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2017年11月25日 (土)

新海誠展「ほしのこえ」から「君の名は。」まで・・・夢と知りせば、覚めざらましを

Shinkai20171111大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』第130回
秋晴の昼、美術館に行く。現実の世界ではありえない映像美。夢の中で出会う二人。千年ぶりとなる彗星の来訪を一か月後に控えた日本。奇妙な夢を見る二人。
新海誠監督の「ほしのこえ」2002「雲のむこう、約束の場所」2004「秒速5センチメートル」2007「星を追う子ども」2011「言の葉の庭」2013「君の名は。」2016。1000点の厖大な展示である。美しい映像、悲しい恋の物語。青春へのメッセージ。人間はつねに可能性の一歩手前で生きている。何か起きるかもしれないその前日が今。夢の中で出会う二人。「思いつつ寝ればや 人の見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを 小野小町」『古今和歌集』<夢の中で愛しい人を見た、夢と知っていたならばもう少し夢を見ていたかった。>『古今和歌集』を参考に「君の名は。」の物語の着想を思いついた。空と背景を描くこだわりがある。印象的な空。空だけの場面もある。現実の世界の空は太陽が一つだが、太陽の位置、数を固定しない。一番美しい時間帯の空と、一番美しい時間帯の地上を組み合わせる。幻想的な映像を生みだす秘密は太陽の数にある。現実の世界ではありえないような様々な位置から太陽光を照らす。2つの太陽光が同一場面にある。
新海誠の物語はすべて「美しく壮大な世界ですれちがう男女の物語」「人と人が出会い、そしてすれちがい、揺れ動く心模様」を表現している。
「物語は、比喩、メタファーであり、時代と空間を、別の所に舞台を設定することができる」(カズオ・イシグロの言葉)を思い出す。
「皆、救いを求めて旅に出たのだ。誰に止めることができよう」「喪失を抱えて、なお生きろという声が聞こえた。お前にも聞こえた。それが人に与えられた呪いだ。でもきっとそれは祝福でもあるんだと思う。」**「星を追う子ども」
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
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美は真であり、真は美である。これは、地上にて汝の知る一切であり、知るべきすべてである。
美しい夕暮れ。美しい魂に、幸運の女神が舞い降りる。美しい守護霊が救う。美しい魂は、輝く天の仕事をなす。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
大久保正雄『藝術と運命の戦い 藝術家と運命の女』
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文学は、作りものであり、虚構で、事実ではない。だが、文学作品は、比喩、メタファーであり、人の心情を理解し共感することができる。『日の名残り』は、執事の姿を通じて職務に殉じて個をなくす人の比喩である。完璧な執事になりたがっている男、個人を犠牲にすると、アイディアを要約できる。時代と空間を、別の所に舞台設定を設定することができる。『私を離さないで』では、舞台設定を3回変更した。「人のいのちには限りがある」「いのちとは何か」を考えた。*『カズオ・イシグロ 文学白熱教室』
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物事をあまりに詳密に扱おうとする結果、人物の姿形よりも遠近画法により注意を払う人は、側面描写の多い、無味乾燥な描き方に陥ってしまう。それでそうした人々は、パオロ・ウッチェロのように、孤独で、奇妙で、憂鬱で、貧乏な人になってしまうことがまことに多いのである。ヴァザーリ『芸術家列伝』
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アニメーション監督・新海誠のデビュー15周年を記念し、『新海誠展「ほしのこえ」から「君の名は。」まで』を開催します。
新海誠の作品は“ 美しく壮大な世界ですれちがう男女の物語”を描くことで人間の本質に迫ります。人と人が出会い、そしてすれちがい、揺れ動く心模様を、完成度の高い物語に結晶させ、登場人物やその世界を鮮やかに描き出す作品群は、世代や国境を超えて多くの人々を引きつけています。
本展は貴重な制作資料である絵コンテや作画、設定資料や映像などの展示を通じて、そうした新海誠の15年の軌跡を振り返ります。そのほとんどの作業を1人で手掛けたデビュー作「ほしのこえ」から、集団制作に挑み初長編作品にして毎日映画コンクール・アニメーション映画賞を受賞した「雲のむこう、約束の場所」、単館上映ながら異例のロングランとなり、今なお熱狂的に語り継がれる「秒速5センチメートル」、本格ジュブナイルファンタジーに挑んだ「星を追う子ども」、デジタル時代の映像文学と言うべき「言の葉の庭」、そして記録的な大ヒットとなった最新作「君の名は。」までを完全網羅し、新海誠のアニメーション作品の魅力に迫ります。国立新美術館
http://www.nact.jp/exhibition_special/2017/shinkaimakoto/
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国立新美術館開館10周年
新海誠展「ほしのこえ」から「君の名は。」まで
2017年11月11日(土)~12月18日(月)

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