特別展「はにわ 挂甲の武人」・・・見返り鹿のひとみ
美術探訪、美への旅、「はにわ 挂甲の武人」ひとみの謎・・・見返り鹿。大久保正雄
はにわの最高傑作「埴輪 挂甲の武人」が国宝に指定されてから50周年を迎える2024年秋、東京国立博物館で特別展「はにわ」が開催される。本展では、全国各地から東京国立博物館に約120件もの選りすぐりの至宝が空前の規模で集結。素朴で本質的な人物、愛らしい動物から、精巧な武具、家に至るまで、埴輪の魅力が満載な展覧会。
とくに注目すべきは、ひとみである。素朴な人物、挂甲の武人、踊る人々、愛すべき動物、犬、馬、穴が開いた眼、ひとみは、不思議な表現である。シュメール美術、ガンダーラ彫刻、エジプト彫刻、ギリシア彫刻、アルカイック・スマイル彫刻、どの美術と比べても、比類なく、シンプルで、引き込まれる。穴の開いた空間が心を表現している。ひとみの謎である。
現代彫刻、コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957)《眠れるミューズ》(1910–11年)のひとみを思い起こさせる。ブランクーシ彫刻は、概念ではなく、本質を表している。概念ではなく、本質である。概念は、言葉があって、はじめて存在する。
犬型埴輪をみると、母の愛犬、トイプードルを思い出す。愛犬は、ときどき家の門に佇み、門番をしていた。県犬養三千代家は、天皇の門番をしていたのか。犬のひとみも謎である。
――
プロローグ 埴輪の世界、古墳時代3世紀から6世紀
埴輪が作られたのは、古墳時代の3世紀から6世紀にかけて。日本列島で独自に出現、発達した埴輪は、服や顔、しぐさなどを簡略化し、丸みをもつという特徴があり、世界的にもその珍しい造形と評価されている。プロローグでは東京国立博物館の代表的な所蔵品の一つ「埴輪 踊る人々」を紹介。
この埴輪は、東京国立博物館が創立150周年を機に国立文化財活用センターとクラウドファンディングなどで寄附をつのり、2022年10月から解体修理を行いました。2024年3月末に修理が完了し、本展が修理後初のお披露目となります。
第1章 王の登場 古墳時代前期(3~4世紀)司祭者、中期(5世紀)武人、後期(6世紀)官僚的
埴輪は王(権力者)の墓である古墳に立てられ、古墳から副葬品が出土する。副葬品は、王の役割の変化と連動するように、移り変わる。古墳時代前期(3~4世紀)の王は司祭者的な役割で、宝器を所有し、中期(5世紀)の王は武人的な役割であり、武器・武具を所有した。後期(6世紀)は官僚的な役割を持つ王に、金色に輝く馬具や装飾付大刀が大王から配布された。
各時期において、中国大陸や朝鮮半島と関係を示す国際色豊かな副葬品も出土する。ここでは国宝のみで古墳時代を概説。埴輪が作られた時代と背景を顧みる。
第2章 大王の埴輪 倭の五王の陵、百舌鳥・古市古墳群、体大王の陵今城塚古墳
ヤマト王権を統治していた大王の墓に立てられた埴輪は、大きさや量、技術で他を圧倒する。天皇の系譜に連なる大王の古墳は、時期によって築造場所が変わります。古墳時代前期は奈良盆地に築造され、中期に入ると大阪平野で作られるようになる。
倭の五王の陵としても名高い、大阪府の百舌鳥・古市(もず・ふるいち)古墳群は世界文化遺産に登録されている。そして後期には、継体大王の陵とされる今城塚(いましろづか)古墳が淀川流域に築造された。本章では、古墳時代のトップ水準でつくられた埴輪を、その出現から消滅にかけて時期別に見ることで、埴輪の変遷をたどる。
第3章 埴輪の造形
埴輪が出土した北限は岩手県、南限は鹿児島県。日本列島の幅広い地域で、埴輪は作られた。それらの埴輪は、当時の地域ごとの習俗の差、技術者の習熟度、また大王との関係性の強弱によって、表現方法に違いが生まれた。
各地域には大王墓の埴輪と遜色ない精巧な埴輪が作られる一方で、地域色あふれる個性的な埴輪も作られた。第3章では各地域の高い水準で作られた埴輪や、独特な造形の埴輪を紹介する。
第4章 国宝 挂甲の武人とその仲間5体
埴輪で初めて国宝となった「埴輪 挂甲の武人」は頭から足まで完全武装しており、古墳時代の武人の様子を眼前に見せる。考古学的価値のみならず、その造形美から美術的にも高い評価を得ている。バンク・オブ・アメリカから支援を受け、2017年3月から2019年6月まで、およそ28か月間にわたり解体修理を実施した。第4章では、修理を経て得られた最新の研究成果や知見を紹介する。
――
展示作品の一部
国宝 埴輪 挂甲の武人 群馬県太田市飯塚町出土 古墳時代・6世紀 東京国立博物館蔵
埴輪 踊る人々 埼玉県熊谷市 野原古墳出土 古墳時代・6世紀 東京国立博物館蔵
国宝 金製耳飾 熊本県和水町 江田船山古墳出土 古墳時代・5~6世紀 東京国立博物館蔵
国宝 金銅製沓 熊本県和水町 江田船山古墳出土 古墳時代・5~6世紀 東京国立博物館蔵
家形埴輪 大阪府高槻市 今城塚古墳出土 古墳時代・6世紀 大阪・高槻市立今城塚古代歴史館蔵
馬形埴輪 三重県鈴鹿市 石薬師東古墳群63号墳出土 古墳時代・5世紀 三重県蔵(三重県埋蔵文化財センター保管)
重要文化財
埴輪 天冠をつけた男子 福島県いわき市 神谷作101号墳出土 古墳時代・6世紀
福島県蔵(磐城高等学校保管) いわき市教育委員会
犬型埴輪 古墳時代・6世紀群馬県伊勢崎市 剛志天神山古墳出土
見返り鹿《鹿形埴輪》静岡県浜松市 辺田平1号墳出土 古墳時代・5世紀 静岡・浜松市市民ミュージアム浜北
――
挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展「はにわ」
会場:東京国立博物館 平成館
会期:2024年10月16日(水)~12月8日(日)
休館日:月曜日、ただし11月4日(月)は開館、11月5日(火)は本展のみ開館
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
東京国立博物館
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2660
巡回情報:九州国立博物館 2025年1月21日(火)~5月11日(日)
――
著者 大久保正雄 プラトン哲学、美学、密教の比較宗教学、宗教図像学。著書『ことばによる戦いの歴史としての哲学史』理想社。
――
土偶と埴輪
土偶は、今から約1万3千年前~約2千400年前の縄文時代に作られた。縄文時代の後に弥生時代、その次の古墳時代、3世紀後半~6世紀ころに埴輪が作られた。
土偶は、基本的には女性を表す。妊娠した姿も多く、安産や豊穣を祈った。精霊の姿。意図的に壊されたものも多い。祈りと祭祀に用いられた。
埴輪は古墳の副葬品、権力者の墓の周りに立てられた。功績を表している。河野正訓(東京国立博物館主任研究員)
参考文献
「縄文-1万年の美の鼓動」東京国立博物館・・・狩猟人の行動様式
https://bit.ly/2mG25my
特別展「はにわ 挂甲の武人」・・・見返り鹿のひとみ
http:// mediter ranean. cocolog -nifty. com/blo g/2024/ 11/post -72d881 .html
特別展「はにわ 挂甲の武人」・・・見返り鹿のひとみ
http://
最近のコメント