2016年12月14日 (水)

大久保正雄「夕暮れ散歩、夕暮れの諧調、夕暮れの図書館」

Toledo_sunsetClaude_lorrainodysseus_and_clyseis_Santorini_1920x1200_69225_2016大久保正雄「夕暮れの諧調、夕暮れの図書館」
黄昏の丘を越えて、黄昏時、美しい人に会いに行く。夕闇迫るとき、夜霧の忍び逢い。美しい人は、夜霧の中に佇み待っている。愛を語る夕暮れの宴。黄昏の忍び逢い。
黄昏時にはこの世が、強者も弱者も、貧者の家も富者の館の玉楼も、すべて夢か幻想のように、跡形なく消え、夕闇の空に霧のように昇ってゆく。

黄昏の丘を越え、黄昏の森を歩いて、黄昏の町に行く。世界の片隅で、美しい人に呼び止められる。黄昏の丘、夕暮れの諧調。
森の中の図書館に行く。ボードレール『夕暮れの諧調』『万物照応』『香水壜』を、黄昏の部屋で読誦する。黄昏の光芒が、森の木々に満ちてくる。
時の彼方より蘇る、思い出。黄金の黄昏に沈みゆく。フィレンツェの丘の上、町を一望する眺望と美術蒐集で埋めつくされた館。

哲学者は旅する。美への旅、本質への旅、魂への旅、時空の果てへの旅。
美は真であり、真は美である。これは、地上にて汝の知る一切であり、知るべきすべてである。*
はちみつ色の夕暮れ、黄昏の丘、黄昏の森を歩き、迷宮図書館に行く。糸杉の丘、知の神殿が目覚める。
美しい魂は、輝く天の仕事をなす。美しい女神が舞い下りる。美しい守護精霊が、あなたを救う。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』

「住む人もない廃屋があって、衣装箪笥がある。それは黴の匂いがつまり、埃が積もって黒くなっている。衣装箪笥をあけてみると、ときどき古い香水壜が見つかる。栓を開けるると残香が立ち昇ってくる。それにふれた瞬間、昔の思い出がよみがえる。魂がいきいきとよみがえり、迸り出る。」
「暗闇のなかで静かにふるえながら、蛹のように眠っていた無数の記憶が。瞬間、紺碧に染められ、薔薇色に彩られ、金色に輝いて。思い出の翼を拡げて、飛翔し始める。」
(ボードレール『香水壜』より)
「夕されば、今、花々は、梢に揺れて、香爐のように、花の香が、風に薫じて、音と馨と、黄昏の空に渦巻く。憂欝なワルツよ、もの憂い眩暈よ。」「香爐のように、花の香が、風に薫じて、悩ましい心さながら、ヴィオロン、震え。」
(ボードレール『夕の諧調』(Harmonie du Soir)より)
「自然は神の宮にして、生ある柱。時おり、捉え難き言葉を洩らす。人、象徴の森をへて、此處を過ぎ行き、なつかしき眼相に、人を眺む。」「馨と色と音と、互いに答える。」
(ボードレール『万物照応』(Correspondence)より)
(ボードレール『悪の華』鈴木信太郎訳より改稿)

「美は真であり、真は美である。汝が生涯知るべきことはそれがすべてである。」*
Beauty is truth, truth beauty"-that is all Ye know on Earth, and all ye need to know.
*John Keats, Ode on a Grecian Urn

この世界の果て、図書館の片隅に、秘められた思い出がある。時を超えた真の心が、枯れ果てる虚飾を超えて蘇る。
玉のをよ絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの弱りもぞする 式子内親王
私の命よ、絶えるなら絶えてしまえ。このまま生きながらえば、心に秘めた恋がばれてしまいそうだから。この歌は、後白河法皇の三女、式子内親王の歌。藤原定家との秘められた恋が歌われているのか。
逢ひて逢はぬ恋、忍ぶる恋、秘密の恋、みぬ恋、逢はぬ恋。『新古今和歌集』『六百番歌合』の美学がある。
*大久保正雄『新古今和歌集、妖艶の美学』より
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』
大久保正雄「旅する哲学者、ソクラテスの戦い ソクラテスの祈り」
https://t.co/gW05rsb44i
★Claude Lorrain: Ulysses Returns Chryseis to Her Father, 1644
★Santorini at sunset
大久保正雄2016年12月13日

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2009年12月15日 (火)

詩人・吉増剛造・・・詩人との出会い

Botticelli_magnificat_2009 12月9日夕方「詩人・吉増剛造と写真家・港千尋の対談」をきくために、日本経済新聞社、本社2階に行く。詩人伊藤浩子さんが「シビレるおやじ」という吉増剛造である。
予定より前に到着し、「活字ルネサンス」の展示を見るが時間が余り、困った。文化事業局の女性に聞き、会場に入る。室内には、詩人らしい老人が一人で本を読んでいる。* そこで、名刺交換する。詩人に、私の専門は哲学、美学、ギリシア、地中海であることを話す。
■『わたしは燃え立つ蜃気楼』
吉増剛造『わたしは燃え立つ蜃気楼』(1978小沢書店)を学生時代に読んだことを話すと、
「雑誌『理想』からギリシア哲学について書くようにという依頼があり、パルメニデスについて書き、井上忠に会ったんだ。人との出会いが作品になるんだ。」と詩人は言った。
哲学詩人パルメニデス、ギリシア哲学、西脇順三郎、村野四郎「鹿」、塚本邦雄、現代詩の凋落、について、語り合う。
「西脇順三郎は、ギリシアだね。現代詩の没落は、詩人のレベルが下がったからだよ。大学の教育の崩壊が一因だと思う」と詩人は言った。
「人文科学教育、哲学、文学、歴史、古典の教育が崩壊したから、大学教育は水準が低くなったのだと思う」と私は言った。
「今もわたしはハイデガーやヘルダーリンを読みますよ。またどこかで会いましょう。」と詩人は最後に言った。
孤高な修行僧のように、銅版に文字を刻む詩人をみると、18世紀の言葉を思い出す。
孤独は優れた精神の持ち主の運命である。(ショウペンハウエル)
青春の夢に忠実であれ。(フリードリヒ・フォン・シラー)
■「いま、朝焼けにむかって、ギリシャ彫刻のよくにあう、宇宙を想像しながら、黒曜石の丘を登る」(「海の恒星」吉増剛造『黄金詩篇』1970)を思い出した。
■「吉増剛造×港千尋」トークセッション12月9日
日時:12月9日(水)18:30-20:00場所:SPACE NIO
活字ルネサンス「タイポロジック―文字で遊ぶ、探る、創る展覧会」
http://www.typologic.net/
2009年10月16日(金)‐12月18日(金)平日10:00-18:00
SPACE NIO(東京・大手町 日本経済新聞社2F)
監修:港千尋アートディレクション:永原康史
■*港千尋『洞窟へ』せりか書房2001
★ボッティチェリ「マニフィカートの聖母」(Botticelli,Madonna del Magnificat)1483-85

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