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2013年10月

2013年10月16日 (水)

国宝 興福寺仏頭展・・・白鳳文化の香り

20130903興福寺仏頭は、白鳳文化の香りがする。飛鳥山田寺薬師如来の仏頭である。炎上して残った無傷の右頬に高貴さがある。
白鳳時代の仏像は、夢違観音、薬師寺の日光菩薩、月光菩薩を思い出す。微笑みを微かに帯び美しく玲瓏たる美を湛えている。玲瓏の美には、悲しみの影がある。純粋な魂の悲しみである。
玲瓏とは、透き通るように光り輝く美しさである。
「玉階に白露生じ、夜久しくして羅襪を侵す。水精の簾を却下し、玲瓏秋月を望む。」李白『玉階怨』
夜は更けて玉の階に白露が生じ、佇む妃の薄絹の靴下に滲みとおる。水晶のすだれをおろし、玲瓏と光輝き秋の夜空に冴える月影をみる。玲瓏と光り輝く月。月光の中に溶けるような女。
玲瓏は、光り輝く月の美である。
白鳳彫刻は、珠玉の美である。高貴な美の影には、悲しみがある。藤原京の本薬師寺、斑鳩法隆寺、飛鳥山田寺、飛鳥文化後期の洗練の美である。「法隆寺観音菩薩立像、銅造」(夢違観音)、「法隆寺阿弥陀三尊像、銅造」(伝橘夫人念持仏)、「薬師寺金堂薬師三尊像、銅造」「薬師寺東院堂聖観音立像、銅造」。
興福寺仏頭(山田寺薬師三尊像、薬師如来仏頭)には、高貴な面影がある。非業の死を遂げた蘇我倉山田石川麻呂の面影がやどるのか。
■展示作品
国宝「銅造仏頭」(飛鳥山田寺薬師如来仏頭、白鳳時代 興福寺蔵) 天武14年(685)、天皇が亡き蘇我倉山田石川麻呂のために造った飛鳥山田寺講堂本尊像の頭部。山田寺の開基は、蘇我倉山田石川麻呂(649年没)。皇極天皇2年(643)には金堂の建立が始まる。天武天皇7年(678)「丈六仏像を鋳造」とあり、天武天皇14年(685)にはその丈六仏像が開眼されている。開眼の年、天皇が浄土寺(山田寺の法号)に行幸した(『日本書紀』)。石川麻呂の孫にあたる持統天皇と夫の天武天皇の後援がある。
国宝「木造十二神将立像」(鎌倉時代13世紀 興福寺 東金堂 国宝 桧材 寄木造 彩色 彫眼 鎌倉時代 像高113.0~126.6cm建永2年1207)十二神将は守護神の性格をあらわすために武装し、薬師如来の12の誓願に応じてあらわれる薬師如来の分身。
1. 毘羯羅(びから)大将像 2. 招杜羅(しょうとら)大将像 3. 真達羅(しんだら)大将像
4. 摩虎羅(まこら)大将像 5. 波夷羅(はいら)大将像  6. 因達羅(いんだら)大将像
7. 珊底羅(さんていら)大将像 8. あに羅(あにら)大将像 9. 安底羅(あんていら)大将像
10. 迷企羅(めきら)大将像 11. 伐折羅(ばさら)大将像 12. 宮毘羅(くびら)大将像
国宝「板彫十二神将像」(興福寺 平安時代)
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奈良・興福寺の創建1300年を記念して「国宝 興福寺仏頭展」を開催します。展覧会では現存する東金堂をテーマとし、同寺の代表的な名宝である国宝「銅造仏頭」(白鳳時代)をはじめ、東金堂ゆかりの名品を展示します。「仏頭」の守護神として造られた国宝「木造十二神将立像」(鎌倉時代)、浮彫の最高傑作として有名な国宝「板彫十二神将像」(平安時代)の各12点、計24点が初めてそろって登場するほか、法相宗に関わる至宝も展示。「仏頭」と同じ白鳳仏として、東京・調布の深大寺所蔵の重要文化財「銅造釈迦如来倚像」も特別陳列され、国宝25点、重要文化財31点など約70点の至宝が集う豪華な展示となります。ヴァーチャル・リアリティー(VR)技術を使って、仏頭頭部の復元に挑むとともに、同寺で進む中金堂再建事業についても紹介します。
1.国宝25点、重要文化財31点 珠玉のラインアップ
興福寺は全国の国宝仏像彫刻のおよそ15%を所蔵する、まさに仏像の宝庫です。また平城京の時代から法相宗の教えを広め、絵画や書跡など宗派の名品を1300年の間、数々の災害から守り今日に伝えてきました。本展では、その中から国宝・重要文化財合わせて50点を超える重厚なラインアップを組みました。ことし一番の見ごたえある仏教美術の展覧会です。http://butto.exhn.jp/
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「国宝 阿修羅展」・・・天平文化の香り
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-7283.html
興福寺国宝展 鎌倉復興期のみほとけ 東京藝術大学大学美術館
2004年9月18日(土)-11月3日(水・祝)
http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2004/kohfukuji/kohfukuji_ja.htm
興福寺創建1300年記念 「国宝 阿修羅展」東京国立博物館
2009年3月31日(火) ~ 2009年6月7日(日)
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=652

興福寺創建1300年記念 国宝 興福寺仏頭展
東京藝術大学大学美術館 9月3日(火)~ 11月24日(日)
http://butto.exhn.jp/

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2013年10月10日 (木)

「京都―洛中洛外図と障壁画の美」・・・幻の花の都

20131008大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
狩野永徳『洛中洛外図屏風』をみると、哀愁のイタリア、憂愁のフィレンツェ、旅した美しい日々を思い出す。レオナルドの憂愁、さまよえる孤独な藝術家ミケランジェロのダヴィデの肉体、イタリア景観図の思い出である。
花の都フィレンツェは皇帝軍に包囲されて落城寸前である。ヴァザーリ『1530年のフィレンツェ包囲の眺めL'Assedio di Firenze』(ヴェッキオ宮殿、クレメンス7世の間1560-61)。フィレンツェ共和国の滅びの光景である。
京都が、洛中洛外図に描かれたのは、応仁の乱によって、京都が炎上してから後である。上御霊神社で、応仁の乱(1467年~1477年)は始まった。花の都の美しかった思い出、美しい京都を蘇らせるのが、画家の技である。
国宝『洛中洛外図屏風 上杉本』狩野永徳筆
国宝『洛中洛外図屏風 上杉本』は、相国寺の七重塔からみた京都の景観である。黄金の雲の間からみえる京都の風景が夢のように美しい。16世紀最高の巨匠狩野永徳、23歳の時の作品である。洛中洛外図の最高傑作。将軍足利義輝が日本を代表する絵師狩野永徳に描かせ、永禄8年(1565)に完成し、義輝没後に織田信長が入手して、上杉謙信へ贈った。金の雲間から尖った屋根がみえる。登場人物は老若男女2500人。若き永徳の細密画に圧倒される。
――
岩佐又兵衛筆『洛中洛外図屏風 舟木本』
『洛中洛外図屏風 舟木本』は、東寺の五重の塔からみた京都の景観である。
左隻「祇園祭」。三条大橋と高瀬川に架かる小橋が続くあたりに、祇園祭の風流が行きかう。東寺の堂内で僧たちが読経しているが、隅で若い人を抱きしめる僧の姿がみえる。
右隻「五条大橋」。花見の宴が終わり桜の枝や扇、日傘をもった集団が、身をくねらせて踊りながら賑やかに橋をわたっていく。酔いつぶれて二人に肩を担がれている男。四条河原には、人形浄瑠璃、遊女歌舞伎など芝居小屋が犇いて、人々の浮世への欲望が余すところなく活写される。
『洛中洛外図屏風 歴博乙本』16世紀
上京隻「御霊祭」上御霊神社の御霊祭の神輿二基が通りを巡行する。
17世紀京都の風景、琳派
狩野永徳『洛中洛外図屏風』をみると、光琳の優雅な絵画を思い出す。尾形光琳『紅白梅図』は、下鴨神社の御手洗川にかかる輪橋(そりはし)を描いた。輪橋の側に梅の木があり「光琳の梅」と呼ばれる。『燕子花図』六曲屏風は、上賀茂神社摂社、太田神社にある「太田ノ沢杜若群落」を描いた。琳派の代表者、尾形光琳(万治元年1658年-享保元年6月2日1716年7月20日)は、俵屋宗達の藝術に憧れ研究した江戸時代の画家、工芸家。「艶隠者」と呼ばれる(辻惟雄)。貴族的、唯美主義的作家。貴族的、美麗な日本の華麗、繊細な美学を構築した。
花盛りの京都
理念なき政治が、人間と国家を危機に陥れる。戦略なき国家に、滅びの影が訪れるとき、私は花盛りの京都に逃避行した。
桜満開の京都、花盛りの密教寺院に滞在した。しばし憂いを忘れて、春爛漫、醍醐寺の桜満開の時から紅枝垂れ桜が咲き、花吹雪舞うときまで、花めぐりする。死の相の下にみると、生命あるこの世のものが限りなく美しい。(大久保正雄『東寺、春爛漫の京都』2011)。
★参考文献
図録『京都―洛中洛外図と障壁画の美』2013
川尻秋生『平安京遷都』2011
「夢と陰謀の平安京」 左方郁子『京都 謎とき散歩』1997
大久保正雄「プラトン哲学と空海の密教―書かれざる教説と詩のことば―」2011
大久保正雄「花盛りの京都、幻の都へ」2013
宮坂宥勝・梅原猛『生命の海<空海>』仏教の思想9角川文庫1996
河内将芳『信長が見た戦国京都 城塞に囲まれた異貌の都』2010
■展示作品
第1部 都の姿─黄金の洛中洛外図
史上空前☆国宝・重要文化財指定「洛中洛外図屏風」全7件が一堂に
国宝・重要文化財に指定されている7件をすべて展示。これらが一堂に会する展覧会は、本邦初。
★国宝『洛中洛外図屏風 上杉本』狩野永徳筆 室町時代・16世紀(山形・米沢市上杉博物館蔵)
[展示期間:2013年10月8日(火)~11月4日(月・休)]
★重要文化財『洛中洛外図屏風 舟木本』岩佐又兵衛筆 江戸時代・17世紀(東京国立博物館蔵)
★重要文化財『洛中洛外図屏風 歴博乙本』室町時代・16世紀(国立歴史民俗博物館蔵)
[展示期間:2013年10月8日(火)~11月4日(月・休)]
重要文化財『洛中洛外図屏風 歴博甲本』室町時代・16世紀(国立歴史民俗博物館蔵)
[展示期間:2013年11月6日(水)~12月1日(日)]
重要文化財『洛中洛外図屏風 福岡市博本』江戸時代・17世紀(福岡市博物館蔵)
重要文化財『洛中洛外図屏風 勝興寺本』江戸時代・17世紀(富山・勝興寺蔵)
重要文化財『洛中洛外図屏風 池田本』江戸時代・17世紀(岡山・林原美術館蔵)
第2部 都の空間装飾─障壁画の美
1 王権の象徴─京都御所
重要文化財『群仙図襖』狩野永徳筆 安土桃山時代・天正14年(1586) 京都・南禅寺蔵
重要文化財『賢聖障子絵』狩野孝信筆 江戸時代・慶長19年(1614)京都・仁和寺蔵
2 仏法の荘厳─龍安寺
龍安寺の襖絵。明治の廃仏毀釈で散逸した。現在、メトロポリタン美術館とメトロポリタン美術館所蔵が12面を所蔵している。
★「列子図襖」江戸時代・17世紀 メトロポリタン美術館所蔵
★「琴棋書画図襖」江戸時代・17世紀 メトロポリタン美術館所蔵、シアトル美術館所蔵、京都・龍安寺
超高精細映像「龍安寺の石庭」の四季。
3 公儀の威光─二条城
二条城二の丸御殿黒書院一の間、二の間を飾っていた狩野尚信筆の障壁画、全69面。
城のシンボル、二の丸御殿大広間四の間を飾る狩野探幽筆「松鷹図」15面を展示。
二条城から全84面の障壁画を一挙展示
――
京都の市中(洛中)と郊外(洛外)の景観を高い視点から見下ろして描いた「洛中洛外図」は、室町時代から描かれはじめ、江戸時代を通して数多く制作されました。
そのほとんどが屏風絵で、四季が巡るなか、御所(皇居)をはじめ貴族や武家の御殿、名高い寺社、観光名所をとりあげて、そこに暮らす人々の生活を余すところなく描き出した風俗画です。
現存する「洛中洛外図屏風」は100点ほどが知られていますが、本展では狩野永徳が手がけた「洛中洛外図」の最高峰「上杉本」や岩佐又兵衛の「舟木本」など、国宝、重要文化財の7件すべてを展示します。
当時の都市景観を反映したこれらの「洛中洛外図屏風」は、美術的な価値だけでなく、建築史など、さまざまな分野でも高い資料的価値をもっています。
一方で、黄金の光をまとう「洛中洛外図」は、当時の現実の京都を描いたのではなく、それぞれの絵の注文主と制作者たちが夢見た京都を描いているともいえます。それらを対照しながら、かつての都を俯瞰してみましょう。
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1610
――

「京都―洛中洛外図と障壁画の美」東京国立博物館
2013年10月8日(火)~2013年12月1日(日)
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1610
http://www.ntv.co.jp/kyoto2013/

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