ミケランジェロ展 天才の軌跡・・・苦悩する孤独な藝術家
大久保正雄『旅する哲学者、美への旅』より
晩秋のイタリア、葡萄の実が紫にみのり黄葉が輝くとき、ルネサンスの藝術をめぐって歩いた美しい日々。思い出す、イタリアの憂愁。ミラノ、ヴェネツィア、フィレンツェ、ローマ。スフォルツェスコ城、メディチ家礼拝堂、ウフィッツィ美術館、アカデミア美術館、サン・ピエトロ大聖堂、システィーナ礼拝堂、アダムの創造、カンピドリオ広場。
ミケランジェロの彫刻は、滅びゆく肉体の美を感じる。「この世で真に美しく真実を語るものは肉体である」ミケランジェロ。だが「この世で最も美しいものは、美しい肉体をまとった美しい魂である」(大久保正雄『魂の美学』「美の奥義」)
最高の藝術家、最高の彫刻家とよばれるミケランジェロは、苦悩する孤高な藝術家である。
ミケランジェロは、八十九歳で死ぬまで変貌を遂げた。初期の古典主義様式の美から、メディチ家霊廟彫刻の螺旋状にうねるマニエリスム様式、晩年の『ロンダニーニのピエタ』の抽象的造形に到る。
6歳の時、母死す。15歳の時ロレンツォ・デ・メディチ(Lorenzo de' Medici)に才能を見いだされ援助を受けるが、ロレンツォ豪華王は2年後に死去する。1494年、メディチ家、フィレンツェ共和国から追放。23歳の時『ピエタ』、28歳の時『ダヴィデ像』を作り才能を発揮する。1506年1月ローマにて、古代彫刻ラオコーンの発掘に立ち会い、感動する。ローマ法皇ユリウス2世、レオ10世、クレメンス7世。権力者、法皇との確執と相克の三十年の歳月。貴婦人ヴィットリア・コロンナとの秘められた愛。孤独は憂愁を深め、ミケランジェロは、八十九歳で死ぬまで、何を求めたのか。(大久保正雄『地中海紀行』ルネサンスの藝術家)
★参考文献
ジョルジョ ヴァザーリ『ルネサンス彫刻家建築家列伝』白水社
アスカニオ・コンディヴィ『ミケランジェロ伝』高田 博厚訳
森田義之『メディチ家』講談社
『ミケランジェロ展―天才の軌跡 図録』2013
ジョルジョ ヴァザーリ『画家・彫刻家・建築家列伝』(Le Vite delle più eccellenti pittori, scultori, ed architettori : Lives of the Most Excellent Painters, Sculptors, and Architects)
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■主な展示作品
ミケランジェロ・ブオナローティ「階段の聖母」1490年頃 大理石、フィレンツェ、カーサ・ブオナローティ所蔵
ミケランジェロ・ブオナローティ「キリストの磔刑」1563年頃の木の作品、
ミケランジェロ・ブオナローティ「『レダ』の頭部習作」1530年頃 赤石墨/紙、フィレンツェ、カーサ・ブオナローティ所蔵
ミケランジェロ・ブオナローティ「クレオパトラ」1535年頃 黒石墨/紙、フィレンツェ、カーサ・ブオナローティ所蔵
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ミケランジェロ・ブオナローティ(1475-1564)は、ルネサンスの頂点を極めた、西洋美術における最も偉大な芸術家の1人です。本展覧会は、「神のごとき」と称され、生前から現在に至るまで深く崇敬を集めるミケランジェロの創造の軌跡とその波紋を、彼の子孫のコレクションを引き継ぐカーサ・ブオナローティ(フィレンツェ)の所蔵品60点によって紹介するものです。ミケランジェロの作品・資料に関しては世界一の質と量を誇る同館の全面的な協力を得たことで、フレスコ画や巨大な石彫といった持ち運び不可能な作品によって主に知られるこの芸術家の個展を、日本で開催することが可能となりました。
なかでも《階段の聖母》は、彼が15歳前後で制作したとされる初期の大理石浮き彫りによる傑作です。これまで門外不出とされ、長期貸し出し展示されるのは本展が史上初の機会となります。その他素描を中心とする30点を超すミケランジェロの作品類が一堂に会する機会は極めて貴重であり、天才の知られざる創造的プロセスとその秘密に迫る、格好の機会となるでしょう。また同時に、これまであまり知られていない彼の手紙や自筆手稿類なども紹介し、この偉大な芸術家の制作における苦悩や人間的側面も併せてご覧いただきます。
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2013michelangelo.html
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システィーナ礼拝堂500年祭記念 ミケランジェロ展―天才の軌跡
国立西洋美術館2013年9月6日(金)~11月17日(日)
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