宗教の謎、国家と宗教の戦い、第2巻、アカデメイア、ルネサンス、織田信長
大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』292回
国家と宗教の戦い、第2巻。プラトンの学園アカデメイア閉鎖、メディチ家の戦いとプラトン・アカデミー、ルネサンスとローマ教皇庁の戦い、織田信長と比叡山、石山本願寺戦争
【理念を追求する精神】理念を探求する人は、邪知暴虐な権力と戦い、この世の闇の彼方に理想と美を求める。輝く天の仕事を成し遂げる。空海、孔子、織田信長、李白、プラトン。即身成仏、仁義礼智信、武の七徳、桃花流水杳然去、美の海の彼方の美のイデア、存在の彼方の善のイデア。
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
――
1.【神々の滅亡】テオドシウス1世
392年テオドシウス1世は、異教禁止令を発布、異教の供犠と祭式を彈圧する。426年テオドシウス2世(401-450.在位408-450)は、異教神殿破壊令を発布する。これ以後、偉大な古代ギリシアの聖域は、破壊され砂塵の中に埋もれ、19世紀まで1500年の眠りを眠ることになる。
例えば、394年オリュンピア祭典は禁止され393年の祭典が最後となり、デルポイの神託は4世紀以後行なわれなくなる。古代ギリシアの密儀、デイオニュソス、エレウシス、オルフェウスの秘儀がこの地上から姿を消し、再び蘇ることはなかった。
【皇帝ユスティニアヌス1世、アテナイのアカデメイア閉鎖】
529年、皇帝ユスティニアヌス1世(483-565)は、アテナイのアカデメイア閉鎖を命令。プラトンがBC387年に開いて以來、アカデメイア9百年の歴史が息の根を止められる。
かつて4世紀までローマ帝國の下で迫害されたキリスト教は、4世紀以後、異教を彈圧、迫害する。キリスト教による迫害によって、多彩なギリシア文化やオリエントの宗教が歴史の舞臺から姿を消す。偉大なギリシアの文化遺産とギリシアの生ける知の体系が滅ぼされたことは、人類史にとって悲劇であると言わねばならない。
参考文献
神々の黄昏 皇帝テオドシウス 多神教祭儀を禁止。ローマ帝国滅亡。皇帝ユスティニアヌス1世、プラトンのアカデメイア閉鎖。529年*
https:/
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
――
2,神々の復活、ルネサンス メディチ家の戦い、メディチ家とプラトン・アカデミー
【ルネサンス】フィレンツェで1439年から60年間繰り広げられた新プラトン主義の人文主義者たちの思想運動。メディチ家はシクストゥス4世と戦い、ジュリアーノはパッツィ家の陰謀で暗殺、ロレンツォは1492年死に、詩人ポリツィアーノは94年毒殺、ピコ・デラ・ミランドラも94年毒殺、フィチーノは1499年死ぬ。
【メディチ銀行創設】ジョヴァンニ・ディ・ビッチ・デ・メディチ(1360-1429)、父は羊毛商のアヴェラルド・ディ・メディチ(1383年没)。一族の銀行家ヴィエーリ・ディ・カンビオ(1323年⁻1395年)のもとで修業。1397年、ローマから移転、メディチ銀行をフィレンツェに創設。枢機卿バルダッサーレ・コッサ(を支援し、対立教皇ヨハネス23世として即位させた。1410年にはローマ教皇庁会計院の財務管理者となり、教皇庁の金融業務で優位な立場を得て、莫大な収益を手にする。フィレンツェの「正義の旗手」、外交大使なども歴任。建築家フィリッポ・ブルネレスキを支援。
1、ルネサンス、包囲されたフィレンツェ ロレンツォ暗殺の陰謀、フィレンツェ包囲網、対教皇庁戦争(1474-1480)。イタリアの戦国時代。ロレンツォ(1449-1492 1469から当主)は、稀代の戦略家であり教養人である。イタリアの天秤の針。1479ナポリ王フェランテを説得、和平交渉する。
パッツィ家の陰謀(1478)。真の犯人は、フィレンツェに敵対する、戦争好き陰謀家の法王。陰謀家シクストゥス4世(在位1471-1484)の陰謀。銀行家パッツィに命じる。
2、メディチ家とプラトン・アカデミー
15世紀に蘇った哲学はプラトン哲学である。1439年7月6日フィレンツェ公会議で、コジモ・デ・メディチはギリシア人哲学者プレトンの講義をきき、プラトン哲学の奥義に感銘をうけ、「アカデミア・プラトニカ」(プラトン・アカデミー)を構想した。コジモは、1462年マルシリオ・フィチーノにプラトンの原典とカレッジの別荘を与え、プラトン全集の翻訳を依頼した。コジモは1464年に死ぬ。しかしフィチーノは1477年に完成した。ロレンツォ・デ・メディチ(1449-1492)は1492年死に、プラトン・アカデミーの思想家たちは、1498年までに次々と死ぬ。だが、フィレンツェから始まったルネサンスはヨーロッパ文化史に深い影響を与えた。*
アカデミア・プラトニカは「美しい精神をもつ人々の自由な集まり、プラトンに捧げられた集まり」である。*フィレンツェ・プラトン主義の愛と美の哲学はミケランジェロたちルネサンスの藝術家に影響を与えた。「魂の美は、肉体における美より美しい」「魂の眼は肉眼が老いる時やっと輝き始める」*
3、プラトン哲学の奥義
プラトン・アカデミーの思想家が学んだプラトン哲学の奥義は、魂の哲学と美の哲学である。「魂は不死不滅である」。「本質は眼で見ることができない」「本質は心の眼によってのみ見ることができる」。「魂の美が存在する」「魂の美は、肉体における美より美しい」。魂と本質の哲学である。プラトン哲学の影響は、フィチーノ『プラトン神学』『饗宴注解』に顕著である。*
4、ルネサンスの終焉、メディチ家追放、サヴォナローラの死
ロレンツォがピコの助言により招いたサヴォナローラに欺かれ裏切られる。サヴォナローラは、間諜=工作員(死間『孫子』用間編)である。シャルル8世のフィレンツェ侵攻(1494年)を予言。1494年、メディチ家、フィレンツェから追放される。「虚飾の焼却」1498年、ルネサンスの藝術、焼かれる。サヴォナローラ、法王アレクサンデル6世を批判、怒り受け破門。1498年5月23日、シニョーリア広場にて処刑される。16世紀、ミケランジェロのマニエリスムの時代、17世紀、カラヴァッジョのバロックの時代が始まる。マニエリスムの藝術家は、フィグーラ・セルペンティナータ(蛇状曲線)を駆使する。*
孤高の藝術家、ミケランジェロ・・・メディチ家の戦いと美の探求、プラトンアカデミー
https:/
――
3,理念を探求 五徳、麒麟、天下布武 織田信長と比叡山、石山本願寺との戦い
【本能寺の変と三職推任問題】【明智光秀、計略と策謀の達人】
【比叡山焼討事件】1435年、6代将軍、足利義教が行った比叡山攻撃とその後、根本中堂自焼。延暦寺の有力な僧たちを招き、その席で捕縛し斬首する。1499年、室町幕府の管領(将軍の補佐役)細川政元によって焼討。1571年、織田信長、延暦寺根本中堂焼かず。
【織田信長、石山戦争】元亀元(1570)~天正8(1580)年まで11年間にわたり、織田信長と浄土真宗本願寺勢力とが戦った戦い。「宗教弾圧する権力者・信長」と「権力者に抵抗する本願寺勢力」という構図ではない。本願寺は幕府の勅願寺、幕府からは加賀守護に準ずる地位。百姓の持ちたる国。石山本願寺は、三好三人衆、浅井朝倉、毛利、幕府と政治的関係により、時に信長に敵対する。
――
【山科本願寺、細川晴元の戦い】石山本願寺は、元々京都市山科区にあった浄土真宗の寺院「山科本願寺」が細川晴元らによって火を放たれた後、当時大坂にいた浄土真宗の僧侶・証如が、現在の「大坂城二の丸」あたりに山科本願寺にあった仏像などを鎮座したのが始まり。
石山本願寺と細川晴元らの戦いは続き、石山本願寺は、寺領を拡大するとともに城郭建築の技術者を集め城を築く。
【織田信長、石山戦争】本願寺が信長に反旗を翻したのは、権力者への抵抗、信仰上の理由ではなく、畿内を中心とする諸大名との関係のため、突き詰めれば政治的理由による蜂起。信長が義昭を奉じて上洛する際の関係、『顕如上人文案』永禄10(1567)年11月7日「いよいよ上洛されるのはまことにめでたいこと」と挨拶、本願寺法主である顕如は義昭と信長の政権を歓迎。
【伊勢国長島一向一揆(1571,73,74年)】無差別殺戮でおよそ2万人が虐殺され、【越前一向一揆(1580)】1万人以上が討ち取られて壊滅。信長と一向宗との戦い、容赦ない残忍な戦い、それはよくある軍事的作戦であって、一般の民衆は容赦するように命じて指導者のみを処断した。
参考文献
神田千里『信長と石山合戦 中世の信仰と一揆』(吉川弘文館、2008年)
神田千里『宗教で読む戦国時代』(講談社、2010年)
神田千里『織田信長』(筑摩書房、2014年)
神田千里『戦国と宗教』(岩波書店、2016年)
【本能寺の変と三職推任問題】天正10年(1582年)4月25日、5月4日両日付けの勧修寺晴豊の日記『晴豊公記』(天正十年夏記)。 4月、信長を太政大臣・関白・征夷大将軍のいずれかに任ずるという構想が、村井貞勝と武家伝奏・勧修寺晴豊とのあいだで話し合われた(三職推任問題)。「御すいにん候て然るべく候よし申され候」。5月になると朝廷は、信長の居城・安土城に推任のための勅使を差し向けた。信長は正親町天皇と誠仁親王に対して返答した、返答の内容は不明である。6月2日、早暁、明智光秀の本能寺の変が起こる。
【明智光秀、計略と策謀の達人】「その才知、深慮、狡猾さにより信長の寵愛を受けた」「裏切りや密会を好む」「己を偽装するのに抜け目がなく、戦争においては謀略を得意とし、忍耐力に富み、計略と策謀の達人であった。友人たちには、人を欺くために72の方法を体得し、学習したと吹聴していた」ルイス・フロイス『日本史』
参考文献
今谷明『信長と天皇 中世的権威に挑む覇王』、小和田哲男『明智光秀』、ルイス・フロイス『回想の織田信長、ルイス・フロイス「日本史」より』
――
参考文献
アカデメイア閉鎖
大久保正雄『地中海紀行』第21回1 P27
神々の黄昏 皇帝テオドシウス 多神教祭儀を禁止。ローマ帝国滅亡。皇帝ユスティニアヌス1世、プラトンのアカデメイア閉鎖。529年*
プラトンは、紀元前387年四十歳の時、アカデメイアの地に學園を設立した。アカデメイア916年の歴史を終焉。
https:/
――
ルネサンス、メディチ家の戦い
孤高の藝術家、ミケランジェロ・・・メディチ家の戦いと美の探求、プラトンアカデミー
https:/
大久保正雄「メディチ家とプラトン・アカデミー イタリア・ルネサンスの美と世界遺産」
https:/
メディチ家の容貌、ルネサンスの美貌 理念を追求する一族
http://
ヴィーナスの歴史、パリスの審判、三人の女神、トロイ戦争、叙事詩の円環・・・復讐劇の起源
https:/
――
織田信長、理念のための戦い
織田信長、理念を探求する精神・・・美と復讐
https:/
織田信長、天の理念のための戦い。徳姫の戦い・・・愛と美と復讐
https:/
絶世の美女、徳姫、織田信長と徳川家康・・・「美と復讐」第4巻
https:/
「響きあう名宝─曜変・琳派のかがやき─」・・・幻の曜変天目、本能寺の変
https:/
「桃山―天下人の100年」、東京国立博物館、
「桃山―天下人の100年」東京国立博物館・・・室町幕府崩壊、戦国武将、愛と復讐の壮大なドラマ
https:/
「桃山―天下人の100年」2・・・金碧障壁画、織田信長と狩野永徳、秀吉と長谷川等伯
https:/
「桃山―天下人の100年」3・・・茶の湯、足利義政、織田信長、今井宗久、千宗易、豊臣秀吉、楽長次郎
https:/
――
宗教の謎、国家と宗教の戦い、第1巻、ギリシアの神々、ローマ帝国、秦の始皇帝、漢の武帝、飛鳥、天平、最澄と空海
https://bit.ly/3xYWHQv
宗教の謎、国家と宗教の戦い、第2巻、アカデメイア、ルネサンス、織田信長
https://bit.ly/3Tcilcj
――
| 固定リンク
「哲学」カテゴリの記事
- 宗教の謎、国家と宗教の戦い、第2巻、アカデメイア、ルネサンス、織田信長(2022.10.10)
- 宗教の謎、国家と宗教の戦い、第1巻、ギリシアの神々、ローマ帝国、秦の始皇帝、漢の武帝、飛鳥、天平、最澄と空海(2022.09.28)
- 理念を探求する精神・・・ギリシアの理想、知恵、勇気、節制、正義、美と復讐(2021.08.24)
- 感染爆発、帝国と都市国家の戦い。この世の果てを超えて、旅する詩人・・・「時の関節が外れた」シェイクスピア (2020.06.02)
- 世界の果てへの旅:The World's End ・・・理念を探求する旅人(2020.05.05)
コメント