「鳥獣戯画─京都 高山寺の至宝─」・・・闇に眠りつづける謎
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
花ざかりの森を歩き、百花繚乱の丘を越えて、新緑の博物館に行く。夕暮れの森、夕暮れの諧調。風薫る春、夜の森、木々は囁く。
支配体制が揺らぐ下剋上の時代、支配階級との戦い、支配階級を戯画化する絵師。「兎と蛙の相撲。兎の耳に噛みつく蛙。」禁じ手を使う弱者。支配階層への抵抗と諧謔。作者はだれか。何を戯画化しているかは謎である。寺院の暗闇で八百年間、眠りつづける謎。
★美への旅、大久保正雄、『旅する哲学者』より
甲巻、「鳥獣戯画」を代表する巻。動物を擬人化、遊戯と儀式に興じる姿を描く。兎と蛙の相撲。兎の耳に噛みつく蛙、禁じ手である。兎と蛙が、猿を追いかける。
乙巻、ほえ合うイヌやつかみ合いをするイヌ。蝶を追う獅子と、後ろ足で頭を掻く獅子。
丙巻、動物を擬人化、囲碁、闘犬などの遊戯に興じる。
丁巻、カエルが描かれた本尊を前に法会が営まれる。甲巻の法会の場面をもとに描かれている。
■展示作品
国宝 鳥獣戯画 甲巻 1巻 平安時代・12世紀 京都・高山寺
国宝 鳥獣戯画 乙巻 1巻 平安時代・12世紀 京都・高山寺
国宝 鳥獣戯画 丙巻 1巻 鎌倉時代・13世紀 京都・高山寺
国宝 鳥獣戯画 丁巻 1巻 鎌倉時代・13世紀 京都・高山寺
国宝 明恵上人像(樹上坐禅像)、鎌倉時代・13世紀
国宝 華厳宗祖師絵伝 義湘絵 巻三、鎌倉時代・13世紀
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誰もが一度は目にしたことのある、日本で最も有名な絵巻、国宝・鳥獣戯画。墨線のみで動物や人物たちを躍動的に描いた、日本絵画史上屈指の作品です。全巻の修理を終え、その魅力を一新した鳥獣戯画の全貌を紹介します。国宝の甲・乙・丙・丁4巻とともに、この4巻から分かれ、国内外に所蔵される断簡5幅も集結。現存する全ての鳥獣戯画をご覧頂けます。
また、鳥獣戯画の伝来した京都・高山寺は、鎌倉時代のはじめに明恵上人によって再興され、今なお多くの文化財が伝わります。本展覧会では、高山寺ゆかりの至宝とともに、明恵上人の信仰と深く関わる美術作品を、かつてない規模で展観します。
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特別展「鳥獣戯画─京都 高山寺の至宝─」東京国立博物館
2015年4月28日(火) ~ 2015年6月7日(日)
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1707
http://chojugiga2015.jp/
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