「神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展」・・・ハプスブルグ家の悪趣味の館
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』第134回
ハプスブルグ帝国の都、ウィーン、プラハ、ブダペスト、チェスキークルムロフ、東欧の国々を旅した灼熱の夏を思い出す。美しき青春の日。
ハプスブルグ家の偉大な美術蒐集たち
ハプスブルグ家には、偉大な美術蒐集がいる。デューラーを庇護したマクシミリアン1世、ティツィアーノを召し抱えたカール5世、スペイン王フェリペ2世は、ヒエロニムス・ボスを愛好した。フェリペ4世は、ベラスケスを宮廷画家、官僚にした。女帝マリア・テレジアの嫡男ヨーゼフ2世はコレクションを公開。スペイン王フェリペ2世、フェリペ4世、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世。
神聖ローマ皇帝ルドルフ2世 Rudolf II
ルドルフ2世(1552-1612)は、ウィーンに生まれ、24歳で神聖ローマ帝国皇帝に即位。
1583年、31歳で、都をプラハに移す。1612年、59歳で死す。多くの身分の低い側室の女との子を多数つくるが、世継ぎはない。
クンストカンマー、悪趣味の極み
17世紀バロックのドイツ諸侯が作ったクンストカンマーは、悪趣味の極みである。
1583年、31歳で、都をプラハに移す。ルドルフ2世はプラハ城、南翼と北翼をつなぐ廊下にクンストカンマー(Kunstkammer)、ブンダーカンマー(Wunderkammer)を作り、美術品だけでなく、珍しい貝殻、珊瑚、宝石、科学器械などを集めた。ティコ・プラーエ、ヨハネス・ケプラーを宮廷に呼ぶ。
【憎み合う兄弟、ルドルフ2世とマティアス】ルドルフ2世の才能に嫉妬する弟
弟は宗教問題などに無策だったルドルフ2世を憎むが、ルドルフ2世の才能に劣等感を抱いていた。決定的対立は1577年、スペイン領ネーデルラントにマティアスが調整役として赴いて失敗した。ルドルフはマティアスのウィーン帰還を許さず。マティアスは謀反、1611年プラハに侵攻、兄を帝位から引き摺り下ろす。
ルドルフ2世の死
1612年、59歳で死す。弟マチアスが帝位を継ぐ。マチアスにも子がなく、フェルディナント2世が帝位を継承。ハプスブルグ家は、カトリックとプロテスタント最大の宗教戦争、30年戦争(1618-48)に突入する。ドイツは荒廃し、ハプスブルグ家はブルボン家に敗れ、フランスの覇権が確立する。
神聖ローマ帝国、虚構の帝国
神聖ローマ帝国(西暦962~1806年)。神聖ローマ帝国は、首都の存在しないドイツ民族諸侯連合体。「神聖ローマ帝国」の名称は 1254年以降用いられる。古代ローマ再興を目指して作られた虚構、神聖でなくローマでもなく帝国でもない。フランス皇帝ナポレオンが欧州大陸を席巻すると、神聖ローマ帝国(962~1806年)崩壊。神聖ローマ帝国は烏合の衆である事が歴然とする。菊池良生『神聖ローマ帝国』講談社
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
大久保正雄『藝術と運命の戦い 藝術家と運命の女』
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展示作品の一部
ハンス・フォン・アーヘン作のコピー「ハプスブルク家、神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世の肖像」1600年頃、油彩・キャンヴァス、スコークロステル城、スウェーデン
ルーラント・サーフェリー「動物に音楽を奏でるオルフェウス」1625年、油彩・キャンヴァス、プラハ国立美術館、チェコ共和国
ヤン・ブリューゲル(父)「陶製の花瓶に生けられた小さな花束」1607年頃、油彩・板、ウィーン美術史美術館
ヨーリス・フーフナーヘル「生の短さの寓意(花と昆虫のいる二連画」 1591年、グアッシュ、水彩・ヴェラム、リール美術館
ジュゼッペ・アルチンボルド「ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像」1591年、油彩・板、スコークロステル城、スウェーデン
ディルク・ド・クワード・ファン・ラーフェステイン「ルドルフ2世の治世の寓意」1603年、油彩・キャンヴァス、プレモントレ修道会ストラホフ修道院、プラハ、チェコ共和国
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参考文献
「アルチンボルド展」・・・ハプスブルク家の皇帝の奇妙な趣味
http://bit.ly/2vterEw
ハプスブルク帝国年代記 王女マルガリータ、帝国の美と花
https://t.co/T2it2d8Zb1
ハプスブルク帝国、ヴェラスケス、黄昏の光芒
http://bit.ly/2zGK4N2
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プラハに宮廷を構え、神聖ローマ帝国皇帝として君臨したハプスブルク家のルドルフ2世(1552-1612)は、稀代の収集家として、また芸術の庇護者として知られています。16世紀末から17世紀初頭、彼の宮廷には世界各地から優れた人物たちが集結し、芸術作品、あるいは科学機器などのあらゆる優れた創作物、更には新たに発見された珍奇な自然物などが集められ、文字通り「驚異の部屋」とでも呼ぶべき膨大なコレクションが形成され、当時のヨーロッパの芸術文化の一大拠点ともなりました。本展ではジュゼッペ・アルチンボルドを始め、ルドルフ2世が愛好した芸術家たちの作品を中心に、占星術や錬金術にも強い関心を示した皇帝の、時に魔術的な魅力に満ちた芸術と科学の世界をご紹介します。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/
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★Hans von Aachen - Portrait of Emperor Rudolf II
★「神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展」Bunkamura ザ・ミュージアム
1月6日—3月11日
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