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2013年10月10日 (木)

「京都―洛中洛外図と障壁画の美」・・・幻の花の都

20131008大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
狩野永徳『洛中洛外図屏風』をみると、哀愁のイタリア、憂愁のフィレンツェ、旅した美しい日々を思い出す。レオナルドの憂愁、さまよえる孤独な藝術家ミケランジェロのダヴィデの肉体、イタリア景観図の思い出である。
花の都フィレンツェは皇帝軍に包囲されて落城寸前である。ヴァザーリ『1530年のフィレンツェ包囲の眺めL'Assedio di Firenze』(ヴェッキオ宮殿、クレメンス7世の間1560-61)。フィレンツェ共和国の滅びの光景である。
京都が、洛中洛外図に描かれたのは、応仁の乱によって、京都が炎上してから後である。上御霊神社で、応仁の乱(1467年~1477年)は始まった。花の都の美しかった思い出、美しい京都を蘇らせるのが、画家の技である。
国宝『洛中洛外図屏風 上杉本』狩野永徳筆
国宝『洛中洛外図屏風 上杉本』は、相国寺の七重塔からみた京都の景観である。黄金の雲の間からみえる京都の風景が夢のように美しい。16世紀最高の巨匠狩野永徳、23歳の時の作品である。洛中洛外図の最高傑作。将軍足利義輝が日本を代表する絵師狩野永徳に描かせ、永禄8年(1565)に完成し、義輝没後に織田信長が入手して、上杉謙信へ贈った。金の雲間から尖った屋根がみえる。登場人物は老若男女2500人。若き永徳の細密画に圧倒される。
――
岩佐又兵衛筆『洛中洛外図屏風 舟木本』
『洛中洛外図屏風 舟木本』は、東寺の五重の塔からみた京都の景観である。
左隻「祇園祭」。三条大橋と高瀬川に架かる小橋が続くあたりに、祇園祭の風流が行きかう。東寺の堂内で僧たちが読経しているが、隅で若い人を抱きしめる僧の姿がみえる。
右隻「五条大橋」。花見の宴が終わり桜の枝や扇、日傘をもった集団が、身をくねらせて踊りながら賑やかに橋をわたっていく。酔いつぶれて二人に肩を担がれている男。四条河原には、人形浄瑠璃、遊女歌舞伎など芝居小屋が犇いて、人々の浮世への欲望が余すところなく活写される。
『洛中洛外図屏風 歴博乙本』16世紀
上京隻「御霊祭」上御霊神社の御霊祭の神輿二基が通りを巡行する。
17世紀京都の風景、琳派
狩野永徳『洛中洛外図屏風』をみると、光琳の優雅な絵画を思い出す。尾形光琳『紅白梅図』は、下鴨神社の御手洗川にかかる輪橋(そりはし)を描いた。輪橋の側に梅の木があり「光琳の梅」と呼ばれる。『燕子花図』六曲屏風は、上賀茂神社摂社、太田神社にある「太田ノ沢杜若群落」を描いた。琳派の代表者、尾形光琳(万治元年1658年-享保元年6月2日1716年7月20日)は、俵屋宗達の藝術に憧れ研究した江戸時代の画家、工芸家。「艶隠者」と呼ばれる(辻惟雄)。貴族的、唯美主義的作家。貴族的、美麗な日本の華麗、繊細な美学を構築した。
花盛りの京都
理念なき政治が、人間と国家を危機に陥れる。戦略なき国家に、滅びの影が訪れるとき、私は花盛りの京都に逃避行した。
桜満開の京都、花盛りの密教寺院に滞在した。しばし憂いを忘れて、春爛漫、醍醐寺の桜満開の時から紅枝垂れ桜が咲き、花吹雪舞うときまで、花めぐりする。死の相の下にみると、生命あるこの世のものが限りなく美しい。(大久保正雄『東寺、春爛漫の京都』2011)。
★参考文献
図録『京都―洛中洛外図と障壁画の美』2013
川尻秋生『平安京遷都』2011
「夢と陰謀の平安京」 左方郁子『京都 謎とき散歩』1997
大久保正雄「プラトン哲学と空海の密教―書かれざる教説と詩のことば―」2011
大久保正雄「花盛りの京都、幻の都へ」2013
宮坂宥勝・梅原猛『生命の海<空海>』仏教の思想9角川文庫1996
河内将芳『信長が見た戦国京都 城塞に囲まれた異貌の都』2010
■展示作品
第1部 都の姿─黄金の洛中洛外図
史上空前☆国宝・重要文化財指定「洛中洛外図屏風」全7件が一堂に
国宝・重要文化財に指定されている7件をすべて展示。これらが一堂に会する展覧会は、本邦初。
★国宝『洛中洛外図屏風 上杉本』狩野永徳筆 室町時代・16世紀(山形・米沢市上杉博物館蔵)
[展示期間:2013年10月8日(火)~11月4日(月・休)]
★重要文化財『洛中洛外図屏風 舟木本』岩佐又兵衛筆 江戸時代・17世紀(東京国立博物館蔵)
★重要文化財『洛中洛外図屏風 歴博乙本』室町時代・16世紀(国立歴史民俗博物館蔵)
[展示期間:2013年10月8日(火)~11月4日(月・休)]
重要文化財『洛中洛外図屏風 歴博甲本』室町時代・16世紀(国立歴史民俗博物館蔵)
[展示期間:2013年11月6日(水)~12月1日(日)]
重要文化財『洛中洛外図屏風 福岡市博本』江戸時代・17世紀(福岡市博物館蔵)
重要文化財『洛中洛外図屏風 勝興寺本』江戸時代・17世紀(富山・勝興寺蔵)
重要文化財『洛中洛外図屏風 池田本』江戸時代・17世紀(岡山・林原美術館蔵)
第2部 都の空間装飾─障壁画の美
1 王権の象徴─京都御所
重要文化財『群仙図襖』狩野永徳筆 安土桃山時代・天正14年(1586) 京都・南禅寺蔵
重要文化財『賢聖障子絵』狩野孝信筆 江戸時代・慶長19年(1614)京都・仁和寺蔵
2 仏法の荘厳─龍安寺
龍安寺の襖絵。明治の廃仏毀釈で散逸した。現在、メトロポリタン美術館とメトロポリタン美術館所蔵が12面を所蔵している。
★「列子図襖」江戸時代・17世紀 メトロポリタン美術館所蔵
★「琴棋書画図襖」江戸時代・17世紀 メトロポリタン美術館所蔵、シアトル美術館所蔵、京都・龍安寺
超高精細映像「龍安寺の石庭」の四季。
3 公儀の威光─二条城
二条城二の丸御殿黒書院一の間、二の間を飾っていた狩野尚信筆の障壁画、全69面。
城のシンボル、二の丸御殿大広間四の間を飾る狩野探幽筆「松鷹図」15面を展示。
二条城から全84面の障壁画を一挙展示
――
京都の市中(洛中)と郊外(洛外)の景観を高い視点から見下ろして描いた「洛中洛外図」は、室町時代から描かれはじめ、江戸時代を通して数多く制作されました。
そのほとんどが屏風絵で、四季が巡るなか、御所(皇居)をはじめ貴族や武家の御殿、名高い寺社、観光名所をとりあげて、そこに暮らす人々の生活を余すところなく描き出した風俗画です。
現存する「洛中洛外図屏風」は100点ほどが知られていますが、本展では狩野永徳が手がけた「洛中洛外図」の最高峰「上杉本」や岩佐又兵衛の「舟木本」など、国宝、重要文化財の7件すべてを展示します。
当時の都市景観を反映したこれらの「洛中洛外図屏風」は、美術的な価値だけでなく、建築史など、さまざまな分野でも高い資料的価値をもっています。
一方で、黄金の光をまとう「洛中洛外図」は、当時の現実の京都を描いたのではなく、それぞれの絵の注文主と制作者たちが夢見た京都を描いているともいえます。それらを対照しながら、かつての都を俯瞰してみましょう。
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1610
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「京都―洛中洛外図と障壁画の美」東京国立博物館
2013年10月8日(火)~2013年12月1日(日)
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1610
http://www.ntv.co.jp/kyoto2013/

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