ラファエル前派展 英国ヴィクトリア朝絵画の夢・・・愛と美の深淵
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
ロセッティは、美と真実を追求した。ラファエル前派の絵画は、愛の迷宮である。ミレイ「オフィーリア」(1851-52)は、絶望のうちに溺死するヒロイン、川に流されながら歌うオフィーリアと、33歳で亡くなったエリザベスの面影が重なる。ロセッティ「プロセルピナ」(1874)は、運命の女ジェイン・モリスの人生を反映する。
ラファエル前派は、因襲と階級社会、権威に抗して、中世の愛の夢、美しい自然への回帰を志向する。ロマン主義藝術の一つの流れである。シェイクスピア『ハムレット』『リア王』『尺には尺は』、「アーサー王伝説」、『トリスタンとイゾルデ』、ダンテ『神曲』、チョーサー『薔薇物語』、テニスン「水車小屋に娘」、中世の物語の世界が創り出された。
ジェイン・バーデン(1839-1914)は、ロセッティが終生追い求めた理想の女性であり、ファム・ファタル(femme fatal運命の女)と言われる。ラファエル前派の美のミューズである。ラファエル前派の藝術家と女たちには、愛と美の深淵がある。モリスは、ジェインをモデルに唯一の油彩画「麗しのイズー」(1859)を描き、ミレイはエリザベスをモデルに「オフィーリア」(1851-52)を描いた。ロセッティは、亡き妻エリザベスをモデルに「ベアタ・ベアトリクス」(1864)、ジェーンをモデルに「プロセルピナ」(1874)を描く。
ロセッティ、モリス、ジェーンの間には、不思議な三角関係がある。1859年、25歳のモリスは、19歳のジェーン・バーデン(1839-1914)と結婚。ロセッティは、エリザベス・シダル(1829-62)と1860年に結婚したが、彼女は1862年亡くなる。ミレイは、1855年にエフィーと略奪結婚した。ラファエル前派の愛の迷宮である。
ラファエル前派は、1848年ジョン・エヴァレット・ミレイ、ダンテ・ガブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハントによって結成され、5年で終了した。1858年、ロセッティを中心に、第2世代のエドワード・パーン= ジョーンズ、ウィリアム・モリスによって、受け継がれ、「生活と芸術 アーツ&クラフツ」、「唯美主義 藝術のための藝術」へ展開する。
フランス革命後、古典主義に反抗するロマン主義藝術が起こった。ラファエル前派は、ロマン主義藝術の一つの流れである。ラファエル前派は沈滞したイギリス美術に抵抗した。
★「ラファエル前派兄弟団宣言」1、独創的なアイディアを持つこと。2、表現のために、自然を注意深く観察する。3、過去の藝術であっても真摯で率直で誠実なものには共感し、因習的で自己顕示的で型に嵌ったものを排除する。4、絵画でも彫刻でも、絶対的に優れたものを制作すること。
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■主な展示作品
ヒューズ「4月の恋」1855-56年
ダンテ・ガブリエル・ロセッティ「ベアタ・ベアトリクス」1864-70年頃
ダンテ・ガブリエル・ロセッティ「プロセルピナ」1874年
ジョン・エヴァレット・ミレイ「オフィーリア」1851-52年
ウィリアム・ホルマン・ハント「良心の目覚め」1853-54年
モリス「麗しのイズー」1856-58年
ミレイ「マリアナ」1850年頃
ミレイ「両親の家のキリスト(大工の仕事場)」1849年
ロセッティ「見よ、我は主のはしためなり(受胎告知)」1849-50年
ロセッティ「ダンテの愛」1860年
ロセッティ「最愛の人(花嫁)」1895-66年
バーン=ジョーンズ「『愛』に導かれる巡礼」1896-97年頃
マドックス・ブラウン「リア王とコーデリア」1849-54年
ホルマン・ハント「クローディオとイザベラ」1850-53年
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★イギリス美術の美術展
「バーン・ジョーンズ展―装飾と象徴―」三菱一号館美術館・・・眠れる森の美女
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-c29c.html
「ジョン・エヴァレット・ミレイ展」Bunkamura・・・極美の世界、人間の儚さと死
「生活と芸術 アーツ&クラフツ展」ウイリアム・モリスから民芸まで 東京都美術館
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-fdb4.html
ターナー展 英国最高の巨匠、東京都美術館・・・イタリアの黄昏、黄金の光
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/post-b411.html
ロセッティ展、ラファエル前派の夢、Bunkamuraザ・ミュージアム、
1990年1990.09.22-1990.11.14
ウィリアム・ブレイク展、国立西洋美術館1990年9月22日―11月25日
ウィリアム・ブレイク版画展、国立西洋美術館2011年10月22日(土)~2012年1月29日(日)http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/williamblake2011.html
ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860-1900|三菱一号館美術館
2014年1月30日(木)~5月6日(火・祝)
http://mimt.jp/beautiful
『ラファエル前派とその時代展』The Pre-Raphaelites and their Times伊勢丹美術館1985
http://leonocusto.blog66.fc2.com/blog-entry-391.html
「西洋絵画の中のシェイクスピア展」伊勢丹美術館1992/10/29~11/24
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1848年、ロンドン―
アカデミズムに反抗する「ラファエル前派兄弟団」結成。
1848年ロンドン。 前衛美術運動を起こし、英国の美術史に大きな影響を与えた芸術家グループが7人の若者によって結成された。正式名称は「ラファエル前派兄弟団(Pre-Raphaelite Brotherhood )」、略してPR B。中心となったのはロイヤル・アカデミーで学ぶ3人の学生、ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829-96)、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(1828-82)、ウィリアム・ホルマン・ハント(1827-1910)。彼らは盛期ルネサンスの巨匠ラファエロを規範としてその形式だけを踏襲する当時のアカデミズムに反発し、ラファエロ以前の素直で、誠実な初期ルネサンス絵画を理想としこのグループ名を付けた。
具体的には自然をありのままに見つめその姿を正確に写しだそうとして、戸外での制作を試みたり、くっきりした明るい色彩を使用し細部を描き込んだりして、リアリズムに徹した画面を作り上げた。そのような姿勢や絵画は社会から猛反発を受け一種のスキャンダルとなったが、美術批評家ジョン・ラスキンの援護もあり、しだいに受容されていった。グループとしてのまとまった活動は1853年ごろまでにはなくなり、作家たちはそれぞれ独自の道を歩んでいくことになる。しかしラファエル前派の運動は彼らの先輩格にあたる画家フォード・マドックス・ブラウン(1821-93)の賛同を得るなど、周辺にいた作家たちも巻き込みその影響は広範囲に及んだ。
1850年代後半には、ロセッティの周りにエドワード・パーン= ジョーンズ(1833-98)やウィリアム・モリス(1834-96)などより若い作家たちが集まり、ラファエル前派の第二世代を形成し、後の唯美主義やアーツ・アンド・クラフツ運動にもつながっていく。本展はラファエル前派を英国の近代美術に新しい道を切り聞いたアヴァンギャルド運動として紹介する。(プレスリリースより)
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★ 「テート美術館の至宝 ラファエル前派展 英国ヴィクトリア朝絵画の夢」
2014年1月25日(土)~4月6日(日)
森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52F)
http://prb2014.jp/
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コメント
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