国宝 興福寺仏頭展・・・白鳳文化の香り
興福寺仏頭は、白鳳文化の香りがする。飛鳥山田寺薬師如来の仏頭である。炎上して残った無傷の右頬に高貴さがある。
白鳳時代の仏像は、夢違観音、薬師寺の日光菩薩、月光菩薩を思い出す。微笑みを微かに帯び美しく玲瓏たる美を湛えている。玲瓏の美には、悲しみの影がある。純粋な魂の悲しみである。
玲瓏とは、透き通るように光り輝く美しさである。
「玉階に白露生じ、夜久しくして羅襪を侵す。水精の簾を却下し、玲瓏秋月を望む。」李白『玉階怨』
夜は更けて玉の階に白露が生じ、佇む妃の薄絹の靴下に滲みとおる。水晶のすだれをおろし、玲瓏と光輝き秋の夜空に冴える月影をみる。玲瓏と光り輝く月。月光の中に溶けるような女。
玲瓏は、光り輝く月の美である。
白鳳彫刻は、珠玉の美である。高貴な美の影には、悲しみがある。藤原京の本薬師寺、斑鳩法隆寺、飛鳥山田寺、飛鳥文化後期の洗練の美である。「法隆寺観音菩薩立像、銅造」(夢違観音)、「法隆寺阿弥陀三尊像、銅造」(伝橘夫人念持仏)、「薬師寺金堂薬師三尊像、銅造」「薬師寺東院堂聖観音立像、銅造」。
興福寺仏頭(山田寺薬師三尊像、薬師如来仏頭)には、高貴な面影がある。非業の死を遂げた蘇我倉山田石川麻呂の面影がやどるのか。
■展示作品
国宝「銅造仏頭」(飛鳥山田寺薬師如来仏頭、白鳳時代 興福寺蔵) 天武14年(685)、天皇が亡き蘇我倉山田石川麻呂のために造った飛鳥山田寺講堂本尊像の頭部。山田寺の開基は、蘇我倉山田石川麻呂(649年没)。皇極天皇2年(643)には金堂の建立が始まる。天武天皇7年(678)「丈六仏像を鋳造」とあり、天武天皇14年(685)にはその丈六仏像が開眼されている。開眼の年、天皇が浄土寺(山田寺の法号)に行幸した(『日本書紀』)。石川麻呂の孫にあたる持統天皇と夫の天武天皇の後援がある。
国宝「木造十二神将立像」(鎌倉時代13世紀 興福寺 東金堂 国宝 桧材 寄木造 彩色 彫眼 鎌倉時代 像高113.0~126.6cm建永2年1207)十二神将は守護神の性格をあらわすために武装し、薬師如来の12の誓願に応じてあらわれる薬師如来の分身。
1. 毘羯羅(びから)大将像 2. 招杜羅(しょうとら)大将像 3. 真達羅(しんだら)大将像
4. 摩虎羅(まこら)大将像 5. 波夷羅(はいら)大将像 6. 因達羅(いんだら)大将像
7. 珊底羅(さんていら)大将像 8. あに羅(あにら)大将像 9. 安底羅(あんていら)大将像
10. 迷企羅(めきら)大将像 11. 伐折羅(ばさら)大将像 12. 宮毘羅(くびら)大将像
国宝「板彫十二神将像」(興福寺 平安時代)
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奈良・興福寺の創建1300年を記念して「国宝 興福寺仏頭展」を開催します。展覧会では現存する東金堂をテーマとし、同寺の代表的な名宝である国宝「銅造仏頭」(白鳳時代)をはじめ、東金堂ゆかりの名品を展示します。「仏頭」の守護神として造られた国宝「木造十二神将立像」(鎌倉時代)、浮彫の最高傑作として有名な国宝「板彫十二神将像」(平安時代)の各12点、計24点が初めてそろって登場するほか、法相宗に関わる至宝も展示。「仏頭」と同じ白鳳仏として、東京・調布の深大寺所蔵の重要文化財「銅造釈迦如来倚像」も特別陳列され、国宝25点、重要文化財31点など約70点の至宝が集う豪華な展示となります。ヴァーチャル・リアリティー(VR)技術を使って、仏頭頭部の復元に挑むとともに、同寺で進む中金堂再建事業についても紹介します。
1.国宝25点、重要文化財31点 珠玉のラインアップ
興福寺は全国の国宝仏像彫刻のおよそ15%を所蔵する、まさに仏像の宝庫です。また平城京の時代から法相宗の教えを広め、絵画や書跡など宗派の名品を1300年の間、数々の災害から守り今日に伝えてきました。本展では、その中から国宝・重要文化財合わせて50点を超える重厚なラインアップを組みました。ことし一番の見ごたえある仏教美術の展覧会です。http://butto.exhn.jp/
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「国宝 阿修羅展」・・・天平文化の香り
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-7283.html
興福寺国宝展 鎌倉復興期のみほとけ 東京藝術大学大学美術館
2004年9月18日(土)-11月3日(水・祝)
http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2004/kohfukuji/kohfukuji_ja.htm
興福寺創建1300年記念 「国宝 阿修羅展」東京国立博物館
2009年3月31日(火) ~ 2009年6月7日(日)
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=652
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興福寺創建1300年記念 国宝 興福寺仏頭展
東京藝術大学大学美術館 9月3日(火)~ 11月24日(日)
http://butto.exhn.jp/
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