フェルメール

2012年7月24日 (火)

フェルメール『真珠の耳飾りの少女』・・・ふり向く少女

Vermeer_the_girl_with_the_pearl_ear ふり向く少女、真珠の耳飾り、青いターバン、みつめる目のまなざし、濡れた唇、振りむく一瞬、唇からことばを言いかけているようである。すべては謎である。意味不明である。ラピスラズリを原料とするウルトラマリンが美しい。
『真珠の耳飾りの少女』(Het meisje met de parel, Girl with a Pearl Earring)『青いターバンの少女』は、1665年~1666年、フェルメール33歳から34歳の頃の作品。
フェルメール(1632年-1675年)は、妻と11人の子供を残して、42または43歳で没した。カレル・ファブリティウスの弟子という説があるが不明。ピーテル・デ・ホーホとともにデルフト派と呼ばれる。
フェルメールの絵画は、緻密な室内空間の描写、物質の質感、窓から差し込む光が、特質である。意味を失った寓意画、室内画が、冷たい写実によって生み出されている。
『真珠の耳飾りの少女』は、グイド・レーニ『ベアトリーチェ・チェンチの肖像』(1599年)に似ているといわれる。
■展示作品
ヤーコプ・ファン・ライスダール「漂白場のあるハールレムの風景」
メインデルト・ホッペマ「農家のある森」
ヤン・ボト「イタリア風の風景」
ペーテル・パウル・ルーベンス「聖母被昇天」(下絵)
フランス・ハルス「笑う少年」1625年頃
レンブラント・ファン・レイン「自画像」1669年頃
レンブラント「スザンヌ」
レンブラント「シメオンの賛歌」
ヤン・ブリューゲル(父)「四季の精から贈り物を受け取るキュベレと、それを取り巻く果実の花輪」
アーレント・デ・ヘルデルの「シメオンの賛歌」
ヘラルト・テル・ボルフ「手紙を書く女」1655年頃
ピーテル・クラースゾーン「ヴァニタスの静物」
ファブリティウスの「ごしきひわ」
ヤン・ステーン「親に倣って子も歌う」1668-1670年頃
ヤン・ステーン「牡蠣を食べる娘」Jan Steen: Oestereetstertje 1656-1660年頃 マウリッツハイス美術館
牡蠣は媚薬
牡蠣を食べる若い娘。艶めかしく蠱惑的で挑発的な視線をみる者に向ける。若い娘が手に取りへ運ぼうとする<牡蠣>は、17世紀、精力剤(媚薬)として好まれた食材。娘の魅惑的な表情や娘の背後の寝台は艶かしい。観る者にエロティックな連想を抱かせる。ヤン・ステーンは、女性画、女性の愛の絵画を、得意としている。
――――――――――
17世紀のオランダやフランドルは、西洋美術史に大きな影響を及ぼした巨匠たちを、数多く輩出しました。本展では、17世紀オランダ・フランドル絵画の世界的コレクションで知られるオランダ・ハーグのマウリッツハイス美術館から、名品48点を選りすぐって紹介します。最晩年の「自画像」をはじめ一挙に6点が並ぶレンブラントは壮観です。そのほか、フランス・ハルス、ルーベンス、ヤン・ブリューゲル(父)ら、巨匠たちの息もつかせぬ傑作の数々を堪能する格好の機会です。
17世紀オランダ・フランドル絵画
17世紀初頭、オランダは新教国としてスペインから独立し、世界的な海洋貿易を背景に未曽有の繁栄を謳歌します。新興の市民階級は絵画の新たな買い手となり、鑑賞に教養を要する宗教画や歴史画よりも、親しみやすい風俗画、風景画、静物画などを好みました。この時代は、レンブラントやフェルメールら多数の巨匠が輩出し、オランダ絵画の黄金時代と呼ばれています。
一方、現在のベルギーを中心とするフランドル地方でも、バロックの巨匠ルーベンスやヴァン・ダイクが活躍しました。オランダとは異なり、カトリック勢力の最前線であったことから、祭壇画など大規模な宗教画も多数残されました。
オランダの政治的中枢を担う第3の都市ハーグの中心地に位置し、所蔵作品は約800点と小規模ながら、選りすぐりの名品を所蔵し、「王立絵画館」の呼称で親しまれています。なかでも、世界にわずか三十数点しか現存しないフェルメール作品を3点所有するなど、17世紀オランダ・フランドル絵画の質の高さは比類のないものです。
「マウリッツ」の名は、代々オランダ総督を務め、のちに王室となるオラニエ家の傍系、ナッサウ伯ヨーハン・マウリッツ(1604-79)に由来します。ヨーハン・マウリッツは、当時植民地だったオランダ領ブラジル総督を務めた人物で、その邸宅が1822年から美術館として使われています。火災に遭いながらも、外観は17世紀に建設された当時の面影を残しています。優美な古典主義様式と個人邸宅の親しみやすさとが相まって、コレクションと見事な調和を果たしているのが特徴です。
マウリッツハイス美術館では、本展を開催する2012年から大規模な増改築工事がスタートします。リニューアルオープンは、2014年ごろを予定しています。
http://www.asahi.com/mauritshuis2012/
http://www.tobikan.jp/museum/2012/mauritshuis2012.html
――――――――――
■マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝 東京都美術館
Masterpieces from the Royal Picture Gallery Mauritshuis
2012(平成24)年6月30日(土)~9月17日(月)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年6月26日 (火)

フェルメール「真珠の首飾りの少女」・・・物欲と虚栄に溺れる女

Vermeer_woman_with_a_pearl_neckla_2 真珠の首飾りを眺める女は、物欲に溺れている。真珠は物欲と虚栄の象徴である。窓から差し込む淡い光に包まれた静謐な空間と佇む女。フェルメール絵画のパターンである。ここには高貴な神秘性は存在しない。そこには世俗的な寓意が込められている。
左から光が差す室内に立つ女性、フェルメールの典型的なパターンである。髪にリボン、耳に真珠のイヤリングを付けた女性は、真珠のネックレスに付けたリボンを持ち上げ、左の壁に掛かった鏡を見つめている。鏡、宝石のモチーフは伝統的に虚栄を表す。背景は白い壁。女性の着ている白い毛皮の襟のついた黄色のサテンのコートは『手紙を書く女』『婦人と召使』他の作品に登場する常套の小道具である。死後、財産目録に記録されている。
★フェルメール「真珠の首飾りの少女Woman with a pearl necklace」ベルリン国立美術館、1662-1665年
Johannes Vermeer (1632–1675)
■展示作品
1480年頃 エルコレ・デ・ロベルティ《洗礼者聖ヨハネ》
1490年頃 ティルマン・リーメンシュナイダー《龍を退治する馬上の聖ゲオルギウス》
1490 年頃 ベルナルディーノ・ピントゥリッキオ《聖母子と聖ヒエロニムス》
1460 年頃 ドナテッロの工房《聖母子とふたりのケルビム》
1450 年頃 ルーカ・デッラ・ロッビア《聖母子》
1526年 アルブレヒト・デューラー《ヤーコプ・ムッフェルの肖像》
1533年頃 ルーカス・クラーナハ(父)の工房《マルティン・ルターの肖像》
1533年 ルーカス・クラーナハ(父)《ルクレティア》
1616-1620年頃 ディエゴ・ベラスケス《3人の音楽家》
1650–1653年頃 ルーカ・ジョルダーノ《エウクレイデス》
1650–1653年頃 ルーカ・ジョルダーノ《アルキメデス》
1650–1655年頃 レンブラント派《黄金の兜の男》
1662-1665年頃 ヨハネス・フェルメール《真珠の首飾りの少女》
1670-1680年頃 ヤーコプ・ファン・ロイスダール《滝》
1480-95年頃 サンドロ・ボッティチェッリ 《ダンテ『神曲』「煉獄篇」挿絵素描より:愛の原理を説くウェルギリウス(第17歌)》
1480–1495年頃 サンドロ・ボッティチェッリ《ダンテ『神曲』「煉獄篇」挿絵素描より:地上の楽園、ダンテの罪の告白、ヴェールを脱ぐベアトリーチェ(第31歌)》
1490–1495年頃 ルーカ・シニョレッリ《人物を背負うふたりの裸体像》
1503–1504年頃 ミケランジェロ・ブオナローティ《聖家族のための習作》
――――――――――
 本展は、ベルリン国立美術館のうち、絵画館、彫刻コレクション及び素描版画館からイタリアや北方の絵画と彫刻、さらには優れたイタリア素描の傑作を集めて企画されています。一見すると美術史の概説的な展覧会に見えるかもしれません。実際、ベルリン美術館のコレクションの規模は百科全書的な規模で、ヨーロッパ美術の通史を概観するには余りある内容と規模を誇っています。しかし、その背後には非常に重要な意図が隠されています。
 19世紀にプロイセン帝国の首都ベルリンに国立美術館・博物館が誕生してから、プロイセン帝国の美術品コレクションは、その強大な経済力を背景として次第に類を見ない規模となり、国家的作品蒐集事業は、ヨーロッパ各国の美術館・博物館制度の範となりました。
 本展は15世紀から18世紀までのヨーロッパ美術を、イタリアと北方の美術を比較しながら観ることのできる展覧会です。そこには絵画のみならず、 15~16世紀のドイツを代表するリーメンシュナイダーの木彫や、フェルメール、さらにはベルリン素描版画館の誇るボッティチェッリの素描など、優れた作品が出品されます。
 ベルリン国立美術館は、プロイセン帝国時代の国家事業として人類学的観点からの作品蒐集と研究の時代を経た後、二度にわたる大きな戦争に翻弄されながら、戦争を乗り越え、東西ドイツの統一を果たした今、新たな未来を見据えて生まれ変わろうとしています。
――――――――――
■フェルメール「真珠の首飾りの少女」ベルリン国立美術館展、国立西洋美術館
「ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年」
http://www.berlin2012.jp/
国立西洋美術館2012年6月13日(水)~9月17日(月・祝日)
九州国立博物館2012年10月9日(火)~12月2日(日)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年12月30日 (金)

フェルメールからのラブレター展・・・禁じられた恋の匂い

Vermeerjohanneswomanreadingaletter1 ラブレター(恋文)は女が意中の人に秘かに書く手紙。禁断の恋、背徳の匂い。禁じられた愛こそ、真実の愛。この世における愛の極致は、秘められた愛である。真実は秘められている。女と男を結ぶラブレターを運ぶ女召使いがいる。忍ぶ恋と色に出る恋の間に恋文がある。「しのぶれど色に出にけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで」(平兼盛)。「戀の極意は忍戀と見立候。一生忍んで思ひ死する事こそ戀の本意なれ」(『葉隠』)三島由紀夫は、忍ぶ恋こそ恋の極意、恋の本質であると考えた。
フェルメール「恋文」(1670アムステルダム国立美術館)は、壁面の海の絵画は堕罪と許されざる愛を暗示し、開かれた窓は外界への憧れを暗示していると解釈される。フェルメールの白と黒の床面がある。恋文は堕落と淫蕩の象徴である。
<手紙を読み書き受け取る女性>は、フェルメールの得意の主題の一つである。「手紙を書く女と召使い」の床に転がる書き損じた手紙とろうそくと赤い蜜蝋と壁の絵画、「手紙を読む青衣の女」のウルトラマリンブルーと壁面の世界地図、「手紙を書く女」のサテンのリボンと真珠の首飾りと白甜の毛皮で縁取られた黄色い上着と壁面の絵画、フェルメールの絵画は記号を解読する世界に誘う。<手紙の女>を描いたフェルメール作品は6点ある。フェルメールの淡い光と静謐な空間のなかで、女の禁断の情念が展開する。
■主要展示作品
■ヨハネス・フェルメールJohannes Vermeer
「手紙を書く女と召使い」"A Lady Writing a Letter with her Maid"
1670年頃  油彩・キャンヴァス
アイルランド・ナショナル・ギャラリー、ダブリン National Gallery of Ireland, Dublin, Sir Alfred and Lady Beit Gift, 1987(Beit Collection)
■ヨハネス・フェルメールJohannes Vermeer
「手紙を読む青衣の女」"Girl Reading a Letter"
1663-64年頃  油彩・キャンヴァス
アムステルダム国立美術館、アムステルダム市寄託 Rijksmuseum, Amsterdam. On loan from the City of Amsterdam (A. van der Hoop Bequest)
■ヨハネス・フェルメールJohannes Vermeer
「手紙を書く女」"A Lady Writing"
1665年頃  油彩・キャンヴァス
ワシントン・ナショナル・ギャラリーNational Gallery of Art, Washington, Gift of Harry Waldron Havemeyer and Horace Havemeyer, Jr. , in memory of their father, Horace Havemeyer.
―――――――――――――――
「フェルメールからのラブレター展」
コミュニケーション:17世紀オランダ絵画から読み解く人々のメッセージ
オランダ黄金期の巨匠、ヨハネス・フェルメール。精緻な空間構成と独特な光の質感をあわせもつ作品群は、今なお人々を魅了してやみません。現存する30数点のフェルメール作品のなかでも、日常生活に密やかなドラマをもたらす手紙のテーマは、重要な位置を占めています。本展は日本初公開となる《手紙を読む青衣の女》をはじめ、《手紙を書く女》、《手紙を書く女と召使い》の3作品が一堂に会するまたとない機会です。さらに、同時代に描かれた、人々の絆をテーマにした秀作も併せて紹介し、人物のしぐさや表情、感情の動きに注目することで、17世紀オランダ社会における様々なコミュニケーションのあり方を展観していきます。Bunkamuraザ・ミュージアム
―――――――――――――――
2011年から2012年、4つのフェルメール展が開かれている。
■「フェルメールからのラブレター展」コミュニケーション:17世紀オランダ絵画から読み解く人々のメッセージ
Bunkamuraザ・ミュージアム
http://www.bunkamura.co.jp/museum/
2011年3月3日(木)~5月14日(水)
*1月1日のみ休館 開館時間:10:00-19:00(入館は18:30まで)
毎週金・土曜日21:00まで(入館は20:30まで) *12月30、31日を除く
公式サイト 
http://vermeer-message.com
■「ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年」
国立西洋美術館
http://www.nmwa.go.jp/
2012年6月13日(水)~9月17日(月・祝日)
九州国立博物館(福岡・太宰府)2012年10月9日(火)~12月2日(日)
公式サイト 
http://www.berlin2012.jp/
■「マウリッツハイス美術館展」オランダ・フランドル絵画の至宝
2012年6月30日(土)~9月17日(月・祝)
東京都美術館 企画展示室(東京・上野公園)
※2012年9月29日(土)~2013年1月6日(日)神戸市立博物館にも巡回します。
公式サイト
http://www.asahi.com/mauritshuis2012/
■「フェルメール≪地理学者≫とオランダ絵画展、シュテーデル美術館所蔵」
Bunkamuraザ・ミュージアム、2011年12月23日(金・祝)~2012年3月22日(日)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月28日 (金)

「フェルメール展-光の天才画家とデルフトの巨匠たち-」東京都美術館(2)・・・光と陰影の室内空間

Vermeer_2008_leaf_01_2 光と陰影の画家と呼ばれるフェルメールは、一瞬に永遠の時間が凝縮されたような空間、光の美しさを描き出したといわれる。「手紙を書く婦人と召使い」に、フェルメールの後期絵画の到達点の一つがある。しかし、フェルメールの「光と陰影の空間」が意味するものは何か。
フェルメールの絵は、世界に35枚、オランダにも7枚しかないが、フェルメール展には、宗教画、神話画、寓意画、風景画、室内画の領域におよぶ、7枚の絵が展示されている。
■寓意画から光と陰影の空間へ
1.「マルタとマリアの家のキリスト」(Christ in the house of Martha and Mary,1654-55年160×142cmスコットランド国立美術館):フェルメールの2枚ある宗教画の1枚。イエスの言葉に耳を傾けているのがマリア。テーブルにパンを用意してイエスに苦言を呈しているのがマルタ。(cf.ルカによる福音書10章38~42節)椅子にIVMeerという署名がみえる。キリストの右示指など修正の跡が見えるといわれる。

2.「ディアナとニンフたち」(Diana and her companions,1655-56年97.8×104.6cmマウリッツハイス王立美術館):フェルメール唯一の神話画。頭に小さな三日月の飾りをつけたディアナ(狩猟の女神)の足の手入れをするニンフの他に3人のニンフとディアナが連れている1匹の犬が描き込まれている。色彩は黄色や赤色が美しい。ヴェネツィア派のように色鮮やかである。

3.「小路」(The little street,1958年頃53.5×43.5cmアムステルダム国立美術館):奥に立っている女性は白い消毒用の石灰を撒いている。建物の入口では老婆が編み物(縫い物)をしている。道端で遊ぶ二人の子供。4人の人物、白い壁、開いた赤い鎧戸、閉まった薄緑の鎧戸、通路、窓、空に雲が浮かぶ。すべての構成要素が調和している。デルフトのどの建物を描いたのか分からないが、空想で描かれたものではない。モデルがない風景画は存在しない。実物の絵を見ると、曇り空である。

4.「ワイングラスをもつ若い女」(The girl with a wine glass,The girl with Two Men,1660年頃77.5×66.7cmブラウンシュバイク、ヘルツォーグ・アルトン・ウルリッヒ美術館):女にワインを勧める好色な紳士と目を大きく開けて困惑して笑っている娘、そして肘を着いて横を見ている憂鬱な男。ステンドグラスには片手に直角定規、片手に馬の手綱と轡(欲望の統制を意味する)を持つ「節制」の寓意像が表され、女性の行為に警告を発している。「節制」の寓意といわれる。背景の画中画は、男が視線を若い女に向けている。ベルリン国立美術館に類似の「紳士とワインを飲む女」がある。この作品は女性が下品に見える。

5.「リュートを調弦する女」(Woman with a Lute near a Window, 1664年頃51.4×45.7cmメトロポリタン美術館):左手で糸巻きを調節しながら、音程を調整している。左の窓から差し込む淡い光の表現が巧妙である。机上には楽譜集、床の上に本が見える。女主人の耳飾りとネックレスが目立つが、髪がちりじりに乱れている。或るひは、女の髪ははげている。壁に掛けられた地図には、船が描き込まれている。女性は、黄色い毛皮のショールを纏っている。壁の地図の意味するところはない。カラバッジョの作品に「リュートを弾く人」(Caravaggio,Lute player, c1597)がある。カラバッジョの影響をフェルメールの初期作品は受けているといわれる。楽器を演奏する女、手紙を書く女、のモチーフが、フェルメールには多い。

6.「手紙を書く婦人と召使い」(Lady Writing a Letter with Her Maid,1670年頃72.2×59.7cmアイルランド国立美術館、ダブリン):これは「絵画藝術」(Allegory of Painting, 画家のアトリエ1666年頃120×100cm)ウィーン美術史美術館が、急遽キャンセルされ代わりに出展が決まった。「絵画藝術」は1999年、美術史美術館で見たが、数万点の絵画の中に埋もれている。私はダブリンに行くことはないだろう。
ここに、フェルメール後期の絵画の到達点の一つがある。左の窓から差し込む光の表現が絶妙である。この画の光と影は淡く美しい。色彩はやや暗い。手紙を描く女性、立って待っている女召使。そして床に赤い封印、棒状の蜜蝋、書きかけて捨てられた手紙、壁には画中画「モーゼの発見」(「川から救い上げられるモーセ」)が描かれている。この作品今まで二度、盗難されている。1972年にIRAによって盗まれた(一週間後に無事発見)。1986年に再度盗まれ、1993年まで発見さなかった。
所蔵者のアルフレッド・ベイトは、ダブリンの邸宅に展示してあったこの絵をこの後現在あるアイルランド国立美術館に寄贈した。女主人は、例の黄色い毛皮のショールを纏っている。

7.「ヴァージナルの前に坐る若い女」(A Young Woman Seated at the Virginals個人蔵):ルーブルの「レースを編む女」と同じサイズ。この作品がフェルメールのものであると認定されたのは2005年。カンバス地、ラピスラズリの使用など他のフェルメールの作品と共通するものであることがその根拠である。この調査にはサザビースが関与した。女性の表情、首飾り、髪飾り、そして黄色のショールはいずれもフェルメール的でないように思われる。メーヘレン他の贋作である可能性が高い。(3)につづく。
■「フェルメール展~光の天才画家とデルフトの巨匠たち~」東京都美術館、8月2日-12月14日、Vermeer and the Delft Style
http://www.asahi.com/ad/clients/vermeer/index.html
J_v_2_diana_and_her_companionsJ_v_lady_writing_a_letter_with_her_ 

| | コメント (0) | トラックバック (7)

2008年11月26日 (水)

「フェルメール展-光の天才画家とデルフトの巨匠たち-」東京都美術館(1)・・・絵画の意味

Vermeer_07stree 夏の夕暮れ、せみ時雨の森を歩いて、美術館に行った。フェルメール「小路」の空の色を見た。「小路」の空は、曇りである。この時、西洋美術館ではコロー展が開かれていた。今、枯葉が舞い、ハンマースホイ展が開かれている。フェルメールの絵画は光の絵画といわれるが、その意味は何か。移ろう季節の中で、考え続けている。
■フェルメール、謎の生涯と絵画
ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer, 1632-1675)は工房を構えず、自宅のアトリエで、1人で制作していた。家族は、妻との間に子供が10人(14人の子供が生まれたが、そのうちの4人が死亡)。貧困のうちに43才で没した。その翌年、妻は、破産宣告する。
フェルメールの画家としての師については、デルフトで活躍していた画家、カレル・ファブリティウス(Carel Fabritius、1622-1654)に師事していたという説がある。フェルメールの作品は、宗教画が多い初期の作品においては、ユトレヒトのカラヴァッジョ派の影響があるといわれる。
宗教画、神話画の人物を描いていたフェルメールは、『取り持ち女』(遣り手婆The Procuress1656年)以降、風俗画に転じる。風俗画は、教訓的意味が込められており、寓意画である。風俗画(寓意画)からさらに転じて、寓意的な意味を失って、室内画・都市景観画に到達する。「小路」「デルフトの眺望」以外は、室内の画である。
フェルメールの絵は「静謐な空間」といわれ、絵の中に別もう一つの時間が流れているような永遠性がある、ラピスラズリの青が美しい、と言われる。光と物質の質感を表わす技術は最高の技術であることはいうまでもない。だが、「空間に射す光」が意味するものは何か。

―――――――――――――――――――
ヨハネス・フェルメール(1632-1675)は、オランダのハーグ近くのデルフトという小都市に生まれました。彼がその生涯で残した作品は、三十数点。この作品の少なさと、光を紡ぐ独特の技法の美しさから、彼は光の天才画家といえるでしょう。
フェルメールの作品が展覧会へ出品されることは、ほとんどありません。しかし 2008年、日本との修好150周年を記念する欧米各国の多大なるご尽力により、フェルメールの作品を中心に、オランダ絵画の黄金期を代表するデルフトの巨匠たちの絵画を一堂に集めた奇跡の展覧会が実現することになりました。
出品されるフェルメールの作品は、光に満ちた美しい空間を描いた風俗画の傑作《ワイングラスを持つ娘》、現存する 2 点の風景画のうちの 1 点《小路》、近年フェルメール作と認定され大きな話題となった《ヴァージナルの前に座る若い女》、晩年の優品《手紙を書く婦人と召使い》、《マルタとマリアの家のキリスト》、《ディアナとニンフたち》、《リュートを調弦する女》の一挙 7 点です。
このほかレンブラントに天才と称され、フェルメールの師であるとの説もあるカレル・ファブリティウス (1622-1654) や、デルフトに特有の技法を確立させたピーテル・デ・ホーホ (1617-1683) など、世界的にもごく稀少で非常に評価の高いデルフトの巨匠の作品も合わせて、38点が展示されます。
デルフトの芸術家による名作がこれほど一堂に集うことは、本国オランダでも希有であり、この奇跡の展覧会は、私たちにとってまさに一生に一度しかめぐり合えることのない機会といえるでしょう。
―――――――――――――――――――
■「フェルメール展~光の天才画家とデルフトの巨匠たち~」東京都美術館、8月2日-12月14日、Vermeer and the Delft Style
http://www.asahi.com/ad/clients/vermeer/index.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年12月 1日 (土)

「フェルメール展」2008年8月2日~12月14日、東京都美術館

2008年「フェルメール展」がまた開催されます。朝日新聞2007年12月1日に記事あり。フェルメールは、完全に商品化されています。
 「独特な光の質感を用いたあたたかな作風や現存する作品の少なさなどで知られる17世紀オランダの画家、ヨハネス・フェルメールの作品を中心に紹介する「フェルメール展」(仮称)が、来年8月から上野の東京都美術館で開かれる。
 本展覧会では、「小路(The Little Street)」(アムステルダム国立美術館蔵)や「ワイングラスを持つ娘(TheGirl with the Wineglass)」(ヘルツォーク・アントン・ウルリッヒ公美術館蔵)など日本初公開3点を含むフェルメールの作品6点以上を展示予定です。日本で一度に紹介されるフェルメールの作品数としては過去最多となります。世界中に三十数点しか現存しないフェルメールの作品をまとめて見られる機会は少なく、またとない貴重な機会となります。
 また、フェルメールが生まれ育ったオランダの小都市デルフトを中心に活躍した画家たち、カレル・ファブリティウスやピーテル・デ・ホーホらの作品も公開予定です。フェルメールの芸術をはぐくんだ17世紀中葉の「デルフト・スタイル」の潮流を見ることができます。」朝日新聞asahi.com2007年11月30日
cf.「フェルメール展」http://www.tbs.co.jp/vermeer/

2007/12/01

| | コメント (0) | トラックバック (1)

「フェルメール『牛乳を注ぐ女』とオランダ風俗画展」国立新美術館、「フェルメール展コンサート」

071019 仕事を終えた後、図書館に資料を返却に行き、乃木坂に行く。夕暮れの美術館に行くと、ロビーでコンサートのリハーサル中。
 展覧会から出てくるとコンサートが始まる。17世紀のバロック音楽の古楽器によるコンサート、リコーダー、チェンバロ、リュート、ヴィオラ・ダ・ガンバ。上野学園大学の先生たちによる演奏で、太田光子(リコーダー)、戸﨑廣乃(チェンバロ)、金子浩(リュート)、櫻井茂(ヴィオラ・ダ・ガンバ)。
 J.B.ルイエ『ソナタ第3番』他、甘美な音楽を演奏している。ルネサンスの音楽、ゼフィレッリ『ロミオとジュリエット』、『恋に落ちたシャイクスピア』の音楽を思い出す。 偶然、聴くことができ僥倖、「『鳥獣人物戯画絵巻』の全貌」に行こうと思っていたが、取り止める。 
 古楽はホグウッド指揮エンシェント管弦楽団、ヤープ・シュレーダー(Vn)、バッハ「ヴァイオリン協奏曲第1番2番、2つのヴァイオリンのための協奏曲」が美しい。

 「君はフェルメールを見たか」(『Brutus』1996.8/15.9/1号)で全作品が紹介されたころから、フェルメールが流行っている。
 人がフェルメールを見たがる理由は何か。「フェルメールのどこがいいのですか」多くの人にこの問いを聞いているが、明確な答は返ってこない。ラピスラズリのブルー。写実主義。近代的な光。「それが何故いいのですか」

 私は決して「フェルメール全点踏破の旅」には出ないだろう。私は「失われたレオナルドの作品探求の旅」に出たい。2007/11/30
Vermeerthe_kitchen_maid2

| | コメント (0) | トラックバック (0)