2024美術展ベスト10・・・旅する哲学者、美への旅
大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』第386回
藝術作品は、魂の愛と苦悩のドラマの痕跡であり、時代の証言である。旅人はそこに魂の美を求める。大久保正雄
【旅する哲学者、美への旅】【藝術家、思想家の運命との戦い】表面に美しい美を撫でるのではない、美は魂の陰影(エイコーン)であり光である(シェイクスピア『ソネット』)。美を生み出す人間のドラマ、精神文化を生み出す人間の魂の美とは何か。藝術家、思想家の運命との戦い。藝術家、思想家が運命と戦い、苦悩するドラマ、愛と叡智は精神文化の礎である。精神文化の源泉を探究する旅。
【藝術家と思想家、運命との戦い】理想と思想をもつ人は運命と戦い、現実界と理想の狭間に、美の潮流を生み出す。旅する思想家は、美の源泉に旅し、美の根拠に至る。壮麗な美の神殿の頂き、宇宙円環と魂の円環のコンコルディア。精神文化が栄えた地に立ち、精神の香り。
【美はしきもの見し人は、はや死の手にぞわたされつ】ロマン主義の詩人アウグスト・フォン・プラーテン(1796-1835)、イタリアに魅了され、1824年28歳でイタリア周遊の旅に出、同地に定住、シチリアで39歳で死す。
【藝術家と思想家、運命との戦い】
宮澤賢治『春と修羅』1924年28歳「まことのことばはここになく 修羅のなみだはつちにふる」(『春と修羅』)宮澤賢治は25才の時、阿修羅像をみた。阿修羅の一族は、賢治が震えるほど感動したという島地大等編『漢和対照妙法蓮華経』に出てくる。『法華経』「序品」が出典。宮澤賢治、37歳で死す。
【田中一村、69歳で死す】50歳の時、奄美に移り住み、不断の努力と一途な研鑽が花開く。《不喰芋と蘇鐵》1973以前と《アダンの海辺》1969について一村はこう手紙に記した。「この絵は百万円でも売れません。これは私の命を削って描いた絵です。この絵は閻魔大王の土産ですから」
織田信長の手紙800通『信長最後の手紙、藤孝宛天下布武朱印状』4月24日小早川隆景、備中高山城籠城、羽柴秀吉が包囲。万全を尽くして準備に専念せよ。惟任日向守より指示【本能寺の変天正10年1582年6月2日】【細川藤孝・忠興宛て手紙】謀反を起こした理由。『光秀の手紙』6月9日光秀、信長を討った目的は忠興らの政権のために。同盟を乞う。『秀吉の手紙』6月8日、秀吉、9日全軍を教に向かって出陣する。光秀を討つ。
【重要文化財「織田信長自筆感状」細川忠興宛(天正5年〈1577〉)10月2日/永青文庫蔵】織田信長自筆の書はこの一通のみ。右筆、武井夕庵の書が大多数。
【『星の王子さま』星めぐり、六つの星】六つの星の支配者たち、サンテグジュペリが飛行機から見た地上の人間たちの姿。王様=命令する人、自惚れる自慢屋、飲酒に溺れ酩酊する人、金を数える実業家、点燈夫=日常業務の社員、探検家を利用する地理学者。詐欺と搾取の階級社会。7つの生き方。
【人生の舞台、16の性格】外交官グループ、提唱者、仲介者、主唱者、広報運動家。番人グループ、管理者、擁護者、幹部、領事官。探検隊グループ、巨匠、冒険家、起業家、エンターテイナー。分析家グループ、建築家、論理学者、指揮官、討論者。人生の舞台、必殺技をどう披露するか。卓越した技、どう発揮する。織田信長は、明晰透徹な指揮官、武の七徳を探求する。
【ルネサンス復讐劇の起源】王は、弟によって殺され、王位を奪われる。王の子は弟を殺し正義を成就する。『ライオン・キング』は、シェイクスピアのルネサンス復讐劇と同工、家族の殺し合い、相続争い、王家舞台の殺人。シェイクスピア『ハムレット』の原型は、セネカ『テュエステス』、その源泉はギリシア悲劇アトレウス王家、アトレウスとテュエステス)は兄弟、テュエステスがミケナイ王になったという知らせを聞いたアトレウスの息子アガメムノンは、スパルタ王デュンダレオスの力を借りるためスパルタへやってきた(『アガメムノン』)。【アトレウス王家5世代の殺戮】1・タンタロス · 2・ペロプスとニオベー · 3・アトレウスとテュエステス · 4・アガメムノン · 5・エレクトラとオレステス. その後のオレステス【テュエステスに子を食わせたアトレウス】アポロドロス『摘要第2章』アトレウスは、妻が弟テュエステスと姦通したのを知り、テュエステスの3人の児をひそかに殺しその身体を煮て、テュエステスに食わせた。
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2024美術展ベスト10・・・旅する哲学者、美への旅
1、
「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」・・・孤高の画家、人生の光芒、彼岸への旅
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2、
「文明の十字路・バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰 -ガンダーラから日本へ-」
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3、
本阿弥光悦の大宇宙・・・現世即、常寂光土
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4、
「信長の手紙―珠玉の60通大公開―」・・・「織田信長書状」細川藤孝宛、「織田信長自筆感状」忠興宛
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5、
「ルイーズ・ブルジョワ展:、地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」・・・毒親との戦い、悪魔祓い
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ブランクーシ 本質を象る・・・真なるものとは、外面的な形ではなく、観念、つまり事物の本質である
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6、
時間旅行・・・因果の時空的制約を超えて、青ぞらいつぱいの無色な孔雀「春と修羅」
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7、
マティス 自由なフォルム・・・《豪奢、静寂、逸楽》、旅路の果て
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8、
どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより・・・歌川広重「名所江戸百景」1857
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犬派?猫派? 俵屋宗達、竹内栖鳳、藤田嗣治から山口晃まで・・・遣唐使船で経典を守る猫
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9、
印象派 モネからアメリカへ モネ、絶望を超えて
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10、
田名網敬一 記憶の冒険・・・永遠に熟さず、老いず、極彩色の彼岸と此岸
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デ・キリコ、形而上絵画の謎・・・形而上絵画と古典絵画を往還する
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モネ 睡蓮のとき・・・モネの生涯と藝術、絶望を超えて、失われた時を求めて
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モネ 睡蓮のとき2・・・絶望を超えて、朦朧派
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英一蝶、波乱万丈の生涯・・・運命との戦い
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「カナレットとヴェネツィアの輝き」18世紀ヴェドゥータの巨匠・・・美はしきもの見し人は
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特別展「はにわ 挂甲の武人」・・・見返り鹿のひとみ
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大名茶人 織田有楽斎・・・天下なる者は聖人の宝なり、微身の有ならず
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【密教研究】
理念を探求する精神、空海『即身成仏義』819-820『秘蔵宝鑰』830
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「空海 KŪKAI ― 密教のルーツとマンダラ世界」・・・大日如来、法界体性智、自性清浄心(阿摩羅識)
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学問僧、空海・・・空海の生涯と思想
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空海『秘密曼荼羅十住心論』・・・大日如来は、法界体性智、自性清浄心(阿摩羅識)をもつ
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修行僧、空海・・・空海の生涯と思想
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「神護寺」密教の謎・・・五智如来、大日如来、阿閦如来、宝生如来、無量寿如来、不空成就如来
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醍醐寺 国宝展・・・如意輪観音の微笑み、理源大師聖宝、秀吉の醍醐の花見
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「京都・醍醐寺-真言密教の宇宙-」・・・醍醐寺三宝院、織田信長のために祈祷する
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【仏教史研究】
仏教2500年の旅 仏陀入滅、アレクサンドロス大王、瑜伽行唯識学派、密教
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『仏説魔訶般若波羅蜜多心経』・・・中観派と唯識派の対立
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「中尊寺金色堂」・・・魔界の入口、中尊寺金色堂の謎
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「法然と極楽浄土」・・・称名念仏、南無阿弥陀仏、極楽浄土の幻覚
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【宗教史】
宗教の謎、国家と宗教の戦い、第1巻、ギリシアの神々、ローマ帝国、秦の始皇帝、漢の武帝、飛鳥、天平、最澄と空海
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宗教の謎、国家と宗教の戦い、第2巻、アカデメイア、ルネサンス、織田信長
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ヴィーナスの歴史、パリスの審判、三人の女神、トロイ戦争、叙事詩の円環・・・復讐劇の起源
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プラトン哲学の戦い アカデメイア派対ペリパトス派、ローマ帝国、普遍論争、ルネサンス、フランス革命
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【映画】
ジョニー・デップ『ツーリスト』2010、『ナインスゲート』1999・・・迷宮の旅人
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【国際政治】
孫崎享×大久保正雄【質疑応答】
孫崎享講演会「国際政治 ウクライナ戦争・ガザ・台湾問題」5月26日、上智大学1号館402教室
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【上智と下愚とは移らず】最上の知者は悪い境遇にあっても下落せず、最下の愚者は 、どんなによい境遇にあっても向上しない。どんなに地位と肩書が高くて富裕でも、知性の貧困は隠せない。地位と肩書が高く高度な職業でも、魂の貧困は隠せない。「論語」陽貨篇。
【偉大な思想家は、立身出世のために、自分の思想を変えたりしない】小人(知識人)は、立身出世、地位名誉のために、己の見解を変える。大きな金魚鉢には大きな金魚が育つ、大きな自由度の組織には大きな人間が育つ。偉大な大工は、誰も見ないからといって、床裏にひどい木材を使ったりはしない。スティーブ・ジョブズの言葉
【空海と最澄】「古の人は道の為に道を求め、今の人は名利の為に求む。名の為に求むるは、道を求むる志にあらず。」「夫れ秘蔵の興廃は唯汝と我なり」空海『答叡山澄法師求理趣釈経書』弘仁4(813)年『理趣釈経』借覧拒否。最澄に答えた書簡。
【奴隷国家】あらゆる人間は、いかなる時代におけるのと同じく、現在でも奴隷と自由人に分かれる。自分の一日の三分の二を自己のために持っていない者は奴隷である。『人間的な余りにも人間的な』偉大な思想家は、立身出世のために、自分の思想を変えたりしない。
不遇な人生【死後才能が見出された藝術家・詩人・思想家】田中一村(1908~1977)69歳で死す。宮澤賢治(1896~1933)、37歳で死す。高島野十郎(1890年(明治23年)8月6日~1975年(昭和50年))、85歳で死す。ゴッホ(1853~1890)37歳で死す。
【死後見出された藝術家・詩人・思想家】李白(701~762)流謫仙人61歳で死す。李賀(791~817)鬼才、恨血千年土中の碧。伊藤若冲(1716~1800)千年具眼の士を待 つ。藝術への献身、貧困、忍耐、孤立、無私、迫害、殉教、早世、自殺。イエス・キリスト「わが神よ、どうして私を見捨てたの?」マルコ伝、15章34節
【精神科医のことば】幸福な人生は82歳から。最も不幸なのは48歳、他人と競争する社会。死後名を残すのが幸福な人生。【人生の選択】行きたいところに行き、見たいものを見る。ナチュラルキラー細胞が働く。社会的な成功、金儲けに成功した社長・教授は病院に見舞いが来ない。精神科医・和田秀樹。土居建郎「甘えの構造」
【財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上とする】されど、財なさずんば事業保ち難く、事業なくんば人育ち難し。後藤新平。映画の製作に一番重要なのは脚本で、その脚本にとり最も重要なのは、一にテーマ、二にストーリー、三に人物設定(構成を含む)である、映画の創成期か
【人類の至宝、コンコルディア神殿】アグリジェント、神殿の谷に聳える。最も完璧なギリシア神殿。古代ギリシアの詩人ピンダロスが「人の造りし最も美しき都市」と謳った都市アクラガス。神殿の谷は、稜線に20の神殿が聳える。丘に神殿遺跡がそこここに残る古代都市遺産群を廻る
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参考文献
【宗教学、死生学、藝術学】2016-2019
【質疑応答】島薗進先生に、死生学、比較宗教学の観点を踏まえて、質疑応答しました。内容を記録します。島薗進「死生学 ファンタジーと魂の物語」2019年5月26日、上智大学6号館203教室にて。
1、宮澤賢治『雁の童子』、『インドラの網』、2、天正、織田信長、改元の目的、3、密教真言、藝術と魔術、5、学問の不可欠な要素。
島薗進×大久保正雄『死生学 ファンタジーと魂の物語』
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6、3つの時間論。自分が生きたい時間論を選ぶならば、何を選びますか。
大久保正雄
3つの世界観の時間論。時間には、回帰的時間と終末観的時間と進化的時間がある。(渡辺慧『時』第3章、時間の起源と機能)(回帰的時間は、エンペドクレス、ニーチェ『ツァラトゥストラ』。終末観的時間はキリスト教。進化的時間は、ベルクソン『創造的進化』)1974、初刊1948年。*エンペドクレスの宇宙円環(Cosmic Cycle)、ヘラクレイトスの回帰的宇宙、ニーチェの永劫回帰(Ewig Wiederkehren)、ピュタゴラスの輪廻転生。
島薗進×大久保正雄『死生学 宗教の名著』
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【質疑応答】宗教学者、島薗進先生に死生学について質疑応答しました。2017.5. 28、上智大学にて。
1、宗教とは何か、2、宗教が生まれる原因は何か、3、世界観の選択、4、藝術家と宗教、5、天から降りてきた魂、6、 織田信長と天の思想、7.秘密曼陀羅十住心論、8、父殺しのテーマ、9、人の痛みを知ること、10、理念の崩壊は『純粋理性批判』から始まった。
島薗進×大久保正雄『死生学 ファンタジーと宗教』
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島薗進×大久保正雄『死生学 人の心の痛み』
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孤高の思想家と藝術家の苦悩、孫崎享×大久保正雄『藝術対談、美と復讐』
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2024美術展ベスト10・・・旅する哲学者、美への旅
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