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2013年9月

2013年9月23日 (月)

ミケランジェロ展 天才の軌跡・・・苦悩する孤独な藝術家

201309062013090601大久保正雄『旅する哲学者、美への旅』より
晩秋のイタリア、葡萄の実が紫にみのり黄葉が輝くとき、ルネサンスの藝術をめぐって歩いた美しい日々。思い出す、イタリアの憂愁。ミラノ、ヴェネツィア、フィレンツェ、ローマ。スフォルツェスコ城、メディチ家礼拝堂、ウフィッツィ美術館、アカデミア美術館、サン・ピエトロ大聖堂、システィーナ礼拝堂、アダムの創造、カンピドリオ広場。
ミケランジェロの彫刻は、滅びゆく肉体の美を感じる。「この世で真に美しく真実を語るものは肉体である」ミケランジェロ。だが「この世で最も美しいものは、美しい肉体をまとった美しい魂である」(大久保正雄『魂の美学』「美の奥義」)
最高の藝術家、最高の彫刻家とよばれるミケランジェロは、苦悩する孤高な藝術家である。
ミケランジェロは、八十九歳で死ぬまで変貌を遂げた。初期の古典主義様式の美から、メディチ家霊廟彫刻の螺旋状にうねるマニエリスム様式、晩年の『ロンダニーニのピエタ』の抽象的造形に到る。
6歳の時、母死す。15歳の時ロレンツォ・デ・メディチ(Lorenzo de' Medici)に才能を見いだされ援助を受けるが、ロレンツォ豪華王は2年後に死去する。1494年、メディチ家、フィレンツェ共和国から追放。23歳の時『ピエタ』、28歳の時『ダヴィデ像』を作り才能を発揮する。1506年1月ローマにて、古代彫刻ラオコーンの発掘に立ち会い、感動する。ローマ法皇ユリウス2世、レオ10世、クレメンス7世。権力者、法皇との確執と相克の三十年の歳月。貴婦人ヴィットリア・コロンナとの秘められた愛。孤独は憂愁を深め、ミケランジェロは、八十九歳で死ぬまで、何を求めたのか。(大久保正雄『地中海紀行』ルネサンスの藝術家)
★参考文献
ジョルジョ ヴァザーリ『ルネサンス彫刻家建築家列伝』白水社
アスカニオ・コンディヴィ『ミケランジェロ伝』高田 博厚訳
森田義之『メディチ家』講談社
『ミケランジェロ展―天才の軌跡 図録』2013
ジョルジョ ヴァザーリ『画家・彫刻家・建築家列伝』(Le Vite delle più eccellenti pittori, scultori, ed architettori : Lives of the Most Excellent Painters, Sculptors, and Architects)

ミケランジェロ展 天才の軌跡・・・苦悩する孤独な藝術家

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■主な展示作品
ミケランジェロ・ブオナローティ「階段の聖母」1490年頃 大理石、フィレンツェ、カーサ・ブオナローティ所蔵
ミケランジェロ・ブオナローティ「キリストの磔刑」1563年頃の木の作品、
ミケランジェロ・ブオナローティ「『レダ』の頭部習作」1530年頃 赤石墨/紙、フィレンツェ、カーサ・ブオナローティ所蔵
ミケランジェロ・ブオナローティ「クレオパトラ」1535年頃 黒石墨/紙、フィレンツェ、カーサ・ブオナローティ所蔵
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ミケランジェロ・ブオナローティ(1475-1564)は、ルネサンスの頂点を極めた、西洋美術における最も偉大な芸術家の1人です。本展覧会は、「神のごとき」と称され、生前から現在に至るまで深く崇敬を集めるミケランジェロの創造の軌跡とその波紋を、彼の子孫のコレクションを引き継ぐカーサ・ブオナローティ(フィレンツェ)の所蔵品60点によって紹介するものです。ミケランジェロの作品・資料に関しては世界一の質と量を誇る同館の全面的な協力を得たことで、フレスコ画や巨大な石彫といった持ち運び不可能な作品によって主に知られるこの芸術家の個展を、日本で開催することが可能となりました。
なかでも《階段の聖母》は、彼が15歳前後で制作したとされる初期の大理石浮き彫りによる傑作です。これまで門外不出とされ、長期貸し出し展示されるのは本展が史上初の機会となります。その他素描を中心とする30点を超すミケランジェロの作品類が一堂に会する機会は極めて貴重であり、天才の知られざる創造的プロセスとその秘密に迫る、格好の機会となるでしょう。また同時に、これまであまり知られていない彼の手紙や自筆手稿類なども紹介し、この偉大な芸術家の制作における苦悩や人間的側面も併せてご覧いただきます。
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2013michelangelo.html
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システィーナ礼拝堂500年祭記念 ミケランジェロ展―天才の軌跡
国立西洋美術館2013年9月6日(金)~11月17日(日)

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2013年9月 8日 (日)

上智大学創立100周年【ソフィアNEXT100プロジェクト】文化講演会

Hatsuzawa「時代の証言としての写真」現代の様々な戦場・・・初沢亜利×安田菜津紀「ソフィアンのフォトグラファー」
気仙沼を中心に東日本大震災の取材、北朝鮮、バグダッドの単独取材を行っている初沢亜利さんと、陸前高田で取材活動している安田菜津紀さんのギャラリートーク。
司会:大久保正雄
上智大学2013.10/19 14:40~16:20  11号館305教室
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初沢亜利『True Feelings―爪痕の真情。2011.3.12~2012.3.11』三栄書房、『隣人。38度線の北』徳間書店、『Baghdad2003』。初沢亜利は、ポストコロニアル3部作を計画している。次回作、沖縄。
安田菜津紀「貧困は連鎖する」BLOGOS http://blogos.com/outline/62467/ 写真展「それでも海で-陸前高田 潮騒と共に-」2013年10月3日~10月16日:オリンパスギャラリー東京
大久保正雄『ことばによる戦いの歴史としての哲学史』理想社、「美の奥義 プラトン哲学におけるエロス(愛)とタナトス(死)」、「プラトン哲学と空海の密教」、「花盛りの京都、幻の都へ」『地中海紀行』http://homepage3.nifty.com/odyssey/00c8c001.html
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写真集展示 写真家:都築響一(1980文英)『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』、初沢亜利『True Feelings―爪痕の真情。』『隣人』、古賀絵里子(2003 文仏)『浅草善哉』『おんな酒場放浪記』、写真展「一山 高野山」、安田菜津紀『ファインダー越しの3.11』。
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■上智大学創立100周年【NEXT100プロジェクト】
2013.10/19 上智大学14:40~16:20 11号館305教室 参加費:無料
http://www.sophiakai.gr.jp/news/news/2013/2013101903.html

写真Copyright:初沢亜利Hatsuzawa_20110729
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2013年9月 4日 (水)

速水御舟 ―日本美術院の精鋭たち・・・燃え上がる生命の炎舞

Gyoshuu201320130627大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
速水御舟の花は、死の匂いがする。「花の香りは死の香りである。」(大久保正雄『花盛りの京都、幻の都へ』)
御舟の花は、『炎舞』の焔に集まる蛾の群れのように、生命の頂点で命の焔を燃やし、死の匂いを漂わせる。夏の闇に舞う生命の炎舞は、藝術家の美の頂点であり、生の頂点であった。(大久保正雄『魂の美学』藝術家の愛と死)
Wer die Schönheit angeschaut mit Augen,
Ist dem Tode schon anheimgegeben,
Wen der Pfeil des Schönen je getroffen,
Ewig währt für ihn der Schmerz der Liebe!
「美はしきもの見し人は、はや死の手にぞわたされつ。
美の矢にあたりしその人に、愛の痛みは果てもなし。」
(アウグスト・フォン・プラーテン『トリスタン』1825生田春月訳)
速水御舟は、『菊』のような徹底した写実、細密描写から『炎舞』(1925)『名樹散椿』(1929)のような琳派的な象徴的装飾的表現へと展開した。41歳で逝った御舟の頂点は、31歳から35歳であった。
「実在するものは美でも醜でもない。唯真実のみだ。若し我々が確実にその真を掴んだとすれば、そこには美だとか醜だとかと言ふ比較的なものを超えた、より以上の存在を感じなければならない筈だ。或いは夫れをこそ真の美と言ふべきであるかもしれない。」速水御舟☆
☆速水御舟『菊(菊花図)』4曲1双(1921)大正10、紙本金地著色 個人蔵。
速水御舟『絵画の真生命―速水御舟画論』
■主な展示作品
速水御舟『炎舞』(1925)
『牡丹花(墨牡丹)』1934
『白芙蓉』1934年
『昆虫二題』1926年 琳派的、装飾的、幻想的な象徴絵画。『葉陰魔手』では蜘蛛の巣が拡がり蜘蛛に捕えられる。『粧蛾舞戯』では蛾の群れが炎の渦の中に吸いこまれる。
『翠苔緑芝』1928
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山種美術館は、近代・現代の日本画を中心に、とりわけ日本美術院(院展)の画家たちの作品を数多く所蔵しています。2014年に院展が再興100年を迎えることを記念し、当館に縁の深い院展画家、そして当館コレクションの中でも最も重要な院展画家の一人・速水御舟(1894-1935)に焦点をあてた展覧会を開催します。
院展は岡倉天心の精神を引き継いだ横山大観、下村観山らを中心に1914(大正3)年に再興されました。当時の日本画家たちは押し寄せる西洋画に相並ぶ、新時代の日本画を探求しており、再興院展は官展とともに中心的な役割を果たしていました。そのなかでも御舟は第一回目から再興院展に出品し、常に新たな日本画に挑み続けた画家でした。
御舟の約40年という短い人生における画業は、伝統的な古典学習、新南画への傾倒、写実に基づく細密描写、そして象徴的な装飾様式へと変遷しました。一つの画風を築いては壊す連続は、型に捉われない作品を描き続けた、画家の意欲の表れといえるでしょう。
本展では、御舟の芸術の変遷を、再興院展という同じ舞台で活躍した画家たちとの関わりを中心にご紹介いたします。御舟芸術の軌跡は、同門の今村紫紅、小茂田青樹、さらには御舟をいち早く評価した大観、そして安田靫彦、前田青邨など、つながりの深い院展画家たちとの交流や、同時代の院展の動向と密接に関わっていました。当館の誇る御舟コレクションから、古典学習と構成美の集大成《翠苔緑芝》(院展出品作)や、写実により幻想的な世界を表現した《炎舞》【重要文化財】をはじめとする代表作の数々を、同時代の画家たちの作品とともにご覧いただきます。大正期から日本画壇の中心であり続ける再興院展の芸術の神髄に迫ります。
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再興院展100年記念 速水御舟 ―日本美術院の精鋭たち― 山種美術館
2013年8月10日(土)~10月14日(月・祝)
http://www.yamatane-museum.jp/ 
★速水御舟『炎舞』(1925)

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