」
「彫像断片:ディアデマ(宝石入り帯状髪飾り)を冠したエジプトの地母神イシスの頭部」
「エジプトの守護の神ベスとオリエントの神アッティスの彫像:アッティスはギリシアの女神キュベレに同伴する神」
「玉座に鎮座し、杯とタンバリンを持つギリシアの女神キュベレの小像」
「翼をもち、女性の胸をした神話の創造物スフィンクス像」
「浮彫断片:占星術と天文学のムーサ(女神)、ウラニア」
「カルタゴの豊穣の女神タニトの標章とヘルメスの杖(蛇が巻きついた杖)が彫られた破風付き石碑:碑文「主よバアル・ハモンへ、ハンニバルの息子ムットゥンバアルがこの願いを捧げた。主は、彼の声を聞き、祝福してくださったから」」
「ポエニ語の碑文が刻まれ、星、女神タニトの標章、ヘルメスの杖、馬の頭が彫られた破風付き石碑:碑文「バアル神とバアル神に向き合うタニト女神にムットゥンがこの願いを捧げた。神はその声を聞き、祝福してくださった」」
「彫像断片:酒と演劇の神バッカスの従者サテュロスの頭部」
「ローマの石棺:人間の創造とその運命を表すティタン族プロメテウスの伝説」
「床モザイク:カリュドンの猪を狩るギリシアの英雄メレアグロスの伝説;葉冠の中の鴨のつがい;葉冠の中の男性胸像」
「ローマの神サトゥルヌスに捧げる碑文のある牡牛の頭部」
「水槽の床モザイク:魚のいる海の中でイルカと遊ぶキューピッドたち」
「床モザイク断片:狩りをするキューピッドと植物模様」
「ギリシア語銘文と、蛇の髪をした神話の怪物ゴルゴンの頭部が表されたメダイヨン」
「騎士とグリフォンの装飾が施された腕輪」
「ギリシア神話の英雄ヘラクレスの妻、デイアネイラを掠奪するケンタウロスのネッソス」
「ラファエロに基づくエウロペの掠奪を描いた、ウルビーノ司教ジャコモ・ノルディの紋章入りの皿」
「皿:エウロペの掠奪」
☆ヨーロッパの名前の由来となったエウロペはフェニキア(現レバノン)王の娘、白い牡牛に姿を変えたゼウスに連れ去られた。
「懐中時計:エウロペの掠奪」
「エウロペの掠奪を表した浮彫装飾のあるレキュトス(小型の香油入れ)」
「エウロペの掠奪」34. -37.
ギャビン・ハミルトン「トロイアの王子パリスに、スパルタのヘレネを引き合わせる愛の女神ヴィーナス」
「アルテミス:信奉者たちから贈られたマントを留める狩りの女神」通称「ギャビーのディアナ」
「トロイアの王子パリス」
「大聖堂に転用された、シチリア島シラクーザのミネルヴァ神殿の側面」
「アテネのアクロポリス、オリンピア・ゼウス神殿のテラスからの眺め」
展示構成
序章 海、大地、港、交易の島々
第1章 初期の交流 ―紀元前の東地中海―
第2章 我らが海 ―ギリシア、カルタゴ、そしてローマ―
第3章 十字軍の時代(11~13世紀)
第4章 オスマン帝国と西洋 ―16~18世紀の地中海―
第5章 芸術家の地中海旅行(18~19世紀)

参考文献
大久保正雄『地中海紀行』
図録『ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり』
高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店

地中海 四千年のものがたり・・・藝術家たちの地中海への旅
ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり・・・ギリシア文化の輝き

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本展はルーヴル美術館の全8美術部門が総力を挙げて「地中海」をテーマに企画し、西洋と東洋を結ぶ地中海世界の四千年におよぶ歴史的・空間的な広がりを、ルーヴルが誇る200点を超える収蔵品で展観するものです。
西洋と東洋の出会いの地で誕生した作品群は、多彩かつ個性的であると同時に、地中海を舞台に生み出された諸文化の影響関係を生き生きと伝える魅力あふれるものです。
注目すべきは、清楚な容貌と自然なたたずまいが美しい古代彫刻の傑作「アルテミス、通称 ギャビーのディアナ」。また、ロココ美術の華麗な作品やフランスの画家シャセリオーによるオリエンタリズムあふれる絵画など、多くの貴重な文化財が特別出品され、地中海の魅力にせまります。
http://louvre2013.jp/
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ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり
東京都美術館 2013年7月20日(土)~9月23日(月・祝)
午前9時30分~午後5時30分(金曜日は午後9時まで)
9月16日(月・祝)、9月23日(月・祝)は開室、9月17日(火)は閉室
主催:東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、ルーヴル美術館
日本経済新聞社、NHK
http://louvre2013.jp/

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2013年8月 8日 (木)

和様の書・・・典麗、優美、華麗、繊細な世界

20150713大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』
三跡の一人、藤原佐理の『離洛状』をみると、流麗で奔放な文字の流れが美しい。奔放不羈の精神を感じる。李白の詩を想起する美しさである。李白失脚の原因になった『清平調詞』二を思い出す。「一枝の濃艶露香を凝らす。雲雨巫山枉げて斷腸。借問す漢宮誰か似るを得ん。可憐の飛燕新粧に倚る。」京洛を離れた藤原佐理は、六点の作品が残っている。五点が詫び状である。(大久保正雄『魂の美学』)
書の美しさは、文字の美しさだけではなく、心の美しさ、磨き上げられた精神の美しさを現わす。鍛え上げられた技のみならず、洗練された精神にこそ美はある。精神の美しさは、知恵、勇気、節制、正義、不屈の魂にある。李白、プラトン、空海の精神を思い出す。美しい魂と美しい肉体をもって生きた詩人たち、思想家たち。(大久保正雄『魂の美学』)
琳派の書、『鹿下絵和歌巻』本阿弥光悦筆、絵俵屋宗達は、新古今和歌集の世界を、書と絵で現わす美しい至宝である。
国宝『本願寺本三十六人家集』『古今和歌集』(元永本)藤原定実筆は、料紙と散らし書きの書が絶妙の美的世界を現出する。
「古今和歌集(高野切)」は、典麗、優美、華麗、繊細な世界。仮名の最も美しく完成された姿である。
「鹿下絵和歌巻」本阿弥光悦筆、絵、俵屋宗達(17世紀、五島美術館)は、様々な鹿の姿態を金銀泥のみを使用して描いた下絵に、本阿弥光悦(1558―1637)が『新古今和歌集』より二十八首を選び、散らし書きした巻物の断簡。図は雄鹿とそれを振り返る雌鹿を描き、「思ふことさしてそれとはなきものを秋の夕べを心にぞとふ」後鳥羽院宮内卿『新古今和歌集』巻第四「秋歌上」第365番の和歌を散らし書きした部分である。
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主な展示作品
国宝「竹生島経」平安時代・10世紀後半~11世紀初 東京国立博物館蔵
国宝「扇面法華経冊子」(巻第一、観普賢経)平安時代・12世紀。大阪・四天王寺蔵
国宝「古今和歌集 巻第二十(高野切)」伝紀貫之筆、平安時代・11世紀。
国宝『古今和歌集』(元永本)藤原定実筆。平安時代・12世紀 東京国立博物館蔵。[展示期間:2013年7月13日(土)~9月8日(日)]
『古今和歌集』の現存最古の完本です。元永3年の奥書から「元永本」と呼ばれ、14種類もの文様を摺り出した日本製の唐紙(からかみ)を色とりどりに配置した調度手本(ちょうどてほん)。藤原行成の曾孫・定実(?~1077~1119~?)が、散らし書きも駆使しながら、全2帖を見事に書き上げた。
国宝「本願寺本三十六人家集」(貫之集上、順集) 貫之集上:藤原定実筆、順集:藤原定信筆。平安時代・12世紀 京都・西本願寺蔵
[展示期間:貫之集上 2013年7月13日(土)~8月12日(月)、 順集 2013年8月13日(火)~9月8日(日)]
歌仙36人の家集を粘葉装(でっちょうそう)の冊子本全37帖(現存)に書写。中国製・日本製の唐紙(からかみ)、染紙 (そめがみ)などを使って破り継ぎ、切り継ぎなどしながら、金銀箔や下絵を施した美麗な装飾料紙。当代一流の能書20人が分担執筆しており、調度手本の最高傑作。
「四季草花下絵和歌巻 」本阿弥光悦筆。江戸時代・17世紀 個人蔵。[展示期間:2013年7月13日(土)~8月4日(日)]
国宝「白氏詩巻」藤原行成筆、平安時代・寛仁2年(1018) 東京国立博物館蔵
国宝「平治物語絵詞 六波羅行幸巻、詞書:伝藤原教家筆。鎌倉時代・13世紀 東京国立博物館蔵 平治元年(1159)に起きた平治の乱を題材とする『平治物語』を絵巻化。美しい色彩と、群像表現が巧み、動乱の緊迫した状況を見事に描く。詞書きは一筆で、その書風には、藤原忠通の曾孫・教家の弘誓院流の影響がある。
「鹿下絵和歌巻」本阿弥光悦筆、絵、俵屋宗達(17世紀、五島美術館)。
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わが国の書の歴史は、漢字の伝来以来、中国の書法の影響を受けて発展しつつ、遣唐使廃止の頃になると国風文化が広まり、筆致に柔らかみが加わります。平安時代中期には、小野道風・藤原佐理・藤原行成の三跡(さんせき)と呼ばれる能書が登場し、繊細、典雅な「和様(わよう)の書」が完成します。併行して、万葉仮名、草仮名(そうがな)を経て女手(おんなで、平仮名)が成立し、「高野切(こうやぎれ)」に代表される日本独自の仮名の美が生まれました。 以後、日本の書は、仮名と漢字が融合した和様の書を中心に展開します。なかでも藤原行成の子孫は、宮廷の書役(かきやく)を長く勤め、その書はのちに世尊寺流と称され、書道史上に重要な位置を占めました。室町時代は多くの書流が型を踏襲した没個性の書となりますが、江戸時代に入り、本阿弥光悦、近衞信尹など上代様を展開させたダイナミックな書が生まれ、以降は「御家流」とよばれる実用の書が一般に普及します。
この展覧会は、こうした和様の書の魅力とともに、宮廷文学や料紙(りょうし)工芸など、書に関わる多様な日本文化に触れていただく機会となります。
――
特別展「和様の書」
東京国立博物館 平成館 特別展示室   2013年7月13日(土) ~ 2013年9月8日(日)
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1602
http://wayo2013.jp/
「鹿下絵和歌巻」本阿弥光悦筆、俵屋宗達絵。

Kouetsu_2013_2

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