« 虫めづる日本の人々・・・喜多川歌麿「夏姿美人図」鳴かぬ蛍が身を焦がす | トップページ | 中野晃一講演会、強者の支配か自由な共存か。【質疑応答】解答篇、上智大学、ソフィア文化芸術ネットワーク »

2023年8月 1日 (火)

テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ・・・ウィリアム・ブレイクの幻想

Tate-2023-7-nact
Tate-2023-william-blake
Tate-osaka-2023
Tate-osaka-1-2023
大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』第336回
18世紀ロマン派の詩人ウィリアム・ブレイクから、19世紀リアリズムの世紀、ウィリアム・ターナー、コンスタブル、写実主義、印象派、ウィルヘルム・ハマースホイまで、リアリズムの世紀である。20世紀は、アンチリアリズムの世紀である、キュビスム、フォービスム、遠近法絵画崩壊の時代。19世紀、ロマン主義、ラファエロ前派、象徴派から、幻想派が生まれた。シュールレアリスムはレアリスムか、幻想派か。
19世紀イギリス美術史の根源には、ウイリアム・ブレイクの怒りがある。
【ウィリアム・ブレイク】(1757―1827)、英国ロマン主義の先駆的詩人として、文学史上揺るぎない地位を誇っている。「病める薔薇」などで知られる詩集『無垢と経験の歌』は広く愛されてきた。ブレイクが生涯にわたって彫版師を職業とし、水彩や色刷版画に独自の境地を築いたことは余り知られていない。
【不正に対するウィリアム・ブレイクの深い憎悪】不幸と不正への対決はブレイクを神に対する反逆へと導いた。しかしブレイクは、その絶対的宗教心の故に神を必要としたと同様にまた神を愛したが故に、そのジレンマを最初にグノーシス派により、古代の秘教へと遡ることによって、漸く解決を求めようとした。「わたし自身の心がわたしの教会である」詩人は1803年、John Schofieldという兵隊と口論になり、国家扇動罪(seditious statements)を行ったとして裁判にかけられる。勝訴するが、詩人に大きく影響した。難解な表現をすることで攻撃的な思想を隠す独自の表現技法を確立。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
――
ロマン派の詩人 ウィリアム・ブレイク(William Blake, 1757-1827)70歳で死す
『無垢と経験の歌』1787年
【ウィリアム・ブレイク「毒のある木」】
私は私の敵に腹を立てた 私は黙っていた 私の怒りはつのった そして私はそれに恐怖の水をかけ 夜も昼も私の涙をそそいだ そして私はそれを微笑みの陽にあて 口あたりのよい欺瞞の肥料で育てた。寿岳文章訳 William Blake, Poison Tree
【毒のある木】その木は 日ごと夜ごと大きくなり ついに きらきら光る 林檎の実を結んだ。そして 私の敵は それが輝くのを見 それが私のだと知り 私の庭へ忍び込んだ 夜が 天空をすっかりおおいつくしたとき
【「毒のある木」】夜が 天空をすっかりおおいつくしたとき、朝になって わたしが見たら うれしや。わたしの敵は その木の下に のびていた。ウィリアム・ブレイク『無心の歌、有心の歌』「毒のある木」寿学文章訳。邪悪なるものに、天誅下る。
「毒のある木」は、密教の呪詛調伏、怨敵調伏の真言である。
「一粒の砂の中に世界を見、一輪の花に天国を見るために。掌で無限を握り、一瞬のうちに永遠を掴め。」『無垢の予兆』よりAuguries of Innocenceウィリアム・ブレイク William Blake詩集『ピカリング草稿』
【死生学】一粒の砂の中に世界を見、一輪の花に天国を見るために。掌で無限を握り、一瞬のうちに永遠を掴め。ウィリアム・ブレイク William Blake詩集『ピカリング草稿』。
「無垢の予兆」Auguries of Innocence
To see a World in a grain of sand,And a Heaven in a wild flower,
Hold Infinity in the palm of your hand,And Eternity in an hour.
詩人は1803年、John Schofieldという兵隊と口論になり、国家扇動罪(seditious statements)を行ったとして裁判にかけられる。勝訴するが、詩人に大きく影響した。難解な表現をすることで攻撃的な思想を隠す独自の表現技法を確立。歓喜に充ち溢れる生命を讃える「無心の歌」、無垢を喪失した悲しみの世界を描く「経験の歌」、そして呪縛からの解放を歌う「天国と地獄との結婚」。ブレイク初期の傑作三詩集。
ウィリアム・ブレイク、寿学文章訳『有心の歌、無心の歌』角川文庫
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
――
【テート美術館、不朽の名画】ラファエル前派、ロセッティ「プロセルピナ」ジョン・エバレット・ミレイ「オフェリア」、シュルレアリスム、ポール・デルヴォー「眠れるヴィーナス」19044、エル・グレコ「詩人のためらい」1913、オーギュスト・ロダン「接吻」1901-4「夏の名残の薔薇」
――
展示作品の一部
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《湖に沈む夕日》1840年頃、油彩/カンヴァス、91.1 × 122.6 cm
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《光と色彩(ゲーテの理論)ー大洪水の翌朝ー創世記を書くモーセ》1843年出品
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《陽光の中に立つ天使》(1846出品)
ジョン・コンスタブル《ハリッジ灯台》1820
ジェイコブ・モーア《大洪水》(1787)、
ジョン・マーティン「ポンペイとヘルクラネウムの崩壊」(1822年)ヴェスヴィオ山の溶岩の禍々しいまでの輝き
ウィリアム・ブレイク《善の天使と悪の天使》(1795-1805頃?)、同《アダムを裁く神》(1795)
エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ《愛と巡礼者》(1896~97)
クロード・モネ《エプト川のポプラ並木》(1891)
ジョン・ブレット《ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡》(1871)
草間彌生《去ってゆく冬》(2005)
ブリジット・ライリー「ナタラージャ」 1993年 油彩/カンヴァス 165.1×227.7 cm、反復する幾何学的パターン、
ゲルハルト・リヒター《アブストラクト・ペインティング(726)》(1990)
ヴィルヘルム・ハマスホイ「室内」1899年
ウィリアム・ローゼンスタイン《母と子》1903年
オラファー・エリアソン「星くずの素粒子」2014
――
テート美術館
「ヌード NUDE-英国テート・コレクションより」横浜美術館・・・愛と美の象徴、思想表現の自由の戦い
ターナー展 英国最高の巨匠・・・イタリアの黄昏、黄金の光
「テート美術館所蔵 コンスタブル展」・・・虹が立つハムステッド・ヒース
ラファエル前派展 英国ヴィクトリア朝絵画の夢・・・愛と美の深淵
「ジョン・エヴァレット・ミレイ展」・・・愛の美と死
「バーン・ジョーンズ展―装飾と象徴―」・・・眠れる森の美女
英国ヴィクトリア朝絵画の巨匠「ジョン・エヴァレット・ミレイ展」・・・愛の美と死
「ラファエル前派の軌跡展」三菱一号館美術館・・・ロセッティ、ヴィーナスの魅惑と強烈な芳香
「ロセッティ展:ラファエル前派の夢」Bunkamuraザ・ミュージアム、1990
V&A美術館
「特別展アリス」・・・ハートの女王「首を刎ねよ」
「ザ・ビューティフル ― 英国の唯美主義 1860‐1900」・・・大英帝国の黄昏
https://bit.ly/2wvtgG5

ウィリアム・ブレイク
若きブレイクとその悖徳(ゲルト・シフ/前川誠郎 訳)
「わたし自身の心がわたしの教会である」――ブレイクとペインとフランス革命 (デイヴィッド・バインドマン/潮江宏三 訳)
『ウィリアム・ブレイク展』(国立西洋美術館 1990年)
孤高の思想家と藝術家の苦悩、孫崎享×大久保正雄『藝術対談、美と復讐』
テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ・・・ウィリアム・ブレイクの幻想
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2023/08/post-754901.html

――
イギリス政府が所蔵する美術作品を収蔵・管理する「TATE」は、ロンドンのテート・ブリテンとテート・テートモダンなど4つの国立美術館を運営している。その7万7千点を超すコレクションから「光」をテーマにした作品を集めた本展は、2021年より中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドで巡回開催され、最終会場の日本では、作品の多くが日本初出品で、マーク・ロスコやゲルハルト・リヒターらによる12点の日本限定展示も含まれる。絵画、彫刻、写真、インスタレーションなど多様な作品を、ときに時代や地域を超えてともに展示している。
ーー―
本展は、英国・テート美術館のコレクションより「光」をテーマに作品を厳選し、18世紀末から現代までの約200年間におよぶアーティストたちの独創的な創作の軌跡に注目する企画です。
「光の画家」と呼ばれるジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーや風景画の名手ジョン・コンスタブルといった英国近代美術史を彩る重要な画家たちの創作、クロード・モネをはじめとする印象派の画家たちによる光の描写の追求、モホイ=ナジ・ラースローの映像作品やバウハウスの写真家たちによる光を使った実験の成果、さらにブリジット・ライリー、ジェームズ・タレル、オラファー・エリアソン等の現代アーティストによってもたらされる視覚体験にまで目を向けます。
本展では、異なる時代、異なる地域で制作された約120点の作品を一堂に集め、各テーマの中で展示作品が相互に呼応するようなこれまでにない会場構成を行います。絵画、写真、素描、キネティック・アート、インスタレーション、さらに映像等の多様な作品を通じ、様々なアーティストたちがどのように光の特性とその輝きに魅了されたのかを検証します。
――
テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ、国立新美術館、7月12日(水)~10月2日(月)
大阪中之島美術館、10月26日から1月14日

|

« 虫めづる日本の人々・・・喜多川歌麿「夏姿美人図」鳴かぬ蛍が身を焦がす | トップページ | 中野晃一講演会、強者の支配か自由な共存か。【質疑応答】解答篇、上智大学、ソフィア文化芸術ネットワーク »

イギリス美術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 虫めづる日本の人々・・・喜多川歌麿「夏姿美人図」鳴かぬ蛍が身を焦がす | トップページ | 中野晃一講演会、強者の支配か自由な共存か。【質疑応答】解答篇、上智大学、ソフィア文化芸術ネットワーク »