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2013年8月14日 (水)

ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり・・・ギリシア文化の輝き

Louvre2013_2Louvre2013大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
美は真であり、真は美である。これは、地上にて汝の知る一切であり、知るべきすべてである。人が本当に見ることができるのは心によってだけである。本質は、目で見えない。美しい夕暮れ。美しい魂に、美しい女神が舞い降りる。美しい守護霊が救う。美しい魂は、輝く天の仕事をなし遂げる。
*大久保 正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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蝉時雨の夏の午後、美術館に行く。燦めきの地中海、エーゲ海を旅した日々。壮麗なアルテミス神殿の幻、ギリシア文化の輝き、エフェソス博物館。
地中海は、エジプト、エーゲ海、ギリシアの神々、アプロディーテ、アルテミス、エロス。美的象徴に溢れている。「われらが海」と呼んだローマ皇帝、十字軍、ルネサンス人、ルネサンス王フランソワ1世、18世紀、藝術家たちの地中海への旅。地中海は美と知恵の源泉である。地中海への旅は、人間的、知的、美的な導きとなる。地中海紀行は、精神の王国への道案内である。(大久保正雄『地中海紀行』)
ディアナは、画家ギャビン・ハミルトンによって、イタリアで発掘された。ディアナは、1700年の眠りから画家によって目覚めた。
女神ディアナは、ギリシア神話ではアルテミス、狩の女神、アポロンの妹である。女神アルテミスは、森の神として、兄弟神アポローンとともに「遠矢射る」の称号をもち、古典時代の神話では、狩猟と純潔を司る処女神。エペソスは、アルテミス女神崇拝の一大中心地で、壮麗なアルテミス神殿は有名であった。月神ルーナと同一視される。
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1700年の眠りから目覚めた女神アルテミス。通称「ギャビーのディアナ」100年頃
清楚な容貌と肩に手をやる佇まいが美しい。ギリシア風の短い衣装から、狩りの女神アルテミスと推定される。18世紀、スコットランドの画家ハミルトンが、ローマ近郊ギャビーで発掘した。紀元前4世紀の名高い彫刻家プラクシテレスの様式を汲む作品のローマ時代の模刻である。1808年にルーヴルに収蔵されて以来、初めて館外に出品される。ルーヴルの傑作の一つ。
パリス、「ランズダウンのパリス」130年頃
パリスは、ギリシア神話のトロイア王子。フリギア帽を被った若々しい青年を、繊細に表したこの像は、古代ギリシアの高名な作品のローマ時代の模刻。ハドリアヌス帝の別荘から発掘された。
ギャヴィン・ハミルトン「トロイアの王子パリスに、スパルタのヘレネを引き合わせる愛の女神ヴィーナス」1777-80年頃 Vénus présentant Hélène à Pâris, 1777-80, Musée du Louvre
ギャヴィン・ハミルトン(スコットランド 1723-98)Gavin Hamilton (1723, Lanarkshire – 4 January 1798, Rome)。新古典主義の画家。イタリアに魅せられ、ギリシア彫刻を発掘する。40年イタリアに暮らし、ローマで生涯を終えた。
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■主な展示作品
ギリシア神話の象徴的イメージを用いた作品が42点ある。
「赤像式クラテル(壺):農業の女神デメテルの麦の穂を受け取る、ギリシアの英雄トリプトレモス」
.「赤像式杯:踊るサテュロス、コッタボス遊び (酒を鉢に投げ入れて恋占いをする遊び)をする会食者」
「カンタロス(高脚杯)と柘榴を持つ、葡萄と酒の神ディオニュソスの浮彫」
.「競技者に与えられるオリーヴ油を入れる黒像式アンフォラ:アテネの守護女神アテナ(A面)、競技者(B面)」
「アテネ式黒像式杯:英雄ヘラクレスとケンタウロスのネッソス(内側の底部分)」
「コリントス式アラバストロン(小型の香油入れ):白鳥および神話の怪物ゴルゴンの頭」
「浮彫装飾:神話の怪物ゴルゴン」
「赤像式クラテル(壺):牡牛に変身した主神ゼウスによる王女エウロペの掠奪」
「赤像式アンフォラ:薪の上で焚刑に処されるリュディア王クロイソス(A面)、ギリシアの英雄テセウスとペイリトオスによるアマゾン族の女王アンティオペの誘拐(B面)」
「カルピス(水瓶):ギリシアの英雄ヘラクレスによるエジプト王ブシリスの殺害」
「エジプト様式の男性像:ディオニュソスという名のギリシア人がエジプトの神々に献呈したことがギリシア語とエジプト語で記される」
「カラトス(ヤナギ細工の籠)を頭に乗せたギリシアとエジプトの混合神、愛と豊穣の女神アフロディテ=イシスの小像」
「巨大彫像の断片:エジプトの聖牛アピスとギリシアの神々が融合して生まれた混合神セラピスの頭部」
「彫像断片:ディアデマ(宝石入り帯状髪飾り)を冠したエジプトの地母神イシスの頭部」
「エジプトの守護の神ベスとオリエントの神アッティスの彫像:アッティスはギリシアの女神キュベレに同伴する神」
「玉座に鎮座し、杯とタンバリンを持つギリシアの女神キュベレの小像」
「翼をもち、女性の胸をした神話の創造物スフィンクス像」
「浮彫断片:占星術と天文学のムーサ(女神)、ウラニア」
「カルタゴの豊穣の女神タニトの標章とヘルメスの杖(蛇が巻きついた杖)が彫られた破風付き石碑:碑文「主よバアル・ハモンへ、ハンニバルの息子ムットゥンバアルがこの願いを捧げた。主は、彼の声を聞き、祝福してくださったから」」
「ポエニ語の碑文が刻まれ、星、女神タニトの標章、ヘルメスの杖、馬の頭が彫られた破風付き石碑:碑文「バアル神とバアル神に向き合うタニト女神にムットゥンがこの願いを捧げた。神はその声を聞き、祝福してくださった」」
「彫像断片:酒と演劇の神バッカスの従者サテュロスの頭部」
「ローマの石棺:人間の創造とその運命を表すティタン族プロメテウスの伝説」
「床モザイク:カリュドンの猪を狩るギリシアの英雄メレアグロスの伝説;葉冠の中の鴨のつがい;葉冠の中の男性胸像」
「ローマの神サトゥルヌスに捧げる碑文のある牡牛の頭部」
「水槽の床モザイク:魚のいる海の中でイルカと遊ぶキューピッドたち」
「床モザイク断片:狩りをするキューピッドと植物模様」
「ギリシア語銘文と、蛇の髪をした神話の怪物ゴルゴンの頭部が表されたメダイヨン」
「騎士とグリフォンの装飾が施された腕輪」
「ギリシア神話の英雄ヘラクレスの妻、デイアネイラを掠奪するケンタウロスのネッソス」
「ラファエロに基づくエウロペの掠奪を描いた、ウルビーノ司教ジャコモ・ノルディの紋章入りの皿」
「皿:エウロペの掠奪」
☆ヨーロッパの名前の由来となったエウロペはフェニキア(現レバノン)王の娘、白い牡牛に姿を変えたゼウスに連れ去られた。
「懐中時計:エウロペの掠奪」
「エウロペの掠奪を表した浮彫装飾のあるレキュトス(小型の香油入れ)」
「エウロペの掠奪」34. -37.
ギャビン・ハミルトン「トロイアの王子パリスに、スパルタのヘレネを引き合わせる愛の女神ヴィーナス」
「アルテミス:信奉者たちから贈られたマントを留める狩りの女神」通称「ギャビーのディアナ」
「トロイアの王子パリス」
「大聖堂に転用された、シチリア島シラクーザのミネルヴァ神殿の側面」
「アテネのアクロポリス、オリンピア・ゼウス神殿のテラスからの眺め」
展示構成
序章 海、大地、港、交易の島々
第1章 初期の交流 ―紀元前の東地中海―
第2章 我らが海 ―ギリシア、カルタゴ、そしてローマ―
第3章 十字軍の時代(11~13世紀)
第4章 オスマン帝国と西洋 ―16~18世紀の地中海―
第5章 芸術家の地中海旅行(18~19世紀)

参考文献
大久保正雄『地中海紀行』
図録『ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり』
高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店

地中海 四千年のものがたり・・・藝術家たちの地中海への旅
ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり・・・ギリシア文化の輝き

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本展はルーヴル美術館の全8美術部門が総力を挙げて「地中海」をテーマに企画し、西洋と東洋を結ぶ地中海世界の四千年におよぶ歴史的・空間的な広がりを、ルーヴルが誇る200点を超える収蔵品で展観するものです。
西洋と東洋の出会いの地で誕生した作品群は、多彩かつ個性的であると同時に、地中海を舞台に生み出された諸文化の影響関係を生き生きと伝える魅力あふれるものです。
注目すべきは、清楚な容貌と自然なたたずまいが美しい古代彫刻の傑作「アルテミス、通称 ギャビーのディアナ」。また、ロココ美術の華麗な作品やフランスの画家シャセリオーによるオリエンタリズムあふれる絵画など、多くの貴重な文化財が特別出品され、地中海の魅力にせまります。
http://louvre2013.jp/
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ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり
東京都美術館 2013年7月20日(土)~9月23日(月・祝)
午前9時30分~午後5時30分(金曜日は午後9時まで)
9月16日(月・祝)、9月23日(月・祝)は開室、9月17日(火)は閉室
主催:東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、ルーヴル美術館
日本経済新聞社、NHK
http://louvre2013.jp/

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